- 1on1で何を話せばよいか分からない
- 話すべきテーマが分からず業務連絡になってしまう
- 1on1で沈黙が続いてしまう
1on1において、上記のような悩みを抱えている上司も少なくないでしょう。本記事では、1on1ミーティングで扱うべきテーマについて、解説します。1on1で話すべきテーマについて理解することで、より効果を実感できるでしょう。
この記事の監修者
曽和 利光(そわ・としみつ)
株式会社人材研究所 代表取締役社長
新卒で株式会社リクルートに入社後、ライフネット生命保険株式会社と株式会社オープンハウスを経て、2011年に株式会社人材研究所を設立。「人と、組織の可能性の最大化」をテーマに掲げ、人事、採用にコンサルティング事業などを展開。『人事と採用のセオリー』など、これまで多くの書籍を出版し、いずれも大きな話題を集めている。
1on1ミーティングとは
1on1は上司と部下が1対1で行う、定期的なミーティングのことです。1on1で話すテーマについて、解説する前に、1on1の目的やメリット、評価面談との違いについて知っておきましょう。
目的
1on1の目的は部下の成長や会社全体の組織力を強化することです。上司との対話の中で、気づきがあったり、課題を解決することで、部下の主体性や自主性を育むことができます。
また、定期的な1on1を行うことで、部下の帰属意識も高まり、チームや会社全体の組織力の強化が期待できます。
メリット
1on1のメリットは、上司と部下の関係構築や部下のモチベーションの向上です。厚生労働省の若者の離職理由によると、「職場の人間関係がつらい」「仕事のストレス」などが上位に挙げられています。
定期的な1on1を通じて、部下が悩みを相談できれば、上司との信頼関係を築くとともに、離職防止にもつながります。また、1on1を通じて、課題解決ができたり、キャリアについての話をすることで、部下のモチベーションの向上にも役立つでしょう。
評価面談との違い
1on1は上司が定期的なコミュニケーションを通して、目標達成や課題解決を支援するミーティングです。一方、評価面談は過去のパフォーマンスを評価し、フィードバックや業務に対する指示や指摘を伝えることが目的です。
また、1on1はプライベートの話や労働環境に対しての相談など、業務以外の話も上司と部下、相互で「対話」をします。しかし、評価面談は、上司が一方的に連絡事項や業務の指示を伝える場とされています。
開催期間についても、1on1と評価面談では異なる点があります。1on1は週に1回から最低でも月に1回の頻度で定期的に実施しますが、評価面談は四半期あるいは半年に1回程度で実施します。
1on1の目的や進め方について、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。1on1で話すこと|効果的な1on1にするためのテーマやポイントを解説
【具体例も紹介】1on1ミーティングで扱うテーマ一覧
1on1で扱うテーマには、毎回扱うべきテーマと状況に応じて話すべきテーマがあります。毎回扱うべきテーマと状況に応じて扱うべきテーマを知っておくことで、1on1で話すことが絞られ、テーマで悩むことが少なくなります。
毎回扱うべきテーマと状況に応じて話すべきテーマについて、それぞれ詳しく解説します。
毎回扱うべきテーマ
毎回扱うべきテーマは、上司と部下の信頼関係の構築に大きく役立ちます。毎回扱うべきテーマは以下の通りです。
- プライベート
- モチベーション
- 健康状態
- 業務上の問題や課題
プライベート
プライベートな話題を通して、相手の価値観や考え方を相互に理解することで、より効果的に協力し、仕事を進めることが可能になります。1on1でのプライベートの話題として以下が挙げられます。
- 最近何か楽しいことがありましたか?
- 趣味に没頭する時間は取れてますか?
- リフレッシュ方法はどんなものがありますか?
- 仕事以外で何か目標やチャレンジしていることは?
- 今後プライベートでやってみたいことはありますか?
プライベートの話は、1on1を始める際のアイスブレイクや会話が途切れた際にも、活用できるテーマといえます。ただし、プライベートの話を好まない部下との1on1では、部下が興味を持つ話に切り替えるなどして対応しましょう。
モチベーション
モチベーションのテーマを扱う理由は、部下のモチベーションの向上、または低下を防ぐためです。モチベーション向上のための話題とモチベーションの低下の原因となる話題の二つの話題を扱いましょう。
モチベーション向上のための話題は、以下の通りです。
- 仕事でやりがいを感じるときはいつですか?
