このページのまとめ

  • 昇格試験とは、昇格させても問題ないかを判断するための試験のこと
  • 昇格試験は、面接や小論文、適性検査などに複数の方法で実施する
  • 昇格試験では公平性を担保し、従業員が納得できる基準で評価する

昇格させたい従業員に対して、昇格に足る能力があるかを確かめる試験が昇格試験です。昇格試験を適切に行わなければ、実力がともなわない役職に従業員を任命してしまい、チームが正常に機能しなくなってしまう可能性があります。今回は、昇格試験の判断基準や、実施時のポイントを解説します。昇格にふさわしい従業員を見極めるための参考にしてみてください。

昇格試験とは

昇格試験とは、従業員を今よりも上の職位に登用できるかを判断するための試験です。
従業員の適性を見るために、面接や小論文などの試験を行います。

昇格と似た言葉に、昇進があります。昇進の場合は役職が上がることが一般的です。たとえば、一般から主任、課長から部長のように役職が上がります。
一方で、昇格の場合は、役職は変わらずに昇格する場合も含まれます。企業のなかでランク分けがされており、10段階の4から3に上がるなどは昇格です。

昇格試験の目的

昇格試験の目的は、該当の従業員が昇格に適しているかを確認するためです。
現状の業務から職位が上がったときに、問題なく業務が実施できるかを確認しています。
また、試験を行うことで客観的な評価であることを証明し、周囲に納得させることも目的に含まれます。たとえば、試験を行わずに昇格を行うことで、「どうしてあの人は昇格したのだろう?」と疑問に思い、周りの従業員のモチベーションが下がる恐れもあるでしょう。従業員からの反発を招かないためにも、全員が納得のいく方法で昇格させることが重要です。

昇格試験で判断する基準

昇格試験では、以下のような基準を踏まえて合否を判断します。

実績

昇格を認めるためには、過去の実績が重要です。
個人の実績はもちろん、チームとしての実績も確認しましょう。個人で成績を残しても、協調性がなければチームとして活動できません。チーム内でどのような役割を果たしてきたか、どのような課題が残っているかを確認しましょう。

リーダーシップ

チームを率いるリーダーシップの有無も昇格試験で確認しましょう。
プロジェクトなどを任せる場面では、リーダーシップを発揮して成果を出すことが求められます。部下とのコミュニケーションのとり方や、課題をチームで解決する力があるかを確認しましょう。

マネジメント能力

昇格によって部下が増えると、部下をマネジメントする能力が求められます。
マネジメントでは、部下の育成や管理、フィードバックの仕方が大切です。これまでの部下との接し方も確認し、マネジメント能力を評価しましょう。

主体性

立場が上がると、指示を受ける立場から指示を出す立場に変わります。
チームを率いる際には、企業の方針に沿った目標を掲げ、達成しなければなりません。目標達成のためにどのような施策を行うべきかを自ら考えて実行する力が必要になります。

課題解決能力

目標達成に向けて、組織の抱える課題を解決する能力も必要です。課題に対して向き合う姿勢や、考え方を評価しましょう。また、自ら課題を発見して改善に動く能力も評価対象に含まれます。

経営者としての視点

立場が上がってくると、経営者としての視点も求められます。部長クラスになると、チームとしての目標から企業としての目標を達成する役割に変わるためです。経営者としての視点では、企業の問題だけではなく、社会の環境や業界の状況など、外に目を向けて考えることが重要です。今ではなく、未来に向けての行動を実施できるかどうかも求められるでしょう。経営陣に近くなる人物に対しては、経営者としての視点を持っているか確認しましょう。

昇格試験の種類 

昇格試験を行うにあたって、どのような方法で試験を行うか確認しましょう。ここでは、一般的に使用される、昇格試験の種類を4つ紹介します。

面接

昇格試験で基本となる方法が、面接です。
コミュニケーション能力や業務に取り組む姿勢、昇格の意欲などを判断します。あらかじめ質問内容を決めておき、昇格に適した人物かを判断しましょう。注意点としては、面接官が持っている印象によって評価が偏りやすい点です。普段から良い印象を持っていると、先入観で良い評価になってしまうケースなどもあります。客観的に判断ができるように、明確な評価基準を設定しておきましょう。

