このページのまとめ

  • OKRは「達成すべき目標と目標達成のための主な成果」のこと
  • OKRは世界規模のIT企業や日本の大企業でも導入されている
  • OKRはノルマとは違い、達成できるか微妙な高い目標設定を行う

MBOやKPIと異なる目標設定として、OKRが注目を集めています。OKRとは、「達成すべき目標と目標達成のための主な成果」のことであり、日本の大手企業でも導入されています。OKRはノルマとは異なり、達成できなくても問題ありません。達成できるか微妙なラインの高い目標を掲げ、行動する目的があるからです。このコラムでは、OKRの概要や具体的な設定方法をあわせて解説します。

OKRとは

OKRとは、「達成すべき目標と目標達成のための主な成果」を指します。
Objectives and Key Resultsの頭文字から取った言葉です。

OKRを初めて採用したのはアメリカの半導体素子メーカーの企業です。その後、世界規模で影響力をもつ海外のIT企業が導入したことや、日本でも二次流通サービスのリーディングカンパニーが導入したことで話題となっています。

OKRには、従来の目標設定とは異なる3つの特徴があります。
1つ目が、組織全体で大きな目標を掲げ、その目標に対応する、中・小規模の個人目標を設定する点です。
2つ目が、評価のスパンが1ヶ月から四半期と短く、フィードバックの頻度が高い点です。
3つ目が、目標とする達成度が100%ではなく、個人の評価とも切り離して別々に評価する点です。

OKRのOは「Objectives」

OKRのOは「Objectives」、すなわち目標を意味しています。OKRでの目標は、シンプルで覚えやすい目標であることが重要です。また、基本的には数値で表せる目標は設定しません。チームのモチベーションが向上するような内容で、1ヶ月〜3ヶ月程度で達成できる目標が良いとされています。Objectivesの目標設定の例としては、次のとおりです。

  • チームのモチベーションが上がるもの
  • シンプルで覚えやすいもの
  • 1ヶ月~3ヶ月で達成できる内容
  • 数字を含まない目標

KRはKey Results

OKRのKRは、Key Result、主要な結果を意味します。Objectivesの目標を達成するための、具体的な数値目標です。Oが数値を用いない目標に対し、KRは数値として証明できる目標である点に気を付けましょう。1つのObjectiveに対して、KRは2〜5つ設定すると良いとされています。少なすぎると目標達成が難しく、多すぎると従業員が数値目標に追われてしまうためです。

また、KRの設定は、難しいが達成できそう、ベストを発揮できれば到達できる、程度の水準が良いとされています。100%を達成するのではなく、60〜70%の達成で成功と評価されることを覚えておきましょう。Key Resultの特徴は次のとおりです。

  • 数値で測れる目標
  • 60~70%の達成で成功
  • 目標の数は2~5程度
  • 頑張れば達成できるくらいの目標が丁度良い

OKRとノルマの違い

OKRとノルマは、両方とも目標設定ですが、意味合いが異なります。ノルマは最低限達成が必要な目標ですが、OKRは達成できる目標の上を目指して設定するためです。100%達成できる内容だと、従業員がパフォーマンスを最大限に発揮しない可能性があるという考えから、達成度が60〜70%を想定したOKRを設定している企業もあります。OKRは高い目標をたてるものの、達成できなくてもペナルティはありません。より高い目標を目指して、チャレンジするモチベーションを生み出すために設定するものがOKRです。

OKR導入のメリット

OKRの導入には、以下のようなメリットがあります。

短いスパンで設定できる

OKRでは、1ヶ月〜3ヶ月のスパンで目標を設定します。状況に応じて臨機応変に目標を変えられるメリットがあります。また、長期的な目標は、従業員がだらけてしまったり、達成するとモチベーションが低下したりする可能性もあります。さらに、高すぎる目標もモチベーションの低下につながるでしょう。OKRで設定する短いスパンは、目標設定が抱えるリスクを低減します。

目標設定が簡単

OKRの目標はシンプルなので、目標設定が簡単です。数値的な目標は必要なく、企業としてどの方向性で事業を行うかを示しましょう。目標設定にかかる時間を削減し、業務に集中できるメリットもあります。

従業員が企業への貢献を実感しやすい

OKRは会社全体で目標共有を行います。そのため、従業員が企業への貢献を実感しやすいメリットがあります。ほかの目標設定では、管理者だけが貢献具合を把握していたり、従業員に満足なフィードバックが行われなかったりすることもあります。自身の貢献の実感は、企業への愛着心を持つことにもつながります。

