このページのまとめ

  • サクセッションプランとは、後継者や経営者を育成するための計画のこと
  • サクセッションプランにより、後継者不在を解消できる
  • サクセッションプランは十数年掛かることもあり、時間とコストに注意が必要

後継者不在の状況を改善するために、サクセッションプランを実施する企業が増加しています。サクセッションプランとは、将来の経営者を育成するための計画のことです。前もって経営者の育成を行うことで、経営者の交替がスムーズになります。今回は、「後継者の育成方法が分からない」という方のために、サクセッションプランの進め方や企業事例を紹介します。来たるべきときに備えて、余裕をもって準備を進めましょう。

サクセッションプランとは 

サクセッションプランとは、将来の経営者や幹部候補を育成するための計画のことです。
未来の企業を率いる人材を育てるために、長期的な計画を立てて実行します。
現代では、少子高齢化による労働人口の減少で、後継者不足に悩まされる企業が増えています。
経営層の不在による混乱を招かないためにも、将来を見据えたサクセッションプランの実施が必要です。

通常の人材育成との違い

通常の人材育成との違いは、人材育成の対象者です。
通常の人材育成は、管理職以下の従業員を含めた人材育成という意味合いで用いられます。
一方で、サクセッションプランは経営層に限定した長期的な育成を行うという点に違いがあります。

サクセッションプランのメリット 

サクセッションプランの実施には、次のようなメリットがあります。

後継者不在の事態を防げる

サクセッションプランのメリットは、後継者不在の事態を防げることです。
中小企業庁によると、2021年に「後継者がいない」と回答した企業は約6割でした。
このまま後継者不在の状態が続いた場合、企業が廃業に追い込まれてしまう可能性があります。
サクセッションプランを実施すれば、ゆとりをもって後継者の育成を行い、企業の存続を守ることができるでしょう。

参照元:中小企業庁「2022年版中小企業白書・小規模企業白書

複数の経営幹部候補を育成できる

2名以上を対象にサクセッションプランを実施することで、複数名の候補者から経営者・幹部候補を選べるメリットがあります。
複数名の候補者を育成できれば、企業全体の経営スキルの向上につながるでしょう。

サクセッションプランのデメリット 

サクセッションプランの実施には、メリットと同時に以下のような懸念点も考えられます。
主なデメリットは次のとおりです。

長期的な育成になる

サクセッションプランは、長期的な育成になることを覚えておきましょう。
数年もしくは十数年かかる場合もあります。
長期的な育成が前提となるため、時間とコストがかかることを押さえておく必要があります。

候補者が途中で退職する可能性がある

育成途中に候補者が退職する可能性があることも懸念点の一つです。
長期的な育成計画のなかで、候補者が実際に後を継ぐまで自社に残っているかは分かりません。
もしくは、自社には残るものの、後を継ぐことを辞退する可能性もあるでしょう。
このように、後継者候補に途中で跡継ぎを辞退されてしまうリスクがあることに注意しましょう。

サクセッションプランの進め方 

サクセッションプランの進め方は、主に以下のとおりです。

候補者を任命するポストを決める

まずは、サクセッションプランの実施後に候補者を任命するポストを決めましょう。
後継者がいないポストはどこか、企業にとって必要なポストはどこか、などの視点から考えます。
必要なポストが整理できたら、そのポストに就くためにどのようなスキルが必要かを考えます。
このように、サクセッションプランを実施する際には、後継者の育成が必要なポストと必要なスキルを明確にすることが大切です。

候補者をピックアップする

次に、ポストに任命できそうな候補者をピックアップしましょう。
従業員のデータベースがある場合は、データベースをもとに選定するとスムーズです。
候補者は、すぐにポストに就けそうな人物だけではなく、数年後・十数年後を見据えて選ぶことも大切です。企業の育成計画の期間を考慮し、柔軟に候補者を選びましょう。

候補者を育成する

候補者を選定できたら、サクセッションプランに基づいて育成を実施しましょう。
育成方法には、現在の経営層と一緒に仕事をしながら必要なスキルを学ばせたり、新規事業の責任者を任せたりする方法があります。
育成内容は、候補者のスキルに応じて柔軟に決めていくと良いでしょう。

育成の進捗状況を確認する

サクセッションプランの実施期間中は、計画どおりに育成が進んでいるかを定期的に確認しましょう。
進捗状況を確認し、計画している期間内に育成が間に合うかを都度確かめることが大切です。
サクセッションプランは中長期的な計画になるため、計画が形骸化しないように注意しましょう。

サクセッションプランの企業事例

サクセッションプランを導入している企業の事例をいくつか紹介します。

指名委員会を設立したA社

A社では、サクセッションプランの透明化を目指し、指名委員会の設置や、外部コンサルタントを導入しました。
経営者候補と役員候補に分けてサクセッションプランを実施し、役員に必要な能力については「7つの軸」を明確に定めています。
一部の人物のみで後継者を決めず、透明性の高い方法で育成を行っている点が特徴です。

独自の人材開発モデルを導入したB社

B社では、サクセッションプランの実施に向けて独自の人材開発モデルを導入しています。
候補者を「今すぐ任命可能」「1~3年後に任命可能」「3~5年後に任命可能」の3つに分類し、それぞれの期間に合わせた育成を行っているのが大きな特徴です。
このような分類を行うことで候補者を複数確保でき、世代交代も余裕が生まれます。
また、レベルに応じた育成も行えるようになるため、候補者が成長しやすいこともメリットです。

グローバル幹部の育成を実施したC社

C社では、グローバル化に対応できる幹部候補を育てるために、サクセッションプランを実施しています。30人前後の従業員を対象に、「経営者としての育成」「人事管理」「グローバル化に向けたプログラム」の3つの育成を実施しているのが特徴です。世界で戦える人材の育成とあわせて、自社の経営哲学についても指導を行っています。

まとめ

このコラムでは、サクセッションプランの進め方や企業事例について解説しました。
サクセッションプランを実施することで、次世代の経営者候補・役員候補をゆとりをもって育成できます。実際の任命には至らなくても、経営スキルを持った優秀な人材を育成することは大きなメリットになるでしょう。自社の存続を守るために、できるだけ早めにサクセッションプランを実行してみてください。