このページのまとめ
- グリッドは困難に立ち向かい、やり抜く力のこと
- 成功者の共通特性としてビジネスシーンで注目されている
- グリッドはトレーニングによって伸ばせる
社会的に成功する人に共通するポイントとして、グリッドの重要性は増してきています。グリッドとは、困難や逆境に出会っても、くじけず立ち向かう闘志、気概のこと。科学的根拠に基づき、努力し続けることの大切さが証明されています。このコラムでは、グリッドの種類や測定方法、グリッドを身につける方法をご紹介します。
グリッドとは
グリッドとは、「やり抜く力」を意味します。
困難な場面に出くわしても、くじけず立ち向かう闘志、気概などの意味を表す英語です。
社会で成功している人々に共通している心理特性として、近年は教育界や産業界などさまざまな場所で注目されています。
グリッドが注目されている背景
グリッドが注目されている背景は、グリッド理論として努力の継続がいかに重要かを科学的根拠を持って主張しているからです。
そもそもグリッドを提唱したのは、ペンシルベニア大学のアンジェラ・リー・ダックワース教授です。ダックワース氏は、コンサルティングファームを経て教師になった経験から、IQが高くても成績がよいと限らないこと、IQが低くてもグリッドがあれば優秀な成績を納めている生徒がいる事実に気付きました。そこで、心理学面から「人生で成功の鍵を握っている能力は何か」を調査。その結果、研究者として成功している人に共通する要素として、「あきらめずにがまん強くやり抜く力」が重要なことを発見し、理論として成立させたのです。
ダックワース教授はこのグリッド理論よって、「成功するかどうかは、生まれ持った才能や環境によってのみ決定せず、やり抜く力が大切であり、それは大人になってからでも養成することで後天的に伸ばすことが可能」だと主張しています。
たしかに、社会で成功している経営者や著名人、アスリートなど多くの人が、あきらめずに努力を継続することの大切さを語っていることからも、努力を継続することの大切さが理解できます。グリッドは苦労して頑張ることが美徳とされる日本人と相性がよいため、ビジネスシーンだけでなくさまざまな場面で浸透しつつあります。
グリッドを構成する4要素
ダックワース氏が提唱するグリッドは「Guts」「Resilience」「Initiative」「Tenacity」の4つで構成されており、それぞれの頭文字をとってGRITと呼ばれています。それぞれの要素をくわしく見ていきましょう。
Guts
Gのガッツは、日本語で「闘志」を意味します。日常のなかでもガッツという言葉のまま使用されることがあるため、聞き馴染みがあるでしょう。闘志とは、困難なことに立ち向かうことを意味しています。ビジネスシーンでは、課題解決や顧客からの要望など、困難な場面に出くわすことが少なくありません。そのような困難を克服するうえで、闘志は大切な要素になります。
Resilience
Rのレジリエンスは、日本語で「粘り強さ」を意味します。目標を達成するためには、失敗してもあきらめずに粘り強く続けることが必要です。近年は、レジリエンスも「逆境や困難に負けず、環境に適応し、生き抜く回復力」という意味でビジネスシーンで注目を集めています。このように失敗を恐れずに最後まで粘り強くやり抜く力は、成功を収めるうえで大切な要素になります。
Initiative
Iのイニシアチブは、日本語で「自発」を意味します。成功を収めるためには、自ら目標を設定し、その目標を達成するために自らさまざまなアクションを起こしていくことが必要です。イニシアチブには主導権などの意味もありますが、グリッド理論のなかのイニシアチブは、あくまで自発的に行動することを基準としている点に注意しましょう。
Tenacity
Tのテナシティは、日本語で「執念」を意味します。目標を達成するためには、困難や逆境に出くわしても、何としても達成する執念が必要です。日本語でいう執念は、ときに悪い意味で使われることがありますが、グリッド理論のなかでは、最後までやり抜く気概のような良い意味としてとらえましょう。
グリッドの種類
