管理職に求められるリーダーシップとは、一体どのようなものなのでしょうか?この記事では、海外の研究や論文をもとに、現代のリーダーに必要なスキルやリーダーシップの種類を解説します。管理職としての成長を目指す方や、リーダーシップについてより深く理解したい方に役立つ内容をお届けします。

リーダーシップとはなにか?マネジメントとの違いは?

リーダーシップとは、自分の考えや目標を周囲に伝え、共に行動して現状に変化をもたらすスキルのことです。また企業のような組織で必要とされるリーダーシップは、それに加えてチームが協力して働けるようにまとめ、広範囲にわたる影響を与えるスキルも求められます。

ハーバード・ビジネス・スクールの記事でも、効果的なリーダーシップが組織全体の成功に大きく寄与することが指摘されています。

リーダーシップを発揮するために求められるスキル

リーダーシップに必要なスキルには、次のようなものがあります。

コミュニケーション能力

リーダーは、チームやメンバーに考えや情報をわかりやすく伝えることが大切です。効果的なコミュニケーションができれば、誤解やストレスを減らし、仕事の遅れやメンバーのやる気の低下を防ぐことができます。

例えば、プロジェクトの進捗状況を定期的に共有することで、チーム全体が安心して仕事を進めることができます。

そのほか、仕事を依頼する際にも曖昧なコミュニケーションは避け、メンバーが期待されている役割がしっかりと伝わるようなコミュニケーションを心がけましょう。

問題解決と意思決定

リーダーは、困難な状況でも冷静に判断し、新しい解決策を考える力が必要です。例えば、スケジュールが遅れている場合、優先順位を見直し、適切な対応をとることが求められます。

またトラブルが発生したときでも感情的にならず、冷静に状況を整理し、次に何をすべきかを意思決定することがリーダーには求められます。

ビジョンの共有とメンバーの鼓舞

リーダーは、チームにとって「達成したい!」と思えるような目標や方向性を示し、それに向かってメンバーをやる気にさせる必要があります。明確なビジョンがあると、メンバーは自分の役割を理解し、目標達成に向けて努力しやすくなります。

例えば、「このプロジェクトが成功すれば、会社の成長に繋がる」と具体的なメリットを伝えると、モチベーションが上がります。

他者のフィードバックに対してオープン

リーダーは、自分の考えだけでなく、メンバーからの意見やアドバイスを受け入れる姿勢が重要です。フィードバックをしっかり受け入れることで、チーム全体の成長を促し、メンバーも安心して意見を言えるようになります。

例えば、部下からの提案に対して「なるほど、その意見も取り入れられないか考えてみよう」と返すことで、信頼関係が強まります。

組織文化の構築

リーダーは前向きでやる気を引き出すような職場環境や文化を作ることが大切です。ポジティブな文化は、メンバーのモチベーションを高め、チームのパフォーマンスを向上させます。

例えば、努力をきちんと評価し、成功をチームで祝う環境を作ることで、メンバーは「もっと頑張ろう」と感じるでしょう。

参考:

Harvard Business School“Organizational Leadership: What It Is & Why It’s Important”

リーダーシップとマネジメントの違いとは?

リーダーシップとマネジメントは似ているようで、実際には異なる役割を持っています。ハーバードビジネスレビューの記事によると、具体的には、次のような違いがあります。

価値を数える vs 価値を創造する

マネージャーは主に成果を数字で評価し、計画通りに進んでいるかをチェックします。しかし、この「数値管理」によって、時には本来の価値が失われることもあります。

一方、リーダーはチームが新しい価値を生み出すための環境作りに力を注ぎます。メンバーに責任を持たせ、自由にアイデアを出せるようにすることで、全体の成果をより高めるのです。例えば、新しいプロジェクトでは、メンバーが自由にアイデアを出しやすい雰囲気を作ることがリーダーの役割です。

権力 vs 影響力

マネージャーは自分の直属の部下を中心に、権力を使って指示を出します。これに対し、リーダーは影響力を広げ、自分のチームだけでなく、組織全体や外部の人々にも影響を与えます。

リーダーは、直属の部下以外の人々からも信頼され、相談やアドバイスを求められる存在です。例えば、他部署のメンバーから「どうすればもっと良くなるか?」と相談を受けるようなリーダーは、影響力を持っている証拠といえます。

仕事を管理する vs 人を導く

マネージャーは主にタスクやプロジェクトの進行状況を管理し、目標を達成することに集中します。しかし、リーダーはただ仕事を管理するのではなく、メンバーを導き、影響を与えることに焦点を置きます。

リーダーはメンバーをやる気にさせ、共通の夢や目標に向けて動く力を引き出すのです。例えば、「この仕事が成功すれば会社全体が成長する」というビジョンを示すことで、チーム全体にインスピレーションを与えます。

