このページのまとめ
- SDGsは国や政府が主導し、ESGは企業や投資家が主導する
- SDGsなどの実施は、ビジネスチャンスの拡大やイメージアップに効果的
- SDGsなどに取り組む際には、アピール目的で実施しないように注意する
近年では、社会全体が取り組む目標としてSDGsやESGが注目を集めています。実施に向けて、動き出している企業も多いことでしょう。しかし、SDGsとESGは似た概念であり、どのような違いがあるのか混乱しやすい特徴があります。そこで今回は、SDGsとESGの違いや、企業が取り組むメリットを解説します。自社で取り組みを行うためにも、参考にしてください。
SDGsとは
SDGsとは、「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標」のことです。「Sustainable Development Goals」の頭文字をとって名付けられました。注目されるようになったのは、2015年に開催された国連サミットです。SDGsの重要性が提起されたことで全世界に普及しました。
SDGsは世界各国が取り組むべき目標であり、以下の17の目標が掲げられています。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任 つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
ESGとは
ESGとは、投資家が投資を行う際に、重視すべき内容として広まっている概念です。Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の頭文字をとってESGと呼ばれています。
それぞれの単語の意味については、次の項目で詳しく説明します。
ESGに考慮して投資を行うことを、ESG投資と呼びます。日本国内でも注目が高まっており、日本政府もESG投資の支援を始めました。具体的には、政府首脳がESG投資推進を表明したり、環境省がESG投資の促進を実施したりしています。ESGならびにESG投資は今後も注目を集めるものであり、企業の取り組みも求められていくでしょう。
参照元:財務省「ESG投資について」
Environment(環境)
ESGのE、環境に対する投資には、次のような例が挙げられます。
- 生物の保護
- 生態系への配慮
- 地球温暖化対策
- 温室効果ガス削減への施策
- 水や森林など、資源維持活動
Social(社会)
ESGのS(社会に関する投資)には、次のような内容があります。
- 男女平等(ジェンダー)
- 人権問題の解決
- 長時間労働や賃金格差など、労働環境の改善
- 児童労働の解決
Governance(企業統治)
ESGのG(企業統治)には、次のような内容が含まれます。
- コンプライアンスの遵守
- 社外取締役の活用
- 情報開示の実施
- 役員会の独立性を保つ
SDGsとESGの違い
SDGsとESGの大きな違いは、誰が実施するかです。SDGsは国や企業などの活動がメインになりますが、ESGは投資家や企業が投資を行う目線で考えています。たとえば、SDGsは社会問題や環境問題に対して、国や政府が具体的な施策を行い、解決を目指します。一方で、ESGは資産価値や投資価値を向上させるための投資です。その手段として環境や社会への貢献を行います。SDGsは国や政府の取り組み、ESGは投資家や企業の取り組みであると区別しておきましょう。
企業が実施できるESG
ESGに取り組むためには、どのような施策が実行できるか考えてみましょう。ここでは、環境・社会・企業統治の3つの観点から紹介します。
環境に考慮した事業
まずは、ESGの1つ目にあたる、Environment(環境)の取り組みです。
環境に考慮した事業を行うことで、ESGの実施ができます。たとえば、商品の製造にあたって二酸化炭素の排出量が少なくなる製造方法を生み出すのも良いでしょう。木材を使用する企業であれば、植林を行うことで資材を維持しながら生産を行う方法もあります。
ワークライフバランスの実現
2つ目が、Social(社会)に関する取り組みです。
企業として実行しやすい施策は、ワークライフバランスの実現でしょう。ワークライフバランスとは、仕事と私生活のバランスが整っていると感じる状態のことです。従業員のワークライフバランスを保つために、企業は残業時間を減らしたり、有給休暇の消化率を高めたりする必要があります。
