• 部下とうまくコミュニケーションが取れない
  • 部下が何を考えているのかわからない
  • 仕事にも支障をきたしている

など、部下とのコミュニケーションに悩む方は多くいらっしゃいます。後に解説しますが「部下と本音でコミュニケーションをとれている」と感じている管理職はわずか16%しかいないというデータもあり、管理職にとって部下とのコミュニケーションは重要な課題です。

この記事では、部下とのコミュニケーションを改善するための具体的な方法と、避けるべき行動について解説します。

この記事の監修者

曽和 利光(そわ・としみつ)

株式会社人材研究所 代表取締役社長

新卒で株式会社リクルートに入社後、ライフネット生命保険株式会社と株式会社オープンハウスを経て、2011年に株式会社人材研究所を設立。「人と、組織の可能性の最大化」をテーマに掲げ、人事、採用にコンサルティング事業などを展開。『人事と採用のセオリー』など、これまで多くの書籍を出版し、いずれも大きな話題を集めている。

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部下とのコミュニケーションで悩む人は多い

Chatworkの調査によれば、部下と本音でコミュニケーションを取れていると感じている人は約16%しかいないことがわかっています。この結果からもわかるように、多くの企業の管理職や部下を持つ役職の方々は、コミュニケーションの重要性を認識しつつも、それを実践するのが難しいと感じています。

また、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの報告書によれば、社内のコミュニケーション不足は

  • 社員の士気の低下
  • 目標達成の失敗
  • 売上の喪失


などを引き起こす可能性があるとされています。さらに、大企業では年間平均6420万ドルの損失をもたらし、中小企業でも42万ドルの損失をするリスクがあるとする調査結果も出ています。

これらの調査からわかるように、コミュニケーションの課題を放置することで、長期的に組織に大きな影響をもたらすと考えられます。

参考:

Chatwork株式会社「上司と部下が本音で話せている割合は16.6%!「コミュニケーションを改善したい」と考えている人が8割以上に。上司・部下のコミュニケーション実態を調査

 The Economist Intelligence Unit”Communication barriersin the modern workplace”

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部下とのコミュニケーションの取り方のコツ

ではどのように部下とコミュニケーションを取るべきでしょうか。以下では、米国Gallo Communications Group の社長であり、コミュニケーションコーチおよびスピーカーとしても活躍するカーマイン・ギャロ氏が、「Harvard Business Review」で公開している情報をもとに解説します。

メッセージを明確かつ簡潔に伝える。

部下に指示や意見を伝える際には、わかりやすく短い言葉で要点を伝えることが大切です。曖昧な表現や専門用語を避け、シンプルな言葉を選びましょう。また、具体的な例や事実を交えて説明することで、メッセージがより理解しやすくなります。

声掛けの例:

「今回のプロジェクトでは、コスト削減と品質向上の両立が求められています。具体的には、原材料の調達方法を見直し、生産工程の効率化を図ることが重要です。期限は来月末までです。各自の役割分担については、後ほど詳細を共有します。」

「よしなにやっておいて」「いい感じに役割分担決めておいて」など、日々の業務のコミュニケーションで曖昧な指示をやってしまいがちですが、これらは避けるべきといえます。

部下の話をよく聞き、共感を示す。

部下との信頼関係を築くためには、部下の意見や感情に対して、真摯に耳を傾けることが重要です。相手の話を遮らずに最後まで聞き、理解したことを確認するために部下の話した内容を繰り返したり、要約すると効果的です。

また、その上で共感を示すことで、部下は自分の意見が尊重されていると感じられます。

声掛けの例:
「今の説明を聞いて、○○さんが直面している課題の難しさがよく理解できました。確かに、リソースが限られている中で、顧客の要望に応えるのは簡単ではありませんね。まず、○○さんの努力には感謝しています。今後どうするべきか、一緒に解決策を探っていきましょう。」

上司からすれば「まだそんなことで悩んでいるのか」「もっとこうすればいいのに」と思うかもしれませんが、部下にとっては初めての状況に直面している可能性もあります。

その時の状況にもよりますが、すぐに話をさえぎって、アドバイスするよりも、一度部下の話をすべて聞いてから解決策を提示するのがよいでしょう。

ストーリーテリングやビジョンの共有

ビジョンや目的を明確に伝えることで、部下は自分の仕事の意義を理解し、モチベーションが向上するとされています。また、ストーリーテリングを活用して、目標達成の過程や成功事例を共有することで、より具体的にビジョンをイメージさせることができます。

