このページのまとめ

  • ダイナミックケイパビリティとは、社会の変化に応じて企業が変化する能力のこと
  • ダイナミックケイパビリティには、「感知」「捕捉」「変革」の3つの要素がある
  • ダイナミックケイパビリティの向上には、新しい情報を集めて活用していくことが必要

企業が生き残るために必要な能力として、ダイナミックケイパビリティが注目を集めています。ダイナミックケイパビリティとは、急速な社会変化に対応するための「企業変革力」のことです。「言葉は聞いたことがあるけど、具体的に何をすればいいのか分からない」という企業担当者の方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、ダイナミックケイパビリティの概要やダイナミックケイパビリティの向上方法について解説します。

ダイナミックケイパビリティとは 

ダイナミックケイパビリティとは、社会の変化に企業が対応する力のことです。
経済産業省は「日本の製造業が抱える課題に対して重要な戦略経営論」として注目しています。

ダイナミックケイパビリティが注目される背景には、グローバル化の拡大やデジタル技術の進歩による社会状況の変化があります。社会の変化にともなって消費者のニーズも急速に変わるため、企業には消費者のニーズに合ったサービスや製品を提供することが求められます。

参照元:経済産業省「第2節 不確実性の高まる世界の現状と競争力強化

オーディナリーケイパビリティとの違い

ダイナミックケイパビリティと混同されやすい言葉に「オーディナリーケイパビリティ」があります。
オーディナリーケイパビリティとは、現状の経営資源を活用して利益を最大化させようとする能力のことです。業務の手順や人員配置を見直すことで、効率的に生産性を高めようとすることを指します。
ダイナミックケイパビリティとの違いは、根本的な経営戦略の変化に対応できないことです。
現状の経営資源で業務を最適化することは大切ですが、それに固執しすぎてしまうと新しい技術や情報の導入が遅れてしまいます。最悪の場合、競合他社に市場を奪われてしまうケースもあるでしょう。
企業が生き残っていくためには、オーディナリーケイパビリティとダイナミックケイパビリティの両方の能力が必要です。

ダイナミックケイパビリティの3要素 

ダイナミックケイパビリティは、「感知」「捕捉」「変革」の3つの要素で構成されています。
それぞれの要素について、以下で詳しく解説します。

感知

感知とは、社会の変化を感知する能力を指します。
社会の変化は目に見えて分かるものばかりではなく、消費者のニーズや競合他社の動向などから見えてくるケースもあります。
社会の変化に対応するためには、世の中の動きに敏感になり、新しい情報を積極的に集めることが重要です。

捕捉

捕捉とは、感知した社会の変化に合わせて、経営資源の再構成を行う能力のことです。
現状の経営資源だけでは市場の優位性を保てないと判断した場合は、自社で開発しているサービスや製品そのものを根底から見直す必要があります。
このように、市場の優位性を保つために新たな経営戦略を立てる能力を補足と呼びます。

変革

変革とは、新しい経営戦略をもとに組織全体を変えていく能力のことです。
社会の変化に対応するための経営戦略を立てても、実行しなければ効果を発揮しません。
新しい技術を導入したり、高い専門技術を持つ人材を採用したりすることで、実際に組織に変革を起こすことが求められます。

ダイナミックケイパビリティの向上方法

ダイナミックケイパビリティを高める方法には、次のようなものがあります。

新しい情報の獲得

ダイナミックケイパビリティを高める方法の一つに、新しい情報の獲得があります。
「社会ではどのような技術やサービスが注目を集めているか」「消費者のニーズはどのように変化しているか」を把握することで、自社に必要な経営戦略が見えてくるでしょう。
経営戦略を立てるために、まずは社会で注目されていること・必要とされていることを把握することが非常に大切です。

新しい人材の採用

新しい人材を採用することも、ダイナミックケイパビリティの向上に効果的です。
新しい人材を採用することで自社にはない知識や技術が取り入れられ、思わぬアイデアが生まれる可能性があります。
「現状の経営資源だけで大きな変革を起こすのは難しい」という場合は、新しい人材の採用を検討してみると良いでしょう。

ダイナミックケイパビリティ向上に向けた課題

ダイナミックケイパビリティの向上に向けて、発生しやすい課題を知っておきましょう。
ここでは、代表的な4つの課題を紹介します。

活用できる資源に限界がある

1つ目の課題が、活用できる経営資源に限界があることです。
新たな経営資源を獲得したくても、コストの問題で導入が難しい場合があるでしょう。
また、コスト面に問題はなくても、導入までに大幅な時間を要することもあるかもしれません。
経営戦略を立てる際には、必要な経営資源を獲得できるかどうかを考慮に入れる必要があります。

経営者の判断に左右されやすい

2つ目の課題は、経営者の判断に左右される傾向がある点です。
従業員や役員がどんなに良い経営戦略を提案しても、経営者の承認を得られなければ実現は難しいでしょう。
業務のスケジュールやコストの面で提案が通らなかった場合は、時期を改めて提案すれば実現の余地があるかもしれません。しかし、経営者が大幅な変化を恐れて提案を拒否している場合は、実現の可能性が非常に低いといえます。
このように、企業が社会変化に対応できるかどうかは経営者の判断に左右されやすいことを押さえておきましょう。

ダイナミックケイパビリティの重要性を理解する人材が少ない

3つ目の課題は、ダイナミックケイパビリティの重要性を理解する人材が少ないことです。
従業員が企業変革の重要性を理解していないと、新しい経営戦略を実行しようとしても従業員が思うように動かない可能性があります。場合によっては、企業の変化に対応できずに退職を考える従業員もいるかもしれません。
企業全体でダイナミックケイパビリティの向上を図るためには、従業員に重要性を理解してもらうことが重要です。

社会変化の予測が難しい

社会変化の予測が難しいことも課題の一つです。
競合他社の動向や消費者のニーズをもとに「このようなサービスが必要になるはず」と予測しても、予測が外れてしまうケースもあるでしょう。
未来を正確に予測できない分、企業変革のための行動が必ずしも企業の業績に結び付くわけではないことを念頭に置きましょう。

まとめ

ダイナミックケイパビリティを向上させるためには、新しい情報を積極的に取り入れたり、自社に必要なスキルを持つ人材を採用したりすることが重要です。これらの計画を実行に移すためには、経営者をはじめ、役員や従業員が企業変革の必要性を理解していることが求められます。ダイナミックケイパビリティの重要性を全員が理解したうえで、企業変革に向けた取り組みを進めていきましょう。