部下が言うことを聞かない状況が続いて困っていませんか?指示に従わない人がいると仕事がスムーズに進まないだけでなく、腹が立ってストレスがたまるものです。
そこで本記事では、部下が言うことを聞かない理由や効果的な対処法・扱い方を解説します。部下と接するストレスを軽減する方法も紹介するので、「このまま我慢するしかないのか…」と悩んでいる方はぜひお読みください。
この記事の監修者
曽和 利光(そわ・としみつ)
株式会社人材研究所 代表取締役社長
新卒で株式会社リクルートに入社後、ライフネット生命保険株式会社と株式会社オープンハウスを経て、2011年に株式会社人材研究所を設立。「人と、組織の可能性の最大化」をテーマに掲げ、人事、採用にコンサルティング事業などを展開。『人事と採用のセオリー』など、これまで多くの書籍を出版し、いずれも大きな話題を集めている。
部下が言うことを聞かない4つの理由
部下がいうことを聞かない理由には、信頼関係の構築が不十分だったり、部下が自分のやり方にプライドを持っていたりする点などが考えられます。以下では、部下が言うことを聞かない理由を4つ紹介します。
部下との信頼関係が十分に築けていない
「信頼関係が築けていない」のが言うことを聞かない理由の一つだと考えられます。普段のやりとりが仕事の指示や報告だけになっているなど、コミュニケーション不足の可能性があります。
日頃からコミュニケーションが乏しいと、「この上司は信頼しても大丈夫なのか?」と疑問を持つ部下もいるでしょう。心当たりがある方は、以下を実践してみてください。
- 折に触れて「困っているときは相談してください」と伝える
- 仕事で役立つ情報があったら適宜教えてあげる
細やかにコミュニケーションをとるのが信頼関係を築くコツです。なお、Harvard Law Schoolが公開している記事によれば、親しみやすいメールを何回か送るよりも、1~2回の気軽なランチの機会を作るよう勧めています。数分間の短い雑談でも関係構築に大きな効果があるようです。
参考:
Harvard Law School “Negotiating Skills: Learn How to Build Trust at the Negotiation Table”
上司が毅然とした対応をしないため軽く見られる
業務上、明確にすべき事柄をうやむやにするなど、上司が毅然とした対応をしない場合、部下はその上司の言うことを聞かないことがあります。以下のような対応を続けていると、部下が上司を軽視してしまうでしょう。
- 仕事でミスした箇所を指摘しない
- 勤務態度に問題があるのを諫めない
優しい性格の人は注意するのが難しく感じるかもしれませんが、問題点の指摘は業務効率化や部下の成長につながります。
適切に注意すれば会社・部下のどちらにもプラスになると考え、相手の顔色を伺いすぎないように心がけましょう。
上司の態度が高圧的で反発を招いている
高圧的な上司の態度に反発している場合もあります。以下のような態度で部下に接していないか、自分の振る舞いを見直してみてください。
- 自分が正しいと思い、部下の考えを一切認めない
- 部下の成長のためには厳しさが必要だと考えている
- 優秀な部下に見下されないようマウントをとる
人は論理だけでなく感情でも動くので、高圧的な態度を「面白くない」と感じる部下もいます。部下も自分も人として対等だということを念頭に置きましょう。
部下が自分のやり方やスキル、経験を誇っている
以下のようなプライドが高い部下だと、上司の指示を素直に聞けないこともあるでしょう。
- 上司に指示されなくても自分のやり方で成果を出せる
- 前職での経験が豊富で実績もある
- 上司より年上
自分なりに成果を出せる部下には、なぜ指示通りに動いて欲しいのか合理的な説明をしましょう。顧客や社内全体の利便性につながる理由なら、相手が納得しやすくなります。
経験年数や年齢が上の部下には、以下のように相手に敬意を示しつつ指示するのがコツです。
- 「この点は〇〇さん(部下)の方がよくご存じだと思いますが~」
- 「年下の自分が指示するのは恐縮なのですが~」
部下の経歴に敬意を示せば、気持ち良く指示を受け入れてくれる可能性があります。もちろん、上司の方が立場は上なので、過度にへりくだる必要はありません。
部下が言うこと聞かないときの対処法5選