このように、マネジメントが業務の管理に重点を置くのに対し、リーダーシップは人を動かし、価値を生み出す力に重点を置いています。どちらも組織にとって必要ですが、役割や目的が違うことを理解することが大切です。

参考:

Harvard Business Review“Three Differences Between Managers and Leaders”

リーダーシップの種類

リーダーシップには様々なスタイルがあります。それぞれのタイプにメリットがあり、状況やチームの特徴に応じて使い分けることが重要です。以下では、シャンプレーン・カレッジ大学の記事をもとに、代表的なリーダーシップの種類をご紹介します。

「変革型リーダーシップ」チームを激励し、成長させる

変革型リーダーは、チームに刺激を与え、メンバーが自分自身の限界を超えられるよう導きます。メンバーにただ目標を達成させるだけでなく、メンバーが個々の能力を最大限に発揮できるような環境を作り出します。

例えば、リーダーが「私たちのチームはもっと良くなれる」と励まし、メンバー一人ひとりが新しい挑戦を楽しむようになると、チーム全体が向上していきます。

「受任型リーダーシップ」メンバーにタスクを委任する

受任型リーダーは、チームに対して自由な裁量を与え、自主的に目標を達成できるようにサポートします。あまり細かく指示を出さず、メンバー自身に任せるスタイルです。

例えば、プロジェクトの方向性だけを示し、具体的な進め方は各メンバーに任せるようなリーダーです。この方法は、メンバーに自律性を与え、クリエイティブな解決策を生み出すことができます。

「権威型リーダーシップ」模範を示してチームを導く

権威型リーダーは、自らがチームの模範となり、そのリーダーシップに従うようチームを導きます。独裁的と誤解されがちですが、このスタイルはメンター的な要素が強く、チームに明確な方向性を示しながら成長を促します。

例えば、リーダーが率先して困難な仕事に取り組むことで、他のメンバーも「自分も頑張ろう」と思うようになるケースです。

「取引型リーダーシップ」成果に応じて報酬や罰を与える

取引型リーダーは、結果に基づいて報酬を与えたり、必要に応じて罰を与えることでメンバーを管理します。これは、企業でよく見られる構造的なリーダーシップスタイルで、成果に対して明確な評価が行われるため、メンバーにとっては目標がはっきりとしています。

例えば、営業成績が良かったメンバーにはボーナスを与える一方、目標を達成できなかった場合は改善を求めるといった形です。

「参加型リーダーシップ」 意見を取り入れ、意思決定を共有する

参加型リーダーは、チームメンバー全員の意見を尊重し、意思決定にメンバーを巻き込みます。リーダーが独断で決めるのではなく、メンバーの意見を聞いてから最終決定を行うため、メンバーも自分がリーダーシップに関与していると感じやすくなります。

例えば、新しいプロジェクトの進め方を決める際に、リーダーが「みんなの意見を聞かせて欲しい」と言い、そこから決定を導く場面です。

「奉仕型リーダーシップ」チームのニーズを最優先する

奉仕型リーダーは、自分の利益よりもチーム全体のニーズを優先します。人間関係を大切にし、メンバーが快適に働けるようにサポートすることに重点を置きます。

例えば、メンバーが困っているときに手を差し伸べ、メンバーの成長や幸福を第一に考える姿勢を持つリーダーです。こうしたリーダーは、メンバーの信頼を得やすく、チーム全体の絆を強めることができます。

良くないリーダーシップの例

リーダーとして成長するには、優れたスキルを身につけることが重要ですが、同時に、自分自身の行動や特性がリーダーシップに悪影響を与えていないか振り返ることも大切です。

以下では、ピーター・G・ノースハウスの著書『Leadership: Theory and Practice』をもとに、リーダーシップに悪影響を及ぼす可能性のある特性をいくつかご紹介します。

議論好き

議論を好みすぎるリーダーは、意見を戦わせることに集中しすぎて、他の人の意見を受け入れにくくなることがあります。これにより、メンバーの意見が無視され、チームの協力が得にくくなります。例えば、会議中に自分の主張を押し通そうとすると、他の人の意見が軽視されることがあります。

人に対して鈍感

対人関係に鈍感なリーダーは、他人の感情や意図を理解せずに行動してしまい、知らず知らずのうちにメンバーを傷つけたり、不満を抱かせることがあります。例えば、メンバーが困っていることに気づかず、無理な要求をすることが考えられます。

自己愛が強い

自己中心的で自分を優先するリーダーは、チーム全体ではなく、自分の利益や評価ばかりを考えて行動します。これにより、メンバーの信頼を失いやすく、組織の目的達成にも支障が出ます。例えば、チームの功績を自分だけの手柄にするリーダーが挙げられます。

