このページのまとめ

  • 心理的安全性とは、組織内で自分の気持ちや考えを安心して話せる状態のこと
  • 心理的安全性が高いチームは生産性が高い
  • 心理的安全性が高い職場と、社員同士の仲が良いだけの職場は異なる

心理的安全性とは、自分の気持や考えを組織内で安心して話せる状態のことです。「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」という研究結果が発表されており、心理的安全性は従業員のパフォーマンス向上や離職率に効果があるといわれています。このコラムでは、心理的安全性が組織に与えるメリットや実際の活用例を解説します。

心理的安全性とは

心理的安全性とは、組織内で自分の気持ちや考えを誰にでも安心して話せる状態のことを指します。もともとは心理学用語で「チームのほかのメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義されています。組織内のメンバーを信頼し、良好な信頼関係を築くことが心理的安全性のポイントです。

心理的安全性が高ければ、発言内容を受け止めてもらえると感じるので、安心して質問や発言を行うことができます。また、組織内のコミュニケーションが促進され、業績向上や効率化が見込めます。心理的安全性の促進は、企業にとっても重要な要素です。

心理的安全性の低さが引き起こす行動特徴 

心理的安全性が低下すると、以下のような問題が生じる可能性があります。

無知を不安に感じる

業務で分からないことを質問するときに、「こんなことも分からないのか」と無知を責められるのを恐れる行動特徴です。非難されることを恐れ、必要な質問ができなくなります。従業員のコミュニケーションも減少し、生産性悪化の原因にもなります。

邪魔をしていないか不安になる

会議で自分の発言が的はずれだったり、本題から外れてしまった場合、邪魔をしていないかと恐れてしまう状況です。上司や同僚の邪魔になっていないか不安にかられ、発言ができなくなってしまいます。その結果、自分からの提案や意見が減少し、アイデアが出てこなかったり、改善ができなくなる影響があります。

失敗を恐れる

自分の行動が業務の邪魔をしていないか、不安になってしまう状態です。ミスを必要以上に恐れたり、ミスを隠してしまう可能性もあります。萎縮して行動できない場面も増えてしまうでしょう。

ネガティブ思考になる

心理的安全性が低いと、自分の行動や発言がすべてマイナスに思えてしまいます。ネガティブ思考になり、発言や行動を起こさない状況に陥ってしまいます。必要な発言であっても、非難していると捉えられないか、指摘が悪印象を与えないかなどを心配します。ネガティブ思考は主体性を奪い、成果が上がりにくくなってしまうリスクがあります。

心理的安全性が組織に与えるメリット

心理的安全性の上昇は、従業員だけではなく組織にもメリットがあります。従業員が働きやすい環境になり、生産性や成果が上がりやすくなるためです。心理的安全性が組織に与えるメリットを確認し、心理的安全性が上昇しやすい環境づくりを行いましょう。

パフォーマンスの向上

心理的安全性が高い環境では、従業員のパフォーマンス向上が期待できます。発言や行動が積極的に起こり、従業員の能力が発揮しやすくなるためです。たとえば、これまでとは違ったアイデアや、実現が難しいアイデアでも、ためらわずにアイデアの共有が行われます。変わったアイデアでも意見を尊重された従業員は安心し、萎縮せずに本来のパフォーマンスが発揮できるようになります。

従業員が責任感を持つ

心理的安全性が高い従業員は、行動に自信を持ち、意見を積極的に発言できます。主体的にチームに貢献でき、業務に対する責任感も向上します。また、心理的安全性が高い環境では、自分を尊重してもらえていると感じることができます。チームへの貢献や成果が実感しやすく、チームへの愛着度も向上するでしょう。チームのために努力する気持ちが芽生えやすく、責任と自覚を持った行動を期待できます。

コミュニケーションが円滑になる

発言が非難されたり、否定されることがないため、コミュニケーションが円滑になります。その結果、考えたことを正直に発言できる環境が整います。また、成功体験も失敗談も遠慮なく発言できるため、チーム内でのノウハウ共有にもつながります。従業員同士が仲良くなるだけではなく、仕事の成果が上がる要因にもなるでしょう。

離職率が減少する

心理的安全性が高い職場は、モチベーションの向上や、やりがいを感じる従業員が増加します。そのため、離職率が下がり、人材が安定して定着するメリットがあります。従業員同士が尊重し合い、発言や行動が支持される点も、離職率の改善につながります。また、積極的なコミュニケーションも期待できるため、新入社員の指導がスムーズになり、ー離職率が減少する効果もあります。

