「リモートワークでは部下が何をやっているかわからない…」
「リモートワークで部下をうまくマネジメントするコツを知りたい…」
このような悩みを持つ上司も多いでしょう。リモートワークは従業員にとってメリットが多い制度である反面、上司にとってはマネジメントが難しい点が大きな課題として挙げられます。
本記事では、リモートワークのマネジメントについて、よくある悩みやその解決策を解説します。リモートワークを継続しつつ、部下を効果的にマネジメントしたい方は、ぜひ参考にしてください。
リモートワークのマネジメントで悩みを抱える上司は多い

Job総研が管理職を対象に実施した「リモートマネジメント実態調査」において、「リモートワークのマネジメントに関する課題の有無」を尋ねたところ、68.0%が「(課題が)ある」と回答しています。この結果から、リモートワークの環境下で部下をマネジメントするにあたって、何かしら悩みを抱えている上司は多いことが見てとれます(詳細は後述)。
リモートワークでは部下をマネジメントするのが難しいことから、企業によっては制度の廃止を検討しているところもあるでしょう。一方で、マネジメントを受ける側の従業員にとって、リモートワークには以下のようなメリットがあります。
- 通勤が必要ない
- プライベートの時間が増える
- 家事や育児と両立しやすい
したがって、「マネジメントが難しい」という会社側の都合だけでリモートワーク制度を廃止してしまうと、部下の不満を招くことになりかねません。株式会社MS-Japanが実施した「テレワーク実態調査」でも、「(コロナ禍に)出社日数が増えたことについてどう感じていますか?」との問いに、59.3%が「不満」と回答しています。
以上のことから、部下にとって働きやすい環境を維持するためにも、リモートワークを完全には廃止せず、現状の悩みや課題を解決する策を検討していくことが重要です。
参考:
PR TIMES「Job総研による『2023年 リモートマネジメント実態調査』を実施 6割がテレワーク中にサボり マネジメント側は9割が黙認」
PR TIMES「MS-Japan「テレワーク実態調査」を発表!コロナ後の意に沿わない出社増で、「仕事へ不満」が1.6倍に」
リモートワークのマネジメントでよくある悩み

先ほど紹介したJob総研の「リモートマネジメント実態調査」(以下、同調査)の結果をもとに、リモートワークのマネジメントに関するよくある悩みを紹介します。
コミュニケーションが取りにくい
リモートワークのマネジメントでとくに多い悩みとして、「コミュニケーションが取りにくい」点が挙げられます。同調査でも、「リモートワークのマネジメントで難しさを感じる内容」について尋ねたところ、37.6%が「コミュニケーション」と回答しています。
仕事を円滑に進めるために、コミュニケーションは必要不可欠なものです。コミュニケーションが不足していると、指示の誤解や意思決定の遅れなどにより、生産性に悪影響をおよぼしかねないからです。実際に、米国では従業員間のコミュニケーション不足が原因で、年間1.2兆ドルの損害を被っているといわれています(AIライティングツールを提供するグラマリー社の調査より)。
もちろん、リモートワークでも電話やWeb会議ツールを活用すれば、コミュニケーションを取ること自体が可能です。しかし、わざわざツールを立ち上げる手間がかかる上に、直接顔を合わせていない分相手の表情や感情が読みにくく、お互いに満足のいくコミュニケーションが取れるとも限りません。
したがって、リモートワーク環境下でコミュニケーションを取る際は、対面の場合とは違った工夫を施す必要があるといえます。
仕事の進捗が把握しにくい
リモートワークの環境下では、部下の「仕事の進捗が把握しにくい」点も大きな課題として挙げられます。同調査でも、「リモートワークのマネジメントで難しさを感じる内容」について、20.1%が「業務進捗の管理」と回答しています。
部下が同じオフィスにいる場合、「最近調子はどう?」「あの件はどうなっている?」などと話しかけることで、彼らの仕事の進捗を手軽に確認できます。しかし、リモートワークだと対面よりもコミュニケーションに時間がかかるため、仕事の進捗も確認しにくくなるのでしょう。
部下の仕事の進捗を把握できなければ、彼らが何かしら問題を抱えている際に、上司として適切にサポートするのが難しくなります。その結果、スケジュールの遅れやパフォーマンスの低下などにつながる恐れがあります。このような問題を回避するためには、以下のような部下の進捗を確認する機会を意図的に増やすことが大切です。
- 日報を提出させる
- 定期的にミーティングを実施
- ツールを用いてタスクを可視化する
業務量を調整しにくい
リモートワークだと部下の「業務量を調整しにくい」点も、上司のよくある悩みとして挙げられます。同調査でも、「リモートワークのマネジメントで難しさを感じる内容」について、13.5%が「業務量の管理」と回答しています。
部下が同じオフィスにいる場合、彼らの様子を目の前で観察できるため、業務負担が公平になるよう調整しやすいでしょう(忙しそうな社員の仕事の一部を、手が空いている人に回すなど)。しかし、リモートワーク環境下では部下の見えない分、各自の業務負担も把握しにくくなります。その結果、業務量が多すぎて長時間労働になる者や、逆に業務量が少なくサボる者が現れるのでしょう。
