このページのまとめ

  • CHROとは、人事面の戦略を立て、経営を支援する責任者
  • CHROは、従業員の育成計画立案や人事施策の管理も行う
  • CHROには戦略立案力のほかに、コミュニケーション能力や経営知識が必要

人材確保の難化や経営判断の重要性増加とともに、CHROを導入する企業が増加しています。CHROは、人事面から戦略立案や経営陣の支援を行う人材であり、人事と経営の視点を兼ね備えているからです。今回は、CHROが必要とされる背景や、企業で担う役割を解説します。CHROは、外資系企業での導入も進んでいるため、参考にしてください。

CHROとは

CHROとは最高人事責任者のことで、「Chief-Human-Resource-Officer」の頭文字を取ったものです。人事に関する最高の責任をもち、経営者と同等レベルで戦略を実行する役割があります。日系企業での導入割合は低く、2017年度には、12.8%でした。外資系企業の導入割合が37.7%であることを考えると、まだ普及が進んでいない状況です。

参照元:経済産業省「日本におけるCHROの設置状況

CHOは同義

CHROと似たものに、CHOがあります。CHROとCHOは同じ意味を表すため、覚えておきましょう。また、CHOが表す意味としては、次のようなものがあります。

  • Chief-Human-Officer
  • Chief-Human-capital-Officer
  • Chief-Human-resource-Officer

人事部長との違い

人事部長との違いは、直接経営に関わるかどうかです。人事部長は、人事部門の責任者であり、企業の意向に沿って人事戦略を行うことが一般的です。一方で、CHROは経営陣の一員であり、戦略も同時に立案します。このように、CHROと人事部長は、両者とも人事の責任者ですが、経営に関わるかどうかの違いを持ちます。

HRBPとの違い

HRBPとは、HRビジネスパートナーの略称です。人事戦略を実行するために、経営者のビジネスパートナーとしてサポートを行います。HRBPは、コンサルタントに近いことを覚えておきましょう。事業の責任者ではないことに、注意が必要です。一方で、CHROは執行役員の役割があり、人事戦略に対して責任をもちます。このように、HRBPとCHROの違いは、責任と経営参加の有無です。

CHROが必要とされる背景 

CHROは外資系企業に多い役職ですが、日系企業でも需要が増しています。人事と経営の視点を持ち、企業の課題解決に貢献できるためです。ここでは、CHROを必要とする企業が増加している背景を解説します。

経営判断の重要性が増加

現代では、情報化社会の発達、日本のグローバル化など、さまざまな変化が発生しています。そのため、企業は社会の変化に対応できる、経営判断の重要性が増しています。たとえば、新型コロナウイルスの発生により、企業はテレワークへの移行などの経営判断を行いました。このような問題に対して、スムーズに対応できているかどうかで、企業の業績は変わります。社会の急激な変化にも対応できる組織を作るために、CHROの役割が重要です。

人材採用の強化が必要

CHROが必要とされる背景として、生産年齢人口の減少が挙げられます。企業は減少する生産年齢人口を考えながら、人材採用に力を入れることが求められるためです。生産年齢人口とは、15歳から64歳までの人口のことです。2015年では7,728万人でしたが、2029年には7,000万人を割り、2565年には4,529万人を割るとされています。このように、日本での労働者は減り続ける傾向にあり、企業は人材採用の強化が必要です。そのため、CHROを採用し、優秀な人材の獲得と育成を行う取り組みが求められています。

参照元:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口

CHROに求められる能力 

CHROに求められる能力には、以下のようなものがあります。

経営知識

CHROは経営的な視点から、人事戦略を立案します。そのため、企業をサポートできる経営知識が求められます。他社のマネジメント経験をもちあわせていると、より能力を発揮できるでしょう。

人事労務の経験

CHROは人事の責任者です。そのため、人事労務の経験が求められます。たとえば、人事管理や育成、労働基準法、法律改正など、さまざまな知識や経験をもっていると良いでしょう。新しい情報を取り入れながら、社内制度や規定を変えていく動きが求められます。

戦略立案力

人事の知識や経験を活かし、戦略を立案する力も必要です。市場経済や競合他社の動向を踏まえた、独自の戦略が求められます。また、日々変化する社会情勢にも対応し、素早い判断で決めていくだけではなく、長期的な視点での戦略立案も重要です。

コミュニケーション能力

CHROは、人々を調整するコミュニケーション能力も必要です。現場と経営陣をつなぐ役割であり、組織全体をまとめるケースもあるためです。現場と経営陣は話をする機会が少なく、理念が浸透していなかったり、現場の声が届いていないケースもあります。CHROは現場と経営陣の間に入ることで、戦略の実行や問題解決を果たします。

課題解決のスキル

自社で発生している問題を把握し、解決するスキルも重要です。状況を冷静に分析し、課題を明らかにします。人事の課題は大きなものから、現場レベルの小さいものまでさまざまです。規模に関わらず、人事の課題をひとつずつ解決できる能力が求められます。

CHROの主な役割

CHROに求められる役割には、次のようなものがあります。

人事面からの経営サポート

CHROは人事の責任者でもあるため、人事面から経営のサポートを行います。人事戦略の立案を経営陣の視点から提案する役割です。たとえば、人材は足りているか、足りない場合には、どのような人材が、いつまでに何人必要かなどを助言します。経営陣の指示を受けて動く人材とは異なり、経営サポートを行う役割があることを覚えておきましょう。

人事施策の管理

目標や掲げた戦略の達成に向けて、人事施策の管理も行います。経営陣への進捗報告と、現場指示の両方が必要なため、注意しましょう。たとえば、採用活動は予定どおり進んでいるか、人事異動や配属後にトラブルはないかなどを確認します。問題が起きた場合には、素早く対処を行うのも、CHROの役割です。

従業員の育成計画立案

従業員の育成計画を行うことも、CHROの役割です。企業のビジョンや戦略に基づいて、人材の育成計画を考えます。企業が発展し、成長するためには、人材育成が欠かせません。自社が求める人材の育成カリキュラムを作成し、現場に浸透させる力も必要です。

人事評価制度の立案

従業員を評価する、人事評価制度の立案もCHROの仕事です。評価基準に問題はないか、適切に評価されているかなどを確認します。もし、評価制度に問題がある場合は、検証を行い、再設定を行うのもCHROの役割です。

企業理念の浸透

経営陣の考えた企業理念を浸透させることも、CHROの役割です。なぜなら、CHROは、経営陣と現場の橋渡しを行う立場だからです。企業理念を掲げても、従業員が理念を理解し、実行しなければ、浸透しているとはいえません。企業理念の従業員に対する浸透度を確認し、必要であれば自ら伝えることも、CHROの仕事です。

まとめ

CHROの役割は、経営陣を人事面から支援を行なうことです。現代は、グローバル化など変化の多い社会情勢のため、CEO以外に経営判断ができるCHROの需要が高まっています。また、CHROは、経営陣と現場をつなぐ役割も担います。企業理念を浸透させたり、現場の意見を経営陣に伝えたりと、幅広い役割が期待できるでしょう。日本では、CHROの導入企業が少なく、これから設置を行う企業も多いことでしょう。役割を明確にし、戦略の一部を任せることで、企業の発展につながります。