失敗を恐れる

失敗を恐れすぎるリーダーは、挑戦を避けたり、安全策ばかりを選び、チーム全体の成長を妨げることがあります。メンバーにもリスクを取ることを恐れさせ、組織の進化が停滞する原因となります。例えば、新しいアイデアを提案する機会を減らすことです。

完璧主義

完璧を追い求めすぎるリーダーは、すべてのタスクで完璧を求め、細かいことにこだわりすぎてチームに無理な要求をします。これにより、メンバーのストレスが増え、生産性が低下することがあります。例えば、細部にこだわりすぎてプロジェクトの納期が遅れるケースです。

衝動性

衝動的なリーダーは、じっくり考えずに感情に基づいて即決をしてしまい、結果としてチームに混乱を招くことがあります。これにより、一貫性のないリーダーシップとなり、メンバーがついていけなくなることがあります。例えば、気分次第で突然計画を変更するリーダーが挙げられます。

参考:
Champlain College“The Top 10 Qualities of a Great Leader”

管理職のリーダーシップスキルを伸ばす方法

生まれつきリーダーの資質を持つ人もいますが、多くの場合は経験を積み重ね、スキルを学ぶことで成長します。ペンシルバニア大学の記事によると、管理職としてリーダーシップを伸ばすためには、次のような方法があります。

リーダーの役割を積極的に探す

リーダーシップを発揮できる機会を積極的に見つけましょう。大きなプロジェクトだけでなく、小さなチームをまとめたり、地域のボランティア活動でリーダー役を務めるなど、様々な場面で経験を積むことが大切です。

例えば、社内イベントの企画や地域の清掃活動をリードすることで、実践的なリーダーシップを学ぶ機会が得られます。

コミュニケーションと積極的な傾聴を実践する

優れたリーダーになるためには、効果的なコミュニケーションスキルと積極的傾聴が欠かせません。相手の話にしっかりと耳を傾けることで、相手の考えや感情を理解しやすくなり、信頼関係が築けます。

また、自分の意見をわかりやすく伝える能力も重要です。例えば、会議で発言する際には、まず相手の意見をよく聞いてから、自分の意見を整理して話すよう心がけましょう。

フィードバックと自己反省を受け入れる

成長するためには、他者からのフィードバックを受け入れる姿勢が必要です。リーダーとしての強みや改善点を見つけるためには、定期的に自己反省を行いましょう。

すべてのフィードバックを無批判に受け入れる必要はありませんが、有益な指摘をもとに行動を改善することで、より良いリーダーになれます。例えば、上司や同僚からの評価を振り返り、どの部分を強化すべきかを考えることが有効です。

学び続ける姿勢を持つ

リーダーシップは一度習得すれば終わりではなく、常に学び続けることが求められます。例えば、リーダーシップに関するセミナーや研修に積極的に参加し、自分のスキルを磨き続けることも大切です。時にはメンバーから学ぶ姿勢も重要でしょう。

業界のトレンドを追ったり、新しいリーダーシップスキルを学ぶことで、組織内で信頼され、より多くの責任を任されるようになります。

成功したリーダーから学ぶ

成功したリーダーから学ぶことも、リーダーシップを向上させる良い方法です。彼らに「何がうまくいったか」「どのような困難があったか」などを尋ねることで、自分自身のリーダーシップの課題や改善点を見つける手助けになります。

例えば、職場で尊敬する上司に、過去の失敗や成功のエピソードを聞くと、役立つアドバイスが得られるかもしれません。

自分のリーダーシップスタイルを見つける

自分自身の強みや弱みを理解し、それに基づいてリーダーシップスタイルを確立することが重要です。フィードバックを活かして、自分がどのようなリーダーなのかを見つけ、そこに磨きをかけることで、より効果的なリーダーシップが発揮できます。

例えば、フィードバックをもとに「自分はメンバーの意見を尊重するタイプだ」と気づいたら、その強みをさらに伸ばすための努力をすることが有効です。

参考:

Park University“How to Develop Exceptional Leadership Skills: A Comprehensive Guide to Becoming a Strong Leader”

The University of Pennsylvania “How to Develop Strong Leadership Skills”

まとめ

リーダーシップは管理職にとって不可欠なスキルであり、チームの成功や組織全体の成長に大きく関わります。リーダーシップとマネジメントの違いを理解し、それぞれの役割を適切に使い分けることで、より効果的なリーダーとして活躍することができます。また、リーダーシップにはさまざまなスタイルがあり、自分のチームや状況に合ったリーダーシップを選ぶことが重要です。

管理職として成長し続けるためには、常に学び、フィードバックを受け入れる姿勢が欠かせません。自身のリーダーシップスキルを磨き、チームメンバーをサポートしながら、より良い成果を目指していきましょう。