適性検査

昇格試験では、従業員の適性をチェックする適性検査も有効です。
一般的には、「能力適性検査」「性格適性検査」「指向・意欲適性検査」が実施されます。
「能力適性検査」とは、業務に対する能力をチェックする調査です。業界の進め方や考え方などを確認します。「性格適性検査」は、従業員の行動やメンタル、企業風土へのマッチ度などを確認するものです。「指向・意欲適性検査」では、キャリアに対する本人の希望を確認します。
これらの検査から、昇格にふさわしい人物であるかを総合的に判断します。

人材アセスメント

人材アセスメントとは、第三者が該当の従業員を調査して評価する方法です。
複数の人物が評価を行うことで、客観的に判断できるメリットがあります。実施方法としては、昇格後に行う業務を模した状況を作り、実践させることで評価します。模擬の実演テストを行うことで、昇格後にどのような行動をとるかが判断しやすくなります。

小論文

小論文によって、本人の問題解決能力や昇格に対する考え方を確認するケースもあります。
たとえば、企業が抱える課題を提示し、どのような解決策があるかを回答させる方法があります。
また、昇格に対する思いや、昇格後に自分がどのようなことができるかをたずねても良いでしょう。面接よりも十分に考える時間が与えられるため、従業員の考えをより細かく見極められるメリットがあります。

公平な昇格試験を行うポイント

昇格試験を行う際には、公平性が必要です。評価基準がブレないように、試験を行う前から準備をしておきましょう。ここでは、公平に昇格試験を行うポイントを解説します。

昇格水準を明確にする

昇格試験では、昇格水準を明確にしましょう。一定の水準に達することで昇格できると決めておけば、公平に試験が実施できます。たとえば、10段階評価で8以上、100点満点で80点以上、などのように定めましょう。水準を決めない場合、合格者と不合格者の違いが分からず、トラブルになる可能性もあります。納得できる説明ができるように、水準はハッキリとしておきましょう。

客観的に評価する

昇格試験では、客観的な評価を行いましょう。
たとえば、普段の勤務態度が良いからといって昇格試験で成績を残せるとは限りません。
昇格試験の結果が振るわなくても、「普段はきちんとできているから大丈夫」と判断してしまっては不公平になるでしょう。昇格試験では普段から一緒に仕事をしている上司や部下などが判断するため、主観が入りやすくなります。立場の言葉る複数人の試験官を設けるなど、客観的に評価できる体制を整えましょう。

複数の手法を組み合わせる

昇格試験では、面接と適性検査、小論文など、複数の手法を組み合わせましょう。
たとえば、面接だけで判断した場合、話の上手い従業員が評価されやすくなります。実際の業務態度を判断できず、昇格に値しない能力で昇格してしまうかもしれません。昇格試験では、さまざまな角度から従業員の評価を行うことが大切です。複数の手法を組み合わせ、総合的に判断しましょう。

同じ手順で試験を行う

昇格試験では、同じ手順で試験を実施しましょう。
たとえば、面接で質問内容を変えてしまうと、違う基準での判断が必要です。また、答えやすい問題と答えにくい問題が出てくるなどの不公平も生まれるでしょう。同じタイミングで昇格試験を行う場合は試験の手順を統一し、同じ評価基準で評価できるようにしましょう。

昇格試験実施時の注意点

昇格試験実施時には、フィードバックを欠かさないようにしましょう。合格でも不合格でも、そのような評価を下した理由を説明することが大切です。合格の場合は、合格理由を伝えることで自信を持って昇格後の業務に向き合えます。不合格であっても、改善点を知ることで次回の昇格試験に向けた対策ができるでしょう。従業員が自身の結果に納得できるようにするためにも、フィードバックを必ず行いましょう。

まとめ

昇格試験では、公平に従業員の能力を評価しましょう。評価基準が変わってしまうと、従業員の納得を得ることができません。不合格者が不満を持ったり、合格者に対しても周囲が疑問を持つ可能性があります。公平に評価するためには、面接や小論文、実技テストなどの複数の方法で評価しましょう。さまざまな方法で試験を行い、誰もが納得のいく公平な判断を行うことが大切です。