なお、同調査で「テレワーク中にサボった経験の有無」を尋ねたところ、65.4%が「ある」と回答しています。人はどうしても楽をしたがる生き物であり、リモートワーク中に多少サボる者がいるのは仕方がないことです。しかし、従業員間で業務量に極端に差がある場合は、負担を強いられている人の不満を高めることにつながりかねません。ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、労働時間が同僚よりも120%長い従業員は、モチベーションが低い可能性が33%高く、上司に不満を持っている可能性が2倍高いといいます。
以上のことから、上司は部下の業務負担を公平にできるよう、リモート環境下でも業務量を正確に把握することが重要です。
参考:
Grammarly “The Unofficial 4-Day Workweek: How Ineffective Communication Is Costing Your Business”
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「優れたマネジャーの日常に見る5つの行動パターン」
リモートワークのマネジメントに関する悩みを解決するコツ

リモートワークのマネジメント面でよくある悩みを解決するコツを解説します。
ハイブリッドワークを導入する
「ハイブリッドワーク」とは、従業員がオフィス出社とリモートワークを組み合わせる働き方です。国土交通省が実施した「テレワーク人口実態調査」によると、近年はハイブリッドワークを採用している企業が増加傾向にあるといいます(令和5年度は約9.4%の企業がハイブリッドワークを採用)。
ハイブリッドワークは、オフィス出社とリモートワークのいいとこ取りをした働き方です。そのため、部下にとって働きやすい環境を維持しつつ、マネジメント面での課題も解決しやすくなると期待できます。ここで、オンライン旅行会社トリップドットコムが実施した、ハイブリッドワークに関する実験を紹介します。
同実験では、従業員を「週5日オフィスに出社するグループ」と「週3日オフィスに出社/2日リモートワークするグループ」に分けて6ヶ月間勤務させたところ、両者の間で生産性やパフォーマンスに差は見られなかったといいます。それだけでなく、後者に属する従業員は仕事への満足度が高く、離職率は35%減少したとのことです。
ただし、ハイブリッドワークに何も制限を設けなければ、「楽をしたい」「サボりたい」などの好ましくない理由で、リモートワークばかりを選択する部下がいてもおかしくありません。そのため、リモートワーク可能な日数にはある程度の上限を設けた方がいいでしょう。
リモートワークのルールを定める
先ほども述べたとおり、リモートワーク環境下では対面の場合と比べて、部下の仕事の進捗や業務量が把握しにくくなります。また、リモートワークを無制限に許可してしまうと、仕事をサボる者も現れるかもしれません。
これらの問題を防ぐためには、リモートワークに関する詳細なルールを設けることが重要です。たとえば、「リモートワークをしたい場合は、その日行う業務を申告し、事前に上長の許可を得なければならない。また、その日の業務が終わったら、日報を上長へ提出する」というルールを設けたとします。こうすれば、部下の仕事の進捗や負荷を詳しく知ることができる上に、サボりも防止できるでしょう。
ただし、ルールを厳しくしすぎると部下がリモートワークを選択しにくくなり、彼らの不満を高めることになりかねないため注意が必要です。
雑談できる時間を設ける
リモートワーク中でも電話やWeb会議ツールを使えば意思疎通は取れるものの、対面と比べるとコミュニケーションが希薄になりがちです。しかし、リモートワーク環境下でも、コミュニケーションの取り方を工夫することで、人間関係によい影響をもたらすことは可能です。その1つの手段として、ハーバード・ビジネス・レビューの記事では「雑談できる時間を積極的に設ける」ことを推奨しています。
同記事によると、雑談には従業員のポジティブな感情や協調性を高める効果があるといいます。たとえば、いつも行っている定例会議の前に、好きな音楽や趣味について語らせることで、メンバー間の交流も深まり、より効果的なコミュニケーションが取れるようになるかもしれません。
なお、雑談では基本的には何を話しても構いませんが、以下のような人によっては不快に感じてしまう話題は、避けた方がいいでしょう。
- 宗教
- 政治
- ゴシップ
- 不満・悩み
モニタリングシステムを活用する
リモートワーク中に部下がサボるのを防ぐ手段として、モニタリングシステム(一定時間ごとにパソコン画面のスクリーンショットを自動で撮影し、記録するツールなど)を活用するのも1つの手です。
ただし、従業員を監視するためだけにモニタリングシステムを使用するのは好ましくありません。ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、管理者が監視目的でモニタリングシステムを用いた場合、従業員は怠慢行為(ネットの私的利用や遅刻など)をとりやすくなる上に、仕事のパフォーマンスも低下する傾向にあるといいます。