部下が言うことを聞かないときの対処法を5つ紹介します。部下の話にじっくりと耳を傾けたり、困り事をフォローしたりするのが効果的です。言うことを聞かない部下の適切な扱い方が分かるので、ぜひチェックしてください。
部下の話をよく聞き、主張を受け止める
上司が話を聞いてくれると分かれば、相手も心を開く可能性があります。話を聞く際は、以下を意識してみてください。
- 部下の目をしっかり見て、相手に関心があると示す
- 相槌やオウム返しで傾聴の姿勢を示す
- 部下の意見を否定したり議論したりするのは避ける
- 途中で話をさえぎらず、アドバイスはほどほどにする
以下は、資料の提出が遅れがちな部下への声掛け例です。
声掛けの例: 〇〇さん、少しお話する時間はありますか?最近資料の提出が遅れることが多いようで、〇〇さんらしくないと感じています。業務の状況について詳しく聞きたいのですが。 (ひと通り部下の話を聞いた後)ありがとうございます、状況が分かって良かったです。〇〇さんが大変だと言っていた仕事量の多さについては、改善に向けて担当者にも掛け合ってみましょう。その上で、今できる範囲で良い解決方法はないか自分でも考えてみてください。 |
部下が話す内容によっては、「いや、それは違う」と否定したくなるでしょう。しかし、話を最後まで聞かずに議論に勝とうとすれば、部下が今まで以上に頑なになる恐れもあります。部下が何を思っているかを理解し、話を聞き終わってから間違いを指摘するのがコツです。
なお、話し合いにふさわしい環境を整えるのも忘れないでください。じっくりと話し合える時間と場所を確保し、会話が他人に聴こえないよう配慮しましょう。
参考:
厚生労働省「3 傾聴のポイント|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」
部下が何に困っているかを知り、サポートする
言うことを聞かない部下を無理やり従わせるのではなく、あえて自分がサポートに回るのも効果的です。部下の足りない部分を補いつつ、困り事があれば話し合い、ともに解決を目指します。
どのような助けがあれば、より仕事がしやすくなるか聞くのも良いでしょう。一方的に指示するのではなく、サポートしながら「こうすると良い」とアドバイスすれば、プライドの高い部下も自然に指示を受け入れる可能性があります。
以下は、仕事でミスが多い部下への声掛け例です。
声掛けの例: 最近△△(業務)のミスが多くて気になっています。もしミスが発生してしまう原因や困り事があれば、一緒に解決方法を考えていきたいので相談して欲しいのですが、よろしいでしょうか。 (ひと通り部下の話を聞いた後)そうだったんですね。たしかに、いろいろな人から一度に仕事を依頼されると混乱して大変ですよね…。 ただ、〇〇さんがミスをしてしまうと、後の作業工程すべてで修正をしないといけなくなります。依頼されたタスクの内容はその都度メモをとり、優先順位を適宜つけていくようにすると良いかもしれません。 |
一度本人のやり方でやらせ、成果に責任を持たせる
仕事のやり方を部下任せにするだけでなく、成果に責任を持たせるのも大切です。部下の仕事内容とスケジュールを把握し、納期と出すべき成果を具体的に伝えます。
期日内に成果が出たら、部下のやり方を認めるのも手です。
成果が出なかったら、改めて仕事のやり方を指示します。自分のやり方に自信を持っている部下は、成果が出なければ必死で次の方法を考えるでしょう。そのときに上司がさりげなく効率的なやり方を指示すれば、素直に言うことを聞いてくれる可能性があります。
以下は、企画職の部下への声掛け例です。
声掛けの例: (部下のやり方で成果が出た場合)〇〇さんの発想はいつもユニークで、今回のアイディアも素晴らしかったです。他部署との連携も上手くいっているので、引き続きこの調子でよろしくお願いします。 (部下のやり方で成果が出ていない場合)発想力はとても良いので、これからはもっとユーザーの使い勝手を意識した提案をしてもらえるとありがたいです。自分の案にこだわらず、ときには他の人に意見を聞いて取り入れるのも手ですよ。 |
組織の成果に集中し、部下に時間を使いすぎない
言うことを聞かない部下に指導したくなることもありますが、特定の人だけに時間を使いすぎるのは避けましょう。組織全体の生産性に影響を与えるためです。