グリッドには、良いグリッドと悪いグリッドの2種類があり、内容や違いを理解することで良いグリッドへの理解を深めることができます。
それぞれのグリッドを詳しく見ていきましょう。
良いグリッド
良いグリッドは以下の8つの種類によって構成されています。
- 情熱
- 幸福感
- 目標設定
- 自制心
- リスク・テイキング
- 謙虚さ粘り強さ
- 忍耐
良いグリッドを発揮出来るようになると、周りの人々から尊敬されるだけでなく、自分のなかに秘めている可能性に気づくことができます。この可能性に気づくことで向上心が湧きあがり、成長につながります。その結果、自分が成長するだけでなく、周囲に対する影響力も増すため、ビジネスシーンで影響力をもつ人材になることが出来るでしょう。
悪いグリッド
悪いグリッドは、良いグリッドを構成する8種類の要素のうち、どれかが大きくかけているものを意味します。良いグリッドを構成するいずれかの要素が欠けてしまうと、「強情グリッド」状態になります。この状態になると、どれだけ道を進んでも結果があがらない、周囲のアドバイスに耳を傾けない、間違った方向に突っ走ってしまうなど悪いサイクルに陥ってしまいます。その結果、周りの人と協調できず、悪い影響を与える人材になってしまう可能性があります。
グリッドを身につける方法
グリッドは、トレーニングをすることで今からでも伸ばすことができます。
グリッドを身につける具体的な方法を見ていきましょう。
今より少し高い目標を設定する
グリッドを伸ばすうえで一番大切なのは、成長思考を持つことです。自分の限界を決めてしまうのではなく、常に上を目指して努力を継続することで能力は高まっていきます。そのためには体を鍛えるように、脳を鍛えるのがポイント。自分なりに目標に立ち向かうことで脳を成長させられます。いきなり全く新しいことに挑戦するのが難しい人は、現在やっていることのなかで今より少し高い目標を設定して努力するところから始めるとよいでしょう。目標を設定する際は、具体的な数値や期間を決めておくことも重要。目標達成までの進捗がわかりやすく、目標達成も明確になります。また、失敗をしてしまってもあきらめるのではなく、失敗を活かして次はどうすればよいかとポジティブ思考でいることが大切です。
成功体験と積み重ねる
まずは、小さなものでも構いませんので、成功体験を積みましょう。成功体験を積むことで、自分にも出来ると自己肯定感や自信につながります。その結果、少しずつ新しい挑戦が出来るようになり、困難や逆境を乗り越えていける粘り強さを手に入れられます。また、これまでの自分の成功体験を紙などに書き出して振り返ることも、自己肯定感を高める手法のひとつです。
グリッドが強い人がいる環境に身を置く
人は、自分がいる集団や環境に影響を多く受けます。そのため、グリッドが強い人がいる環境に身を置くことで、その人の思考や習慣からよい影響を受けたり、目標達成の方法、目標に対する姿勢など具体的なコツも手に入れられる場合もあります。会社では、グリッドの強い人とともに困難なプロジェクトに取り組んだり、グリッドの強い人に指導してもらったりしましょう。周囲の人々によい影響を与えられる人材へ成長できます。
長期視点の目標を立ていく
ビジネスの現場では、業績を上げるために目先の目標に向かってしまうことが少なくありません。しかし、短期的な目標だけを追って、やる気を出し続けていると疲れてしまいます。そこで、中長期的な目標を設定しましょう。中長期的な目標を設定する際は、取り組む仕事に意義を感じられるように設定するのが大切です。なぜなら、意義を感じることで困難に出会ってもあきらめず粘り強く取り組めるからです。このように、中長期的な目標を達成する過程でグリッドは身についていき、周囲によい影響を与えられる人材になっていけるでしょう。
まとめ
社会的に成功している人に共通するポイントとして、グリッドの重要性は増してきています。グリッド理論は努力の継続がいかに重要かを科学的な根拠に基づいて主張しているからです。グリッドは、社会人になってからでもトレーニングすることで後天的に伸ばすことができます。グリッドの要素や種類、トレーニング方法などを理解しながら、グリッドを身につけていきましょう。