このページのまとめ

  • エンゲージメントとは、「企業と従業員」や「自社と取引先」の関係性を示すもの
  • エンゲージメントには従業員エンゲージメントと顧客エンゲージメントがある
  • エンゲージメントはアンケート調査で測定を行う

離職率や売上に課題を持つ企業を中心に、エンゲージメントが注目を集めています。エンゲージメントとは企業と従業員、企業と取引先の関係性のことで、エンゲージメントが高いほど信頼関係が強くなります。エンゲージメント向上は従業員のモチベーションを上げ、生産性を高める効果も期待できます。企業経営に課題を持つ企業は、エンゲージメント向上の施策を行いましょう。

エンゲージメントとは 

エンゲージメントとは、約束や契約などの意味を持つ言葉であり、一般的には、深いつながりを持った関係性を示す際に使用されます。ビジネスシーンでは、企業と従業員の関係性、自社と取引先の関係性を示す言葉として意味を持ちます。この2つはそれぞれ、従業員エンゲージメントと、顧客エンゲージメントと呼ばれ、両者の間に信頼関係が構築されている状態を示しています。

従業員エンゲージメントとは 

従業員エンゲージメントとは、企業と従業員の間での信頼関係を指します。企業は従業員の貢献に報いることを約束し、従業員は企業への貢献を約束するものが従業員エンゲージメントです。従業員エンゲージメントを向上させる要素としては、次の3つがあげられます。

  • 働きやすさ
  • やりがい
  • 理念への共感

従業員の従業員エンゲージメントを向上させることは、企業への愛着や貢献の向上を期待させ、離職防止にも効果的です。企業は従業員エンゲージメント向上への施策を行うことが求められます。

顧客エンゲージメントとは

顧客エンゲージメントとは、企業と取引先の信頼関係を示す言葉です。顧客が企業のことを信頼し、製品の購入やサービス利用を行ってくれること、とも言いかえられます。顧客エンゲージメントの向上は、売上上昇に効果があるだけではなく、顧客からの率直な意見を得られる機会もうまれます。このように、顧客エンゲージメントは企業の売上に貢献するだけではなく、関係性の構築や改善意見をもらうなど、企業の継続的な成長にもつながります。

従業員満足度との違い

従業員満足度とは、「給与などの待遇面や職場環境に満足しているか」を指します。そのため、「企業の理念に共感を示し、自発的な貢献を行う」従業員エンゲージメントとは意味合いが異なります。従業員エンゲージメントの方が、従業員との関係性が深く、企業への愛着が高い指標です。

従業員エンゲージメントが注目される背景 

従業員エンゲージメントが注目される理由として、人事制度の変化や人材の流動化があります。企業は自社に愛着を持ち、長く働いてくれる人材を育てるため、従業員エンゲージメントの向上に力を入れています。

人材の流動化

現代の日本では、年功序列で報酬を支払うのではなく、成果報酬へ移行する企業が増加しています。そのため、従業員も転職や離職を行う人材の流動化が目立ち始めました。また、リモートワークの増加や、副業を行う人材の増加など、働き方も多様化しています。このような人材の流動化によって、企業にとって人材の流出が増加する危機を迎えています。実際に、若年層の離職も増加しており、人材確保とリーダーや幹部育成に課題を抱える企業が増加しました。従業員エンゲージメントは、企業が抱える人材面の課題を解決する概念です。そのため、企業は優秀で、企業に愛着を持つ人材を抱えるために、従業員エンゲージメント向上の取り組みを行っています。

従業員エンゲージメントの3指標 

従業員エンゲージメントを測定するために必要な3指標があります。

  • エンゲージメント総合指標
  • エンゲージメントレベル指標
  • エンゲージメントドライバー指標

この3指標はアンケート調査によって測定され、従業員エンゲージメントを明らかにしています。

エンゲージメント総合指標

エンゲージメント総合指標とは、従業員が企業を総合的に考えた際に、どのように評価し、感じているかを示す指標です。次の3つで測定されます。

  • eNPS(Employee Net Promoter Score)
  • 総合満足度
  • 継続勤務意向

eNPSは、従業員ロイヤルティを示す英単語で、勤め先の企業を友人や知人に勧める可能性があるかの数値です。総合満足度は現在勤めている企業に総合的にどれだけ満足しているかを、継続勤務意向はどれだけ長く働こうと考えているかを示す指標です。

エンゲージメントレベル指標

エンゲージメントレベル指標とは、仕事への熱意をどれほど持ち、業務に取り組んでいるかを示す指標です。熱意と没頭、活力の3要素に焦点を当てた調査が行われています。測定では、ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度が使用され、仕事に誇りや価値を持っているかなどの質問に対し、従業員は5段階評価で回答を行います。

  • 熱意:仕事に対するやりがいがあるか
  • 没頭:熱心に仕事に取り組むことができるか
  • 活力:仕事を楽しみ働くことができるか

エンゲージメントドライバー指標

エンゲージメントドライバー指標は、最終的に従業員エンゲージメントを増加させる要因になります。エンゲージメントドライバー指標は、組織ドライバーと職務ドライバー、個人ドライバーの3要素で構成されています。

  • 組織ドライバー:職場の人間関係や環境が影響を与える
  • 職務ドライバー:職務のルーティン度と難易度が影響を与える
  • 個人ドライバー:業務を行ううえでの、従業員の資質が影響を与える

エンゲージメントはアンケート調査で測定

従業員エンゲージメントはアンケート調査で測定されます。一般的には、月1回から半年に1回の頻度で測定が行われます。コンピューターによるアンケート調査で行われることがほとんどですが、タイピング速度から仕事への集中度を測定するなどの手段をとる企業もあります。従業員エンゲージメントの調査方法としては、次のとおりです。