いくら注意しても言うことを聞かない部下もいるでしょう。無理に相手を変えようとせず、自分の裁量で仕事をやらせたり、距離を置いたりするのが良い場合もあります。無理に部下を変えようとせず、介入しすぎないという選択肢もあると気が楽になります。
問題点は注意し、アフターフォローもおこなう
最低限直して欲しい点は注意するようにしましょう。たとえ優秀でも、問題点を放置しておくのは部下のためになりません。「この上司の指示には従わなくていい」と思わせる要因にもなります。
注意するときは、以下を心がけてください。
- 他人がいない場所、タイミングで注意する
- 何に対して注意しているのか具体的に説明する
- 短時間で簡潔に話を終える
- 他人と比較して至らない点を叱らない
- 仕事と関係ない話を持ち出さない
- 人格否定は絶対にしない
注意をすると互いに気まずい雰囲気になる場合があります。落ち込みを引きずる部下もいるので、注意後のフォローも欠かせません。注意点が改善したら、具体的にどこが良くなったかを挙げてほめましょう。
以下は、成果への意識が低く、営業成績が振るわない部下への声掛け例です。
声掛けの例: ここ半年、〇〇さんはノルマが達成できていない状況です。前期も1度しか達成できていないので、とても心配しています。わたしの思い違いかもしれませんが、成果を出す意欲があまり見られないように感じるのですが。 (部下の状況や思いをヒアリングした後)よく分かりました。ただ、会社の業績に直接関わることですし、やる気のなさは顧客にも伝わって印象を落としてしまいかねないので、改善して欲しいです。 まずは顧客にスムーズに説明できるようになるために、商品知識を増やす勉強会に出てみるのはどうですか?〇〇さんは雰囲気や人当たりが良いので、努力すれば顧客にもっと話を聞いてもらえると思いますよ。 (成果が出た後)ノルマ達成率が80%に上がりましたね。商品知識を増やし、営業力を磨く研修を受けて努力している点も評価できます。引き続き前向きな気持ちで、数字を意識して頑張ってください。 |
言うことを聞かない部下と接するストレスを軽減する方法
言うことを聞かない部下と接するストレスを軽減する方法は以下の4つが挙げられます。
- ストレスを感じる理由を書き出し、客観視する
- 部下の長所や自分との共通点を探す
- 自分の仕事の意義を改めて見直す
- 1人で悩まず、第三者の力を借りても良いと知る
部下が思い通りにならないと腹が立つし、ストレスがたまるもの。少しでも気を楽にするためにも、上記の方法を試してみてください。
それぞれについて詳しく解説します。
ストレスを感じる理由を書き出し、客観視する
言うことを聞かない以外にストレスを感じる理由があれば言語化し、書き出してみましょう。たとえば、以下のようにです。
- プライドが高く、自分の失敗を認めない
- 積極的に周りと仲良くしようとしない
- 報連相ができない
理由を一つひとつ書き出していくと、思考が整理されて気持ちが軽くなります。意外と些細なことでイライラしていたのだと気付いたり、建設的な解決方法が見つかったりする場合もあるでしょう。
部下の長所や自分との共通点を探す
部下が言うことを聞かないと短所ばかり見てしまいがちですが、あえて長所や共通点を探してみましょう。言うことを聞かない相手でも、長所・共通点が分かると親近感が持てるからです。
積極的に長所を見ようとすれば、部下が「言うことを聞かない人」ではなく「自分で物事を考えて動ける人材」に変わる可能性があります。共通点を見つけて部下に共感できれば、互いに歩み寄る手がかりが見つかる場合もあるでしょう。相手に対する見方を変えるだけでも、ストレスは軽減します。
自分の仕事の意義を改めて見直す
自分の仕事にどのような意義があるか積極的に見出そうとするのも、ストレス軽減に効果的です。中国の科学学院のグイ・ウェンジン氏らの調査で、仕事に意味を感じている人ほど、職場での無礼な行為から受ける悪影響を軽減できることが分かっています。
論文は、有意義な仕事が対人ストレスに対処して感情面の疲れを緩和する可能性も指摘しています。仕事に意義を見出すために、自分の働きが社会や企業にどのような恩恵をもたらすか考えてみましょう。仕事が自分の将来にどのように関わってくるか想像するのも良い方法です。
1人で悩まず、第三者の力を借りても良いと知る
言うことを聞かない部下のストレスがどうしても解消できない場合は、1人で悩まず第三者に相談するのも手です。以下のような人に相談してみましょう。
