仕事を覚えられない新入社員にどのような対策を取れば良いか分からず、お困りの管理職の方もいらっしゃるでしょう。
上司が取れる対策としては、新入社員が質問しやすい心理的安全性の高い環境を整えたり、知識習得を早めるために、基礎から順を追って長期的に育成していくことが有効でしょう。
この記事では新入社員が仕事を覚えられない原因などについても紹介しているので、ぜひご一読ください。
新入社員が仕事を覚えられない原因

新入社員が仕事を覚えられない原因として、以下の状況が考えられます。
- 入社してから時間が経っていない
- 研修やマニュアルの整備が十分でない
- 仕事の内容にあまり興味がない
入社してから時間が経っていない
新入社員が入社して間もない場合、多くの情報を学んだり新しい環境に慣れたりするのに手一杯で、仕事が覚えきれないこともあるでしょう。
株式会社Synergy Careerが行った調査では、新人研修のカリキュラム内容で不満に感じている点について、「覚えることが多すぎてついていけないと感じた」と回答した人は20.8%でした。企業によっては業務知識や企業理念、コンプライアンスなど幅広く研修を行う場合もあるでしょう。情報量が多すぎると短期間で覚えきるのは難しいといえます。
また、新入社員は現場に配属されてからも、コミュニケーション方法や仕事の進め方などを習得し、環境に慣れなければなりません。中途採用された新入社員の場合は、前職との違いの整理も必要です。
このように入社してから時間が経っていない場合、新入社員が知識のインプットや職場環境への適応に追われるため、仕事を覚えるのが難しい場合もあると考えられます。
研修やマニュアルの整備が十分でない
新入社員が仕事を覚えられない原因の一つに、研修やマニュアルの整備が不十分なことも挙げられます。
株式会社ビズヒッツが中途入社の経験がある方を対象に行った調査によると、中途入社の社員が入社後つらいと思う瞬間について「教育が不十分」と回答された割合は全体で5番目に多い結果となりました。具体的には、「仕事を丁寧に教えてもらえない」「新卒社員と比較して研修期間が短い」と感じているケースもあります。
また、400社以上のマニュアル作成の実績を誇るフィンテックスの調査によると、「マニュアルが使われたものの分かりにくかった」「マニュアルが使われず、分かりにくかった」との回答は合わせて51.6%を占めています。つまり、半分以上の回答者が新人教育のマニュアルの有無や内容に問題を感じていることが分かります。
このように、新入社員が研修やマニュアルが不十分だと感じる場合もあるため、仕事を覚えてもらえないときは自社の教育体制を見直す必要もあるでしょう。
仕事の内容にあまり興味がない
新入社員が業務内容にあまり興味を持てない場合も、仕事がなかなか覚えられないでしょう。
株式会社ジェイックは新入社員研修の受講者を対象に、就職活動をやり直したいと思った回数についてアンケートを行いました。「1、2回ある」「3回以上ある」と回答した人は合わせて全体の39%です。そのなかには「配属先が希望と違った」「思っていた業務内容ではなかった」「やりたいこととずれている」と感じた人もいます。つまり、仕事に興味が持ちにくい状態といえる新入社員もいると分かります。
新入社員が仕事の内容に興味が持てない場合、「知識を理解しにくく、覚えられない」「最低限しか覚える気にならない」といった状況にも繋がるでしょう。
参考:
キャリアジャーナル | 就職/企業情報の総合サイト「【調査報告】新人研修カリキュラムは「OJT」が満足度80.4%と最も高い | 同期との仲が深められたの声も多数」
PR TIMES「【中途採用はつらいと思うときランキング】男女500人アンケート調査」
HRドクター「2024年度の新入社員に「就職活動をやり直したいと考えたことはあるか」を調査」
株式会社フィンテックス「【2024年度実施】業務マニュアルの使用状況とイメージの調査レポート」
仕事を覚えられない新入社員の特徴

仕事を覚えられない新入社員の特徴として、考えられる以下の点について解説します。
- ミスを繰り返す
