若手社員の育成について以下のような悩みをお持ちの方もいるでしょう。
- 若手社員の育成が思うように進まない
- 育成を通して若手社員の成長が感じられない
- 若手社員の育成を成功させる方法が分からない
本記事では、若手社員の育成を成功させるポイントについて、米国人材マネジメント協会の記事を参考に解説します。若手社員の育成に悩んでいる管理職の方は、ぜひ本記事を参考に長期的に戦力となる社員の育成方法を見つけてください。
若手社員の育成を重視すべき理由

若手社員の育成を重視すべき理由について、アメリカ・ビジネス・アカデミージャーナルが公開するミネソタ州セントトーマス大学の助教授であるスニル・ラムラル氏による記事を参考に解説します。
定着率の向上
自身の成長を重視する若手社員に対して、会社が育成に力を入れている姿勢を示すことで、キャリアアップへの期待感を持つことができ、定着率向上につながります。たとえば、経験豊富な先輩社員が成長や課題解決をサポートをするメンター制度や研修制度を充実させることで、スキルアップの機会を提供し、成長意欲を満たすことができます。
また、新しいアイデアを提案できる風通しの良い職場環境や、雇用の安定も、若手社員が安心してキャリアを築ける環境として重要です。つまり、若手社員の育成は、若手社員が組織に長期的に貢献するための基盤を築き、定着率向上につながる重要な戦略と言えるでしょう。
生産性の向上
若手社員の育成は、会社への愛着や忠誠心を育み、定着率を向上することが期待できます。
若手社員の育成は、若手社員にとってキャリアアップの道筋を示し、成長への期待を抱かせる効果があります。
育成を通じて知識やスキルを得られることは、若手社員の自信やモチベーションを高め、組織への愛着を育むことにつながります。また、育成に力を入れる会社の姿勢は、若手社員にとって成長できる環境として魅力的に映り、離職防止につながるでしょう。
若手社員の育成は、単なるスキル向上だけでなく、若手社員の満足度を高め、定着率向上につながる重要な要因の1つといえます。
参考:
Sunil Ramlall.A Review of Employee Motivation Theories and their Implications
for Employee Retention within Organizations.Journal of American Academy of Business.
若手社員の世代的な特徴

若手社員の育成に求められることについて、東京商工会議所(小林健会頭)が発表する「企業の人材育成担当者による新入社員・若手社員に対する意識調査」を参考に解説します。
若手社員の特徴として、デジタルスキルが高く効率的な発想を持っているとされています。一方、精神面の弱さや上の世代との価値観の違いについて、懸念を抱いている企業も少なくありません。
若手社員が他の世代の社員と比較して優れている点や特徴として挙げられるのは、「ITやデジタル関連のスキルがある」が最も多く、続いて「効率性を重視した発想ができる」や「自己成長に対する意欲が高い」などが多いとされています。
引用:東京商工会議所(小林健会頭)|企業の人材育成担当者による新入社員・若手社員に対する意識調査
一方、指導・育成時に困っていることは、「(ストレスやトラブル等に対して)打たれ弱い」や「価値観や勤労観が分からない」、「仕事よりもプライベートを重視しすぎる」と回答した企業が多いとされています。
引用:東京商工会議所(小林健会頭)|企業の人材育成担当者による新入社員・若手社員に対する意識調査
上記の調査結果をみる限り、若手社員はITやデジタルスキルが高く効率的な発想を持って自らの成長に積極的である一方、精神的な弱さや上の世代との価値観の違いなどを不安視する傾向があるといえます。
若手社員の育成の課題

若手社員の育成について、同調査を参考に解説します。多くの企業では、既存の社員の業務負担が大きく、若手社員の育成に十分な時間を割けないといった現状があるとされています。特に、近年の人手不足は深刻で、若手社員を指導する社員が自身の業務に追われ、OJTなどの実践的な指導がおろそかになりがちです。
また、育成ノウハウを持つ指導者の不足も問題とされています。指導経験の浅い社員や、指導スキルが未熟な社員に若手社員の育成を任せざるを得ないケースも多く、効果的な育成が難しい状況を生み出しているといえるでしょう。
このような指導不足は、若手社員にとって期待していた成長機会が得られなかったり、業務の習熟が進まず自信を失ったり、職場への不満が募るといった状況は、若手社員のモチベーション低下を招き、離職の大きな要因となります。
早期離職は、育成投資の損失だけでなく、会社全体の士気の低下や人材不足の悪化にもつながります。さらに既存の社員の負担が増加し、若手社員への指導時間が更に削られるという悪循環に陥ってしまう恐れもあります。
この悪循環を断ち切るためには、会社全体で若手育成の重要性を認識し、指導体制の整備や業務分担の見直しなど、多角的な取り組みが必要となります。
若手社員の育成のポイント

