このページのまとめ
- クレドは従業員が心掛ける信条
- クレドは従業員のコンプライアンス意識向上に効果的
- クレドは明確でわかりやすい言葉で示す
コンプライアンス遵守の意識が高まるなか、クレドを掲げる企業が増加しています。クレドとは、従業員が心がける信条のことで、企業の方針や理念を示すものです。クレドが従業員に浸透すれば組織に一体感が生まれ、企業の目標達成につながるでしょう。このコラムでは、クレドの作成方法や導入のメリットについて解説します。
クレドとは
クレドとは、従業員が心掛ける行動指針や信条のことです。企業の目的や存在意義を掲げる企業理念とは異なり、企業の改革や組織開発、コンプライアンスの強化を目的として作られます。クレドを作成し従業員に周知を行うことは、主体的な意識を持つ従業員の育成や目的意識を持つ従業員のモチベーションの向上につながります。
企業理念や経営理念との違い
クレドと混同されやすい言葉に、企業理念と経営理念があります。どちらも企業の考え方や指針を示しており、企業によっては企業理念をクレドとして扱う場合もあるからです。
クレドと企業理念の違いとしては、作成時期が挙げられます。企業理念は創業開始時に掲げる理念で、企業の目的や存在意義を示すものです。一方で、クレドは創業後に作成される場合が多く、企業の状況によって途中で変更される場合もあります。どちらも企業方針を示す内容ですが、クレドは時代に沿った考え方を提唱し、従業員に対して、より具体的に経営方針を示しています。
ミッションとの違い
ミッションとは企業の目的、任務、使命などのことを示します。企業が経営を通して、実現する目標、達成したい内容のことです。クレドよりも曖昧ではあるものの、企業にとって最優先となる考え方がミッションです。
ビジョンとの違い
ビジョンでは、企業が進むべき方向性、目標を明確に示した言葉です。ミッションの考え方を前提に、企業の理想の姿を示します。ビジョンは考え方の指針になり、事業の方向性がぶれないようにするためにも役立ちます。
クレドが必要な理由
クレドが必要な理由は、企業と従業員のコンプライアンス意識を高めるためです。2000年代に企業の不祥事が多発し、クレドの重要性が高まりました。そのため、2006年には公益通報者保護法、2007年には金融商品取引法が制定され、企業の内部統制を義務付ける動きがありました。
企業がコンプライアンス意識を向上させる取り組みに注力するようになり、従業員に企業の目的や社会的責任を認識させる、クレドが求められています。
クレド導入のメリット
クレドはコンプライアンス意識を高めるとともに、人材育成や従業員のモチベーション向上に効果的です。クレド導入のメリットを活用するため、クレドを作成するだけではなく、従業員に周知を行ないましょう。
従業員の育成
クレドの導入は、従業員の自覚を高め、主体的な人物を育成するのに役立ちます。クレドには従業員の行動基準、判断基準、優先すべき考え方が記載されており、従業員はクレドどおりに動くことで、自信を持って業務を行えます。クレドの導入は従業員に企業としての考え方を植え付け、成長させるメリットがあります。
従業員のモチベーション向上
従業員はクレドの導入で主体性を持ち、自信を持って業務遂行ができます。そのため、業務に対するモチベーションが向上し、業務の成果も上がりやすいメリットがあります。業務では失敗したり、問題を抱えたりすることもありますが、クレドを指針として判断に迷うことなく行動ができます。
従業員の意識改善
企業がコンプライアンスを重視するためには、従業員がコンプライアンスを守ることが必要です。
クレドの導入によって、従業員のコンプライアンス意識を高めることができます。
たとえば、企業のコンプライアンスは定めているものの、従業員が把握していない場合もあります。その場合はクレドを導入し、朝礼や社内報で周知を行うことで従業員にコンプライアンスを浸透させることができます。クレドは従業員の意識改善にも役立ち、コンプライアンス意識を高めることにつながります。
クレド導入時の注意点
クレド導入時には、以下のポイントを押さえましょう。
目的を共有する
クレドは企業全体の指針になるため、企業側から一方的に押し付けないように気をつけましょう。クレド導入の目的や意味を従業員と共有する必要があります。共有するためには、アンケート調査を行なったり、意見交換の会議を開催したりしても良いでしょう。企業が決めたクレドに従わせるのではなく、従業員も一緒に決めることが大切です。目的を共有できれば、クレドをより効果的に浸透させることができます。
実行できる内容にする
クレドを作成する際は、従業員が実行できる内容にしましょう。経営陣の理念や理想を求めることは必要ですが、実際に行動するのは従業員です。従業員自身が実現できる内容だと思えるように、現実的な内容を設定しましょう。
ありきたりな内容は避ける
ありきたりな内容は避け、自社独自のクレドを設定しましょう。ほかの企業と一緒になってしまうと、従業員に浸透しにくいためです。たとえば、社会貢献をする、お客さまが大切、などの内容は、独自性もなく特徴もありません。また、従業員が行動する際の基準にもならず、イメージできない内容です。ありきたりな内容は浸透せず、実現されない可能性もあるので、自社独自のクレドを設定しましょう。
抽象的な内容にしない
