- 1on1で何を話せばよいか分からない
- 話すべきテーマが分からず業務連絡になってしまう
- 1on1で沈黙が続いてしまう
1on1において、上記のような悩みを抱えている上司も少なくないでしょう。本記事では、1on1ミーティングで扱うべきテーマについて、解説します。1on1で話すべきテーマについて理解することで、より効果を実感できるでしょう。

この記事の監修者
曽和 利光(そわ・としみつ)
株式会社人材研究所 代表取締役社長
新卒で株式会社リクルートに入社後、ライフネット生命保険株式会社と株式会社オープンハウスを経て、2011年に株式会社人材研究所を設立。「人と、組織の可能性の最大化」をテーマに掲げ、人事、採用にコンサルティング事業などを展開。『人事と採用のセオリー』など、これまで多くの書籍を出版し、いずれも大きな話題を集めている。
上司・部下双方が抱える1on1の課題とは

株式会社パーソル総合研究所の調査によると、1on1ミーティングに関して、上司と部下の双方に課題があることが明らかになりました。上司の約3人に1人が「面談について学ぶ仕組みがない」(35.4%)、「多忙でスケジュール設定が難しい」(35.3%)と回答。
一方、部下は「面談の効果が感じられない」(29.7%)、「面談について学ぶ仕組みがない」(28.3%)を上位に挙げています。この結果から、面談の進め方や効果に共通の懸念を抱えており、特に「何を話せばいいか」「どう行動すればいいか」といった具体的なノウハウがないことが、1on1が形骸化する要因になっていることがうかがえます。
参考:
株式会社パーソル総合研究所「部下の成長支援を目的とした1on1ミーティングに関する定量調査」
【具体例も紹介】1on1ミーティングで扱うテーマ一覧

1on1で扱うテーマには、毎回扱うべきテーマと状況に応じて話すべきテーマがあります。毎回扱うべきテーマと状況に応じて扱うべきテーマを知っておくことで、1on1で話すことが絞られ、テーマで悩むことが少なくなります。
毎回扱うべきテーマと状況に応じて話すべきテーマについて、それぞれ詳しく解説します。
毎回扱うべきテーマ
毎回扱うべきテーマは、上司と部下の信頼関係の構築に大きく役立ちます。毎回扱うべきテーマは以下の通りです。
- プライベート
- モチベーション
- 健康状態
- 業務上の問題や課題
プライベート
プライベートな話題を通して、相手の価値観や考え方を相互に理解することで、より効果的に協力し、仕事を進めることが可能になります。1on1でのプライベートの話題として以下が挙げられます。
- 最近何か楽しいことがありましたか?
- 趣味に没頭する時間は取れてますか?
- リフレッシュ方法はどんなものがありますか?
- 仕事以外で何か目標やチャレンジしていることは?
- 今後プライベートでやってみたいことはありますか?
プライベートの話は、1on1を始める際のアイスブレイクや会話が途切れた際にも、活用できるテーマといえます。ただし、プライベートの話を好まない部下との1on1では、部下が興味を持つ話に切り替えるなどして対応しましょう。
モチベーション
モチベーションのテーマを扱う理由は、部下のモチベーションの向上、または低下を防ぐためです。モチベーション向上のための話題とモチベーションの低下の原因となる話題の二つの話題を扱いましょう。
モチベーション向上のための話題は、以下の通りです。
- 仕事でやりがいを感じるときはいつですか?
- 成長できたと感じた瞬間はいつですか?
- 更なる活躍のために必要なものは何だと思いますか?
- チームや会社をどのように変えたいですか?
モチベーション低下の原因について話す話題は、以下の通りです。
- 仕事でストレスを感じるときはいつですか?
- やりがいを感じにくいと感じるときはありますか?
- 職場の人間関係で悩んでいることはありませんか?
部下が不安に感じていることや悩んでいることについて理解し、改善に向けて上司と部下が一緒に考えることが、部下のモチベーション向上につながります。
健康状態
1on1で部下の健康状態を把握することは非常に重要です。健康状態について、社内に相談できる人がいないと、最悪の場合、退職する恐れもあります。
1on1では、健康状態について確認し、状況に応じて労働環境を見直す必要があるでしょう。
業務上の問題や課題
フォーブスが公開する記事によると、業務の進捗状況や直面している課題などを共有し、上司と部下で状況を共有することが大切とされています。緊急でない業務の相談や、普段は言いにくい悩みなども1on1を活用するとよいでしょう。
部下にとっても、上司からのフィードバックや指示を仰ぐ良い機会となります。
状況に応じて扱うべきテーマ
状況に応じて扱うべきテーマは、部下の課題や成長段階に合わせた内容にすることで、より効果的なコミュニケーションを実現できます。
- キャリアについて
- 人間関係の問題
- 目標の設定や評価
状況に応じて話すべきテーマについて解説します。
キャリアについて
部下の将来のキャリアプランやスキルアップの目標を共有し、サポートをしましょう。たとえば、部下にキャリアアップのためのステップは何だと思うか、自分の役割をどう捉えているかなどを考えるきっかけを与えます。
これにより、部下は今後のキャリアのことや今やらなければいけないことが明確になり、成長を促すことにつながります。
人間関係の問題
部下が人間関係の問題について、悩んでいないかどうかを把握しましょう。人間関係の悩みは、普段のミーティングでは言いづらいと感じている部下も少なくありません。
上司と1対1の場だからこそ、人間関係の悩みや要望を話せる部下もいるでしょう。人間関係の悩みや要望があれば、部下と一緒に改善策を考えましょう。
目標の設定や評価
フォーブスが公開する記事によると、部下の目標設定や評価も、1on1で話しておくべきテーマとされています。部下の目標設定のためには、会社やチームの方向性を理解しているかどうか確認することも大切です。
会社やチームの方向性に合った、部下の目標設定のサポートを行います。目標設定ができたら、定期的に自己評価を行い、目標達成に近づいているかどうか確認しましょう。
業務以外
1on1で業務以外のことを話す時間は、上司部下の信頼関係を深め、より良いコミュニケーションや業務パフォーマンスに繋がるために必要です。
休暇取得の希望や時事問題など、部下が積極的に話す話題を見つけましょう。1on1では、部下が日頃どんな事に興味を持っているのかを知ろうとすることが大切です。
参考:
【管理職の体験談】「最近どう?」から始めない。気まずい1on1を価値ある対話に変えたリーダーの試行錯誤

