社内コミュニケーション不足が業績や職場環境に悪影響を及ぼすことは避けたいですよね。株式会社オトバンクが実施した調査では、若手社員の8割以上が「社内コミュニケーションの重要性」を認識している一方で、半数以上が「コミュニケーション不足」を感じています。

本記事では、若手社員との効果的なコミュニケーション方法について、具体的な対策を徹底解説します。若手社員が職場に求めるものや、コミュニケーションの注意点を理解し、社内の連携を強化しましょう。

この記事の監修者

曽和 利光(そわ・としみつ)

株式会社人材研究所 代表取締役社長

新卒で株式会社リクルートに入社後、ライフネット生命保険株式会社と株式会社オープンハウスを経て、2011年に株式会社人材研究所を設立。「人と、組織の可能性の最大化」をテーマに掲げ、人事、採用にコンサルティング事業などを展開。『人事と採用のセオリー』など、これまで多くの書籍を出版し、いずれも大きな話題を集めている。

若手社員とのコミュニケーションは不足しがち

株式会社オトバンクが若手社員500名に向けて実施した調査によれば、若手社員の8割以上が「社内コミュニケーションは重要」と回答していますが、実際には半数以上が「社内コミュニケーション不足」を感じていることがわかりました。

さらに、株式会社学情が実施した調査によれば、コロナ以前と比較して、飲み会など仕事以外でのコミュニケーションの機会を「確保できていない」と回答した企業が7割を超えることがわかりました。

このように、若手社員とのコミュニケーションに課題を感じている方は少なくなく、また近年ハラスメントへの対策がより厳しくなっている今、コミュニケーションに気を使う方も多くいると考えられます。

若手社員が職場に求めるものとは?

若手社員と効果的なコミュニケーションをとるためにも、若手社員が職場に求めているものを理解する必要があります。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズが実施した「新入社員意識調査2023」によれば、 働きたい職場の特徴に関する質問に対して、「お互いに助けあう(66.4%)」、「お互いに個性を尊重する(50.7%)」といった回答が最も多いことがわかりました。

また同調査によれば、上司に期待することに対して「相手の意見や考え方に耳を傾けること(49.5%)」という回答が最も多いことがわかりました。

また「一人ひとりに対して丁寧に指導すること(49.1 %)」という回答が多かったこともわかっています。

その他、仕事で重視することにおいて「成長」や「貢献」が上位にきており、意外にも金銭は下位にきています。

これらの結果をみると、職場内でのコミュニケーションにおいては、個人として尊重され、かつ仕事においては社会とのつながりや社会への貢献度を重要視していることがわかります。

若手社員がコミュニケーションに求めるものとは?

上記の若手社員の傾向をふまえて、どのようなコミュニケーションが求められるのかについて、見ていきましょう。

現代の若手社員は主に以下のような点をコミュニケーションに求めていると考えられます。

社会とのつながりや目的意識を感じさせるコミュニケーション

先ほどの調査でも社会とのつながりを重視していることがわかりましたが、フロリダ大学が公開している論文でも、多くのミレニアル世代(誕生年が1981年以降で2000年代で成人になる世代)は、「企業が社会を貢献する役割を果たすべきだ」と考えていることがわかりました。

そのほか、この世代はマウント・セント・ヴィンセント大学の論文でも、地域社会に貢献している文化・組織を重視しているとされており、仕事と社会とのつながりを重視する傾向があるといえます。

このような価値観をもった若手社員の世代と効果的にコミュニケーションをとるためには、「その仕事がどう社会に貢献できている」のかを説明する必要があるでしょう。

たとえば、「この仕事は、地域の活性化に大きく寄与しています。例えば、新しい施設の建設により、地域の雇用が増え、地元経済が活性化します。あなたの貢献がこの重要な取り組みに直結しています。」

「このサービスは少子高齢化による労働人口不足に対処するための重要なシステムです。例えば、新しい自動化技術を導入することで、限られた労働力でも高い生産性を維持できるようにしています。みなさんの努力がこの重要な課題の解決に貢献しています。」

といったように社会の課題と現在の仕事を紐づけるようにコミュニケーションをとりましょう。

個人として尊重されたコミュニケーション

先ほどの新入社員意識調査2023では「お互いに個性を尊重する」ことを若手社員が重視していることがわかりました。

ノバック・リーダーシップ研究所のエクゼクティブ・ディレクターであり、ミズーリ大学ジャーナリズム学部の戦略コミュニケーションの教授であるマーガレット・ダフィ氏によれば、ミレニアル世代は職場でのコミュニケーションにリスペクトが欠けていると、エンゲージメントが低下し、離職のリスクがあると考えています。