目標に集中できる

目標設定が2〜5つと限定されるため、目標に集中しやすいメリットがあります。目標が多すぎると優先順位の判断が難しく、集中できなくなります。また、従業員が達成すべき目標を数値的にも理解できるため、自信をもってスムーズに業務を行えます。

より高い目標設定が可能

OKRは従業員への報酬やインセンティブとは切り離された制度です。そのため、目標未達を恐れることなく、より高い目標設定が可能です。従業員もノルマと違い、達成できないことへのデメリットがありません。そのため、高い目標であっても、目標達成のためにモチベーションを上げることができます。

OKR導入のデメリット

OKR導入の際には、デメリットも確認しておきましょう。従業員数が少ない企業や、常に業務に追われている企業は、OKRが負担になる可能性もあります。

従業員数が少ない企業は機能しにくい

従業員の少ない企業では、1人の社員がさまざまな業務を担当しています。そのため、目標の設定が難しい場合や、目標が多くなりすぎて機能しない場合があります。たとえば、人事と総務を兼任している人材の場合、人事でのOKRと、総務でのOKR設定を行うことになります。目標に集中できるOKRのメリットが、マルチタスクによってなくなるデメリットがあります。従業員の少ない企業は、OKRの適用が難しいことに注意しましょう。

短期間での見直しが必要

OKRは1ヶ月〜3ヶ月のスパンで見直しを行い、新しい目標を設定します。そのため、人員不足で見直しの時間が取れない企業では、OKRの設定が負担になるでしょう。OKRを効果的に運用するためには、目標設定と見直しを行うことが重要です。OKRに向き合う時間が十分に取れない企業は運用がうまくいかず、負担が増えることに注意が必要です。

OKR作成に必要な5原則

OKRを作成するためには、具体的な目標であることなどが重要です。
OKR作成に重要な要素を「SMART」と呼びます。SMARTは次の言葉の頭文字から取られています。

  • 明瞭であること(Specific)
  • 測定可能であること(Measurable)
  • 達成可能であること(Attainable)
  • 関連性があること(Relevant)
  • 期限があること(Time-bound)

明瞭であること(Specific)

誰にとっても分かりやすく、認識できる目標設定が必要です。目標設定が明確だと、目標を達成するためにどのような行動をとれば良いかも明確になります。

測定可能であること(Measurable)

OKRのKRは数値的な目標です。測定できる目標もあわせて提示しましょう。具体的な評価は、社員のモチベーションアップにもつながります。

達成可能であること(Attainable)

OKRの設定は、頑張れば達成できる目標であることが重要です。高すぎても、低すぎてもいけません。

関連性があること(Relevant)

現在の業務に関係のある目標設定を行いましょう。業務から離れた目標になってしまうと、従業員が業務と別の方向を向いてしまいます。

期限があること(Time-bound)

OKRの設定は、1ヶ月〜3ヶ月の期間が良いとされています。長期的な目標ではなく、短い期間でサイクルを回せるように期限を決めましょう。

OKR設定の具体例

OKR設定では、Oは数値のない目標、KRは数値的な目標設定が大切です。具体例を紹介するので、参考にしてください。

企業OKRの場合

O(数値のない目標)

  • 日本一利用される自社ツールにする

KR(数値的な目標)

  • 導入社数を50%増加させる
  • 売上を40%増加させる
  • 問い合わせ数を月間100件達成する

マーケティングOKRの場合

O(数値のない目標)

  • 自社メディアを多くの人に利用してもらう

KR(数値的な目標)

  • 2ヶ月後には月間10,000PV達成する
  • 新規メディアを2つ立ち上げる
  • メディア収益を30%増加させる

OKRとMBOの違い

OKRと比較される評価制度に、MBOがあります。MBOも目標達成のための制度ですが、個人での評価がメインなこと、評価は1年ごとなどの違いがあります。

評価の頻度

MBOでの評価は、1年に1回が一般的です。1年ごとの目標設定を行い、最後にまとめて評価する形式です。一方、OKRは1ヶ月〜3ヶ月の短期間で評価を行います。短期間で評価を行うことで、評価基準の修正を行いやすいメリットがあります。

目標達成の測定方法

MBOの評価基準は企業によって決めるものであり、特定の方法はありません。そのため、数値で管理する企業もあれば、数値では測れない目標設定を行う場合もあります。
一方、OKRの設定基準は決まっており、「SMART」を重視して設定します。数値的な目標と数値のない目標の両方を設定するため、簡単で正確な判定が可能になります。

