このページのまとめ

  • コンピテンシーとは高いパフォーマンスを残す人物の行動特性のこと
  • コンピテンシーレベルは5段階で評価する
  • 人事評価に活用する場合はコンピテンシーモデルを作成する

人事評価の場面で、コンピテンシーを重視する企業が増えています。コンピテンシーとは、高いパフォーマンスを発揮する人物が持つ行動特性です。スキルや成果とは違い、行動するまでの考え方を重視しています。より優秀な人物を採用するため、多くの企業がコンピテンシーに注目しはじめました。このコラムでは、コンピテンシーの概要やメリット、コンピテンシーの高い人材の育成方法を解説します。

コンピテンシーとは

コンピテンシーとは、高いパフォーマンスを残す人物に共通する行動特性のことです。成果を上げるために重要な特性とも言い換えられます。

コンピテンシーの例として、感情に惑わされずに判断できる冷静さや、初対面の方に好印象を与える第一印象、問題を見極めて解決を行う分析思考などがあります。コンピテンシーは行動につながる性格や思考を重視しているため、行動のように見た目では判断しにくい要素です。

コンピテンシーレベルの5段階評価

コンピテンシーレベルとは、コンピテンシーを5段階に分けて評価したものです。コンピテンシーレベルが高いほど成果を上げやすい人物とされています。

5段階のコンピテンシーレベルは次のとおりです。

1. 受動行動

誰かの指示を受け、言われたままに動くのが受動行動です。主体的ではなく、指示や命令にだけ従う様子を指します。主体性に欠け、自分の意思ではなく他人の言動で判断してしまう状況です。

2. 通常行動

通常行動のレベルは、決められたことをそのまま行うことができればクリアです。マニュアルや作業手順があれば、そのとおりに行動できる人物を指します。通常行動では、自ら工夫して行動する要素がない特徴もあります。

3. 能動・主体行動

自分で目標や行動を設定し、主体的に動けることを能動行動と呼びます。たとえば、新しい企画が始まれば、情報収集をしたり、資料を作ったりできる能力です。必要なものを自分で考えて用意できれば、能動行動はクリアできます。

4. 創造・課題解決行動

自分で目標を決めるだけではなく、起こした行動で状況を変えることができる人物は、創造行動に該当します。たとえば、自分が考えたノウハウがほかのチームや事業部でも導入され、組織が変わる状況があげられます。能動行動を行うだけではなく、組織の課題解決ができている点も重要です。

5. パラダイム転換行動

パラダイム転換行動では、新しいアイデアを生み出し、周囲の状況を変えることができます。また、組織内でリーダーシップを発揮しながら、アイデアを実現させる特性も含まれます。

コンピテンシー評価の導入手順

コンピテンシー評価は、正しい手順で行わなければ、正しい評価ができない可能性もあります。

以下の手順に沿って、正しい評価を行えるようにしましょう。

ハイパフォーマーの調査とヒアリング

まずはコンピテンシー作成のため、ハイパフォーマーの調査を行いましょう。そのためには、ハイパフォーマーの行動特性を明らかにする必要があります。調査の際には、部署ごとに複数名とりあげ、ヒアリングを行いましょう。また、一般的なパフォーマーと想定されている社員のなかにも、隠れたハイパフォーマーが存在する場合もあります。そのため、一般的なパフォーマーにもヒアリングを欠かさないことが大切です。

コンピテンシーモデルの作成

ハイパフォーマーの特徴が集まってからは、「コンピテンシーモデル」と呼ばれる行動特性のモデルを作成します。コンピテンシーモデルを作成する際は、具体的で分かりやすい内容にしましょう。また、行動の回数やレベルがパフォーマンスに影響がある場合には、回数や数値を明確に設定します。

目標設定

コンピテンシーモデルが決まったら、従業員が自分自身で目標設定を行います。会社側で評価を行わないわけではなく、あくまで従業員自身が決めることが重要です。会社や上司が目標を押しつけないように注意しましょう。

結果の評価

目標設定が問題なければ、結果を評価するタイミングを決めます。評価のタイミングは3ヶ月〜半年が一般的です。長すぎると評価が難しく、短すぎるとパフォーマンスを発揮できない場合もあるためです。また、評価を行う際には、本人や同僚、上司など、さまざまな立場からの評価を参考にしましょう。

課題点の修正・改善

評価を行うと、課題が見つかる従業員も出てきます。達成できなかった原因を考え、次回以降の改善につなげましょう。コンピテンシー評価は一度きりではなく、何度も継続して行うことが理想です。課題点の修正と改善を繰り返し、パフォーマンスを改善していきましょう。

コンピテンシーモデル

コンピテンシーを人事評価や育成に採用するためには、コンピテンシーモデルの作成が重要です。
コンピテンシーモデルとは、コンピテンシーの評価基準の決め方のモデルのことです。
コンピテンシーモデルは次の3つに分けられます。

理想型モデル

理想型モデルでは、企業が必要とする人材、求める人物を基準に設計を行います。実在している必要はなく、理想で作成して問題ありません。たとえば、企業ホームページにある、求める人物像がわかりやすい例です。理想型モデルを作る際には、高すぎる理想ではなく、達成できる範囲の現実的なモデル設定にしましょう。

