これまでの記事で、人材採用のフローは「①採用基準の設計」「②募集内容の検討」「③面接」「④内定者への動機づけ」の4つに分けることができ、それぞれのフローでミスマッチのリスクをはらんでいることをご説明しました。そして、人材採用のミスマッチが起こる要因として「採用基準が間違っている」「募集内容の伝達ミス」「自身の心理的バイアスに気づいていない」の3点を解説しています。

①採用基準の設計⇒【ミスマッチの主な要因】採用基準が間違っている
②募集内容の検討⇒【ミスマッチの主な要因】募集内容の伝達ミス
③面接     ⇒【ミスマッチの主な要因】自身の心理的バイアスに気づいていない
④内定者への動機づけ

今回は、最後のフロー「④内定者への動機づけ」におけるミスマッチの要因と、それを防ぐポイントをお伝えします。

動機づけでついついやってしまいがちなこと

応募者の入社意欲を高める動機づけは、採用担当者の腕の見せどころですが、残念ながらここでもミスマッチが数多く発生しています。

入社の動機づけを行うためには、自社の事業内容や組織風土、文化などをフラットにわかりやすく伝える表現力、応募者が抱いている不安を丁寧に払しょくする説明力などが重要です。しかし、応募者に入社してほしいあまりに必要以上に美化して伝えたり、応募者の不安をあいまいにごまかしたりするケースが散見されます。入社後に「こんなはずではなかった」と早期退職してしまう人が多い企業は、この動機づけの甘さやズレが主因と思われます。

これを防ぐためには、面接担当者全員で「動機づけのためのトーク力」を磨くしかありません。応募者に伝えたい自社の魅力や特性は事前に洗い出すことができますし、応募者が不安に思いがちなポイントはだいたい決まっているはずですから、十分に準備を行えばミスマッチはある程度抑えられます。

どのように説明すれば応募者に伝わるのか、採用に関わる全員で話し合ってまとめ上げ、その内容を共有して面接に臨みましょう。ワークショップを行ってトークをブラッシュアップし、マニュアル化するのも有効です。

①採用基準の設計⇒【ミスマッチの主な要因】採用基準が間違っている
②募集内容の検討⇒【ミスマッチの主な要因】募集内容の伝達ミス
③面接     ⇒【ミスマッチの主な要因】自身の心理的バイアスに気づいていない
④内定者への動機づけ⇒【ミスマッチの主な要因】動機づけが甘い、ズレている

上記のようにミスマッチの4つの要因をご説明してきました。採用フローにおいては、これ以外にもさまざまなミスマッチ要因が考えられますが、大きなものはこの4つです。人材がなかなか定着しない、能力を発揮してくれないと悩んでいる企業は、この4つのどれか、もしくはすべてが当てはまっている可能性が高いでしょう。

従って、これらの要因を潰していけば、ミスマッチを極小に抑えることができるはずです。

採用のミスマッチは、企業にとっても応募者にとっても不幸なことです。自社に当てはまる点はないか、ぜひ採用フローを振り返って一つひとつ見直してみてください。

【本記事の執筆者】

曽和 利光(そわ・としみつ)

株式会社人材研究所 代表取締役社長

新卒で株式会社リクルートに入社後、ライフネット生命保険株式会社と株式会社オープンハウスを経て、2011年に株式会社人材研究所を設立。「人と、組織の可能性の最大化」をテーマに掲げ、人事、採用にコンサルティング事業などを展開。『人事と採用のセオリー』など、これまで多くの書籍を出版し、いずれも大きな話題を集めている。