このページのまとめ
- 人事評価では、「基準が分からない」「昇給につながらない」などの不満が生じる
- 人事評価の不満を防ぐためには、明確で公正な評価基準が必要
- 人事評価の方法には、「MBO」や「360度多面評価」などがある
従業員から人事評価に対する不満の声が上がり、頭を悩ませている人事担当者の方もいることでしょう。人事評価による不満を放置していると、従業員のモチベーション低下と離職を引き起こしてしまう可能性があります。そこで今回は、人事評価で発生しやすい不満や、適切な人事評価を行うポイントを解説します。従業員が前向きに業務に取り組めるように、明確な評価基準を設定しましょう。
人事評価で不満が出ることの影響
従業員から人事評価への不満が多発すると、従業員のモチベーションが低下し、離職者の増加につながります。
「どんなに頑張っても正当に評価されない」と感じると、声を上げることを諦めて転職活動を始めてしまうかもしれません。
また、退職には至らなくても、パフォーマンスの低下によって企業全体の生産性にマイナスの影響を与えることもあるでしょう。
従業員からの不満の声を放置せず、問題解決のために早急に動くことが大切です。
人事評価で発生しやすい不満
人事評価で発生しやすい不満には、以下のようなものがあります。
評価基準・評価理由が公表されていない
1つ目が、評価基準が公表されていないことです。
評価基準が分からないと、何をゴールに頑張れば良いかが分からず、モチベーションが上がりにくくなってしまいます。従業員のモチベーション向上と成長促進のために、評価基準は公表するようにしましょう。
フィードバックが実施されない
2つ目が、人事評価の結果に対するフィードバックがないことです。
フィードバックがない場合、従業員は高く評価されたポイントと改善が必要なポイントが分からず、今後の業務に活かすことができません。
評価の結果のみを示すのではなく、評価理由のフィードバックをあわせて行いましょう。
評価内容にばらつきがある
評価者によって評価内容にばらつきがあることも、不満につながりやすくなります。
たとえば、同程度の成果を出している従業員が2人いた場合、1人の評価が高く、もう1人の評価が低い場合は不満が生じやすくなるでしょう。
評価者が誰であっても評価内容が統一されるように、具体的な評価基準を設けることが重要です。
昇給につながらない
人事評価が昇給につながらない場合も、不満の原因になります。
「いくら頑張っても給与が増えない」と不満を感じる従業員が増えると、モチベーションが低下して退職につながる可能性があります。
成果を上げた従業員には、成果に見合った待遇を与えることが大切です。
達成できる評価基準ではない
評価基準が明確でも、達成できる内容でない場合は、従業員が不満を持ちます。
たとえば、昇給を避けるために高すぎる目標や厳しすぎる評価基準を設定するケースがあるかもしれません。その場合、従業員のモチベーションは下がり、働きぶりを正当に評価してくれる企業に転職を考える可能性が高くなります。
従業員のモチベーションを維持するためには、頑張れば達成できるレベルの適切な目標を設定することが大切です。
優先的に見直したい評価基準
ここでは、優先的に見直したい評価基準を3つ紹介します。
能力評価
能力評価とは、求められるスキルを所持しているかどうかの評価です。
たとえば、「TOEIC700点」などのようなスキルが評価されます。
能力評価の場合には、実際に出した成果の影響は受けません。企業が求めるレベルを明確に提示し、達成度合いに応じて評価しましょう。
成果評価
成果評価とは、仕事の成果に対する評価です。売上などの目標を基準に評価を行います。
成果評価の場合には、数値などの具体的な評価基準を設けると良いでしょう。
評価基準を数値化することで、評価内容にブレが生じにくくなります。
評価基準は、「何の成果を」「いつまでに」「どのような方法で」行うかを明確にすると分かりやすくなります。
情意評価
情意評価とは、仕事への取り組み方に対する評価です。
「勤務態度」「チームワーク」「業務に対する意欲」などが情意評価の対象です。
情意評価を導入する場合は、企業が求める行動基準を明文化して従業員に周知しましょう。
人事評価の不満を減らすためのポイント
人事評価の不満を減らすために、実施できる対策があります。評価基準の設定以外にも実施できるため、覚えておきましょう。ここでは、人事評価の不満を減らすためのポイントを4つ紹介します。
明確な評価基準を設定する
人事評価では、誰が見ても納得できる評価基準を設けることが重要です。
同程度の成果を出している従業員の評価が異なる場合、「どのような項目で評価が高く(低く)なったのか」を具体的に説明できるようにする必要があります。
具体的な理由を説明できない場合、「評価者が特定の人物をひいきしている」と不信感を持つ従業員が出てくるでしょう。
評価者によって評価内容に大きな差が出ないように、明確な評価基準を設けることが重要です。
人事評価の内容を説明する
人事評価の内容や基準は、従業員に説明しましょう。説明があるだけでも、従業員の納得度は変わります。たとえば、事前に評価基準の説明を受けていれば、基準に達していない場合は自分の実力不足を認めることができます。しかし、評価基準が分からなければ、評価基準自体に不満を持つことになるでしょう。従業員に納得してもらうためにも、人事評価の内容を説明しましょう。
丁寧なフィードバックの実施
人事評価の内容をもとに、丁寧にフィードバックを行いましょう。
良かった点と改善が必要な点の両方を伝えると、従業員のモチベーションが上がりやすくなります。
改善点が多い場合でも、「なぜこのような評価になったのか」「どのような点を改善すべきか」を具体的に伝えることで、評価内容を前向きに受け止めてもらいやすくなるでしょう。
従業員の成長につながるように、具体的なフィードバックを行うことが大切です。
評価者の能力を向上させる
納得できる評価のためには、評価者のスキル向上も大切です。
社内で評価者研修などを行い、評価者一人ひとりの評価スキルにムラが出ないようにする必要があります。マネジメントスキルと同様、評価スキルの向上にも力を入れましょう。
活用しやすい評価制度
具体的な人事評価を行うためにおすすめの制度が、「コンピテンシー評価」「360度多面評価」「MBO」です。それぞれの制度について詳しく紹介します。
コンピテンシー評価
コンピテンシー評価とは、従業員の「行動の特性」を評価する制度です。
業務で成果を上げている従業員の行動を整理し、評価基準に落とし込みます。
世間一般でいわれている行動特性ではなく、自社の従業員の行動特性を評価基準に設定することが大きなメリットです。
360度多面評価
360度多面評価とは、上司・同僚・部下など、仕事で関わるさまざまな立場の従業員が評価を行う制度のことです。
360度多面評価のメリットは、複数人の視点から評価を受けるため、従業員が自分の評価に納得しやすいことです。
評価者が一人のみの場合、評価者によって評価内容に偏りが生じるケースがあります。
360度多面評価であれば、1人の人物に評価をゆだねるよりも客観的な評価を行いやすくなります。
また、フィードバックの数が増えることで、従業員の成長を促進できることもメリットでしょう。
MBO
MBOとは、組織の目標を達成させるために、自分が貢献できる目標を従業員自身が設定する制度のことです。個人目標を上司と一緒に決めるケースが多く、従業員が目標達成のためにモチベーション高く業務に取り組めるメリットがあります。
まとめ
人事評価に対する不満が生じるのを防ぐためには、評価基準を明確にすることが必要です。
コンピテンシー評価・360度多面評価・MBOなどの評価制度を取り入れ、従業員が納得できる評価基準を設定しましょう。評価基準を設定したら、従業員に周知することも大切です。
明確な評価基準を設定し、従業員のモチベーションを向上させましょう。