特に、コロナを経て出社とリモートのハイブリッド型になったいま、その傾向はより強くなっているとされています。

その中で、

  • 上司や同僚から敬意を受けていること
  • 自分の仕事ぶりが認識されていること
  • 自分自身が組織において価値を感じることができること

これらが重要であるとされています。

組織内では全体の朝礼や定例などでチーム全体へメッセージを伝達することがあると思いますが、チームは個人の集合であり、個人に焦点をあてたコミュニケーションも忘れてはいけません。

たとえば、

「Aさんのクリエイティブなアイディアと細部へのこだわりが、今回のプロジェクトを大成功に導きました。彼女の才能がチームに大きな貢献をしていることを改めて認識し、感謝しています。」

「先週のプロジェクトの進捗についてですが、特にBさんの仕事ぶりには目を見張るものがありました。Bさんの迅速な対応と綿密な報告が、プロジェクト全体の進行をスムーズにし、大きな成果を上げることができました。感謝しています」

といったように具体的な個人の努力にフォーカスして、コミュニケーションをとるようにしましょう。

参考:

University of Florida “Millennials & Effective Business Communication”

University of Mount Saint Vincent”Understanding How Millennial Professionals Communicate

University of Missouri.“Study: Young workers now value respect over ‘fun’ perks in the workplace”

若手社員とのコミュニケーションの注意点

また以下では、若手社員とのコミュニケーションにおいて、どのような点に注意すべきかについて、解説します。

コミュニケーションをとる際はアプリなども活用する

フロリダ大学が公開している記事によると、ミレニアル世代の59%がコミュニケーションをとる際にモバイルアプリを利用しているとされています。

そのため、業務連絡をする際に、電話や対面でのコミュニケーションばかりではなく、チャットツールを導入して、アプリ上でもコミュニケーションを取ることが重要です。

「対面で話した方が早い」、「電話で伝えてしまった方が早い」と思うかもしれませんが、アプリでのコミュニケーションに慣れている若手社員からすれば億劫に感じられる可能性もあります。

コミュニケーションの方法も柔軟に変えていきましょう。

コミュニケーションの頻度に注意する

フロリダ大学によると、若手社員との定期的なコミュニケーションも重要とされています。

先述のように、若手社員はメッセージアプリやSNSで常に友人たちとコミュニケーションを取り合っているため、頻度の高いコミュニケーションに慣れています。

上司と若手社員の関係性にもよりますが、業務連絡の時に話しかけるだけでは、現在の若手社員にとっては少なすぎると感じられるかもしれません。業務連絡以外にも、仕事の状況や雑談も交えながらコミュニケーションをとるように意識しましょう。

職場に「楽しさ」だけを求めているわけではない

ミゾーリ大学の記事によると、若手社員は職場に楽しさだけを求めているわけではないとされています。先ほど解説したように「個人として尊重されているか」を重視する傾向があります。

若手社員に楽しんでもらおうと、レクリエーションなどの社内イベントを用意することも大切ですが、社員の性格によってはクローズな場で腹を割って面談をする機会を求めている可能性があります。社員がどうすれば個人として尊重されているかを感じとれるような仕掛けやコミュニケーションを心がけましょう。

競争ではなく、協力を重視する

マウント セント ヴィンセント大学の記事によれば、若手社員とコミュニケーションをとる際に気を付けるべきポイントは、若手社員は競争ではなく、協力を促す文化が重要とされています。

そのほか、リクルートマネジメントソリューションズが実施した「2020年新入社員意識調査」によれば、「仕事をするうえで何を重視しているのか」という質問に対して、「仲間」が上位4位、「競争」は3%と最下位という結果になりました。

競争よりも、互いに助け合い成長していく職場が理想と考える新入社員が多いことがうかがえます。

社員のパフォーマンスを向上させるために、同僚との競争を促したいと思う場面もあるかと思いますが、かえって社員のやる気を失わせる可能性もあります。

そのため社員の性格を踏まえてコミュニケーションをとるようにしましょう。

参考:

University of Florida “Millennials & Effective Business Communication”

リクルートマネージメントソリューションズ「2020年新入社員意識調査」

University of Missouri.“Study: Young workers now value respect over ‘fun’ perks in the workplace”

まとめ

若手社員との効果的なコミュニケーションは、企業の成長と職場環境の向上に欠かせません。

若手社員とのコミュニケーションに悩む方は、若手社員の価値観や育ってきた環境などを理解したうえでコミュニケーションをとるようにしましょう。