声掛けの例:
「この仕事の最終目標は、我々の会社が最も大事にする「顧客満足度」を向上させることです。そのためには、私たちのサービスがどのように役立つかを理解することが重要です。我々は特にこれらを長年重視してきたからこそ、今も同じ価格でも他社より選ばれているわけです。」

仕事を依頼する際にどうしても「これ時間あるときにやっておいて」と依頼しがちですが、その仕事がどのような目標・目的に接続されているのかを示すのも、上司の仕事といえます。

メッセージが行動や価値観と一致している。

リーダーとしての言動が一貫していることは、部下の信頼を得るために不可欠です。自分の価値観や会社のミッションに基づいた行動を取り、部下にもその重要性を伝えましょう。言葉と行動が一致していることが、リーダーシップの信頼性を高めます。

声掛けの例:
「当社の価値観である『誠実さ』と『顧客第一主義』は、私たちの行動指針です。クライアントとの約束を守り、期待以上の成果を提供することが何より大切です。時には難しい決定を下さなければならないこともありますが、長期的な信頼関係を築くためには、誠実さを貫くことが不可欠です。」

上記のメッセージを伝えるとともに、実際に行動に移している必要があります。「私の上司はいつも納期を守っているな」「定例に一回も遅れないな」「細かいことでもすべて守っているな」と実際に思ってもらうことで、より説得力をもたせることができます。

参考:

Harvard Business Publishing “How Great Leaders Communicate”

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部下とのコミュニケーションにおいて避けるべき行動とは?

一方で、以下ではどのような行動を避けるべきかについて、オクスフォードユニバーシティプレスが公表した論文をもとに解説します。

メッセージの不明確さ

管理職として部下にメッセージを伝える際、曖昧な表現や誤解を招くメッセージは避けるべきです。例えば、「この仕事、緊急度高めだから、”なるはや”でやっておいて」といった抽象的な表現は、部下に誤解を与えたり、不満を招いたりする可能性があります。

「なるはや」はいつまでなのか、他のタスクよりも優先してやるべきなのかもあわせて伝えるようにしましょう。

部下の意見を軽視・無視すること

仕事を遂行する部下の意見やニーズを軽視したり、無視したりすることは避けるべきです。もちろん上司の方が経験豊富で、部下に対して不足を感じる部分もあると思いますが、意見を採択できない場合は、どこを修正すべきなのかを伝えましょう。

また部下が出してきた意見の中に良い部分があれば、それを実際の仕事に反映することも重要です。部下の意見を聞かない行為を繰り返すと、部下は「自分が考えても意味がない」と感じるようになり、コミュニケーションを避けるようになる可能性があります。

聞く姿勢が悪い

コミュニケーションの一環として聞くことを軽視しないことが重要であると先ほど解説しましたが、聞く姿勢もまた重要です。

たとえば、部下の話を注意深く聞くことで、双方向の理解が深まり、より効果的なコミュニケーションが実現します。

何か作業しながらつい部下の話を聞いてしまいがちですが、なるべく相手の目を見て話を聞くようにしましょう。

信頼の欠如

双方向で効果的なコミュニケーションをとるためには、「信頼」が重要です。信頼のない状態でメッセージを伝えても、部下に受け入れられにくくなります。

部下に話を聞いてもらったり、部下から意見を言ってもらうためには日々の行動が重要です。たとえば、部下に対して課しているルールを上司が守らないなどの状況は信頼を失いかねません。日々の行動を見直すことも意識しましょう。

矛盾した情報の伝達

矛盾したメッセージを避けることが必要です。部下は上司のいったことを実行しようとしますが、仮にそのメッセージが矛盾していると、「うちの上司、大丈夫かな。」と不安になってしまいます。

たとえば上司が昨日「Aの業務を優先的にやって」と依頼していたものが、今日は「Bの業務はまだ?」と部下に言ってしまうと、「先にAの業務をやってと言ってたのにな」と部下が不満を感じる可能性があります。

職場の状況は変わりやすく、昨日とは真逆のことを伝えないといけない瞬間もありますが、その場合は、背景や起きている状況も同時に伝えることを意識しましょう。

建設的ではない批判や中傷

特に意図や代替案のない非建設的な批判や中傷を避けることが重要です。毎回批判され、その意図もわからないままだと、部下は「また批判されるだけだろうな」と感じ、意見を積極的にいわないリスクも発生します。

フィードバックを送る際は「これはダメ」だけではなく、なぜダメだったのか、その理由をセットで伝えるようにしましょう。

人材研究所のコメント

​​現在の若手社員はZ世代にあたり、一般的に承認欲求が強いと言われています。ある調査で、大学生を対象に「理想的な上司とはどのような人物か」というアンケートを行った結果、第一位は「自分を理解し、成長を支援してくれるコミュニケーションができる上司」でした。

