このページのまとめ

  • 組織開発とは、従業員の関係性に働きかけて組織パフォーマンスを高める手法
  • 組織開発により、従業員同士のコミュニケーション増加が期待できる
  • 組織開発を行う際には、現状の課題を明確にし、課題解決の施策を実施する

ダイバーシティの推進が進む現代では、組織のパフォーマンス向上が期待できる組織開発に注目が集まっています。新しい考え方や社会の変化に対応するためには、組織力の向上が求められるためです。組織開発の実施を考えていたり、どのように行うか悩んでいる担当者も多いことでしょう。今回は、組織開発の概要や、実施手順、成功企業の事例を解説します。より強い組織を作るためにも、参考にしてください。

組織開発とは 

組織開発とは、組織に所属する人々の関係性を向上させ、組織が発揮できるパフォーマンスを向上させることです。個人に注目する人材開発とは異なり、組織に焦点を当てています。また、組織開発を行うことで、継続的に成長できる組織の作成も目指します。

組織開発が浸透し始めている背景には、企業文化の変化があります。従来の日本企業は終身雇用が多く、従業員は企業で長く働くことが一般的でした。しかし、現代では転職が一般化しており、ダイバーシティなどの多様性、働き方改革など、さまざまな変化が発生しています。このような状況で人材を確保し、長く働いてもらうためには、従業員の帰属意識や愛社精神を高めることが重要です。そこで注目されているのが組織開発であり、組織内での関係性を向上させることで、自社で末永く活躍してもらいたい企業の考えがあります。

組織開発の目的

組織開発の主な目的は、コミュニケーションの促進です。業務を行うにあたって、コミュニケーションが欠かせないためです。また、コミュニケーションが多く、良好な関係性を築いている企業は、従業員のモチベーションアップにも良い影響を与えるでしょう。従業員同士のコミュニケーションを促進するために、組織開発が実施されています。

人材開発との違い

人材開発との違いは、人と人の関係性に働きかけるか、人に働きかけるかです。人材開発では人に注目し、個人の能力やスキルアップを目的とします。一方で、組織開発は人と人の関係に注目し、関係性の改善によってパフォーマンス上昇を目指します。もし、人材開発が成功しても、従業員同士が協力しなければ成果は発揮できません。一方で、関係性が良くても、スキル不足では業績はあがらないでしょう。このように、人材開発は人そのものに、組織開発では、関係性に働きかけます。両方を向上させることで、成果を出すことにつなげられるでしょう。

組織開発で利用されるフレームワーク 

組織開発を行う際には、フレームワークを利用します。効果的に組織開発を行うためにも、活用してみましょう。

OKR

OKRとは、目標と成果の両方を管理する方法です。企業の目標とチームの目標、個人の目標の3つをつなげることで、従業員全員が同じ目標を持って業務を行うことを目的とします。OKRの設定により、目的意識が統一されるため、組織開発が行いやすくなります。従業員同士が同じ目標に向かって業務を行うこともあり、関係性向上が期待できるでしょう。

コーチング

コーチングとは、「気づき」に焦点を当ててアドバイスを行う手法です。指導とは異なり、質問を重ねることで、コーチングを受ける従業員が自ら答えを見つける手助けを行います。コーチングは、人材開発で使用されることが多い手法ですが、組織開発の促進にも注目を集めています。

ミッション・ビジョン・バリュー

ミッション・ビジョン・バリューは、企業理念を構成する要素のことです。企業の存在意義を示すミッションと、企業が目指す姿を示すビジョン、企業の考え方や行動指針を示すバリューの3つで構成されています。ミッション・ビジョン・バリューが従業員に浸透すると、同じ価値観を持って業務ができます。意思決定も簡単になり、企業への帰属意識も向上するでしょう。従業員はミッション・ビジョン・バリューをもとに業務を行うため、組織開発も行いやすくなります。

7s

7sとは、7つの経営資源を示したものです。次の7つのsが、組織形成には必要とされています。

  • Strategy:戦略
  • Structure:組織構造
  • System:システム、制度
  • Shared value:共通の価値観・理念
  • Style:経営スタイル・社風
  • Staff:人材
  • Skill:スキル・能力

7sに関して考え、経営指針を決定すると、より効果的な組織開発が可能になります。組織に対して、どのような角度からアプローチが必要か分析し、考えられるでしょう。

タックマンモデル

タックマンモデルとは、チームの形成を効果的に行うための方法です。チームメンバーは、「形成期」「混乱期」「統一期」「機能期」「散会期」の5つを経て、チームとして成長すると考えられています。タックマンモデルの活用により、コミュニケーションの増加や、新しいアイデアの発生、モチベーション向上が期待できます。従業員同士の関係強化につながるため、組織開発に効果的なフレームワークとして使用できるでしょう。

ワールドカフェ

ワールドカフェとは、カフェのように落ち着いた空間で、気軽に話せるようにミーティングを行うことです。会議では発言しにくい従業員も、躊躇せず発言できるようになります。ワールドカフェの効果により、「自由なアイデアが出る」「意見が上下関係に影響されない」などのメリットがあります。また、ワールドカフェではメンバーの席を入れ替えることで、さまざまな意見を取り入れることも可能です。従業員同士の関係改善につながり、組織開発に有効とされています。

アプリシエイティブ・インクワイアリー

アプリシエイティブ・インクワイアリーは、質問を行うことで、個人と組織の価値を高める手法です。ポジティブアプローチと呼ばれることもあります。たとえば、従業員のポテンシャルを高める、従業員の視野を広げるなどの効果が期待できるでしょう。また、組織の未来をイメージし、どうなりたいか考えることで、組織開発に活かす方法もあります。ポジティブな発想を増やすことで、従業員同士の関係性を良くし、組織開発の効果も期待できるでしょう。

