部下が休むようになった原因が分からず、対応の方法に困っている管理職の方もいるでしょう。部下が休むようになった原因として、メンタル不調が考えられます。厚生労働省のデータによると、心の健康問題を理由にした休職等事例があった企業は、全体の約4割に及びます。

本記事では、部下が休むようになった原因やメンタル不調をケアすべき理由について解説します。さらに、心の健康を保つための方法も紹介します。

この記事の監修者
曽和 利光(そわ・としみつ)
株式会社人材研究所 代表取締役社長

新卒で株式会社リクルートに入社後、ライフネット生命保険株式会社と株式会社オープンハウスを経て、2011年に株式会社人材研究所を設立。「人と、組織の可能性の最大化」をテーマに掲げ、人事、採用にコンサルティング事業などを展開。『人事と採用のセオリー』など、これまで多くの書籍を出版し、いずれも大きな話題を集めている。

部下が休むようになった背景

近年、職場におけるメンタルヘルスの重要性がますます注目されています。厚生労働省の調査を元に、メンタル不調で部下が休むようになった背景について解説します。

心の健康問題による休職は全体の44.2%

厚生労働省の平成23年のメンタルヘルス対策実態調査結果によると、心の健康問題を理由にした休職等事例があった企業は、44.2%でした。半数近くの企業が、従業員のメンタルヘルス問題に直面していることを示しています。

部下が頻繁に休むようになった場合、その背景にメンタル不調が潜んでいる可能性を考慮すべきでしょう。

心の健康問題の原因

同調査では、心の健康問題を引き起こす原因についても調査が行われています。心の健康問題の要因は以下になります。

原因割合
職場の人間関係47.0%
仕事への適性39.7%
他の問題32.9%
労働者の健康問題27.9%

全体の約半数の企業が、最も多い心の健康問題の要因として人間関係であると回答しています。その他にも、職場環境や仕事内容、従業員自身の健康状態など、様々な要因が複合的に作用してメンタル不調を引き起こす可能性があるといえるでしょう。

職場でメンタル不調が出る背景

職場でメンタル不調が出る背景について、リバティ大学ビジネススクールが公開する経営学博士ローラ・L・ゴフ氏による論文を参考に解説します。職場でメンタル不調が出る要因は主に以下になります。

  • メンタル不調に対する偏見
  • 上司や同僚の知識不足
  • 職場環境が悪い

メンタル不調を抱える従業員に対して「怠けている」「甘えている」といった偏見を持つ人がいることは事実です。また、メンタル不調に関する知識が不足しているために、適切な対応が取れない上司や同僚がいることも問題とされています。

さらに、過重労働やハラスメントなど、職場環境が悪いこともメンタル不調のリスクを高めると考えられます。部下が休むようになった背景には、こうした要因が隠されている可能性があります。

職場でメンタル不調が出る背景について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

参考:

Laura L. Goff.(2022).MENTAL HEALTH EXPERIENCES IN THE WORKPLACE.Liberty University, School of Business.https://digitalcommons.liberty.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=4707&context=doctoral

部下のメンタル不調をケアするべき理由

部下のメンタル不調を放置すると、職場全体に悪影響を及ぼす可能性があるため、部下のメンタル不調を放置すべきではありません。

米国人材マネジメント協会(SHRM)が公開しているジャーナリストのダナ・ウィルキー氏による記事を参考に、部下のメンタル不調を放置すべきでない理由を解説します。

業務を完了できない

メンタル不調の従業員は、仕事に集中するのが難しくなり、能力を十分に発揮できなくなる傾向があります。たとえば、集中力が続かず、簡単なミスを繰り返してしまうため、一つの資料作成に通常よりも時間がかかってしまうこともあるでしょう。

