多くの企業が課題感を覚えている、新入社員の配属ミスマッチ問題。前回は、ミスマッチのない配属のためには「能力」「価値観」「性格」の3つの観点が重要とであること、そして多くの企業において「性格」の観点が抜け落ちており、ミスマッチの大きな要因となっていることをお伝えしました。
今回は、「性格」の観点をどのように配属に取り入れればいいのか、具体的にご説明します。
直ちに早期退職数を減らしたいなら、「同質」の上司のもとに配属を
上司と部下の性格的な相性を考える際には、次の2つの視点が必要となります。
- 同質か、異質か(=性格的に似ているか、似ていないか)
- 補完し合える関係か、補完し合わない関係か
基本的には、上司と部下が「同質」の関係(似たような性格のもの同士)は相性が良いといえます。同質であれば、補完・非補完関係なく相互理解が早く、早期にリレーションを築くことができます。
なお、「異質」な関係であっても、「補完関係」にあるならば相性は悪くありません。例えば、ぐいぐいと周りを引っ張る牽引型リーダーシップを持つ上司と、言われたことを素直に受け入れる従順な部下は、異質ではありますが補完し合えるのでバランスが取れています。逆に部下が能動的に動くタイプで、上司が受容タイプであっても、「やってみなはれ」と自主性を大切にする上司のもと、部下は自分が思うようにのびのび働けるので、関係性が築きやすいでしょう。
避けるべきなのは、「異質・非補完」の関係性の配属です。性格が違うだけでなく補完もし合えないので、全くの「水と油」。上司も部下も互いのことが理解できず、ぶつかる機会がどうしても増えてしまいます。結果、せっかく入社したのに「この上司のもとでは働けない!」と早々に会社を飛び出してしまう恐れがあります。
もちろん、採用の時点ですでにミスマッチが起きている可能性も否定できませんが、能力、価値観に加え、これらの「性格的な相性」を考慮し配属を行うことで、離職率をある程度抑えられる可能性があります。
なお、「同質か異質か」を判断する際には、できれば適性検査を導入して、客観的なデータを用いて「似ている・似ていない」を評価するべきです。これは、人事担当者の直感的な判断頼みでは、見誤る恐れがあるからです。
そして、「補完・非補完」の正しい見極めは、さらに難易度が上がります。エゴグラムのような性格診断テストを用いるか、採用選考で使用している適性検査を既存社員に受検してもらうなどして、相性の良い性格関係を洗い出すことも必要です。
さて、次回は、配属の際の「同質・異質」「補完・非補完」の考え方について、さらに詳しく解説していきます。
【本記事の執筆者】
曽和 利光(そわ・としみつ)
株式会社人材研究所 代表取締役社長
新卒で株式会社リクルートに入社後、ライフネット生命保険株式会社と株式会社オープンハウスを経て、2011年に株式会社人材研究所を設立。「人と、組織の可能性の最大化」をテーマに掲げ、人事、採用にコンサルティング事業などを展開。『人事と採用のセオリー』など、これまで多くの書籍を出版し、いずれも大きな話題を集めている。