このページのまとめ

  • リカレント教育とは社会に出たあとに再度教育を受け学び直すこと
  • リカレント教育は従業員のスキルアップが期待できる
  • リカレント教育には助成金が利用できる

リカレント教育とは、社会人が再び教育を受けることを指します。従来は一つの企業に定年まで勤める終身雇用が一般的でしたが、人生100年時代の到来や終身雇用制度の崩壊によって、スキルアップを考える労働者が増加しています。リカレント教育の推進は、企業も新しいノウハウを取り入れるチャンスになるため、導入を検討してみましょう。

リカレント教育とは 

リカレント教育とは、文部科学省によると「学校教育からいったん離れて社会に出たあとも、一人ひとりが必要なタイミングで再び教育を受け、仕事と教育を繰り返すこと」です。社会人の学び直しとも呼ばれ、自分の業務に関わる分野を学び直す人も増えています。日本では、仕事をしながら学び直すスタイルもリカレント教育と呼ばれています。

リカレント教育で学べるもの

リカレント教育で学べる内容は幅広く、主には自分の仕事に関連した内容や専門知識を学びます。
たとえば、海外勤務のための英語や中国語、ビジネスのための経営学、法律などが一般的です。そのほかにも、社会保険労務士やMBAなどのような資格取得、介護や福祉のように社会的に需要の高い内容もリカレント教育で学ぶことができます。

リカレント教育の需要が高まる背景 

現代では、社会変化の影響もあり、リカレント教育の需要が高まっています。終身雇用の崩壊や、平均寿命の延伸により、退職後も仕事をする人材が増加したためです。今後も、複数の企業で勤務を行うことが一般的になることで、新しいスキルを学べるリカレント教育の需要が高まるでしょう。

人生100年時代の到来

日本では平均寿命の延伸に伴い、人生100年時代と呼ばれるようになりました。従来は、定年退職前までの人材を労働人口として扱っていましたが、現代は若者から高齢者まで働くことが一般的になっています。そのため、定年退職後の再雇用や仕事復帰、キャリアアップを目指すため、リカレント教育の需要が高まっています。現在勤務している業務のスキルを高めるだけではなく、新たなチャレンジの支援としてリカレント教育が求められています。

雇用の流動性の一般化

新卒から定年まで勤務し続ける終身雇用が一般的ではなくなり、雇用の流動化が進んでいます。雇用の流動化が進んだことにより、1社での勤続年数が短くなる状況になりました。そのため、社内教育だけでは十分なスキルを習得できないという問題があります。この問題を解決するのがリカレント教育です。自身のキャリアや目標に応じて学び直すことができるため、注目を集めています。

技術や市場の急激な変化

技術の急速な進歩により、従来の業務への取り組み方では通用しなくなってしまう人材が増加しています。また、市場の変化についていけない人材も多く、新たな教育が求められています。このような技術や市場の急速な変化に対応するための知識として、リカレント教育の需要が高まりました。リカレント教育では働きながら学ぶことができるため、人材を雇用しながら成長させたい企業と、勤務しながら学びたい従業員の双方にメリットがあります。

リカレント教育のメリット 

リカレント教育は従業員のスキル向上だけではなく、企業の生産性向上にもつながります。スキルアップした従業員がノウハウを企業に還元できるためです。リカレント教育のメリットを確認し、企業として支援できる体制を整えましょう。

生産性や業績の向上

従業員が新しい知識やスキルを身につけることで、生産性の向上が期待できます。これまでにない新しい発想で業務に臨むことができるためです。また、学んだ従業員が自身のスキルを企業に還元することで、企業全体の発展が期待できます。リカレント教育で学ぶことは、従業員個人だけではなく、企業として業績の向上にもつながります。

従業員のスキル向上

社会人になると、業務以外のスキルを学んだり、新しく勉強する機会はあまりありません。
しかし、リカレント教育を企業として支援すれば、社外で業務外のノウハウやスキルを学んだ従業員を産み出すことができます。特に、現代は技術革新により新たな知識やスキルの獲得が重要です。社内にはない業務外のスキルを習得した従業員が増えることは、企業にとってもメリットをもたらします。

従業員の年収アップ

リカレント教育によって高度なスキルや専門知識を学ぶため、年収アップの効果が期待できます。経済産業省によると、自己啓発を行った従業員と行わなかった従業員では、2年後で約10万円、3年後では約16万円の年収差があったと報告されています。

引用元:経済産業省「第2章 人生100年時代の人材と働き方

リカレント教育で利用できる助成金 

リカレント教育の需要が高まったこともあり、政府も助成金の支援を行っています。リカレント教育の支援を行うのであれば、以下のような助成金を活用したほうが有益です。

教育訓練給付金

教育訓練給付金では、社会人の能力開発や雇用の安定、キャリア形成の促進を目的とした助成金です。対象となる教育訓練の受講後、申請を行うことで費用の一部が支給される仕組みです。また、教育訓練給付金には、「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」の2種類があります。一般教育訓練給付金では、雇用の安定や再就職の支援が主な目的です。一方で、専門実践教育訓練給付金では中長期的なキャリア形成の促進が目的とされているため、従業員の状況に応じて教育を支援しましょう。

参照元:厚生労働省「教育訓練制度

人材開発支援助成金

リカレント教育を推進する場合、従業員に対して休暇制度を設ける企業もあります。リカレント教育での休暇制度を検討する企業が活用できる助成金に、人材開発支援助成金があります。人材開発支援助成金では、教育訓練休暇制度を新設し、従業員が利用して教育を受けた場合、助成金を受けとることができます。この場合、従業員の休暇期間によって助成金額が変わり、「教育訓練制度」では30万円の導入助成金を、「長期教育訓練休暇制度」では20万円の導入助成金を受給できます。

なお、これらの助成金に関する制度は2022年2月7日時点のものです。最新の詳細な制度内容については、各公式サイトをご参照ください。

参照元:厚生労働省「人材開発支援助成金(特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース)

就職・転職支援の大学リカレント教育推進事業

文部科学省では、デジタルや医療、介護などの分野を対象に、就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業を行っています。全国の大学や企業団体、ハローワークと連携し、2ヶ月〜6ヶ月の範囲で就職や転職につながるプログラムの受講が可能です。

文部科学省「就職・転職支援のための大学リカレント教育推進事業

まとめ

急激に変化する時代や技術に抵抗するため、従業員の教育、スキルアップが求められています。このような流れに適するのがリカレント教育で、従業員の学びをサポートする企業が増えてきました。また、国もリカレント教育支援を行っており、助成金を活用できる教育制度の取り組みも進んでいます。従業員のスキルアップが、企業も業績向上や新たなノウハウの獲得など、メリットがあります。リカレント教育への支援体制を整え、積極的に学びのサポートを行うと良いでしょう。