- 部下の元上司
- 部下の働き方を知っている社員
- 部下と仲が良い社員
自分が知らない部下の性格や悩みを聞ければ、問題解決の糸口につながることもあります。相談相手が自分よりマネジメント経験が豊富な人なら、言うことを聞かない部下との上手な関わり方を教えてくれる可能性があります。
参考:
指示に従わない優秀な部下から尊敬されるコツ3選
優秀ゆえに言うことを聞かない部下から尊敬されるコツは以下の3つが挙げられます。
- 部下の良い点や成果は素直にほめ、感謝する
- 自分で言ったこと、約束したことは必ず守る
- 自分が楽するために部下の仕事を増やさない
どれも決して難しいことではなく明日からすぐに実践できるでしょう。
それぞれについて解説します。
部下の良い点や成果は素直にほめ、感謝する
部下が長所を活かして高い成果を出した場合、その成果や仕事ぶりを言葉にしてほめましょう。部下の働きで自分や周囲が助かったのであれば、きちんとお礼を言うのも大切です。素直にほめたり感謝したりすることで、部下から信頼を得られることが期待できます。
言うことを聞かない部下をほめるのに抵抗を感じる人もいるでしょう。ただ、組織全体の効率と利益を優先するためにも部下の良さを積極的に認め、ほめていきましょう。
自分で言ったこと、約束したことは必ず守る
部下に言ったこと、約束したことは、些細な事柄でも必ず守りましょう。言葉だけでなく実際の行動で示せば、責任感や誠意が相手に伝わり、部下からの信頼度は高まります。
ときには、実行不可になったり、着手したものの上手くいかなかったりする場合もあるでしょう。言ったこと、約束したことを守れなかったときは、謝罪するのが大切です。部下から尊敬されるには、立場に関係なく1人の人間として正しい振る舞いが求められます。
自分が楽するために部下の仕事を増やさない
自分が楽するために部下の仕事を増やすのは避けてください。「命令した仕事はやってもらって当たり前」という態度は、相手への敬意を欠いているといえます。上司が自分を利用していると感じたら、部下はますます反発して言うことを聞かなくなるでしょう。
大切なのは、部下の本来の担当業務を信頼して任せること。仕事を押し付けず、自らの役割を全うする姿勢を見せれば、部下が敬意を持ちやすくなります。
部下が言うことを聞かないのはハラスメントになる
「部下が言うことを聞かないのは逆パワハラでは?」と疑問を持つ人もいるでしょう。結論を言えば、部下が命令を無視する行為はハラスメントになる可能性があります。
パワハラでなくても、非礼な振る舞いを放置すると職場全体の士気が下がります。退職勧奨など、断固とした措置も視野に入れて部下に対応しましょう。
指示に従わない部下はパワハラになる可能性がある
以下3つすべてに当てはまれば、部下の言動(言葉・行為)はパワハラになります。
- 立場の優位性を利用した言動
- 仕事で必要、かつふさわしい範囲から外れた言動
- 言動を受けた人の就業環境が悪化している
「立場や関係の優位性」は、知識・経験が豊かな部下が協力してくれないと仕事が進まない状況で生まれます。部下が集団で問題行動を起こし、上司が拒否できない状況も背景の一つに挙げられるでしょう。
「仕事で必要、かつふさわしい範囲から外れた」は、経験者しか分からない仕事のやり方を上司に教えない状態などを指します。こうした言動でストレスを感じた上司が休職に追い込まれれば、「言動を受けた人の就業環境が悪化している」状態になります。
パワハラでなくても放置するのは職場にとってリスク大
パワハラに該当しなくても、言うことを聞かないなどの問題行動がある部下を放置するリスクは大きいと考えられます。以下のような状況になる恐れがあるからです。
- 問題の部下の対応に疲れて退職者が出る
- 組織全体で仕事が滞る割に人件費だけはかかる
- 全うな指摘をしただけなのに逆恨みで訴訟を起こされる
できる限り早い段階で部下の問題と向き合うに越したことはありません。以下で具体的な対処法を紹介するので、ぜひチェックしてください。
参考:
厚生労働省「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」
部下からのパワハラの効果的な対処法4選