組織開発実行の流れ 

実際に組織開発を行う際の流れを知りましょう。組織開発を効果的に行える流れを紹介するため、参考にしてください。

現状の明確化

まずは、組織が置かれている状況を明確化しましょう。どのような状況で、どのような課題を抱えているかを明らかにします。たとえば、「チームの成果が上がっていない」「従業員のコミュニケーションが少ない」などを発見しましょう。また、現状だけではなく、未来を考えることも重要です。組織としてどうなりたいか、何を目的にするかも明確にしましょう。

課題の発見

現状から、具体的な課題を発見しましょう。何に困っているのかを明確にします。たとえば、「チームの成果が出ていない」だけではなく、具体的にどのような成果が出ていないか明確にしましょう。また、組織の課題の場合、さまざまな要因が絡み合って課題が発生している場合もあります。課題の発見を行い、具体的にどのような問題が発生しているか理解しましょう。

具体的な施策の検討と実行

課題が見つかったら、課題解決のための施策を考えましょう。実行する際には、チーム単位など小さな段階から始めていくことが大切です。もし、最初から組織全体を変えようとしても、実行に時間がかかったり、変更できなかったりする部分が出るでしょう。まずは小さな課題から改善を行うために、具体的な施策の検討と実行をしましょう。

フィードバックの実施

施策を実行したら、効果のフィードバックを実施しましょう。「課題解決はできたか」「どのような効果がでたか」「改善点はないか」などを検討します。フィードバックを行うことで、今回の組織開発が成功したかどうかが分かります。施策実行後は、必ずフィードバックを行いましょう。

成功事例を作り、共有する

施策が成功した際には、社内で共有しましょう。企業全体で取り組めるように、成功事例を共有します。組織開発は継続的に行うものであり、新しい施策の実行と検証を繰り返します。成功事例を共有し、企業全体で組織開発ができるように働きかけましょう。

組織開発の失敗例

組織開発を行っても、失敗してしまうケースがあります。課題が不明瞭であったり、施策が実行できていないケースです。ここでは、組織開発の失敗例を紹介するため、事前の対策に役立ててください。

課題が分かっていない

組織の課題が分かっていない場合、組織開発に失敗しやすいでしょう。改善の根拠もなく、施策を実行してしまうためです。組織開発を成功させるためには、自社の課題を明確に捉える事が重要です。どのような状態で、どんな課題を抱えているかを、まずは明確にしましょう。

施策が間違っている

施策を間違えてしまうと、組織開発は失敗してしまいます。課題に対して適切なアプローチを行いましょう。たとえば、従業員のコミュニケーション改善を期待して親睦会を開いても、業務でのコミュニケーション改善はできないケースがあります。この場合、従業員の関係性ではなく、指揮命令系統やコミュニケーションツールの使い方に問題があるかもしれません。課題を把握していても、施策が間違っていれば組織開発は失敗してしまいます。課題に沿った施策を実施しましょう。

施策が実行できていない

実行を決めた施策は、最後まで行いましょう。途中で終わってしまうと、効果があったのかが分からなくなります。施策を始めても、忙しくてやめてしまったり、複雑で機能していないケースがあります。この状態では、組織開発が実行できているとは言えないでしょう。実施を決めた施策は最後まで行い、フィードバックもセットで行いましょう。

組織開発の企業事例 

組織開発の成功事例をいくつか紹介します。

IT企業の場合

バリューの実現によって組織開発を実現したIT企業があります。掲げられたバリューが従業員に浸透すると、同じ目的を持って業務を行う従業員が増加するためです。この企業では、OKRも導入し、一人ひとりの正しい評価によって、バリューの実現をサポートしました。OKR導入で成長意欲が増加した従業員はバリューの実現にも積極的となり、結果として組織開発に成功しています。

人材企業の場合

ある人材会社でも、ミッションとバリューに焦点を当てることで、組織開発を推進しています。具体的には、従業員にミッションとバリューを浸透させ、組織全体の方向性を一致させました。ミッションやバリューに共感できる従業員は、愛社精神が増し、組織に貢献しようとします。同じ目的を持つ従業員も集まるため、組織開発の成功につながっています。

IT企業の場合

コーチングを取り入れることで、組織開発を行う企業があります。あるIT企業では、コーチングによって、部下と上司のコミュニケーションが増加しました。まず、上司から部下に対しては、コーチングを習慣化し、部下に対してアプローチする機会を増加させています。加えて、部下から上司に向けて、コーチングに対するアンケートの実施も行いました。その結果、部下から上司にフィードバックを行う習慣が芽生え、双方向でのコミュニケーションが増加しています。このように、コーチングでコミュニケーションを増加させ、組織開発を成功させた企業もあります。

製薬会社の場合

ある製薬会社では、外部コンサルタントの意見を従業員同士が話し合い、現場に落とし込むことで、組織開発の一環としています。従業員自身で考え、話し合うことが、関係性強化につながるためです。また、この企業は、現場の各リーダーと目的を共有したことで、成果につながったと考えられています。組織開発では、企業と従業員の意思統一を行うことも重要です。

まとめ

企業を成長させるためには、組織開発の実施が重要です。従業員同士の関係性を強化できると、より良い組織になるでしょう。組織開発を実施するためには、コーチングやミッション・ビジョン・バリューなどの、フレームワークを使用すると良いでしょう。また、組織開発を成功させるためには、人材開発の実施も重要です。従業員自身と、従業員同士の関係性の両方にアプローチを行い、より強い組織形成を目指しましょう。