評価を共有する範囲

MBOで定めた目標は、従業員と上司、人事担当の間で共有されます。従業員一人ひとりに設定され、企業全体で共有されることはありません。
一方、OKRで定めた目標は、企業やチーム全体で共有されます。パフォーマンスが組織内で共有され、目標に合わせて変化していきます。OKRの目標は企業全体の目標のため、従業員だけの目標ではありません。目標達成にはチームでの連携やコミュニケーションも重要なため、組織全体で公開しています。

設定の目的

MBOの目的は、業績に応じて従業員の報酬やボーナスの決定です。そのため、従業員自身に焦点をあてた目標設定になります。
一方、OKRは企業が目標達成をするために定めるものです。そのため、従業員の報酬には影響しない特徴があります。企業の目標にあわせて個人の目標が決まるのが、OKRです。

目標達成の水準

MBOは、目標達成の進捗がそのまま報酬に反映されます。そのため、目標の100%、それ以上の達成が求められるのが一般的です。また、目標達成できなければ、報酬が与えられない可能性もあります。
一方、OKRでは60〜70%の達成が期待されています。100%達成できる目標設定は行わず、頑張って達成できるかどうかの目標を定めます。OKRはより高い成果を目指すための目標設定のため、MBOとは違い、達成できる目標はふさわしくないとされています。

OKRとKPIの違い

MBOだけではなく、KPIもOKRと混同されやすい用語です。KPIは目標達成のための経過状況を管理するもので、過程をチェックしています。そのため、結果を評価するOKRとは、評価する対象が異なります。また、KPIの測定タイミングは特に指定がなく、必要なタイミングで随時行われます。目標に対して順調に進んでいるかを確認するのがKPI、目標達成できたか評価するのがOKRと覚えておきましょう。

OKRの導入方法

OKRの導入にも手順があり、正しい手順で導入しなければ効果が発揮できません。また、短期間で何度も設定するものなので、導入方法を覚えて効率的に運用できるようにしましょう。

Objectives(目標)設定

高い成果を出すためには、Objectives(目標)の設定が重要です。簡単に達成できる内容ではなく、達成できるかわからないレベルの目標を設定しましょう。理想としては、達成度が60〜70%で落ち着く目標が良いとされています。
また、目標設定の場合には、数値で表せない目標を設定しましょう。数値的な目標は、次のKR(主要な成果)で設定を行います。従業員がわかりやすく、モチベーションが上がるような目標設定を心がけましょう。

KR(主要な成果)を設定

Objectivesの設定ができたら、KR(主要な成果)を設定します。KRは数値的な目標で、誰が見ても分かる具体的な設定を行いましょう。KRは数値的な目標になるため、評価しやすいメリットがあります。KRの設定は、2〜5つ程度行いましょう。多すぎると従業員が混乱してしまうので、業務に集中できる個数がベストです。

OKRを社員に共有

OKRは企業全体の目標も含むため、社員全員に共有を行います。ホームページや社内チャットを使って、共有できるようにしましょう。OKRの目標達成には、従業員一人ひとりが最大限のパフォーマンスを発揮するのが重要です。モチベーションが上がるように、従業員同士で声をかけたり、上司や経営陣が評価を行うなどの工夫をしましょう。

フィードバック

OKRの設定を行い、実行したあとは、フィードバックを定期的に行いましょう。1ヶ月〜3ヶ月のスパンでフィードバックを行うことが一般的です。フィードバックを行う際には、会社全体やチーム全体で振り返ると効果的です。チーム内で個人の目標を確認し合い、互いに評価を行うことが重要です。組織全体のOKRの確認も必要ですが、従業員一人ひとりの達成度合いの確認も重要です。自分の目標だけではなく、ほかの従業員の進捗も把握できる環境づくりを行いましょう。

結果の検証と評価

OKRは目標管理のため、期限が来たら結果の検証を行いましょう。評価の際には、60〜70%達成できれば十分と判断して問題ありません。OKRは数値的な目標も定めているため、評価の時間があまりかからないメリットもあります。目標を達成できた場合でも、達成できていない場合でも検証と評価は必要です。結果を踏まえて、次回のOKR設定に活かしましょう。

まとめ

MBOやKPIとは異なる目標設定として、OKRが注目されています。従来のノルマとは異なり、より高い目標を達成するために、従業員の積極的な行動が必要になります。従業員と1対1のコミュニケーションをとりながら、企業全体で1つの目標に向かって努力することが大切です。