クレドを導入する場合、具体的な目標や考えを示しましょう。抽象的な内容は、従業員がイメージできないからです。たとえば、「社会問題を解決する」「消費者の悩みを解決する」などの内容は、抽象的でイメージがわきません。従業員はどのように行動すべきか判断できず、クレドを実行できなくなってしまいます。従業員が具体的にイメージを持ち、実行できるように、抽象的なクレドは避けましょう。
クレドの作成手順
クレドの作成手順は以下のとおりです。
クレド作成チームを作る
クレド作成の前に、クレド作成専門のプロジェクトチームを作りましょう。チーム作成では、経営層、管理者、従業員など、さまざまな立場、部門からメンバーを集めることが大切です。一部の従業員だけで決めてしまうと、考えが偏ってしまう危険性があります。
チームメンバーが決まったら、議論を行います。次の内容について話し合いましょう。
- 現在の企業理念
- 現在の企業方針
- 今後の方向性
- 今後の行動指針
- 会社の存在意義
目標の作成
続いて、クレド作成の目標や発表のスケジュールを定めます。
具体的には、以下の3点について決めておきましょう。
- なぜ作成するのか
- どうやって作成するのか
- いつまでに作成するのか
目標やスケジュールを具体的に定めておかないと、曖昧で決まらなくなってしまうからです。内容に迷ってしまった場合は、「誰が」「なぜ」「どのように」といった5W1Hの考え方を基準にすると良いでしょう。
経営理念のヒアリング
クレドは経営方針を含めた考え方であるため、経営層へのヒアリングを行いましょう。具体的には、経営層の経営姿勢や企業のビジョンなどをヒアリングします。経営陣へのヒアリングができていなければ、企業方針とズレたクレドができてしまいます。企業の行動方針に沿ったクレドを作るためにも、経営層へのヒアリングは欠かさずに行いましょう。
従業員へのアンケート調査
経営層だけではなく、従業員へのアンケート調査も行います。従業員の意見を聞くことで従業員の関心を集め、一体感のある組織形成に役立つからです。アンケート調査の実施にあたっては、部署や支店、チームなど、さまざまな現場から意見を集めるようにしましょう。幅広い意見を集めるほど、従業員に寄り添ったクレド作成が実現できます。また、従業員の意見が反映されていることで、従業員がクレドの内容を自分事として実感できるメリットもあります。
クレドの文章化
経営層や従業員から集めた意見を文章にします。文章化する際は、次の3点を意識しましょう。
- 短い言葉
- 簡単
- 一目で理解できる
また、クレドは誰にでも分かりやすく、行動しやすい文章にします。従業員が行動指針にしやすい内容にするために、具体的かつ簡潔な文章で作成してください。
作成したクレドの修正
クレドを文章化したあとは、経営層や従業員からフィードバックをもらいましょう。特に、経営層の理念や行動指針から外れていないかの確認が必要です。また、意味が明確に伝わるか、誤解を生む文章になっていないかのフィードバックも受けましょう。
従業員へのクレド共有
クレドが完成したら、全従業員に共有を行います。共有方法は、次の方法が一般的です。
- クレドカードの作成
- パンフレット
- ホームページ
- 社内報
クレドカードとは、クレドの内容を記載したカードのことです。社員証と同じサイズで作成すると、カードケースに入れられるので便利です。持ち運びできると従業員も確認しやすいので、クレドカードを作るのがおすすめです。
また、クレドはステークホルダーへ浸透させることも重要です。ステークホルダーとは、株主や取引先のことを指します。従業員に配布するクレドカードとは別に、ステークホルダー用のクレドカードも準備しておきましょう。
クレドを浸透させる方法
クレドは作成するだけではなく、浸透させることが大事です。クレドを実現するためには、従業員に浸透させ、実行してもらう必要があるためです。また、従業員だけではなく、ステークホルダーへの周知も行いましょう。具体的には、公式サイトでの周知や、クレドカードの作成などで浸透させます。
クレドカードの作成
クレドカードとは、クレドが記載された従業員用のカードです。クレドカードを作成すると、従業員が手軽に確認できます。たとえば、判断に迷ったときにクレドカードがあると、その場でクレドを軸に判断を行うことができます。社員証サイズにしておくと、カードケースに入れて持ち運びしやすいでしょう。
自社のWebサイトやパンフレットに記載
自社のWebサイトやパンフレットに記載すれば、従業員もステークホルダーも確認できます。目に留まる場所に記載しましょう。ほかにも、オフィスの壁にポスターを提示する、システム上で提示するなどの方法もあります。クレドを作成しただけで終わらないように、目に入りやすく、すぐに確認できる場所に掲示しましょう。
朝礼などで定期的に周知
朝礼や会議など、従業員が集まる場で定期的に周知しましょう。定期的に発信を行うことで、従業員の理解や浸透度が深まります。たとえば、朝礼で経営者が読み上げる、会議でクレドをもとに事業内容を決めるといった方法で周知できます。周知する際に大切なことは、経営層がクレドに沿って行動を起こすことです。従業員だけに実行させるのではなく、経営層が自ら率先してクレドを実行しましょう。
まとめ
クレドには企業の行動指針を示し、主体的に行動させるメリットがあります。クレドを活用し、浸透させることで、組織の一体感を形成しましょう。また、クレドを作成する際には、企業独自の具体的な内容を定めることが大切です。従業員や取引先がすぐに答えられるような、分かりやすい言葉で表現するのがベストです。