このページのまとめ

  • タイムスタンプとは、データの改ざんや偽造の有無を証明する技術
  • タイムスタンプの利用によって、紙の契約書を電子データで保存できる
  • タイムスタンプ機能が付属された会計ソフトを導入すると効率化できる

電子帳簿保存法の改正もあり、タイムスタンプの利用が急速に進んでいます。タイムスタンプは電子データの内容を証明するために使用され、データの改ざんを防ぐ役割を果たしています。このコラムでは、タイムスタンプが必要とされる理由や、タイムスタンプの具体的な利用方法について解説します。タイムスタンプの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

タイムスタンプとは

タイムスタンプとは、総務省によると、「ある時刻にその電子データが存在していたことと、それ以降改ざんされていないことを証明する技術」です。タイムスタンプが付与された電子データでは、改ざんや偽造が行われていないことの証明を可能にします。また、タイムスタンプは、電子帳簿保存法の改正により、企業でも重要な役割を果たすようになりました。

引用元:総務省「タイムスタンプとは?

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法とは、請求書や帳簿などの書類を電子化して保存することを認める法律です。従来の日本では、請求書などを紙で保存していましたが、効率的な業務運営を妨げる要因になっていました。そこで政府は、電子帳簿保存法を制定し、電子データでの保存を可能にしました。その際、電子データの改ざんを防ぐために注目されるようになったのがタイムスタンプです。電子帳簿保存法では、タイムスタンプが付与された電子データのみ、保存を認めています。

電子データの完全性の証明とは

電子データの完全性の証明とは、電子データの改ざんを防ぎ、もし改ざんがあった場合でも、改ざん内容が確認できることを指します。電子データが法的に認められるためには、電子データの完全性の証明が必要です。

具体的な要件として、次の3つがあります。

  • 電子データの存在が明確であり、変化しない
  • 電子データの改ざんを防ぐことができる
  • 電子データが改ざんされた場合、改ざん内容が分かる

また、電子データの完全制性の証明を実現するためには、タイムスタンプと電子署名が必要です。タイムスタンプと電子署名の違いを確認しましょう。

電子署名との違い  

電子署名とタイムスタンプでは、証明する内容が異なります。まず、電子署名では、「電子データを作成した人物」と「電子データの内容」を保証します。一方で、タイムスタンプは、「いつ電子データが作成されたか」と「電子データの内容」を保証します。このように、電子署名は作成した人物が正しいことを証明し、タイムスタンプでは、作成された時間を証明します。また、どちらも電子データの内容を証明するために必要です。

参照元:e-GOV 法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)

タイムスタンプが必要な理由

タイムスタンプが必要とされる理由は、主に次の4つです。

PDFの長期保存に必要

タイムスタンプは、PDF化した電子データを長期保存するために使用されます。なぜなら、タイムスタンプの有効期間は約10年だからです。タイムスタンプ同様、電子データの内容を証明できるものが電子署名です。電子署名の有効期限は1年から5年で、長期保存には適していません。一方、タイムスタンプは約10年の有効期限があります。そのため、企業で長期契約を行った際の契約書を保存する際には、タイムスタンプの活用が必要です。

電子署名をカバーできる

タイムスタンプは、電子署名の弱点をカバーできます。電子署名で証明できない、「いつ電子データが作成されたか」を証明できるためです。電子署名が証明できる内容は、作成者と電子データの内容です。そのため、電子署名のみの場合、過去の日付で契約書の作成が可能になってしまいます。
一方で、タイムスタンプを付与していれば、日付の改ざんを防ぐことができます。このように、タイムスタンプは、電子署名では証明できない日付を証明する役割があります。

電子データの有効期限延長

タイムスタンプは、電子データの有効期限を10年よりも延長可能です。保管タイムスタンプの付与を行うことで、電子署名の有効期限を延長できるためです。電子署名の有効期限は、最長でも5年で設定されています。そのため、5年を超えてしまうと電子データの有効性を証明できなくなります。
しかし、保管タイムスタンプを利用すると、電子署名の有効期限を10年増やすことができます。このように、タイムスタンプは、電子データの有効期限を延長する働きもあります。

電子帳簿保存法に対応できる

タイムスタンプは、電子帳簿保存法に対応するために必要です。電子帳簿保存法では、電子データの改ざんを防ぐため、タイムスタンプの付与を要件に定めているからです。電子データの保存では、紙で保存していた文書をスキャンし、電子データに変換します。その際、そのままのデータでは改ざんの恐れがあります。このような改ざんを防ぐための要件が電子帳簿保存法で定められており、タイムスタンプの付与が求められています。

タイムスタンプの利用方法

タイムスタンプを利用するためには、「時刻認証業務認定事業者との契約」または「タイムスタンプの付与が可能なシステム導入」が必要です。以下で詳しく解説します。

時刻認証業務認定事業者を利用する場合

時刻認証業務認定事業者を利用する場合、次の手順でタイムスタンプを利用します。

  • 時刻認証業務認定事業者から、タイムスタンプ機能のある電子証明書を発行
  • ソフトウェアに電子証明書を読み込む
  • タイムスタンプを付与する

タイムスタンプの付与が可能なシステムを使う場合

タイムスタンプ付与が可能なシステムも販売されています。メリットとしては、自社で必要なときに、タイムスタンプ付与が行えることです。

タイムスタンプを使用できるシステムには、次のようなものがあります。

  • 電子署名サービス
  • クラウドストレージ
  • 会計ソフト
  • 経費精算システム

システムのなかには、タイムスタンプ機能をもつ、会計ソフトや経費精算システムもあります。電子帳簿保存法への対応だけではなく、業務効率化もあわせて実現できるため、検討すると良いでしょう。

参照元:総務省「タイムスタンプ認定制度の現状と主な論点について

タイムスタンプに関する法改正 

2022年に、改正電子帳簿保存法が施行されました。事前承認制度の廃止など、7件の変更があるため、覚えておきましょう。また、7件の変更のうち、2件がタイムスタンプに関わる法改正です。法改正がタイムスタンプに与える影響を押さえておきましょう。

タイムスタンプ要件の緩和

電子帳簿保存法の改正により、タイムスタンプの使用要件が「最長概ね約2ヶ月と7営業日以内」に緩和され、記録事項の入力期間と同等の扱いになりました。
また、電子データの変更に関しても、タイムスタンプ要件が緩和されています。従来は、電子データの削除や修正にタイムスタンプが必須でした。今回の法改正によって、電子データの保存が確認できるクラウドシステムを使用していれば、タイムスタンプの付与がなくても有効と認められます。

電子取引時のデータ保存が義務化

メールでの取引や、インターネットでの取引時に、データ保存が義務化されます。電子データを紙で保存したり、出力したりすることができなくなるため注意しましょう。保存した電子データには、タイムスタンプを付与して保管を行います。
また、電子データの訂正や削除を行った場合もタイムスタンプの付与を行うか、訂正記録が残るシステムを利用する必要があります。タイムスタンプが付与されていない場合は有効な取引データとして認められないため、注意しましょう。

引用元:国税庁「電子帳簿保存法が改正されました

まとめ

業務の効率化を図るため、紙の契約書から、電子データに移行する企業が増えています。国も電子データへの移行を後押ししており、電子帳簿保存法の改正は、その政策のひとつです。また、電子データを保存するためには、タイムスタンプが必要です。タイムスタンプ付与可能なシステムを利用するか、時刻認証業務認定事業者への申請を行いましょう。法改正に備えるためにも、タイムスタンプの導入を行い、電子データへの対応を行っていきましょう。