一方で、管理者が従業員の成長を目的としてモニタリングシステムを利用し、その旨を事前に彼らへ共有していた場合は、非生産的な行動が減り、パフォーマンスも向上する傾向にあるとしています。
以上のことから、モニタリングシステムを活用する際は、以下の2点を意識することが重要です。
- 「従業員の成長」のためにモニタリングシステムを使用することを、事前に部下へ伝える(「業務中のパフォーマンス分析を行い、個別のスキルアッププランを提供するためにシステムを活用します」)
- モニタリングシステムで得られたデータをもとに、部下に対して懲罰を伴わないフィードバックを行う(「過去1ヶ月のデータを見ると、定型業務に費やしている時間が多いようです。効率化のために、以下の方法を試してみましょう」)
参考:
国土交通省「テレワーカーの割合は減少、出社と組み合わせるハイブリットワークが拡大」
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「A/Bテストで判明した週2日在宅勤務のメリット」
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「リモートワークでも雑談できる仕組みが必要だ」
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「信頼を損なわず、従業員の監視を実施する方法」
リモートワークのマネジメント成功事例

リモートワークでのマネジメントを成功させた他社の事例を紹介します。
カルビー
リモートワークを社内で積極的に推奨し、社員の満足度だけでなく生産性の向上にも成功した「カルビー株式会社」の事例を紹介します。
同社では新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、2020年7月から「Calbee New Workstyle」と呼ばれる新たな働き方をスタートさせました。Calbee New Workstyleでは、「リモートワークの標準化」や「フルフレックスタイム制(コアタイムなし)」を採用。この取り組みにより、柔軟な働き方が可能になり、社員のワークライフバランスの向上につながったとのことです。
また、同社では「効率よく働き最大限の成果を出す」という成果主義が元々企業文化として定着していたことから、リモートワークによって生産性が低下することはなく、逆に「効率が上がった」という声が多く聞かれたといいます。
なお、同社ではリモートワーク環境下でのコミュニケーション不足を防ぐために、以下のような工夫を凝らしています。
- Web会議ツールを接続したままにし、オフィスで近くの席に座っているかのような環境を再現し、気軽に質問や雑談ができる時間を設けている
- 全社員がオンラインで自由に参加できる「Calbee Learning Café」を、学びと交流の場として人事部門が定期的に提供している
サイボウズ
ハイブリッドワークを導入したことで、社員の離職率を大幅に低下させることに成功した「サイボウズ株式会社」の事例を紹介します。
同社では元々「昭和の働き方」が横行しており、毎日オフィスに出社するのはもちろん、残業や休日出勤も当たり前に行われていたそうです。その結果、2005年には離職率が28%に達し、人材確保が大きな経営課題となっていました。この状況を打開するべく、同社では「従業員の働きやすさ」を向上させるためのさまざまな施策を実施。その一環として、2010年にリモートワークを試験的に導入し始めました。
やがて、大部分の業務がリモートワークでもできることが判明し、リモートワークの本格運用が社内で定着。そして2018年には、各メンバーが働き方を自ら自由に宣言できる「新・働き方宣言制度」がスタートしました。
▼(例)働き方の宣言
- 毎日10~19時にオフィスへ出社し働く
- 午前中はオフィスに出社、午後はリモートワークで働く
- 木曜日はリモートワーク、残り4日は時短でオフィスに出社し働く
このような施策の結果、最大28%まで達していた離職率が、近年では3~5%にまで低下したといいます。
参考:
THE CALBEE「「働きやすい」だけでなく「働きがい&やりがい」の実現へ! ~「Calbee New Workstyle」の挑戦~」
THE HYBRID WORK「離職率28%、採用難、売上低迷。ボロボロから挑んだサイボウズのハイブリッドワーク10年史」
まとめ
リモートワークのマネジメントについて、よくある悩みやその解決策を解説しました。
リモートワークは従業員にとってメリットが多い制度であり、マネジメントが難しいという理由で制度を廃止してしまうと、彼らの不満を招くことになりかねません。したがって、リモートワークの制度は継続しつつ、現状の悩みや課題の解決策を検討し実践することが重要です。
本記事で紹介したポイントをふまえて、リモートワークでの部下のマネジメントを成功させ、働きやすい職場環境と業績アップの両立を目指してください。