- 成長できたと感じた瞬間はいつですか?
- 更なる活躍のために必要なものは何だと思いますか?
- チームや会社をどのように変えたいですか?
モチベーション低下の原因について話す話題は、以下の通りです。
- 仕事でストレスを感じるときはいつですか?
- やりがいを感じにくいと感じるときはありますか?
- 職場の人間関係で悩んでいることはありませんか?
部下が不安に感じていることや悩んでいることについて理解し、改善に向けて上司と部下が一緒に考えることが、部下のモチベーション向上につながります。
健康状態
1on1で部下の健康状態を把握することは非常に重要です。健康状態について、社内に相談できる人がいないと、最悪の場合、退職する恐れもあります。
1on1では、健康状態について確認し、状況に応じて労働環境を見直す必要があるでしょう。
業務上の問題や課題
フォーブスが公開する記事によると、業務の進捗状況や直面している課題などを共有し、上司と部下で状況を共有することが大切とされています。緊急でない業務の相談や、普段は言いにくい悩みなども1on1を活用するとよいでしょう。
部下にとっても、上司からのフィードバックや指示を仰ぐ良い機会となります。
状況に応じて扱うべきテーマ
状況に応じて扱うべきテーマは、部下の課題や成長段階に合わせた内容にすることで、より効果的なコミュニケーションを実現できます。
- キャリアについて
- 人間関係の問題
- 目標の設定や評価
状況に応じて話すべきテーマについて解説します。
キャリアについて
部下の将来のキャリアプランやスキルアップの目標を共有し、サポートをしましょう。たとえば、部下にキャリアアップのためのステップは何だと思うか、自分の役割をどう捉えているかなどを考えるきっかけを与えます。
これにより、部下は今後のキャリアのことや今やらなければいけないことが明確になり、成長を促すことにつながります。
人間関係の問題
部下が人間関係の問題について、悩んでいないかどうかを把握しましょう。人間関係の悩みは、普段のミーティングでは言いづらいと感じている部下も少なくありません。
上司と1対1の場だからこそ、人間関係の悩みや要望を話せる部下もいるでしょう。人間関係の悩みや要望があれば、部下と一緒に改善策を考えましょう。
目標の設定や評価
フォーブスが公開する記事によると、部下の目標設定や評価も、1on1で話しておくべきテーマとされています。部下の目標設定のためには、会社やチームの方向性を理解しているかどうか確認することも大切です。
会社やチームの方向性に合った、部下の目標設定のサポートを行います。目標設定ができたら、定期的に自己評価を行い、目標達成に近づいているかどうか確認しましょう。
業務以外
1on1で業務以外のことを話す時間は、上司部下の信頼関係を深め、より良いコミュニケーションや業務パフォーマンスに繋がるために必要です。
休暇取得の希望や時事問題など、部下が積極的に話す話題を見つけましょう。1on1では、部下が日頃どんな事に興味を持っているのかを知ろうとすることが大切です。
参考:
1on1ミーティングで避けるべき行動
上司の中で、1on1ミーティングが上手くいっていないと感じる人も少なくありません。ここでは、1on1ミーティングで避けるべき行動について、ハーバードビジネスレビューが公開する、リーダーシップコーチであるジェン・ダリー氏による記事を参考に解説します。
上司が一方的に話す
1on1が上司からの報告会になってしまっている状況は、1on1のメリットを活かせていないといえます。
1on1は、上司が一方的に情報伝達や指示を行う場ではありません。部下の話を聞き、意見交換を行う、双方向のコミュニケーションが重要です。
部下の話を聞かない
上司が自分のことで頭がいっぱいで、部下の話をきちんと聞いていない状況は避けるべきといえます。上司が部下の話を聞いていないと、部下が発言しづらく、1on1の目的を果たすことができません。
また、部下の意見や考えを理解しようとせず、自分の意見を押し付けることは避けなければいけない行為です。
ネガティブなフィードバックばかりを与える
1on1が問題点の指摘や批判の場になってしまっている状況は改善すべきといえます。ネガティブなフィードバックばかりでは、部下のモチベーションを低下させてしまう原因となりかねません。
ネガティブなフィードバックを伝える時は、ポジティブなフィードバックと改善点を具体的に伝えることが重要です。
