このページのまとめ
- ジョブディスクリプションとは、従業員の業務範囲や役割をまとめたもの
- ジョブディスクリプションは「職務記述書」とも呼ばれる
- ジョブディスクリプションは定期的に見直し、業務範囲にズレがないようにする
ジョブディスクリプションとは、従業員が担当する業務内容や必要なスキルなどを詳しく記載した「職務記述書」のことです。採用後のミスマッチを防いだり、人事評価の基準を明確にしたりする目的で導入されています。今回は、ジョブディスクリプションのメリット・デメリットや、作成の際のポイントを解説します。ジョブ型雇用の導入を検討している企業は、ぜひ参考にしてみてください。
ジョブディスクリプションとは
ジョブディスクリプションとは、「従業員が携わる業務の範囲」「業務の難易度」「業務に必要なスキル」をまとめた書類のことです。日本語では「職務記述書」と訳されます。
ジョブディスクリプションの作成には、従業員の業務内容を明確にする目的があります。
もともとは海外で使用されていた書類でしたが、ジョブ型雇用の普及もあり、日本でもジョブディスクリプションの活用が進んでいます。
ジョブディスクリプションのメリット
ジョブディスクリプションのメリットには、次のようなものがあります。
従業員の専門性が向上する
1つ目のメリットは、従業員の専門性を向上させられることです。
業務範囲を広げるよりも、特定の業務に専念したほうが専門性の高い知識とスキルが身に付きやすくなります。また、従業員の専門性を伸ばすことで、市場での競争優位性を高めることにもつながるでしょう。
人事評価の基準が明確になる
2つ目は、従業員の業務内容に適した評価基準を設定できることです。
業務内容がそれぞれ異なる従業員に画一的な評価基準を当てはめると、一部の従業員から不満の声が上がる可能性があります。業務内容によっては、特定の評価項目が必然的に低くなってしまうケースもあるかもしれません。
業務内容に応じた評価基準を設ければ、従業員の納得感が高まり、モチベーションの向上につながるでしょう。
採用後のミスマッチの防止につながる
3つ目は、採用後のミスマッチの防止につながることです。
面接時に業務内容について細かくすり合わせておくことで、入社後のネガティブなギャップを減らすことができます。入社後に担当外の業務を任されることもないため、従業員はモチベーションを保って働けるでしょう。
入社後のミスマッチを防止できれば、従業員の定着率向上が期待できます。
ジョブディスクリプションのデメリット
ジョブディスクリプションの作成には、次のようなデメリットも考えられます。
メリットだけでなく、以下のデメリットが生じる可能性も考慮したうえで導入を検討しましょう。
臨機応変な業務依頼が難しくなる
1つ目が、柔軟な業務依頼が難しくなることです。
従業員の業務に含まれていない「書類の作成と郵送手配」を臨時でお願いした場合、ジョブディスクリプションに記載がないことを理由に断られてしまうかもしれません。
従業員が事務作業に苦手意識を持っている場合、頼まれた業務を上手くこなせずにストレスを感じてしまうケースもあるでしょう。
このように、ジョブディスクリプションに記載された業務しか任せられなくなる可能性があることには注意が必要です。
従業員のポテンシャルを活かしにくい
2つ目が、従業員のポテンシャルを活かしにくくなることです。
たとえば、ジョブローテーションで従業員にさまざまな業務を経験させることで、特定の業務で思わぬ才能を開花させるかもしれません。初めての業務にチャレンジし、強いやりがいを感じることもあるでしょう。
ジョブディスクリプションで業務範囲を定めると、従業員のポテンシャルに気づきにくくなります。
新卒採用には適していない
3つ目が、新卒採用には適していないことです。
就業経験のない新卒の学生は、即戦力となるスキルを持っていない状態で企業に応募することがほとんどです。そのため、業務内容や求めるスキルを明確に定めるジョブディスクリプションにはあまり適していないといえるでしょう。
「中途採用のみジョブディスクリプションを採用する」「新卒の従業員には入社3年目以降からジョブディスクリプションを適用する」などの工夫が必要になります。
柔軟な人事異動が難しい
4つ目が、柔軟な人事異動が難しくなることです。
業務範囲が限定されている従業員が多い場合、退職者が発生しても別部署から人材を異動させることが難しくなります。社内での部署異動ができない場合、新しい人材を新たに採用するコストがかかるでしょう。
柔軟な人事異動ができなくなることを想定して、従業員の業務範囲を定める必要があります。
ジョブディスクリプションの記載内容
ジョブディスクリプション作成に向けて、どのような内容を記載するか知っておきましょう。
ここでは、基本的な記載項目を紹介します。
職種
従業員が携わる職種を記載しましょう。
役職もあわせて記載しておくと、企業が求める役割が従業員に伝わりやすくなります。
業務内容
従業員が担当する業務内容を記載しましょう。
営業を任せる場合は、「自社の勤怠管理システムを新規契約してもらうための法人営業(電話・メール・訪問での営業活動)」「商談のための提案資料・見積書・契約書の作成」のように具体的に記載することがポイントです。
記載外の業務を任せる可能性がある場合は、念のためにその旨を記載しておきましょう。
資格やスキル
業務に必要な資格やスキルも表記しましょう。
ただし、資格やスキルのハードルを上げすぎると、応募が集まらなかったり、任せられる人材がいなくなったりするため注意しましょう。
就業条件
雇用形態・給与・終業時間・就業場所・福利厚生などの就業条件を記載しましょう。
認識の相違が生じないように、誰が読んでも理解できるように記載することが大切です。
例外が発生する可能性があれば、その旨をもれなく明記しましょう。
ジョブディスクリプション作成のポイント
ここでは、ジョブディスクリプションを作成する際のポイントを解説します。
範囲外の業務を任せる可能性があることを記載する
組織全体の業務が滞るのを防ぐために、ジョブディスクリプションに記載していない業務を任せる可能性があることを記載しておきましょう。
突発的な業務も任せられない場合、従業員の欠勤や退職が発生するたびに業務が止まり、企業全体の生産性が低下してしまいます。
このような状況を避けるためにも、必要性の高い業務には業務の範囲にかかわらず対応してもらえる体制を整えておきましょう。
内容の見直しを定期的に行う
ジョブディスクリプションの内容は、定期的に見直しましょう。
企業の経営方針が変われば、同じ業務内容でも細かな変更点が発生するでしょう。
ジョブディスクリプションの内容に変更を加える場合は、あらかじめ従業員の同意を得ることが大切です。
まとめ
今回はジョブディスクリプションについて解説しました。
ジョブディスクリプションを作成する際には、社内の人事異動や範囲外の業務の依頼が難しくなる可能性があることに注意しましょう。特定の職種のみにジョブディスクリプションを適用させたり、例外事項について書類に明記したりすることで、企業全体の業務がスムーズに回るように工夫してみてください。