多くのリーダーが経験する1on1の悩み。「最近どう?」と切り出しても会話が続かず、ただの雑談で終わってしまう。お話を伺ったCさんも、かつてはそうした1on1の「失敗」を数多く経験してきたリーダーの一人でした。
「当時は1on1が本当にうまくいかず、たくさんの失敗を経験しました。今振り返ると、大きな失敗は2つに集約されます。1つ目は『議題がなく、ただの雑談で終わってしまう』こと。上司から受けていたスタイルをそのまま自分の部下との1on1に持ち込んだのですが、部下から『特に悩みはありません』と言われると、もう会話が続かない。必死に世間話を探して時間を繋ぐ、ということを繰り返していました」とC氏。
2つ目の失敗は、悩みを聞くだけで解決に導けなかったこと。部下の成長に繋がるという最も重要な観点が抜け落ちていたのです。
転機は自身が「1on1が上手な上司」からフィードバックを受ける経験でした。その体験が衝撃的で、自らの1on1を見直すことを決意。まず取り入れたのが「テーマの提供」です。
「1on1のテーマを月間のサイクルで設定し、事前にメンバーと共有することにしました。このサイクルを導入しただけで、何を話すかという目的がお互いに明確になり、無駄な雑談や気まずい沈黙がなくなりました」
さらに、コーチングのスキルを学び、キャリア相談にはWill-Can-Mustのフレームワークを導入。
「『転職したい』と部下が語った時、以前の私なら『なんで?』と未来の話ばかりしていました。しかし今はまず、一緒に君の“現在地”を確認してみないか?と提案します。対話を通じて、部下自身が最良の答えを見つけ出すのをサポートする。そのスタンスが大切だと気付きました」
このように、C氏は試行錯誤を重ねて、気まずいだけの時間を部下の成長と信頼を育む対話へと変えていったのです。
1on1ミーティングで避けるべき行動