- 業務の不明点をそのままにする
- 業務に必要な知識が不足している
- タスク管理ができていない
ミスを繰り返す
新入社員がミスを何度も繰り返す場合は、その業務内容について正確に覚えられていないといえます。
株式会社マネジメントベースは30代・40代の会社員と公務員を対象に、25~34歳までの若手社員のなかで仕事ができないと感じた人について特徴を調査しました。仕事ができないと感じた理由のなかで一番の問題点について、「仕事の遅さ、要領の悪さ、ミスや不注意の多さ」に分類される回答をした人は全体で2番目に多い結果です。仕事ができない若手社員の特徴として、ミスの多さが指摘されています。
なお、ミスを繰り返す原因の一つとして、新入社員がメモを取っていないケースがあります。同じことを質問される場合は、メモを取るように指導するのも有効でしょう。
業務の不明点をそのままにする
業務の不明点をそのままにしている新入社員は、なかなか適切な仕事内容を覚えられないでしょう。分からないまま業務を行うため、ミスに繋がるリスクもあります。
VOICHAT株式会社は新卒入社した会社員を対象に、新入社員時代に聞きたいタイミングで上司に満足に質問できていたかについて調査を行いました。「あまり満足でない」「全く満足でない」と答えた人は17.3%です。つまり、10人のうち1~2人の新入社員が、適切なタイミングで疑問を解消できていないといえます。
新入社員が聞きたいタイミングで質問できなかった理由は「上司が不在のときが多い」「リモートワークのため話しにくい」「上司が忙しそうだった」「上司が話しづらいと感じた」などです。このような場合は、質問しやすい環境を整えるのも一つの方法でしょう。
業務に必要な知識が不足している
業務に必要な知識が不足している場合、業務内容の理解が難しく仕事を覚えるまでに時間がかかるでしょう。
株式会社R&Gが社会人を対象に仕事を覚えられない原因について調査した結果、「仕事が難しい・複雑」という回答は全体の3番目に多い結果となりました。具体的には、「専門用語が多い」「専門知識が必要」などの回答も含まれます。つまり、業務に必要な知識が不足していると、仕事が覚えにくいといえるでしょう。
新入社員の知識が不足していると感じる場合は、教育体制の見直しもおすすめです。
タスク管理ができていない
タスクの時間配分や優先順位が理解できておらず、タスク管理をうまく行えない新入社員もいるでしょう。タスク管理ができていないと、スケジュールに間に合わず焦って業務を行い、ミスに繋がってしまいます。その結果、新入社員を「仕事が覚えられていない」と判断する場合もあるでしょう。
株式会社マネジメントベースは、25~34歳までの若手社員のなかで仕事ができないと感じた人の特徴を調査しました。その結果、仕事ができないと感じた理由のなかで一番の問題点について「仕事の遅さ・要領の悪さ・ミスや不注意の多さ」と分類された回答数は全体の2位、「優先順位をつけられない・時間管理ができない」は全体の10位です。仕事ができない若手社員の特徴として、タスク管理に関する問題点を挙げた人が一定数いることが分かります。
参考:
PR TIMES「30,40代ビジネスパーソンから見た『仕事ができない若手社員の特徴』に関するアンケート調査結果」
PR TIMES「新入社員の約4割が、聞きたいときに質問・相談できないことで、モチベーションの低下を実感」
PR TIMES「【なかなか仕事が覚えられない?仕事を覚えるための工夫ランキング】男女500人アンケート調査」
新入社員が仕事を覚えられない場合に上司がすべき対策

新入社員が仕事を覚えられない場合、上司はどのような対策が取れるのでしょうか。ここでは、以下の5つの対策を紹介します。
- 心理的安全性が高い環境を整える
- エラーマネジメントを研修に取り入れる
- 業務知識を習得しやすい環境を作る
- タスクの優先順位や期限を明確にする
- 新入社員に期待をかける
心理的安全性が高い環境を整える
ここでは、ハーバード・ビジネス・スクールの教授であるエイミー C. エドモンドソン氏などが「Harvard Business Review」で公開している情報をもとに解説します。