実在型モデル

実際にいる社員をもとに設計するモデルが、実在型モデルです。会社内にいるハイパフォーマーをモデルに作成を行います。メリットとしては、具体的な人物像が浮かびやすいところです。実在する従業員をモデルにする場合、ほかの従業員の納得を得やすい特徴があります。

ハイブリッド型モデル

理想型モデルと実在型モデルを組み合わせたモデルが、ハイブリッド型モデルです。ハイブリッド型モデルでは、一度コンピテンシーを設計し、理想型モデルを追加する方法をとります。その際、企業の運営方針とのズレが生じないように、経営陣がチェックを行うことが重要です。

また、ハイブリッド型モデルの作成においては、ハイパフォーマーにインタビューを行い、コンピテンシーを明確にする作業が重要です。なぜ成果を上げることができたのか、なぜそのような行動を取ったのかなど、行動の背景が必要になるためです。実現不可能なレベルの理想を掲げたものにならないように、コンピテンシーが実行可能なものであるかのすり合わせを入念に行いましょう。

コンピテンシーを高める育成方法

コンピテンシーを高める育成には、社員自身に考えさせ、行動させることが大切です。あらかじめコンピテンシーモデルを提示して、ハイパフォーマーになるために必要な行動や考えを理解してもらいましょう。その際、行動を真似するだけではコンピテンシーが高まらないことに注意が必要です。行動の目的や考えを理解してこそ、コンピテンシーの育成に効果があります。

コンピテンシー評価を導入するべき企業の特徴

コンピテンシー評価は、どのような企業や組織においても有効です。特に、コンピテンシー評価を本気で運用する気持ちがあれば、より効果は高まります。コンピテンシー作成時に、自分たちで主体的に考えて実行しようとする姿勢が生まれるためです。コンピテンシー自体は外部コンサルティングでも作成できますが、それだけでは効果が出るとは限りません。自分たちで主体的に作成し、運用できる企業は、積極的にコンピテンシー評価を取り入れましょう。

コンピテンシーのメリット

コンピテンシーの導入には、以下のようなメリットがあります。

従業員の成長や生産性の向上

コンピテンシー評価を従業員自身が考えることで、成長や自己評価につながります。また、コンピテンシーを理解し、成果を発揮させる方法に気付くこともできるでしょう。たとえば、コンピテンシーを持つが発揮できていない従業員を周囲がサポートしたり、コンピテンシーを発揮すために従業員が行動を起こすきっかけになります。従業員の成長や生産性向上にも、コンピテンシーの理解が重要です。

評価基準が明確

コンピテンシー評価は基準が明確なため、客観的かつ公平に評価ができます。そのため、自分の評価に納得できる従業員が増える傾向があります。また、コンピテンシー評価はKPIなどの達成率とは異なり、過程の評価も可能です。結果を出すまでの努力や姿勢を評価されることで、従業員のモチベーションアップも期待できます。

優秀な人材の獲得や育成が可能

人材採用にコンピテンシー評価を導入すると、パフォーマンスを発揮できる人材獲得につながります。現時点ではスキルが足りていなくても、育成によって活躍できる人材に成長する可能性があるためです。一方で、スキルが高くてもコンピテンシーが低ければ、将来的に活躍できないという判断もできます。スキルに左右されず、優秀な人材を獲得する面でも、コンピテンシーが有効です。

コンピテンシーのデメリット

コンピテンシーの主なデメリットは以下のとおりです。

コンピテンシー評価をするための負担が大きい

コンピテンシーは評価が難しく、仕組みを整えるまでの負担が大きい施策です。企業ごとに異なるコンピテンシーモデルが必要になり、テンプレートが存在しないためです。例えば、ハイパフォーマーの行動分析、コンピテンシーモデルの作成、評価の制定、運用方法の整備など、導入までの負担は大きくなります。導入しようと考えたとしても、すぐに導入できない点には注意が必要です。

環境の変化への柔軟な対応が困難

部署や業務によって細かく決められたコンピテンシーは、環境への変化に弱い側面があります。事業内容などが変化するたびに、コンピテンシーを設定し直す必要があるためです。コンピテンシーの変更にかかるコストや時間は大きく、簡単に変えられるものではありません。また、コンピテンシーの内容が頻繁に変わってしまうと、従業員が自分の目指す方向性を見失ってしまいます。

適切なコンピテンシーを策定するのが困難

コンピテンシーの策定は難しく、策定したコンピテンシーモデルが必ず成功するとは限りません。運用を重ねながら、少しずつ改善していく作業が重要です。コンピテンシーに対する理解が曖昧になってしまうと、成果が発揮できず、管理者も従業員も混乱してしまいます。一度のコンピテンシー策定で最適なものができたと考えず、修正と改善が必要であることを意識しましょう。

まとめ

スキルや成果と異なる評価として、コンピテンシーの重要性が増しています。結果だけではなく、どのように行動しているかの考え方も重要なためです。社内のハイパフォーマーを参考に、企業独自のコンピテンシーモデルを作成しましょう。その際、コンピテンシー運用を成功させるために、真剣に取り組む姿勢が大事です。従業員も含めて、主体的にコンピテンシーに取り組みましょう。