このページのまとめ

  • コーポレートガバナンスとは社外人材を用いて社内不正を防ぐ仕組みのこと
  • コーポレートガバナンスは社内外の信頼獲得に重要
  • コーポレートガバナンスが機能しないと損害賠償を伴う不祥事が起きる可能性がある

企業の不祥事を防ぎ、社内外の信頼を獲得するために、コーポレートガバナンスの強化が重要です。コーポレートガバナンスが機能せず、社内で不祥事が起きてしまうと、多大な損害賠償を請求されるケースもあるためです。コーポレートガバナンスはとりわけ上場企業にとって必須ともいえる取り組みであり、中小企業も導入を進めています。自社の従業員はもちろん、外部の関係者を守るためにも、コーポレートガバナンスの導入について検討してみましょう。

コーポレートガバナンスとは 

コーポレートガバナンスとは、企業の不正を防ぐために、社外監査役や社外取締役などの社外管理者を用いて経営監視を行う仕組みのことです。株主やステークホルダーとの信頼関係を保ち続けるためにも、企業の健全な取引は重要です。企業の不祥事防止と長期的な企業価値の上昇を目的として制定されました。

コーポレートガバナンスと内部統制との違い

内部統制とは、法令を遵守するための社内向けの仕組みです。そのため、企業の不祥事防止と株主の権利を守る仕組みのコーポレートガバナンスとは異なります。また、内部統制は社内ルールで、従業員に遵守させるための仕組みです。たとえば、経費精算フローや、企業情報の外部持ち出し禁止なども内部統制に含まれます。現在では、金融商品取引法と会社法の制定により、上場企業は内部統制の整備が義務化となっている点もコーポレートガバナンスとの違いです。

コーポレートガバナンスとコンプライアンスとの違い

コンプライアンスとは、企業が法律や企業倫理、社会倫理を守ることです。法令遵守とも訳されます。そのため、コーポレートガバナンス(企業を統制する仕組み)は、コンプライアンス(法令遵守)を強化するための仕組みです。たとえば、企業が不祥事を起こせば、コンプライアンス違反になり、コーポレートガバナンスが不足していると示します。このように、コーポレートガバナンスは企業を統制する仕組み、コンプライアンスは法令遵守の意味を持つ違いがあります。

コーポレートガバナンス・コードとは 

コーポレートガバナンス・コードとは、コーポレートガバナンス体制を整える際に守るべき原則と指針です。金融庁と東京証券取引所が策定し、2015年3月に公表されました。コーポレートガバナンス・コードの基本原則は、以下の5箇条です。

  • 株主の権利と平等性の確保
  • 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  • 適切な情報開示と透明性の確保
  • 取締役会の責務
  • 株主との対話

上場企業はコーポレートガバナンス・コードの報告書提出が義務化されています。

上記の基本原則が守られていない場合には、その理由を報告することが義務づけられています。

引用元:東京証券取引所「コーポレートガバナンスコード」

コーポレートガバナンス導入のメリット 

コーポレートガバナンスの導入には、次のようなメリットがあります。

不祥事の防止

社外監査役や社外取締役の設置は、企業の不祥事防止につながります。一部の経営陣の暴走を防ぎ、不正を発見できるためです。バブル崩壊後の日本では、コーポレートガバナンスが制定されておらず、企業の不祥事が多発しました。不祥事は消費者やステークホルダーの信頼を失い、企業価値を下げてしまいます。コーポレートガバナンスの設置は、不祥事を防止し、健全な企業経営を行うためにも大切です。

健全な経営の実現

コーポレートガバナンスは、経営の透明性を担保し、株主やステークホルダーの権利を守ることにも役立ちます。そのため、コーポレートガバナンスを掲げることは、企業本位ではなく、社会貢献を果たす企業と示すことができるでしょう。また、企業理念から外れることなく企業価値を高めることができます。

企業価値の向上

コーポレートガバナンスはステークホルダーの権利や株主の利益を守ります。そのため、ステークホルダーなどからの信頼が高まり、企業価値の向上につながります。企業価値の向上は社会的な信頼を得るだけではなく、金融機関からの融資が受けやすくなったり、企業の成長につながります。そのため、コーポレートガバナンスの制定は、長期的な経営戦略を立てやすいメリットも生まれます。

コーポレートガバナンスの強化方法 

コーポレートガバナンスの強化は、社会的信頼の獲得や、不正防止に重要です。社内だけで取り組むのではなく、社外の人材や制度の活用も必要になります。コーポレートガバナンスの強化方法には、次のようなものがあります。

取締役会にCEOを参加させない

取締役会にCEOを参加させないことで、経営の透明性を図ることができます。CEOは経営の意思決定を持つ存在であり、CEOのみで判断する状況を防ぐ意図があります。たとえば、取締役会を開いてもCEOの権限が強い場合には、周囲の意見を無視してCEOの意見が通る可能性が危惧されます。客観的で、正当な意思決定を行うために、取締役会にCEOを参加させないことも選択肢の一つです。

判断基準を明確にする

企業の判断基準を明確にし、従業員の意識改革を行いましょう。具体的な方法としては、倫理憲章や行動規範の作成と周知があります。コーポレートガバナンスの強化には、従業員に方向性を示したり、意識改革を行うことも重要です。企業として正しい行動をとるために、判断基準を明確にし、徹底した周知を行いましょう。

執行役員制度を使う

執行役員は取締役とは別であり、業務執行の権限や責任を持ちます。執行役員制度の導入は、経営の意思決定を分離させ、管理体制の強化につながります。日本では、企業の内部監査がうまくできていない企業も多く、執行役員制度を導入する企業が増加しています。

社外取締役や監査役の設置

経営陣の不正を防ぐために、社外取締役や監査役を設置しましょう。第三者の立場から、組織を監視する体制が必要です。また、監査役などを設置する場合には、社外の人物を対象とします。そのため、監査役はステークホルダーの代弁者としても重要な役割を果たしています。

内部統制を強化する

企業内で違反や不祥事がないように、内部統制を強化しましょう。社内の不正を未然に防ぐことは、コーポレートガバナンスの土台作りにもつながります。また、内部統制とコーポレートガバナンスは、透明性の担保や財務状況の報告など、不正を防ぐための連動が可能です。内部統制を強化し、コーポレートガバナンスの効果を高めましょう。

まとめ

企業の不祥事を防ぎ、社内外の信用を獲得するために、コーポレートガバナンスの強化が重要です。コーポレートガバナンスが機能しなければ、損失隠しや財務状況の改ざんなど、社会的な問題を引き起こす可能性があるためです。コーポレートガバナンスを強化するためには、社外人材を登用したり、内部統制の強化が重要です。自社内で完結させるのではなく、社外の人材も取り込みながら、コーポレートガバナンスの強化に取り組みましょう。