このページのまとめ

  • ピープルアナリティクスとは、意思決定に客観的データを活用すること
  • 活用するデータは、「人材」「デジタル」「オフィス」「行動」の4つ
  • ピープルアナリティクスはさまざまな場面で活用できる

社内の意思決定や人事決定の場面でピープルアナリティクスを重視する企業が増えています。ピープルアナリティクスとは、人事に関連する情報を集めて分析し、採用や教育活動に活かすこと。なぜ重視する企業が増えているのか、どのような活動に採用されているのか、導入リスクはあるのかなど、ピープルアナリティクスについて具体例を交えて解説します。

ピープルアナリティクスとは

ピープルアナリティクスとは、人事に関連する情報や数字を収集・分析して得た客観的なデータをもとに、採用活動や教育などの人事業務の意思決定に活用することです。近年では大企業を中心に、データを活用した人事決定を行うことで、業務の効率化や生産性を高めようとする企業が増えています。

ピープルアナリティクスが重要な理由

これまでの人事業務は、人事担当者の経験や勘に基づいて、人事に関わるさまざまな意思決定がおこなわれてきました。たとえば、採用面接の際に面接官がフィーリングで候補者を評価する場面はイメージしやすいと思います。

たしかに、担当者の長年の経験や直感に頼ることでよい結果になる場合もあります。しかし、担当者の勘だけで判断していると、離職率が高まるなどミスマッチが起きる可能性も。また、社内評価の場面で、担当者の勘や経験で評価されていては、評価される側の従業員からの理解や納得も得づらいでしょう。

しかし、ピープルアナリティクスを活用すれば、データを使って分析した結果に基づいて意思決定をするため、担当者の主観に頼らない客観的な評価が可能です。評価される側の従業員も人事決定に対して納得しやすくなるなど、ピープルアナリティクスは大切な役割を担っています。

活用するデータの種類

ピープルアナリティクスで使用するデータは「人材」「デジタル」「オフィス」「行動」の4つです。それぞれのデータを見ていきましょう。

人材データ

人材データとは、年齢・性別・所属部署・順位・給与などの個人情報で、ピープルアナリティクスのなかでもっとも基本になるデータです。組織が抱える解決したい問題によっては、個人情報だけでなく、勤怠状況・評価歴・保有スキル・特性などが分析の対象となることもあります。

デジタルデータ

デジタルデータとは、社用パソコンの利用状況やインターネットの閲覧履歴、メールの送受信履歴、電話の通話履歴などのデータです。たとえば、従業員が頻繁に電話やメールでやり取りをしている相手とのパフォーマンスの相関関係を測るために、デジタルデータが収集されることがあります。

オフィスデータ

オフィスデータとは、会社の設備の利用状況に関するデータです。会社の設備がいつ・どのように・誰に活用されているかを分析することで、従業員がどう動いているかやどのタイミングでコミュニケーションを取っているかなどを把握できます。

行動データ

行動データとは、従業員が勤務中にどのような行動をしていたかがわかるデータです。たとえば、オフィスの自分のデスクにいる時間や会議室に滞在する時間がわかります。他にも、社用携帯の位置情報を使えば外出時間や出張先も把握できます。

ピープルアナリティクスの活用方法

データを収集したあとは、データを分析することによって、人事業務に活用できます。

具体的にどのような場面でピープルアナリティクスを活用出来るのか見ていきましょう。

採用活動

採用活動の際に、候補者の合否判定の指標としてピープルアナリティクスを活用できます。

従業員の過去の書類選考のデータを分析し、自社で活躍出来る可能性が高い人に共通するポイントを導き出して、採用活動で活用する企業も少なくありません。その人が活躍しやすい職種や業務を見つけられれば、新入社員の配属が円滑に進み、早期離職の防止にもつながります。

人材育成

個人の特性やスキルをデータとして分析することによって、効率的に人材の育成ができます。仕事の得意、不得意や、本人が歩みたいキャリアパスなどの定性的なデータは、チームリーダー・メンバーは知っていても、共有されていないことも多いです。また、定期的に従業員へのヒアリングをしたり、過去の実績をデータとして可視化することによって、個人に合わせた人材育成プログラムを構築できます。

従業員の離職防止

従業員満足度などのデータをもとに、離職する従業員に共通するポイントを抽出すれば、離職防止のための対策を打つことができます。たとえば、収集した従業員に関するデータから離職する可能性が高いと気づくことができれば、離職される前にフォロー面談をするなどの対策ができます。

人事制度設計

従業員の人事評価にもピープルアナリティクスは活用できます。これまでの人事評価は、担当者の主観的な評価に依存する傾向にありました。公正で平等な評価をするために、客観的なデータを活用して人事評価するのは効果的です。一方で、人事評価にAIを導入したことで、トラブルになった事例もあります。そのため、AIを活用するにせよ、最終的な意思決定は人がしなければならないことには注意が必要です。

ピープルアナリティクスのデータ分析手法

ピープルアナリティクスをおこなうためには、データの分析手法を理解しておく必要があります。

データ分析の手法を順を追って見ていきましょう。

課題の特定

まずは、人事担当者や管理職社員が社内でどのような部分に課題を感じているのかを洗い出します。

従業員へのヒアリングを通じて浮上していた課題も含めるとよいでしょう。

仮説の設定

抱えている課題に対して、どのような原因や傾向があるか仮説を立てます。仮説がなければ、データを適切に収集できないため、仮説の設定は丁寧におこなう必要があります。

データ収集

設定した仮説を検証するために必要なデータを収集しましょう。すでに収集したデータがあればひとつの場所に集め、新たにデータを集める場合はその内容に合わせて適切なデータを集めます。

考察、解決策の検討

収集したデータと抱えている課題を照合し、考察します。

考察の結果から見つけ出された解決策を、実行していきましょう。

ピープルアナリティクス導入時の課題

ピープルアナリティクスを導入するメリットは大きいですが、課題もついてまわります。

どのような課題があるか、具体的に見ていきましょう。

従業員のプライバシー保護

ピープルアナリティクスの導入にあたっては個人情報も収集するため、従業員はプライバシーに対する不安を感じることもあります。不安や疑心を解くためにも、収集するデータの利用目的や内容・公開範囲などを従業員に説明し理解してもらうことが重要です。文書などのはっきりとした形で、合意を得られると安心です。

データの整理や客観性

収集されたデータが決まった場所にまとめられているか、データに客観性があるかどうかはピープルアナリティクスのなかで非常に大切なポイントです。データが部署や業務ごとにバラバラに管理されていると、分析する際にデータを探すだけで手間がかかってしまいます。また、これまでの人事評価のように人が処理するデータは、主観的なデータになっている可能性があるため、データに客観性があるかにも注意が必要です。

担当者の分析能力

収集したデータを分析し課題を解決するためには、担当者の分析能力が大切です。データを分析するだけでなく、課題を解決するためにどのようなデータを集めるかを計画する力も大切です。最初の段階では、自社の状況を良く知る担当者が収集・分析しても問題ありません。しかし、組織が抱える課題の難易度が上がり高い分析スキルが必要となった場合は、データサイエンティストとしてのスキルを養成したり、スキルのある人材を社外から雇用するなどもひとつの手でしょう。

まとめ

客観的なデータに基づく意思決定を行ううえで、ピープルアナリティクスの重要性は増しています。社内の生産性を高めることができ、客観的なデータを用いることで、従業員に人事評価に対する納得感を得やすいためです。データを活用することで、自社にあった課題への解決策や人事決定が可能になります。従業員の理解を得ながら、ピープルアナリティクスに取り組みましょう。