部下からのパワハラ、またはそれに近い言動があったときの対処法を4つ紹介します。企業の相談窓口を利用したり、指導記録を残したりするのが有効です。状況により辞めさせる措置もとれますが、安易に解雇を通告するとトラブルにつながることもあるので注意してください。
企業が設けている相談窓口を利用する
まずは会社の相談窓口を利用してみましょう。会社はパワハラ防止のために、ハラスメント相談用の窓口を設けています。弁護士事務所など、外部機関に相談窓口を置く会社もあるようです。
会社は相談者に解雇などの不利益な扱いをしないので、安心して悩みを話せます。事実確認や当事者同士を和解させるサポートを通じ、社内での自主的な問題解決を促します。
問題行動が起きる原因を正確に把握する
言うことを聞かないなど、問題行動の原因を特定するのも大切です。原因が分かれば、社内マナー浸透を徹底したり管理職向けのマネジメント研修を受けたりなど、適切な対策がとれます。以下は問題行動の原因の例です。
- 社内でハラスメントについて学ぶ機会がない
- 部下の能力が高く、上司への敬意がなくなっている
- 管理職の指導が不十分
社内教育が不十分で、部下が自分の言動がパワハラだと気付いていない可能性があります。パワハラの定義は今後変わるかもしれないので、ハラスメント研修は定期的に実施するのが望ましいでしょう。
ITをはじめとした最新の専門スキルは、若手の部下の方が長けている場合も多いようです。年配の上司よりスキルレベルが高い部下の中には、自分の方が優れていると勘違いする人もいるでしょう。逆に、経験豊富な年配の部下が若手上司を見下すケースもあります。
管理職の部下との向き合い方が原因の場合もあります。指導が不十分になる理由は以下のとおりです。
- 出世に影響が出そうなのでトラブルに関わりたくない
- 自分の仕事が忙しすぎて指導にまで手が回らない
出世を気にする管理職は意識を変えれば済みますが、問題なのは忙しすぎる人です。新たに人を採用して人手不足を解消し、管理職が指導に時間を割けるようにするなど、大がかりな対応を要する可能性があります。
部下に注意・指導したときの記録をとる
部下に注意・指導したら記録を残しましょう。もし訴訟や労働審判に発展したとき、証拠があれば自分の正当性を主張できるからです。以下のような方法で記録を残してください。
- メールやチャットを使って指導し、内容を保存する
- 口頭の場合は、指導内容を時系列に沿って文書化する
- 指導内容や部下の態度を報告書などにまとめる
- 指導の状況(何人で行ったかなど)も文書化し、当事者間で共有
- 注意や指導をする際に内容を録音する
後から「言った」「言わない」で揉めないよう、できるだけ正確かつ細かく記録をとるのがコツです。
改善しないなら辞めさせる措置も検討する
指導しても部下の言動が変わらないなら、退職勧奨(退職してもらうよう会社が説得すること)や解雇も検討しましょう。とはいえ、辞めさせるのは簡単ではありません。安易に解雇通告すると、不当だとして労働審判や訴訟になる恐れがあるからです。
解雇できるかどうかは個別の事情によるので、弁護士に相談してから通告するのをおすすめします。基本的には、退職勧奨で辞めさせる方向に持っていくのが無難です。
これまで多くのクライアント企業の組織分析を行う中で、コミュニケーション不足から誤解が生じ、対立が発生しているケースを数多く見てきました。部下が言うことを聞かない背景には、本人の問題だけでなく、「あいつはいつもこうだ」と上司が決めつけて対話を避けた結果、部下側も歯がゆい思いをし、双方が憎しみ合う構図が見られます。
憎しみはエネルギーの無駄遣いになりやすいため、まずは部下と話して状況を理解することが重要です。「知ることは愛に通ずる」とも言われるように、部下を知ることで愛着が生まれ、前向きにコミュニケーションを図ることで、人間関係が良好になったケースもあります。
まとめ
部下が言うことを聞かないのは、本人の問題の場合もあれば、上司や管理職の態度に起因する場合もあります。いずれにせよ、放置するのは職場にとってマイナスです。適切な対処法と扱い方を知り、部下が行動を改めるよう働きかけましょう。
ハラスメントに当たるなら、退職勧奨など断固とした措置をとるのも手。ただ、優秀な部下から尊敬されるコツを実践したり、根気強く指導したりする努力も必要です。言うことを聞かない部下と接するストレスを軽減しつつ、ときには相談窓口の力も借りて問題解決を図ってください。