このページのまとめ

  • 採用基準とは、面接や選考において求職者を選ぶ尺度のこと
  • 採用基準を明確化することにより、自社に合った人材を獲得できる
  • 採用基準を決める際には、評価項目を細分化したり現場の意見を取り入れたりすると良い
  • ミスマッチがあったり通過率が極端に低かったりする場合は、採用基準を見直そう

「採用基準はどう決定すれば良いの?」とお悩みの人事担当者も多いのではないでしょうか?
採用基準とは、採用活動において自社にマッチングした人材を獲得するために必要となる指標のことです。会社で活躍してくれる人材を採るには、採用基準をしっかり定めておくことが大切です。

本コラムでは、採用基準の決め方の手順やポイント、項目例などを紹介。また、採用基準を設定する目的や見直しのタイミングについても解説します。

採用基準とは 

採用基準とは、面接や選考において求職者を選ぶための基準のことです。明確な採用基準があることで、面接官は採用活動が行いやすくなります。優秀な人材を獲得し、採用をスムーズにするためにも、採用基準の設定が大切です。

採用基準を設ける3つの目的

採用基準を設定する目的は、主に以下の3つです。

1.選考を公平に行うため

採用基準は、選考を公平に行うために設定されています。
採用基準が定められていなかった場合、担当した面接官の主観による合否判断がなされてしまう恐れが高まります。あらかじめ採用基準を会社で決めておけば、その判断基準に沿った公平な選考を実施することが可能です。

2.ミスマッチを防ぐため

採用基準の設定は、ミスマッチを防ぐことにもつながります。
採用基準があることで、業務内容に適した人材を採用したり、企業風土に合う人材を採用したりすることが可能です。もし、採用基準がなければ、業務内容や条件が合わず、早期退職になる可能性もあります。ミスマッチを防ぐために、採用基準をしっかり設定しておくことが重要です。

3.現場と経営層で希望する人材を統一するため

現場と経営層の認識を統一するためにも、採用基準を作りましょう。
現場と経営層が採用基準についてすり合わせを行っていない場合、求める人物像にずれが生じる恐れがあります。現場と経営層が意思疎通を行い、採用基準を設けてください。

採用基準に設定したい7つの項目 

ここでは、採用基準に設定したい項目を7つ紹介します。応募者の能力をさまざまな角度からチェックしましょう。
採用基準をこれから作る場合や、迷った場合にぜひ参考にしてください。

1.コミュニケーション力

コミュニケーション力は、どのような業務においても必要な能力です。他部署との連携や、取引先との連絡にも、コミュニケーション力が求められます。
「相手の話を聞いているか」「話の内容が理解できているか」「自分の言いたいことが伝えられているか」などの観点から、コミュニケーション力を確認しましょう。

2.主体性

意欲的に行動する、主体性も必要です。主体性を持つ人物であれば、変化の激しい社会に打ちのめされることなく、臨機応変に対応できます。
自分で考え、行動し、成長ができる主体性がある人物かどうかをチェックしましょう。

3.社風やビジョンへの共感

社風やビジョンに共感しているかどうかも、採用基準では重要です。
社風・ビジョンを理解し、共感したうえで入社した人はミスマッチが起こりにくい傾向があります。早期退職を防ぐことが可能です。

4.チャレンジ精神

チャレンジ精神を採用基準の1つに設定しましょう。
業務を成功させるためには、難しい内容でも失敗を恐れずに、みんなを引っ張る人材の存在が重要です。チャレンジ精神を持つ人材の働きは、企業に欠かせません。

5.協調性

協調性の高さも、採用基準に設定したい項目の1つです。
業務をスムーズに行うためには、協調性が大切です。周囲の従業員と協力ができる人材かどうかを見極めましょう。協調性を持つ人材であれば、仕事を任せやすくなります。プロジェクトを成功させるためにも、協調性を持つ人材の採用が重要です。

6.誠実さ

誠実さを採用基準に取り入れ、選考でチェックしましょう。
誠実さを持つ従業員であれば、真面目に業務に取り組んでくれます。虚偽報告をするなどといったトラブルを引き起こすこともないでしょう。
近年では、コンプライアンス違反が大きな問題に発展した出来事も増えています。採用の時点でコンプライアンスを遵守してくれる人物かどうかを見極めてください。

7.ストレス耐性

業務を行うためには、ストレス耐性の高さも重要です。ストレス耐性が高ければ、パフォーマンスに悪影響が及ぶ可能性が減ります。また、ストレス耐性の高い人物は、緊張する場面でもパフォーマンスを遺憾なく発揮することが可能です。さらに、ストレス耐性が高い人物は早期退職のリスクが比較的低いでしょう。
ストレス耐性の高さを採用基準の1つに設定し、選考で確認してください。

採用基準の3つの決め方 

ここでは、採用基準の決め方を3つ紹介します。

1.必要な人物像を明確にする

採用基準を決める際には、必要な人物像を明確にしましょう。
自社にどのような人材が必要かを考えることが大切です。たとえば、営業で売上を出したいのであれば、コミュニケーション力や行動力を重視します。また、リーダー候補が必要な企業もあるでしょう。必要な人物像によって採用基準で重視するポイントが変わるので、先に明確にしておくことがおすすめです。