コンプライアンスの強化
3つ目が、Governance(企業統治)に関する取り組みです。
コンプライアンスを強化し、自社の経営を健全にしましょう。具体的な施策には、コンプライアンス研修があります。自社で問題が発生しないように、コンプライアンス研修を実施し、経営上のリスクに備えておきましょう。
SDGsやESGに取り組むメリット
企業がSGDsやESGに取り組むメリットには、次のようなものがあります。
イメージアップにつながる
SDGsやESGに取り組むことで、企業のイメージアップにつながります。
たとえば、環境に配慮した商品をアピールすれば、環境問題に興味を持つ消費者からの印象を良くできるでしょう。また、労働環境の改善ができれば、求職者からのイメージアップも期待できます。このように、社会が抱える問題に取り組むことは、イメージアップにつながるため、率先して取り組むと良いでしょう。
人材が集まりやすくなる
イメージアップによって、人材が集まりやすくなるメリットがあります。
デジタル社会の発達により、企業の評判はインターネット上でも広まるようになりました。SDGsなどに取り組む企業は評判が上がり、求職者もその評判を目にする機会が増加します。また、企業を選ぶ際に、業務内容だけではなく、社会貢献をどれだけ行っているかで判断する求職者も増加傾向です。このように、企業がSDGsやESGに取り組むことは、人材が集まりやすくなるメリットがあります。
ビジネスチャンスの拡大
SDGsやESGで掲げられた問題解決を行うことで、ビジネスチャンスに発展するケースもあります。問題解決のために、新商品の開発や新しいサービスの実施ができるためです。また、SDGsなどの取り組みで評判が上がれば、新しい取引先から声を掛けられる可能性もあります。このように、SDGsなどの取り組みが評価されれば、ビジネスチャンスが拡大するメリットも期待できるでしょう。
企業がSDGsやESGに取り組む際のポイント
SDGsやESGに取り組むために、注意したいポイントを解説します。
情報収集を行う
SDGsやESGに取り組むためには、事前に情報収集を行いましょう。
自社の方針やサービス内容に合っているか、確認する必要があります。たとえば、木材を利用する企業が森林を守る施策を行えば、事業に関連性があると評価されやすいでしょう。しかし、事業から離れていたり、知識のない施策を行うと、ノウハウがないせいで失敗してしまう可能性もあります。SDGsやESGを行う際には、自社のビジネスに合っているのか、現実的に実行できるのかを考えることが大切です。
自社のアピールだけに利用しない
自社のアピールだけに利用する、SDGsウォッシュにならないように注意しましょう。
SDGsウォッシュとは、SDGsを実施しているフリをしている企業のことを指します。たとえば、「環境にやさしい素材で商品を作っている」とアピールしながら、「低賃金や長時間労働などで従業員を働かせている」企業があるとします。この場合、環境に対するSDGsは実施しているものの、労働環境に対するSDGsは実施できているとはいえません。アピールだけに利用しており、本来のSDGsの目的からは外れていると言えるでしょう。このような行動は、結果的に自社の評価を下げてしまうことになります。
企業全体で取り組む
SDGsやESGに対しては、企業全体で取り組むようにしましょう。
自社でSDGsに取り組むことを周知し、なぜ取り組む必要があるのかを理解してもらうことが重要でしょう。企業によってはSDGsなどの研修を実施し、従業員のSDGsやESGに対するモチベーションを高めているケースもあります。SDGsを実施する際には、一部だけで取り組むのではなく、企業全体で取り組む体制を整えましょう。
まとめ
環境問題をはじめとする社会問題に対応するために、SDGsやESGへの取り組みが求められています。企業がどのように対応していくかは、消費者やステークホルダーからの注目を集めていくことでしょう。また、SDGsなどを実施する際には、アピール目的にならないように注意しましょう。SDGsウォッシュと呼ばれるように、表面的なSGDsしか行わない企業が増加しています。表面的なアピールは、結果的に評判を下げることにつながるでしょう。正しい取り組みができれば、企業のイメージアップや、ビジネスチャンス拡大につながります。まだ取り組んでいない企業は、自社で何ができるか考え、取り組んでみましょう。