先ほどのように、1on1ミーティングが上手くいっていないと感じる人も少なくありません。ここでは、1on1ミーティングで避けるべき行動について、ハーバードビジネスレビューが公開する、リーダーシップコーチであるジェン・ダリー氏による記事を参考に解説します。
上司が一方的に話す
1on1が上司からの報告会になってしまっている状況は、1on1のメリットを活かせていないといえます。
1on1は、上司が一方的に情報伝達や指示を行う場ではありません。部下の話を聞き、意見交換を行う、双方向のコミュニケーションが重要です。
部下の話を聞かない
上司が自分のことで頭がいっぱいで、部下の話をきちんと聞いていない状況は避けるべきといえます。上司が部下の話を聞いていないと、部下が発言しづらく、1on1の目的を果たすことができません。
また、部下の意見や考えを理解しようとせず、自分の意見を押し付けることは避けなければいけない行為です。
ネガティブなフィードバックばかりを与える
1on1が問題点の指摘や批判の場になってしまっている状況は改善すべきといえます。ネガティブなフィードバックばかりでは、部下のモチベーションを低下させてしまう原因となりかねません。
ネガティブなフィードバックを伝える時は、ポジティブなフィードバックと改善点を具体的に伝えることが重要です。
キャリア開発について話し合わない
1on1は、単なる業務進捗の確認だけで終わらせるのではなく、キャリアプランについても話し合うべきです。
部下の成長を促すためには、キャリア目標やスキルアップについて話し合い、具体的なサポートをしなければいけません。
定期的に開催しない
1on1をキャンセルしたり、延期したりして、定期的に開催しないことは避けるべきです。1on1は、上司と部下の信頼関係を築き、コミュニケーションを円滑にするための重要な機会です。
定期的に開催することで、継続的な関係構築が可能になります。また、キャンセルや延期が多発すると、1on1の優先度が下がり、効果が得られなくなってしまいます。
週に1回、最低でも月1回の1on1を定期的に開催しましょう。
参考:
1on1の効果を高めるポイント

1on1の効果を高めるポイントについても実践してみましょう。1on1で何を話したらよいか分からない方は、明日から使えるテーマシートの内容についても紹介するので、活用してください。
1on1の効果をより高めるためのポイントについて解説します。
1on1ミーティングのテーマシート
テーマシートを活用するメリットは、事前に話すテーマを整理することで、スムーズな進行が可能になったり、話し忘れを減らせることです。
特に、沈黙が続いてしまったり、業務報告だけで終わってしまうことを防ぎ、普段話題に上がらないような内容についても触れやすくなります。
テーマシートには、主に以下の項目を記載します。
- 日時/氏名
- 話したいこと
- 目標
- 前回の1on1からの成果
- 困りごとや気づいたこと
- 要望
- プライベートな話題
- 次回の1on1までに取るべき具体的な行動
1on1ミーティングのテーマシートは、1on1後に振り返りができるため保管しておくとよいでしょう。
事前に議題を共有する
1on1で何を話したいかを事前に上司に伝えておくことが重要です。議題を共有しておくことで、上司は事前に準備をすることができ、より深い議論が可能になります。
また、事前に共有することで、当日話し忘れることを防ぐこともできるでしょう。
部下が発言しやすい環境をつくる
1on1は、上司に部下が、考えや意見を伝える場であるため、普段から部下が発言しやすい環境をつくることが大事です。
上司の意見を伺うだけでなく、自分の考えや意見を伝えることで、双方向のコミュニケーションが生まれ、より建設的な議論ができます。
次回の行動計画を立てる
1on1で話し合ったことをもとに、具体的な行動計画を立てることが目的達成のために重要です。行動計画を立てることで、1on1で話し合ったことを具体的な行動に移すことができます。
行動計画が正しく実行されているか1on1で確認するとよいでしょう。
参考:
HRテックの活用
HRテックとは、「Human Resource Technology」の略で、人事領域における業務効率化や課題解決のためにITを活用したシステムやサービスのことです。
HRテックを活用することで、1on1ミーティングの記録やフィードバック、目標設定などをシステム上で一元管理することができます。
HRテックツールの活用により、1on1の効果を最大限に引き出し、組織全体のエンゲージメントや生産性向上に貢献することが期待できます。
1on1でよくありがちなこととして、上司が質問をしてくれるため聞かれたことに答えればいいと部下が受動的に1on1に臨んでしまうケースがあります。
そこである会社では1on1シートを作成し、取り組みたい内容や目指すゴールに対して業務中に感じたことや思ったことなどを日々体裁気にせずメモ書きで残しておけるようにし、そのシートをベースに1on1に臨んでもらう取り組みを実施しました。
すると、部下の方から「今日はこれについてお話ししたいです」とテーマをもって参加してくれることが増えた事例があります。
まとめ
1on1ミーティングは、上司と部下が信頼関係を構築し、部下の成長を促進するための重要な機会です。効果的な1on1のために、業務上の課題や進捗だけでなく、モチベーションやキャリア、時にはプライベートな話題も共有し、総合理解を深めることが大切です。
事前に議題を共有したり、テーマシートを活用するなど、スムーズな進行を心がけましょう。1on1の効果を最大化することで、組織全体のエンゲージメントや生産性向上に繋げましょう。