2.評価する項目を決める

必要な人物像が決まれば、評価する項目を決めます。必要な人物像を満たす項目や、会社に合うかどうかなどから決定しましょう。
たとえば、即戦力を求める場合には、スキルや経験が優先して評価されます。一方で、ポテンシャルで採用する場合は、主体性やコミュニケーション力を優先しても良いでしょう。

3.具体的な評価基準を決める

最後に、具体的な評価基準を決めましょう。具体的な評価基準ができれば、面接官ごとの評価のズレを減らすことができます。
また、評価基準を決める場合にはレベル別に分けると評価しやすくなります。面接官ごとのズレが減らせるように、数値化することがおすすめです。

採用基準を決める際の4つのポイント 

ここでは、採用基準を決める際のポイントを解説します。4つのポイントを参考に、採用基準を検討してみてください。

1.評価する項目を明確にする

評価する項目は、分かりやすく、明確にしましょう。面接官の負担を減らしたり、評価のズレを減らしたりすることにつながります。
たとえばコミュニケーション力の採用基準を決めるのであれば、「コミュニケーション力がある」という大まかな内容ではなく、「相手の目を見て話ができる」「質問の意図を理解できている」などのように細分化して明確にすれば、面接官が評価をしやすくなります。

2.現場の意見を聞く

採用基準を決める際は、現場の意見を確認しましょう。
採用担当が認識している求職者のターゲット層と現場の求める人材がズレていた場合、ミスマッチが生じてしまいます。採用した応募者が実際に配置されるのは現場です。現場の従業員の意見を聞き、現場が働く人に求める能力や現場の雰囲気を知りましょう。意見のなかで採用基準に取り入れるべき内容があれば、組み入れてください。

3.経営方針に沿うようにする

採用基準は、経営方針に沿うように決めることも大切です。企業が考える方針やビジョンに合う人材を獲得できれば、今後の活躍が見込めるでしょう。今必要な人材だけではなく、未来を見据えた採用も行いましょう。

4.差別に該当しないようにする

採用基準を決める際は、差別に該当しないように注意しましょう。公正な選考を行う必要があります。
厚生労働省によると、次のような内容が就職差別につながるとしています。

  • 本籍や出生地に関すること
  • 家族に関すること
  • 生活環境や家庭環境に関すること
  • 思想信条にかかわること

採用面接の場面では、求職者に質問を行うこともあります。就職差別に該当する質問は避けてください。

参照元:厚生労働省「公正な採用選考の基本

採用基準の見直しが必要な3つのケース 

採用基準の見直しが必要なケースもあります。面接で成果が出ていなかったり、思うような人物が採用できていなかったりする場合は、採用基準の見直しをしてみましょう。

1.面接官次第で評価が変わってしまう

面接官次第で評価が変わってしまう場合は、採用基準を見直してみましょう。基準が曖昧で、面接官頼りになっている可能性があります。
たとえば、「主体性を持つ人物」とだけ採用基準を設けたとします。この場合、「積極的に話すこと」を主体性と感じる面接官もいれば、「過去の行動から主体性を探す」面接官もいるでしょう。面接官の判断に任せてしまうと、評価が変わりやすくなります。「主体性は自分から積極的に話す人物を評価する」のように明確にすると、評価のズレを抑えられるでしょう。

2.現場が希望する人材を採用できていない

現場が希望する人材を採用できているか確認しましょう。現場との意思疎通ができていない場合、ミスマッチにつながります。採用担当だけで判断せず、現場の意見も参考にしてください。

3.選考を通過する人数が少ない

選考を通過する人数が少ない場合、採用基準が厳し過ぎる可能性があります。選考を通過する人数が少ないと、なかなか採用ができません。本当は活躍できる人材を、選考で落としている恐れもあります。採用基準のレベル感が適切かどうか、見直してみましょう。

選考過程別!採用基準を用いて人材を見極める方法 

ここでは、人材を見極める方法を選考過程別で解説します。

書類選考の場合

書類選考の人数が多い場合、ある程度絞り込むことも大切です。書類だけで判断しやすい採用基準を設けて、選考を行うと良いでしょう。
たとえば、「資格」「スキル」「経験」は、書類でもある程度判断が可能です。そのほか、経験者を募集する場合、「実務経験が1年以上のみを採用する」などと決めておくと、選考が行いやすくなります。

適性試験の場合

適性試験を用いて、人材を見極める方法もあります。
適性試験の場合、客観的な情報を取得できることもメリットの1つです。特に、性格や行動の傾向などの基準は、人間が見極める際に主観的になりやすい項目です。適性試験を取り入れて評価を行えば、公正な採用ができるでしょう。

面接の場合

面接では、書類では判断できない項目を採用基準に定めましょう。たとえば、人柄やコミュニケーション力は、書類よりも面接のほうが判断しやすい項目です。
また、面接を行うときは、質問項目をあらかじめ決めておいてください。一定数共通の質問を用意しておけば比較しやすくなり、採用をスムーズに進められます。

まとめ

優秀な人材を獲得するためには、採用基準の設定が大切です。明確で分かりやすい採用基準が設定できれば、自社にあった人材を獲得できるでしょう。また、採用基準を決める場合は、経営陣のほか、現場の意見も確認してください。採用担当と企業が求める人材のズレを減らすことができます。適切な採用基準を定めて、採用活動を行いましょう。