若手社員の育成のポイントについて、米国人材マネジメント協会の記事を参考に解説します。
失敗を許容する
若手社員の育成において、指示を出すだけでなく、明確な目標を示した上で、達成するための方法を自ら考えさせることが重要です。加えて、若手社員が失敗した場合には、その挑戦を否定するのではなく、許容することも大切です。
失敗を許容することは、問題を解決する能力や創造性を養うだけでなく、主体性と責任感を育むことにもつながります。失敗を経験することで、なぜその戦略がうまくいかなかったのかを理解し、次に活かせます。
ただし、最初から難易度の高いタスクを任せるのではなく、小さな成功体験を積み重ねられるよう、基本的なタスクから始め、徐々に複雑な課題へとステップアップさせていくことが成長を促す上で効果的です。
忍耐強く接する
若手社員は、社会人としての経験や知識が不足しているため、思うように育成が進まないこともありますが、忍耐強く接することが大切です。若手社員が、すぐに成果を出せなくても、焦らず長期的な視点で育成に取り組むことが重要です。
また、過度な期待をかけることは、若手社員のモチベーションを低下させる可能性があるため、上司は、若手社員の成長スピードを尊重し、小さな成長を評価しながら育成すべきでしょう。
経験レベルに合わせる
若手社員の経験レベルに合わせて育成を進めることが大切です。中途採用した社会人経験のある社員の場合、既存の知識や経験を基に育成できますが、若手社員は、基礎知識や経験が不足しているため、育成はより基本的な内容から始めるべきです。
また、一度に多くの情報を詰め込むのではなく、理解しやすいように、ゆっくりとしたペースで進めることも大切です。育成は、若手社員の経験レベルに合わせ、実践的なスキル習得に焦点を当てるべきでしょう。
さらに、育成を通して、会社の文化や価値観を理解させ、組織への帰属意識を高めることも重要です。
若手社員の強みを活かす
若手社員それぞれの強みを活かすことで、モチベーションを高め、パフォーマンス向上につなげることができます。若手社員だからこそ持っている強みや才能を理解し、最大限に活かすことが大切です。若手社員の強みを知る方法として、才能や強みを診断できるツールを使う企業も少なくありません。
逆に、弱点がある場合は、それを克服するためのサポートを提供するべきでしょう。たとえば、スキルアップのための研修への参加やその分野に経験豊富な社員と交流する機会を作るなど、新しい概念を学ぶための指導を仰ぐ機会を提供すると良いでしょう。
適切な上司を割り当てる
若手社員は、社会人としての経験が浅く、職場環境にも慣れていないため、適切な上司を割り当てることが育成を成功させる鍵となります。忍耐強く、共感力があり、育成に意欲的な上司は、若手社員の成長を大きくサポートできるでしょう。
若手社員は、こまめなフィードバックを求める傾向があるため、単なる結果だけでなく、プロセスについても評価し、良かった点、改善点を具体的に伝えることで、成長を促すことができます。
育成の効果を検証する
若手社員の育成は、実施することが目的ではなく、若手社員の成長に繋がって初めて成功といえます。育成直後にアンケートを実施するだけでなく、数ヶ月後、あるいは半年後など、長期的な視点で効果測定を行う必要があります。
また、育成で得られた知識やスキルが、実際の業務でどのように活用されているかを確認することも重要でしょう。他の部署のメンバーから意見を聞いたり、業績評価に反映させたりするなど、多角的な視点から検証することで、研修内容の改善ができます。
将来のリーダー候補を見極める
将来のリーダー候補を見極めるためには、日々の業務における行動や姿勢を注意深く観察することが重要です。若手社員の中で将来のリーダー候補を見極めるポイントは以下のとおりです。
- 積極的に業務に取り組んでいる
- 責任感を持って業務をやり遂げている
- 他の社員をサポートしている
- チームワークを重視している
- 常に新しい知識やスキルを学ぶ姿勢を持っている
一方で将来のリーダー候補にならない社員の特徴は、空き時間を有効活用せず、ダラダラと過ごしたり、非生産的な活動に費やすなどがあげられます。これらは、時間管理能力の欠如や、業務へのモチベーションの低さを示しています。
参考:
【上司の役割】若手社員の育成を成功に導く方法