ビジョンが明確になる

従業員が自由に発言できるため、ビジョンが明確になるメリットがあります。組織の目標や課題に対して、建設的な議論が行えるからです。たとえば、経営方針のような難しい話題でも発言を控えることなく、自分の意見を伝えることができます。きちんと話し合うことで、全員が納得して同じ目標に向かえるため、ビジョンが明確になります。

心理的安全性を向上させる方法 

心理的安全性は、従業員の行動や、企業の支援で向上させることができます。従業員の働きやすさ、企業の成果アップのためにも、企業全体で心理的安全性の向上に取り組みましょう。

従業員の交流会を行う

従業員が安心して発言出来る環境を作るため、交流会を行いましょう。話しやすい環境、雰囲気を作ることが大切です。上司と部下、チームごとなど、普段から関わりのあるメンバー同士で交流会を行いましょう。

ポジティブ思考を保つ

ポジティブ思考を維持できれば、心理的安全性の向上につながります。「自分を否定された」と考えずに行動できるためです。ネガティブ思考になってしまうと、行動や発言の萎縮につながります。積極的に行動できるように、ポジティブ思考を心掛けましょう。

協力できる職場環境を作る

従業員が協力できる職場環境であれば、自然に心理的安全性が向上します。従業員が企業に対する安心感を持つためです。たとえば、普段から業務を手伝ったり、アドバイスが飛び交う環境であれば、従業員は安心して勤務できます。従業員同士が尊重し合う、協力できる職場環境を目指しましょう。

評価方法を改善する

成果主義の場合、心理的安全性を低下させる可能性に気をつけましょう。ミスを恐れたり、同僚の成果が気になったりしてしまうためです。周りの評価を気にしすぎると、安心感が低下し、他者からの印象だけを意識した行動になってしまいます。チーム単位で評価するなど、評価方法も気をつけましょう。

発言の機会を平等にする

一部の従業員だけに発言が偏らないように、発言の機会を平等にしましょう。発言の機会がない状態が続くと、発言を萎縮する恐れがあるためです。たとえば、上司だけが発言する環境は、部下の萎縮を招きます。一部の従業員の発言や意見に偏らないように、全員が発言できる仕組みを整えましょう。

心理的安全性を向上させるマネジメント手法 

心理的安全性はマネジメントを用いて、向上させることも可能です。従業員の力だけに頼るのではなく、組織としてマネジメントを行いましょう。心理的安全性の向上には、ミーティングや評価体制を見直すことが効果的です。

1on1ミーティング

上司と部下が一対一で会話を行う、1on1ミーティングが効果的です。面談とは違い、業務の不安や課題、キャリアなどに関して話します。また、プライベートのことなど、仕事以外の内容を話すことで、コミュニケーションをとるのも良いでしょう。

ピアボーナス評価の導入

ピアボーナス評価は、従業員同士が日頃の業務を認め合い、ボーナスを送り合う制度です。具体的には、社内ツールを通して感謝のメッセージやポイントを送り合い、一定のポイントが貯まると手当として支給される仕組みです。従業員同士がお互いに評価し合うので、心理的安全性を高めることにつながるでしょう。

OKR制度の導入

OKR制度は成果だけではなく、目標達成の過程も評価する制度です。個人のノルマとは別の考え方であり、高い目標を持って業務に取り組むことができます。企業全体で目標に対して行動でき、ノルマのように精神的な負担もないため、チーム全体で前向きに協力できます。また、1~3ヶ月の頻度でOKR目標に対する面談を行うので、上司と部下がコミュニケーションを取れるメリットもあります。

雑談を増やす

心理的安全性を高めるためには、普段から雑談を行うのも有効です。ある企業の調査で、良いパフォーマンスを残すチームは雑談が多いという結果が出ています。一方で、仕事の話ばかりしているチームは、成果が奮わない結果となりました。仕事の話ばかりではなく、プライベートを含めた雑談が仕事でのコミュニケーションを円滑にし、心理的安全性に良い影響を与えます。

心理的安全性を高める際の注意点 

チーム内の人間関係が良いだけでは、心理的安全性が高い職場とはいえません。成果が上がっているかどうかも重要だからです。たとえば、人間関係が良くても、仕事に対する意識が低ければ成果は上がりません。人間関係が良いだけの職場とは、別物だと考えましょう。

まとめ

心理的安全性は従業員を働きやすくするだけではなく、企業の労働状況改善などのメリットもあります。従業員の行動や、マネジメントで改善できるため、企業側も積極的に行動に移しましょう。その際、人間関係は良いが、成果が上がっていない状況にならないように注意が必要です。従業員が積極的に発言し、行動できる環境を整えましょう。