このページのまとめ

  • 相対評価とは、従業員同士のスキルや成績を比較して人事評価を行うこと
  • 相対評価のメリットは、評価方法がシンプルであること
  • 相対評価を行う場合でも、従業員が納得できる明確な評価基準を定めることが重要

人事評価の方法の一つに、相対評価があります。相対評価とは、従業員の成績や能力に順位をつけて評価する方法です。評価方法がシンプルである一方、評価者の主観に影響を受けやすいという懸念点もあります。そこで今回は、相対評価のメリット・デメリットや、相対評価を行う際のポイントについて解説します。適切な人事評価を行うための参考にしてみてください。

相対評価とは 

相対評価とは、周囲との間で成績やスキルなどを比較したうえで従業員の評価を決めることです。
よくある方法として、「A評価に5人」「B評価に10人」「C評価に20人」のようにランク分けして評価を行うものがあります。

絶対評価との違い

相対評価と比較されるものに、絶対評価があります。
絶対評価とは、明確な評価基準を設けて、基準を満たしているかどうかで従業員を評価する方法です。営業成績であれば、「成約率4件以上でS評価」「成約率3件でA評価」「成約率2〜1件でB評価」のように評価基準を定めます。
従業員によって経験年数やスキルの程度は大きく異なることから、一人ひとりに合わせた目標を設定して評価する方式を導入する企業が増えています。

相対評価のメリット 

相対評価には次のようなメリットがあります。

明確な評価基準の設定が不要

1つ目のメリットは、評価方法がシンプルであることです。

対象の従業員のなかで順位をつけて評価するため、明確な評価基準の設定が不要です。
評価対象の従業員が10名いた場合、「S評価が2名」「A評価が4名」「B~C評価が4名」のように、各評価の人数枠を決めておくとスムーズです。
従業員が多くなるほど人事評価が煩雑になるため、人事評価をシンプルにしたい場合は相対評価が役立つでしょう。

従業員同士の切磋琢磨が起こる

相対評価の導入により、従業員同士の切磋琢磨が期待できます。
従業員の中での自分の立ち位置によって人事評価が決まるため、「周りの人に負けないように頑張ろう」という気持ちが刺激されやすくなります。
従業員のモチベーションを高める方法の一つとして、相対評価が有効です。

従業員の成長につながる

従業員同士が切磋琢磨して仕事に取り組むことで、従業員の成長につながります。
従業員の自己成長を促すために「闘争心に火をつける必要がある」と感じた場合は、相対評価の導入を検討してみると良いでしょう。

相対評価のデメリット 

相対評価には多くのメリットがある一方で、以下のような懸念点もあります。

人によって評価が偏る可能性がある

相対評価では、評価者によって対象者の順位が大きく変わる可能性があります。

たとえば、営業成績が同程度の従業員2名を「S評価」と「A評価」にそれぞれ振り分ける必要がある場合、営業成績以外のスキルをどのように評価するかが判断の分かれ目になります。
コミュニケーションスキルを重視する評価者の場合はコミュニケーション能力がより高い従業員を高く評価し、ミスの少なさを重視する評価者であれば正確に仕事をこなす従業員を高く評価するでしょう。このように、評価者の価値観によって評価が分かれる可能性がある点に注意が必要です。

従業員の成長や努力を評価しづらい

相対評価では、従業員の成長を評価しづらいデメリットがあります。
たとえば、前年と比べて2倍の成績を出した従業員がいたとします。
前年比の2倍という大きな成果を出していたとしても、周囲がそれ以上の成果を出している場合は高い評価を得にくいでしょう。
相対評価では従業員の過去の成績からの成長率が考慮されにくい傾向があるため、従業員のモチベーション管理が難しくなるケースがあります。

協調性が減少する

相対評価を行うことで、チーム内での助け合いの精神が育たなくなってしまう点に注意が必要です。
ほかの従業員が困っていても、「ライバルだから助けない」と考える従業員もいるでしょう。
また、自分の評価を上げるために周囲の足を引っ張ろうとする従業員も出てくるかもしれません。
相対評価の導入によってチームの輪が乱れることがないかに気を配りましょう。

相対評価導入時のポイント 

適切な相対評価を行うために、相対評価を導入する際のポイントを紹介します。

評価基準は具体的に設定する

相対評価の場合でも、評価基準は具体的に設定しておきましょう。
また、どのような部分を基準にして比較するかを決めておくと評価がしやすくなります。
営業職であれば、「売上を評価する」「契約件数を評価する」などのように明確な評価基準を定めておくことが重要です。

評価基準を周知する

明確な評価基準が定まったら、従業員に評価基準を周知しましょう。
「売上金額を評価基準とした中で、10名中2番目の成績だったのでA評価をつけた」というように、具体的な説明ができるようにすると従業員の納得感が高まります。
評価方法によって従業員のモチベーションが下がらないように、評価基準をもれなく周知しましょう。

まとめ

相対評価には、従業員の競争心を刺激してモチベーションを高める効果があります。ただし、評価基準をあいまいにしてしまうと適切な評価が下せず、従業員から不満の声があがる可能性があります。
相対評価を導入する場合でも、評価基準を明確に定める必要があります。また、従業員が明確な目標を見据えて仕事に取り組めるように、評価基準は従業員に忘れずに周知しましょう。