このページのまとめ
- 内製化とは、自社業務を外注化せず、自社のみで行うこと
- 内製化のメリットには、ノウハウの蓄積や情報流出のリスク回避などがある
- 内製化を行う際には、人員や設備などの運営体制を整えられるかを検討する
自社の業務をアウトソーシングせず、内製化する企業が増加しています。業務を進めるために、内製化するかアウトソーシングにするか悩んでいる担当者も多いことでしょう。アウトソーシングはコスト削減に効果的とされています。しかし、長期的にみると、内製化の方が良い可能性もあり、検討が必要です。今回は、内製化のメリットデメリットや、企業事例を解説します。アウトソーシングと比較しながら、参考にしてください。
内製化とは
内製化とは、自社業務をアウトソーシングせず、自社のみで行うことです。
特定の業務を行うためのすべての資源を自社でまかなえる状態を指すため、常駐する他社の従業員が業務に携わっている場合は内製化とは呼びません。
自社で行っているすべての業務を内製化している企業もあれば、一部の業務のみを内製化している企業もあります。
内製化のメリット
内製化のメリットには、次のようなものがあります。
意思決定から実行までのスピードが早い
1つ目が、意思決定から実行までがスムーズになることです。
アウトソーシングの場合、外注先の担当者とのスケジュール調整や意思確認に時間がかかり、思うように業務が進まないことがあるかもしれません。
内製化をすればすべてのやり取りが社内で完結するため、スピード感をもって業務を進められるでしょう。
ノウハウが蓄積される
2つ目が、社内にノウハウが蓄積されることです。
アウトソーシングには、「自社に人的リソースやノウハウがない」という問題を解決できるメリットがあります。ただし、アウトソーシングに頼り続けると、「社内にノウハウが蓄積されない」「従業員の知識とスキルが向上しない」などの問題が生じる可能性があります。
内製化を行れば、企業独自のノウハウをもとに商品やサービスを開発し、他社との差別化を図ることができるでしょう。
機密情報の管理がしやすくなる
3つ目が、機密情報の管理がしやすくなることです。
内製化をすると、機密情報の管理方法を自社で細かく決めることができます。
万が一トラブルが発生しても、社内で管理体制が把握できているため、原因の確認から問題解決までをスピーディーに行えることもメリットです。
内製化のデメリット
さまざまなメリットがある内製化ですが、次のような懸念点も考えられます。
メリット・デメリットの両方を押さえたうえで、慎重に検討してみてください。
アウトソーシングよりも運用コストがかかるケースがある
内製化を行う場合、業務を外注するよりも運用コストがかかる場合があります。
たとえば、内製化にあたって各種ツールを契約したり、専門知識のある人材を採用したりするためのコストがかかるでしょう。
自社の経営状況と照らし合わせて、内製化とアウトソーシングのどちらを選ぶべきかを検討する必要があります。
人材育成に時間がかかる
社内で人材を育成する場合は、従業員の教育コストがかかります。
従業員に知識を習得してもらうところからスタートするため、事業が本格的に動き出すまでに時間がかかるかもしれません。
短期的に事業の利益を上げたい場合は、専門知識のある人材の採用やアウトソーシングの検討をしてみると良いでしょう。
事業撤退の判断が難しくなる
内製化を行っている事業が上手くいかなくなった場合、事業撤退の判断がしにくくなることがあります。
特に、事業撤退によって従業員に任せられる仕事がなくなった場合、すぐに雇用契約を打ち切ることは難しいでしょう。また、撤退した事業に携わっていた従業員に別の業務を任せる場合は、社内の人員体制を大幅に見直す必要が出てくるかもしれません。
このように、内製化している事業の撤退には、さまざまなリスクが存在することを念頭に入れておきましょう。
内製化の実施に向けたポイント
内製化の実施に向けて、確認しておきたいポイントを5つ紹介します。
内製化すべき業務なのかを検討する
まずは、自社の経営戦略に基づいて、事業を内製化すべきかどうかを検討しましょう。
自社の主力事業として時間とコストを投資できる場合は、内製化を検討してみても良いでしょう。
一方で、単発的な業務や短期的に成果を出すことが求められる業務であれば、アウトソーシングのほうが適しているかもしれません。
社内における事業の優先度や目指すべきゴールを踏まえて、内製化とアウトソーシングのどちらを選択するかを決めましょう。
人材教育や設備投資にかけられるコストを確認する
内製化の意思が定まったら、どの程度のコストをかけられるかを確認しましょう。
設備面のコストだけでなく、人材採用や人材育成のコストも考慮に入れる必要があります。
投資できるコストを算出したうえで、「どのようなツールを導入するのか」「新しい人材を採用すべきか」などを決めていくとスムーズです。
必要に応じて一部の業務をアウトソーシングする
業務のすべてを内製化するのが難しい場合は、業務の一部をアウトソーシングするのも良いでしょう。
たとえば、従業員の研修のみを外部に委託したり、商品の梱包・発送のみを委託したりする方法があります。
自社ですぐに対応できない業務ではアウトソーシングを活用し、ある程度の体制が整ったタイミングで内製化に切り替えるのも一つの方法です。
内製化に成功した企業事例
ここでは、内製化に成功した企業事例をいくつか紹介します。
セキュリティツールの運用を内製化したA社
A社では、外注していたセキュリティツールの運用を内製化しました。
その結果、社内にノウハウが蓄積されていき、最終的には既存のセキュリティツールを使わずに自社開発ツールで運用を完結できる基盤づくりに成功しています。
アプリ開発を内製化したB社
B社では、社内にエンジニアが一人もいない状態からエンジニア採用を開始し、これまでに外注していたアプリ開発を内製化しました。
その結果、アプリ開発だけでなくエンジニア採用のノウハウも蓄積され、採用から開発までを社内で完結できる体制づくりに成功しています。
まとめ
今回は、内製化のメリット・デメリットや実施のポイントについて解説しました。
内製化を行う場合は、自社の経営戦略をもとに「内製化すべき業務かどうか」「どれほどのコストを投資できるか」などを検討することが非常に大切です。一度にすべての業務を内製化できない場合は、一部の業務を内製化するところから始めても良いでしょう。
自社の状況に合わせて、無理のない範囲で内製化を検討してみてください。