このページのまとめ

  • 越境学習とは、自社から離れた場所で学習を行うこと
  • 越境学習の具体例には、ワーケーションや留学、プロボノなどがある
  • 越境学習の効果を高めるために、学習の目的を持たせることが重要

従業員を成長させる学習方法として、越境学習が注目を集めています。所属している企業以外で学ぶことにより、新しいノウハウ獲得や成長が期待できるためです。経済産業省もプロジェクトを実施しており、政府も越境学習を推進しています。今回は、越境学習の実施方法や実施のメリットを解説します。越境学習は企業に新しいノウハウを取り込むことにもつながるので、実施を検討してみましょう。

越境学習とは 

越境学習とは、在籍している企業を離れて、別の企業や環境で勉強を行う学習方法のことです。代表的な方法として、外部研修や留学などがあります。越境学習では、普段と異なる環境に身をおくことで、自社では学べない知識や経験を学べるメリットがあります。また、自社にないノウハウを手に入れ、社内に還元を行えることもメリットです。

越境学習は経済産業省からも注目されている

越境学習は、経済産業省からも注目されている学習方法です。経済産業省では、「社会課題に取り組む地方やNPOの現場に赴き、現実の社会課題解決に取り組むことで人材が育成されるという」仮説を立て、越境学習の実践を行っています。その結果、リーダーとしての成長を実感する参加者が増えたという結果が出ています。
働き方の多様化や人材の流動化が進む現代では、大人になっても学び続けることが求められています。越境学習はその一環であり、今後も多くの企業で導入されるでしょう。

参照元:経済産業省「越境学習によるVUCA時代の企業人材育成

越境学習の方法 

越境学習は、どのような方法で行うか気になることでしょう。ここでは、一般的に実施される越境学習の方法を紹介します。

外部研修

外部研修の実施も、越境学習として含まれるケースがあります。なぜなら、外部研修には従業員の知らない人々が集まり、新しい知識を習得できるためです。そのため、基本的には、自社とつながりのない外部研修に参加するようにしましょう。知り合いが多い外部研修であれば、新しい交流が見込めないため、越境学習としての効果が発揮されにくいことに注意が必要です。

ワーケーション

ワーケーションとは休暇先で仕事を行うことです。越境学習の場合は、知らない土地に赴き、その土地を楽しみながら仕事を行うことをワーケーションと呼んでいます。知らない土地に赴くことで、新しい人々との出会いや、環境の違いから学べることもあるでしょう。

レンタル移籍

レンタル移籍とは、一時的に他企業に移籍し、業務を行う方法です。レンタル移籍も異なる環境で業務を行うため、越境学習に含まれます。レンタル移籍を行う際には、自社とは違う業種や企業風土の企業で働かせることがおすすめです。自社にない知識や経験を得ることで、従業員の成長につながるでしょう。

プロボノ

プロボノとは、業務で培った知識や経験を活用してボランティアを行うことです。日本では2010年代から始まっています。CSRの一環としてプロボノを行っている企業もあります。従業員も自分のスキルを活かしながら、新しい交流を得ることができるでしょう。

留学

留学も越境学習に該当します。語学力を伸ばすだけではなく、海外の考え方を学ぶことができるでしょう。知識や考え方は、海外から日本に輸入されることも多い状況です。留学で学んだ知識を社内に還元できれば、企業の発展も見込めるでしょう。

越境学習のメリット 

越境学習を行うメリットは次のとおりです。

従業員の成長につながる

越境学習の一番のメリットは、従業員の成長につながることです。新しい環境に身をおくことで、従業員の成長が期待できます。たとえば、新しい考え方を学ぶことで、仕事への取り組み方が変わります。また、新しいノウハウを学ぶことで業務効率が上がるケースもあるでしょう。業務効率の向上は、企業全体の成長につながります。普段と異なる環境で学ぶことは、新しい知識を吸収するきっかけになります。

従業員のモチベーションアップ

普段と異なる環境で働くことにより、従業員のモチベーションアップが期待できます。業務に対するマンネリ化を防ぎ、離職防止にもつながるでしょう。業務によっては、ルーティン化してしまい、やりがいや成長を感じられないケースがあります。すると、新たな学びを求めて、離職してしまうケースもあるでしょう。越境学習で新しい経験ができれば、新しい刺激を獲得できます。従業員のモチベーションアップにつながり、離職を防ぐこともできるでしょう。

越境学習のデメリット 

さまざまなメリットがある越境学習ですが、同時に次のようなデメリットも考えられます。

コストがかかる

越境学習の実施は、コストがかかります。必要な費用は、企業が負担を行うことが望ましいためです。たとえば、越境学習で海外留学を実施した場合は、必要なコストが大きいと言えるでしょう。しかし、越境学習のコストを安くしようとすると、新しい学びや刺激が少なく、効果が発揮されない可能性もあります。もし、越境学習を行うのであれば、ある程度のコストは必要と覚えておきましょう。

希望者全員への実施が難しい

越境学習には少なからずコストがかかるため、企業によっては希望者全員に実施するのが難しいケースがあります。選ばれなかった希望者のモチベーションが下がってしまう可能性があるほか、企業にとっても希望者の中から対象者を選定する負担も生じます。
越境学習を導入する際には、どれくらいの人数で行うかを慎重に検討しましょう。

従業員が成果を得ることを負担に感じる

越境学習の参加者は、「参加するからには企業に必要なノウハウを吸収して帰らなければ」とプレッシャーを感じてしまう場合があります。越境学習の期間中は通常の業務を離れているケースが多く、
業務を離れている負い目からプレッシャーをさらに強く感じてしまう可能性もあります。
越境学習で学びを得ることは重要ですが、従業員が負担を感じすぎないように配慮しましょう。

越境学習実施時のポイント

越境学習を行う際には、次のポイントに注意しましょう。

従業員の志望理由を確かめる

越境学習に参加する従業員に対しては、志望理由を確かめましょう。
越境学習に参加しただけで知識やスキルが自動的に身に付くことはありません。
越境学習で何を学びたいのか、どのように変わりたいのかを確認し、参加意欲がある従業員を慎重に選出しましょう。普段の勤務態度から判断することも有効です。

成果を出すことを求める

越境学習を行う際には、プログラムを事前に共有し、どのような知識を吸収してきてほしいかを伝えましょう。目的をもって越境学習に参加してもらうことで、越境学習の効果が高まります。成果を出すことを強要してはいけませんが、目的や目標を理解して参加してもらうことは非常に重要です。

まとめ

越境学習では、普段と異なる環境で学ぶことで、新しいノウハウを学ぶことができます。従業員の仕事に対するマンネリ化を防ぎ、企業にも新しいノウハウが還元されるなど、メリットがあります。越境学習にはコストがかかるため、参加させる従業員の選定は志望理由や日ごろの勤務態度などから慎重に判断しましょう。