この結果を踏まえると「Z世代とはこういうものだ」と自らの偏見を投影して部下を見るタイプの上司は、信頼を得るのが難しくなります。そのため、言行一致はもちろんのこと、部下が大事にしている価値観や志向性を把握し、それに基づいてコミュニケーションをとることが重要です。​ 

参考:

Munodawafa, D. (2008). Communication: Concepts, practice and challenges. Health Education Research, 23(3), 369-370. https://doi.org/10.1093/her/cyn024 

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明日から実践できる6つのコミュニケーション改善術

「企業ミドル・マネジャーのコンピテンシー・モデル』の論文に基づき、「明日から実践できる」6つのコミュニケーション改善術をご紹介します。

明日からの小さな習慣の積み重ねが、信頼を生む第一歩になります。

「話は最後まで聞く」が信頼のスタート

部下との信頼関係を築く第一歩は、相手の話を最後までしっかり聞くことです。途中で遮ったり、自分の意見をすぐに挟んでしまうと、部下は「話しても無駄だ」と感じてしまいます。

相槌やうなずきで「聴く姿勢」を示しつつ、話の最後には「それで、どうしたいと思ってる?」と問いかけると、自分の頭で考える力も育ちます。小さな傾聴の積み重ねが、信頼を深め、率直なコミュニケーションの土台になります。

「報連相しやすい空気」をつくる

報連相は、指導の場ではなく「安心して話せる時間」として設計しましょう。部下が報告してきたときは、内容の正誤に関わらず「ありがとう」「助かったよ」と一言リアクションを返すことが大切です。

それだけで、部下は「ちゃんと聞いてもらえている」と感じ、次も安心して話しかけられるようになります。週に一度、話しかけやすいタイミングを明確に設けるのも、報連相の習慣化に効果的です。

指示には「背景」を添える

業務を依頼するときに、目的や背景を伝えずに「これお願い」と言っていませんか?背景を伝えない指示は、ただの“作業”になりがちです。

なぜそれをやるのか、どのような価値があるのかを一言でも添えるだけで、部下の納得度はぐっと高まります。たとえば「この資料は来週の会議に使うから、早めに欲しい」と伝えれば、部下は目的意識をもって取り組むことができ、自律的な姿勢も育っていきます。

ミスしたときこそ“信頼”を育てるチャンス

部下がミスをしたとき、感情的に叱ってしまうのは逆効果です。ミスを責めるよりも、「なぜそうなったのか」「どう判断したのか」と問いかけることが重要です。本人の視点を理解しようとすることで、部下は安心して本音を話せるようになります。

その上で「次に同じ場面が来たらどうする?」と建設的な対話につなげると、反省と成長の両方を促すことができます。ミスは、育成と信頼構築のチャンスでもあるのです。

「ありがとう」を伝える習慣をもつ

部下が仕事をしたとき、「ありがとう」と伝えていますか?当たり前のことに思えるかもしれませんが、感謝の言葉はモチベーションを高め、関係性を深める最もシンプルで効果的な手段です。

特に、「〇〇さん、あの対応ありがとう」のように名前を添えて具体的に伝えると、承認の力はさらに強まります。週1回、チームの誰かの“よかった行動”を共有するなど、承認の習慣をチーム文化にしていくのもおすすめです。

自分のコミュニケーションを振り返ってみる

部下のコミュニケーションに課題を感じたときは、まず自分自身の接し方を振り返ってみましょう。たとえば「週1回以上、部下と雑談しているか?」「指示の背景をきちんと説明しているか?」といった問いを自分に投げかけてみてください。

自分では意識しているつもりでも、実は“話しづらい上司”になっていることもあります。気づきの数だけ改善のチャンスがあります。まずは自分の言動を棚卸しすることから始めてみましょう。

参考:

Xiaojiao, Y., Arshad, M. A., Fangyu, L., & Huaming, Z. (2025). Competency model of corporate middle managers: An embeddedness theory perspective. International Journal of Academic Research in Business and Social Sciences, 15(5). https://doi.org/10.6007/IJARBSS/v15-i5/25348

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まとめ

部下とのコミュニケーションは、管理職にとって避けて通れない課題です。明確で具体的なメッセージの伝達、部下の意見を尊重する姿勢、双方向の対話を重視することが重要です。

普段の業務も忙しくて、コミュニケーションも雑になってしまいがちですが、普段から意識することで職場の環境はより良くなっていくでしょう。

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