このページのまとめ

  • 経験学習モデルとは、経験を教訓に変えて次回の経験に活かす学習方法
  • 経験学習モデルは、経験から内省・教訓・実践のプロセスを繰り返す
  • 経験学習モデルでは自分で考えることが重要なため、意見を押し付けないように注意

従業員が成長するために、経験学習モデルを導入する企業が増えてきています。経験学習モデルとは、自らの経験を内省し、そこから得た教訓を活かして行動する学習サイクルのことです。経験学習モデルは、実施方法を間違えてしまうと思うような成果が出ない可能性があります。今回は、経験学習モデルの実施方法や実施時のポイントを解説します。

経験学習モデルとは 

経験学習とは、経験・内省・教訓・実践のプロセスを通して自らを成長させていく方法のことです。ビジネスの場面では、この4つのサイクルを何度も繰り返しながら自己成長を図ることが求められます。経験学習モデルは、新入社員だけでなく中堅以上の社員にも効果のある学習方法です。

経験学習モデルが使用できる場面

経験学習モデルがどのような場面で使用できるか解説します。業務以外の場面でも使用できるため、参考にしてください。

人材育成

従業員の育成の際に、経験学習モデルを活用して自己内省を促しましょう。営業担当の従業員の場合、商談の結果を振り返り、「先方の要望を聞き出せなかった」「自分ばかりが話してしまった」といった反省ができるでしょう。このような反省点が見つかったら、「次は先方に積極的に質問を投げる」「契約条件を確認する」といったアクションにつなげることができます。
従業員が自らの経験から気づきを得て次の行動に活かせるようにサポートしましょう。

ナレッジマネジメント

ナレッジマネジメントとは、個人が持つノウハウを体系化し、企業全体で共有する方法のことです。一度体系化したノウハウであっても、経験を重ねるごとに改善が必要になるケースがあります。ナレッジマネジメントのノウハウを実践した際に「もっと良いやり方があるのではないか」と感じたら、次の行動に活かしましょう。新しいやり方が上手くいけば、ノウハウを更新することが大切です。

人事評価

人事評価の場面で、経験学習モデルを使って評価するのも良いでしょう。あらかじめ設定した目標に対して、達成できた内容と達成できなかった内容を振り返ってもらいます。振り返った内容から反省点を発見し、次に取るべき行動を考えてもらうことで従業員の成長を促しましょう。人事評価のたびにこのサイクルを繰り返してもらうことで、従業員は成長し続けることができます。

経験学習モデルのプロセス 

経験学習モデルは、以下の4つのプロセスで構成されています。

具体的経験

まずは自分で考えて行動を起こします。普段の業務であっても、目的や意図をもって行動してみましょう。注意点は、マニュアルどおりに行動したり、指示どおりに行っていては、学習効果が落ちてしまう点です。自分で考えて、行動するようにしましょう。もっている知識を活かせずに失敗するかもしれません。しかし、失敗も成長につながるため、臆せずチャレンジしましょう。

内省的反省

内省的反省では、行動の結果に関して振り返りましょう。成功でも失敗でも、振り返ることが重要です。失敗してしまった場合には、失敗の原因や理由、次回への対策を考えます。成功した場合でも、何が良かったのかを振り返りましょう。失敗でも成功でも、原因を考えることが内省的反省です。

概念化

1つの経験を他の場面でも活かせるように概念化しましょう。基礎を応用していく感覚をもつことが大切です。概念化できれば、似たような場面でも過去の経験を活かし、解決に導くことができるでしょう。可能であれば、経験から得た教訓を、別の従業員にも共有できるようにしましょう。別の従業員に共有できるほど概念化できれば、組織全体のノウハウとして活用できるでしょう。

能動的実践

概念化で得た経験が応用できるか、実践してみましょう。概念化はまだ仮説の段階であり、再現できるとは限りません。もしかしたら、応用の方法が間違っている可能性もあるでしょう。経験学習モデルで学ぶためには、経験を別の経験に活かすことが重要です。概念化した経験は、別の場面ですぐに試してみるようにしましょう。この行動を繰り返すことで、経験学習での学びにつながります。

経験学習モデル実施時のポイント

経験学習モデルを成功させるためには、次のポイントを押さえることが大切です。

自ら考えて行動させる

経験学習モデルでは、従業員が自ら考えて行動することが大切です。従業員の考え方や行動が間違っていた場合でも、まずは否定せずに受け入れるようにしましょう。助言が必要な場合は、「どうしてそのように考えたのか」を確認してから行うことが重要です。

従業員に振り返りの時間を与える

行動に移したあとは、その行動の良かった点と悪かった点を振り返ってもらいましょう。
悪かった点があれば、次にどのような行動を取るべきかもあわせて考えてもらいます。
良かった点についても振り返り、次の行動に引き続き活かしてもらいましょう。

従業員にフィードバックを行う

従業員の振り返り内容を確認したら、第三者の視点からフィードバックを行いましょう。
振り返り内容に抜け漏れがある場合は、改善してほしいポイントや期待する行動についてアドバイスします。フィードバックの内容を踏まえて次の行動を行い、反省点を振り返ってさらに次の行動につなげる、というサイクルを繰り返すことで従業員が継続して成長できるようにサポートしましょう。

経験学習モデルの導入事例

ある日本企業では、経験学習モデルを「短期」と「長期」に分けて実践しています。
短期では日々の業務の振り返りを行い、長期では人事評価で設定した目標の達成度合を振り返ります。短期と長期の振り返りを並行して行うことで、従業員の中長期的な成長をサポートしているのです。

まとめ

経験学習モデルでは、経験・内省・教訓・実践のプロセスを繰り返すことが大切です。
その際には、従業員自身の考えを尊重し、こちらの意見を押し付けないようにしましょう。
自分の力で反省点を見つけて次のアクションに活かすことで、従業員の思考が鍛えられていきます。
経験学習モデルのサイクルを繰り返し、従業員の育成に活かしましょう。