キャリア開発について話し合わない
1on1は、単なる業務進捗の確認だけで終わらせるのではなく、キャリアプランについても話し合うべきです。
部下の成長を促すためには、キャリア目標やスキルアップについて話し合い、具体的なサポートをしなければいけません。
定期的に開催しない
1on1をキャンセルしたり、延期したりして、定期的に開催しないことは避けるべきです。1on1は、上司と部下の信頼関係を築き、コミュニケーションを円滑にするための重要な機会です。
定期的に開催することで、継続的な関係構築が可能になります。また、キャンセルや延期が多発すると、1on1の優先度が下がり、効果が得られなくなってしまいます。
週に1回、最低でも月1回の1on1を定期的に開催しましょう。
参考:
1on1の効果を高めるポイント
1on1の効果を高めるポイントについても実践してみましょう。1on1で何を話したらよいか分からない方は、明日から使えるテーマシートの内容についても紹介するので、活用してください。
1on1の効果をより高めるためのポイントについて解説します。
1on1ミーティングのテーマシート
テーマシートを活用するメリットは、事前に話すテーマを整理することで、スムーズな進行が可能になったり、話し忘れを減らせることです。
特に、沈黙が続いてしまったり、業務報告だけで終わってしまうことを防ぎ、普段話題に上がらないような内容についても触れやすくなります。
テーマシートには、主に以下の項目を記載します。
- 日時/氏名
- 話したいこと
- 目標
- 前回の1on1からの成果
- 困りごとや気づいたこと
- 要望
- プライベートな話題
- 次回の1on1までに取るべき具体的な行動
1on1ミーティングのテーマシートは、1on1後に振り返りができるため保管しておくとよいでしょう。
事前に議題を共有する
1on1で何を話したいかを事前に上司に伝えておくことが重要です。議題を共有しておくことで、上司は事前に準備をすることができ、より深い議論が可能になります。
また、事前に共有することで、当日話し忘れることを防ぐこともできるでしょう。
部下が発言しやすい環境をつくる
1on1は、上司に部下が、考えや意見を伝える場であるため、普段から部下が発言しやすい環境をつくることが大事です。
上司の意見を伺うだけでなく、自分の考えや意見を伝えることで、双方向のコミュニケーションが生まれ、より建設的な議論ができます。
次回の行動計画を立てる
1on1で話し合ったことをもとに、具体的な行動計画を立てることが目的達成のために重要です。行動計画を立てることで、1on1で話し合ったことを具体的な行動に移すことができます。
行動計画が正しく実行されているか1on1で確認するとよいでしょう。
参考:
HRテックの活用
HRテックとは、「Human Resource Technology」の略で、人事領域における業務効率化や課題解決のためにITを活用したシステムやサービスのことです。
HRテックを活用することで、1on1ミーティングの記録やフィードバック、目標設定などをシステム上で一元管理することができます。
HRテックツールの活用により、1on1の効果を最大限に引き出し、組織全体のエンゲージメントや生産性向上に貢献することが期待できます。
1on1でよくありがちなこととして、上司が質問をしてくれるため聞かれたことに答えればいいと部下が受動的に1on1に臨んでしまうケースがあります。
そこである会社では1on1シートを作成し、取り組みたい内容や目指すゴールに対して業務中に感じたことや思ったことなどを日々体裁気にせずメモ書きで残しておけるようにし、そのシートをベースに1on1に臨んでもらう取り組みを実施しました。
すると、部下の方から「今日はこれについてお話ししたいです」とテーマをもって参加してくれることが増えた事例があります。
まとめ
1on1ミーティングは、上司と部下が信頼関係を構築し、部下の成長を促進するための重要な機会です。効果的な1on1のために、業務上の課題や進捗だけでなく、モチベーションやキャリア、時にはプライベートな話題も共有し、総合理解を深めることが大切です。
事前に議題を共有したり、テーマシートを活用するなど、スムーズな進行を心がけましょう。1on1の効果を最大化することで、組織全体のエンゲージメントや生産性向上に繋げましょう。