若手社員の育成を成功に導く上司の役割について、フォーブスが公開する起業家のスティーブ・ジャバラ氏による記事を参考に解説します。
敬意を持ったコミュニケーションを育む
リーダーは若手社員とのコミュニケーションにおいて、敬意を払うことを最優先する必要があります。若手社員の意見やアイデアを真剣に受け止め、対等な立場で議論する姿勢を示すことが重要です。
ミスが起こった場合も、頭ごなしに叱責するのではなく、何が問題だったのか、どうすれば改善できるのかを一緒に考えることで、若手社員は安心して仕事に取り組むことができます。
定期的な面談やフィードバックの機会を設け、若手社員の成長をサポートすることが大切です。敬意を持ったコミュニケーションは、若手社員のモチベーション向上につながります。
スキル向上の機会を提供する
若手社員の成長を促すためには、スキルを向上させる機会を多く提供しましょう。若手社員の育成は、座学だけでなく、主に以下の方法が効果的です。
- OJT…実務を通じて先輩社員が知識やスキルを計画的に教える方法
- メンター制度…先輩社員が成長や課題解決をサポートする
- オンラインコース…スマートフォンやパソコンなどから受講する動画講座
特に、メンター制度は、経験豊富な先輩社員が若手社員の育成に直接関わることで、実践的なスキルや知識を習得できるだけでなく、キャリア形成の相談役としても良い影響を与えるでしょう。
上司は、若手社員のキャリア目標やスキルアップのニーズを把握し、適切な機会を提供することで、若手社員の成長を支援する必要があります。
責任と意思決定を委ねる
若手社員に責任ある仕事を任せ、重要な意思決定に関与させることは、若手社員の成長につながります。上司は、若手社員の能力や経験に応じて適切なレベルの仕事を任せ、自主的に業務を進める機会を与える必要があります。
重要な会議に若手社員を積極的に参加させることで、責任感のある業務に対して自分事として考えることができるため、効果的といえます。
【若手社員の役割】活躍する人材になる方法

活躍する人材になるための若手社員自身の取り組みについて、同記事を参考に解説します。
自己分析と目標設定
キャリアを築く上で、まず重要なのは自分自身を深く理解することです。自分の強みや弱みや興味、価値観などを分析し、何が得意で何が苦手なのか、どんな仕事にやりがいを感じるのかを明確にしましょう。
その上で、短期的な目標と長期的な目標を設定します。短期的な目標は、具体的なスキル習得や日々の業務による会社への貢献など、現実的に達成可能な範囲で設定します。
長期的な目標は、キャリアパスや将来像など、より大きな視点で設定しましょう。目標設定は一度決めたら終わりではなく、定期的に見直し、必要に応じて修正していくことが大切です。
達成可能なロールモデルをつくる
目標を達成するためには、成功している人から学ぶことが近道です。尊敬できる先輩社員や業界の著名人など、自分の目指す姿に近いロールモデルを見つけ、その行動や考え方、キャリアパスなどを参考にしましょう。
ただし、ロールモデルをそのまま真似するのではなく、自分自身の個性や強みを活かすことが重要です。
学びを継続する
現代社会は変化のスピードが速く、常に新しい情報や技術が生まれているため、一度身につけた知識やスキルだけでキャリアを築き続けることは難しく、継続的な学習が不可欠です。
書籍やオンラインコース、セミナーなど、様々な方法で学び続け、常に最新の情報やスキルを習得する努力をしましょう。
計画的に行動する
目標を達成するためには、計画的に行動し、継続することが重要です。毎日の業務を効率的に進めるためのスケジュール管理や、目標達成のための具体的な行動計画を立て、それを愚直に実行しましょう。
また、目標達成へのモチベーションを維持するためにも、日々のルーティンを作ったり、習慣化したり、日々の行動に一貫性を持たせることが大切です。
ストレッチゴールを目指す
ストレッチゴールとは、少し背伸びをした目標を設定することです。ストレッチゴールを設定することで、現状維持に甘んじることなく、常に高い目標に挑戦することが成長の原動力となります。
現状の能力やスキルでは達成が難しいと思われるような、ストレッチゴールを設定することで、自身の限界を突破し、新たな可能性を広げることができるでしょう。
定期的な自己評価
目標達成に向けて順調に進んでいるか、軌道修正が必要か、などを定期的に振り返り、自己評価を行いましょう。自己評価は、客観的なデータに基づいて行うだけでなく、自分自身の感情や感覚も大切にすることで、より深い分析ができます。
自己評価の結果を上司やメンターに共有することで、客観的なアドバイスをもらうことも効果的です。
フィードバックを求める
自分自身の成長のためには、周りの人からのフィードバックを積極的に求めることが重要です。上司や同僚、メンターなど、様々な立場の人から意見を聞き、多角的な視点で自分自身を評価することで、新たな気づきを得ることができます。
フィードバックを受ける際には、素直に耳を傾け、改善すべき点を受け入れる謙虚さが必要です。ネガティブなフィードバックも、成長の糧として捉え、前向きに改善に取り組みましょう。
参考:
まとめ
若手社員の育成には、企業の定着率と生産性の向上につながる重要な役割を果たします。若手社員は、高いITスキルと効率的な発想を持つ一方、精神面の弱さや上の世代との価値観の違いが育成において課題となる場合があります。
育成を成功させる方法として、若手社員の失敗を許容し、長期的な視点で忍耐強く、経験レベルに合わせた指導を行うことが重要です。しかし、育成を成功させるためには若手社員自身が、定期的な自己評価とフィードバックを積極的に求めることなども重要になります。
企業と若手社員双方の努力が、長期的に戦力となる社員を育てたり、双方の持続的な成長へとつながるでしょう。