採用した人が定着しない、活躍してくれないなどといった人材採用のミスマッチ。採用基準の設計や、面接での見極め時に起こるものと思われていますが、実は「募集内容や募集方法を検討する」段階で起きているケースがあります。

前回は、募集内容の認識のズレがミスマッチ要因の1つであること、そして「就活ペルソナ」で学生の行動を読む大切さをお伝えしました。今回は、ペルソナ作成のポイントについて具体的に解説します。

就活ペルソナのポイントは「就活量」と「就活時期」

就活ペルソナ作成の際にまずイメージしてほしいのは、ターゲットの「就活量」と「就活時期」の2つです。たくさんの企業に応募するタイプなのか、それとも応募先を厳選しその中で決めるタイプなのか、早い時期から着手するタイプか、もしくは遅いスタートになりそうなのか。この2点をイメージすると、アプローチ方法が明確になり、募集チャネルが選びやすくなります。

「就活量」は、内定辞退率にも関係します。数多くの会社に応募するタイプであれば、それだけ辞退の可能性も高まるため、母集団を多めに集める必要があります。

なお、リクルートの「就職みらい研究所」によると、2021年卒の学生の1人当たり応募数は約6社ですが、22年卒は倍近くの約11社に増加しています。オンライン化により就活にかかる時間やコストが減り、その分行動量が増えたのだと予想されますが、内定辞退率も上がっています。昨年は100人集めれば計画通りの人数を確保できていたとしても、今年は150人集める必要があるかもしれません。ターゲットの就活量はもちろん、就活トレンドもチェックして就活ペルソナを作りましょう。

そして、「就活時期」は、母集団形成に大きく影響します。前述の「体育会系キャプテン」や「老舗企業のハイパフォーマー候補」のようなタイプは、3月の広報解禁日までは恐らく積極的には行動しないでしょうし、夏のインターンシップにも出現しないタイプだと思われます。一方で、知的好奇心が高く、新規事業を自分の手で手掛けたいタイプを集めたいならば、インターンシップからしっかり母集団を掴んでおいたほうがいいでしょう。

営業職はフットワークがよく目標達成意欲が高い人が欲しいけれど、バックオフィス部門は慎重で自律性のある人が欲しい…など、職種によって採用基準が複数ある企業も多いでしょう。当然ながら、それぞれのタイプに分けて就活ペルソナを作成する必要がありますが、そのペルソナに合わせて全体のバランスを考えながらスケジュールを組むことが大切です。

例えば、Aタイプは少人数でいいからリファラル中心に早めに動き出してピンポイントでアプローチ、その後にBタイプへのアプローチをスカウトメディア中心に実施。そして、母集団を確保したいCタイプは3月の就活ナビのグランドオープンで大々的に告知し、説明会も行って広くアプローチ…などと個別に設計し、それぞれの目標人数と辞退数を考え、内定人数を見積もる。これらを、自社のマンパワーや採用コストなどと照らし合わせながら優先順位を考え、スケジューリングすることが大切です。

就活市場のトレンドを読み、ターゲットを設定し、どうすれば注目してもらえるのかを考えアプローチ方法を練り上げる…人材募集はマーケティングと同じです。自社のマーケティングノウハウを採用に転用するようなイメージで捉えていただければ、募集方法の精度が上がり、ミスマッチのリスクをさらに減らせるはずです。

【本記事の執筆者】

曽和 利光(そわ・としみつ)

株式会社人材研究所 代表取締役社長

新卒で株式会社リクルートに入社後、ライフネット生命保険株式会社と株式会社オープンハウスを経て、2011年に株式会社人材研究所を設立。「人と、組織の可能性の最大化」をテーマに掲げ、人事、採用にコンサルティング事業などを展開。『人事と採用のセオリー』など、これまで多くの書籍を出版し、いずれも大きな話題を集めている。