  • アンケート調査
  • キーボードのタイピング速度で仕事への集中度を測定
  • 従業員の表情から仕事への集中度を測定
  • 従業員の心拍数を測定

エンゲージメントを高めるメリット 

従業員エンゲージメントを高めることで、従業員の離職率低下や売上増加などのメリットがあります。従業員は企業に対して貢献し、企業は従業員の成果に報いようと努力するため、好循環が生まれるでしょう。

離職率低下

従業員エンゲージメントが高く、従業員が長く働きたいと思う企業であれば、離職率が低下します。従業員の早期離職を防ぎ、人材の定着につながります。また、経験やノウハウを持った従業員が長く定着するため、新しい従業員に対するサポートも期待できます。その結果、新しい従業員にも働きやすい環境がうまれ、さらなる離職率低下に効果を生みます。

人材確保

エンゲージメントが向上することで、従業員が企業に対して忠誠心や愛着を持つようになります。そのため知人が転職や就職を考えている場合に、自分の勤務先を紹介しようと考えることにつながります。紹介での採用が増え、人材確保にメリットが生まれるでしょう。また、従業員エンゲージメントが高い企業と評判になると、評判を耳にした求職者が集まるメリットもあります。

売上増加

従業員が企業に愛着を持つことで、企業に対する主体的で自発的な貢献が見込めます。そのため、売上や利益の増加が期待できるでしょう。また、従業員エンゲージメントの高い従業員が長期的に勤務することで、長期間にわたる企業貢献にもつながります。

戦略実行度の上昇

エンゲージメントが高い従業員は、主体的な行動を行います。業務の成果を高めるために努力するため、戦略実行度の上昇につながるでしょう。また、戦略実行度があがると、サービスの質や成果向上が期待できます。成果が明確になれば新たな戦略も立てやすく、企業運営が行いやすくなるというメリットもあります。

エンゲージメントが低い原因 

従業員エンゲージメントが低い企業は、組織形態が従業員とミスマッチであったり、企業理念が浸透せず、共感を得られていない可能性があります。従業員エンゲージメントが低い原因を調査し、改善を行いましょう。

組織形態のミスマッチ

以前の日本では終身雇用制度が一般的であり、企業も終身雇用前提で運営を行っていました。そのため、従業員エンゲージメントへの取り組みを行わなくても、離職者が少ない傾向にありました。しかし、現代は転職や早期退職が一般的になり、終身雇用制度を掲げる企業とのミスマッチが考えられます。働き方も多様化する現代で、多様化に対応できていない企業は、従業員エンゲージメントが低くなりやすい傾向が見られます。従業員の希望を調査し、企業体制を変化させることが重要です。

企業理念が浸透していない

企業理念が浸透していないと、従業員は自分が担当する業務の目的を理解できません。そのため、理念に共感できず従業員エンゲージメントが下がる傾向にあります。たとえば、企業方針と従業員の考え方にズレが生じたり、企業風土に合わない人材を採用してしまう可能性が考えられます。従業員エンゲージメントの向上には、従業員が共感できる理念を掲げるだけでなく、従業員全員に理念を浸透させることが重要です。

エンゲージメントを高める方法 

従業員エンゲージメントを高めるためには、従業員が働きやすく、自社を好きになる取り組みが重要です。企業自身の成長にもつながるため、従業員エンゲージメントを高める施策を積極的に行いましょう。

従業員の働きやすい環境整備

従業員が働きやすい環境ができているか、今一度確認しましょう。従業員のスキルや個性を活かした、適材適所の人材配置が重要です。また、残業時間が多くないか、一部の従業員に負担が集中していないかなど、労働環境の確認と改善も行いましょう。従業員が働きやすい環境は、企業に愛着を持つために重要です。

コミュニケーションの活性化

コミュニケーションを活性化し、職場の人間関係を良好に保つことも従業員エンゲージメントに影響があります。コミュニケーションが活発で働きやすい企業は、従業員の愛着も高まります。また、部下と上司の人間関係が良い職場は、部下は上司のために、上司は部下のために頑張ろうと考える企業風土が形成されます。自分のことだけではなく同僚のためにも頑張れるような、良好なコミュニケーションが重要です。

研修や教育の実施

従業員のスキルアップや意識改革に効果的な、研修や教育を実施しましょう。スキルアップだけではなく、仕事への意欲を高めることができるためです。たとえば、部下は業務のためのスキルが身につくことで、成果をあげようと意欲的になります。一方で、指導を行う上司も自身の立場を再認識しながら、部下に成果を上げさせるために、業務への意欲を高めることができます。

従業員の価値観を調査する

従業員一人ひとりの価値観や考え方は違います。そのため、従業員の価値観を調査し、それぞれにあったエンゲージメントの高め方が重要です。たとえば、仕事を優先に考える従業員もいれば、プライベートを重視する従業員もいるでしょう。そのため、従業員エンゲージメントの向上には、従業員一人ひとりが働きやすい環境を整備することが大切です。従業員へのアンケート調査やヒアリングを行い、実施する施策のバランスを取りましょう。

まとめ

従業員や顧客との信頼を示すエンゲージメントは、企業の発展に欠かせません。そのため、多くの企業でエンゲージメントを高める取り組みが行われています。たとえば、労働環境の改善や、経営理念の共有などがその一例です。また、エンゲージメントの向上は、優秀な人材の定着や生産性の向上など、企業にもメリットをもたらします。企業と従業員が互いに信頼しあえるような関係性を持続させましょう。