新入社員が質問しやすくなるためには、心理的安全性の高い環境を整えることが重要です。そのためには、新人社員の言動に関心のある態度で接し、サポートするようにしましょう。「質問してくれてありがとう」「意見を言ってくれて助かったよ」などと感謝を示し、助けを求めやすくさせることも大切です。
エラーマネジメントを研修に取り入れる
ヒューストン大学に在籍する終身准教授であるプリヤンコ・グチャイト博士が「Boston Hospitality Review」で公開している情報によると、失敗から原因を学び、社員本人が改善策を考えるにはエラーマネジメントトレーニングが有効です。
エラーマネジメントトレーニングでは、ミスは自然に発生するものだとみなされます。トレーニングの目標は、研修生がミスを有益な学習機会だと再定義することです。ミスを失敗として扱うトレーニングと比べて、「ミスしたあとも感情をコントロールし、タスクに集中しやすくなる」「失敗の原因を理解し、改善策を考えやすくなる」といった効果があります。
業務知識を習得しやすい環境を作る
ここでは、学習デザインコンサルタントであるジュリア・フェラン氏が「Harvard Business Review」で公開している情報をもとに解説します。
新入社員の知識習得を早めるためには、育成の過程を長くすることが大切です。一度に大量の研修資料を渡すのではなく、基礎知識から順を追って理解できるような研修計画を立てましょう。
また、組織内だけで通じる用語を使うと新入社員の理解が遅れる可能性もあるため、隠語を使用する場合は丁寧に説明する必要があります。
新入社員教育の流れやポイントについては、以下の記事もご覧ください。
タスクの優先順位や期限を明確にする
ジュリア・フェラン氏によると、新入社員に何を期待するか明確に伝えることが必要です。タスクの優先順位や期限などがはっきりと指示されていない場合は、新入社員は不確実な状態で業務を進めなければなりません。
新入社員の役割を明確にするためには、タスクの優先順位や工数を記載した書類を社員に配布しましょう。
新入社員に期待をかける
ここでは、元ハーバード・ビジネススクールの教授であるJ. スターリング・リビングストンが「Harvard Business Review」で公開している情報をもとに解説します。
新入社員の業績を上げるには、上司が期待をかけると良いでしょう。部下への接し方や期待する内容により、本人の業績がほぼ決定することが研究により分かっています。期待を受けた人の成果が向上する現象は「ピグマリオン効果」と呼ばれ、部下に大きく期待をかければ生産性が高まる可能性は大きいのです。
ただし、部下にかける期待は現実的でなくてはなりません。達成できない目標を設定しないように注意しましょう。
また、上司自身が人材育成能力に自信を培うことも大切です。自分の教育能力に自信があれば部下に自然に期待と信頼をかけられるため、現実的なものとして受け入れられやすいでしょう。
なお、経験が増えていくにつれて部下の自己イメージが固まっていき、高い期待感を持つのが難しくなる場合もあります。そのため、上司の期待は特に若手社員に有効です。
部下の目標設定については、以下の記事もご覧ください。
参考:
Harvard Business Review「新入社員の心理的安全性は、入社直後から急速に低下する」
Boston Hospitality Review ”The Necessity of Error Management Training in the Hospitality Industry”
Harvard Business Review「会社への定着率を上げる新入社員研修とは」
Harvard Business Review「ピグマリオン・マネジメント」
まとめ
新入社員が仕事を覚えられない場合、上司は部下が助けを求めやすい態度で接することが大切です。タスクの優先順位や工数を明確に指示したり、知識習得を早めるために育成の過程を長くしたりすることも有効でしょう。