さらに、疲労感や倦怠感から、業務に着手すること自体が億劫になり、後回しにしてしまうといった事態に陥る可能性も考えられます。

仕事に集中できないと、プロジェクトや業務全体の進行に遅れが生じる可能性があります。

生産性の低下

メンタル不調は、部下のモチベーションや生産性の低下につながります。メンタル不調の部下は、日常業務を効率的にこなすことが困難になるため、放置すると業務全体に影響が出る可能性があります。

たとえ出勤していても、十分なパフォーマンスを発揮できない状態が続けば、周囲の従業員の負担が増加し、チーム全体の士気にも悪影響を及ぼす可能性があります。

仕事の質の低下

メンタル不調は注意力や集中力を阻害するため、仕事の質が低下する可能性があります。細部への注意がおろそかになり、ミスや修正が増加することで、最終的には顧客満足度や企業の評判にも悪影響が出る可能性も考えられるでしょう。

従業員のモチベーション低下や離職率の上昇にも繋がりかねず、企業にとって大きな損失となる可能性もあります。

ミスの増加

メンタル不調は、注意力の散漫や判断力の低下を引き起こす可能性があります。そのため、ケアレスミスが増えたり、重大なミスにつながったりするリスクが高まります。

特に、正確性が求められる業務や、安全に関わる業務においては、放置することで大きな問題に発展する可能性も考えられます。上司は、部下のメンタル不調にいち早く気づき、適切な対応をとるように心がけましょう。

参考:

Dana Wilkie.(2020).What Managers Can Do to Ease Workplace Stress.Society for Human Resource Management.https://www.shrm.org/topics-tools/news/employee-relations/managers-can-to-ease-workplace-stress

心の健康を保つための方法

心の健康を保つための方法について、ハーバードビジネスレビューに掲載されている認定心理学者のアリス・ボイズ氏による記事を参考に解説します。

職場環境

心の健康を保つためには、部下にとってストレスの少ない職場環境を整えることが大切です。改善できる職場環境は、以下のとおりです。

  • 職場の人間関係
  • ワークスペースの改善
  • 柔軟な働き方

職場の人間関係は精神的な健康に大きな影響を与えるため、良好な関係を築くことが重要です。快適なオフィス環境を整えることは、集中力や創造性を高め、ストレスを軽減する効果が期待できます。

リモートワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方を導入することで、通勤時間の削減やライフワークバランスの改善が期待できるでしょう。

仕事量

仕事の優先順位付けや業務を分割することで仕事の負荷を軽減し、メンタル不調の原因となるストレスを減らすことができます。

たとえば、大きなタスクを小さなタスクに分割することで、達成感を高め、モチベーションを維持することにつながります。定期的に休憩時間を設けることも、集中力を取り戻し、リフレッシュすることができます。

これらの取り組みを通して、従業員が安心して業務に集中できる環境を構築し、メンタルヘルスを守ることが重要です。

自己管理

職場だけでなく、プライベートでも自己管理することが心の健康を保つために必要です。自己管理として、十分な睡眠をとることは、精神的な健康を維持するために非常に重要です。

また、定期的な運動は、ストレスを軽減し、気分転換に役立ちます。さらに、バランスの取れた食事をとることで、心身の健康を維持することができるでしょう。これらの自己管理の方法を実践することで、心身のバランスを整え、ストレスに強い自分自身を育てることができます。

上記は一般的なアドバイスです。深刻な問題を抱えている場合は、専門家や医師に相談することをお勧めします。

参考:

Alice Boyes.(2024).Make Your Workday Work for Your Mental Health.Harvard Business Review.https://hbr.org/2024/05/make-your-workday-work-for-your-mental-health

まとめ

部下がメンタル不調で休むようになったときの原因や、心の健康を保つための方法について解説しました。部下がメンタル不調になった場合、タスクが完了できなかったり仕事の質が低下するといった兆候が見られます。

そのため、上司はメンタル不調の部下に対して適切な対応やケアが必要となります。部下がメンタル不調にならないためには、職場環境の改善や自己管理が必要です。

職場でメンタル不調がでる原因や心の健康を保つ方法について理解を深め、より良い職場作りを目指しましょう。