新入社員の元気がなくなる背景や、企業の立場で行うべきメンタルヘルス対策などに興味がある管理職の方もいらっしゃるでしょう。

新人社員は職場に慣れていないほか、失敗への不安などを抱えていることが考えられます。企業は社員のメンタル不調を防ぐため、研修やメンター制度を導入し、普段から対策を行いましょう。

この記事では、新入社員に元気がなくなると生じる問題なども紹介します。

新入社員の元気がなくなる背景

ここでは、新入社員の元気がなくなる要因について解説します。

仕事内容で分からないことが多い

マイナビニュースのアンケートによると、入社1年目に大変だったこととして「仕事内容」を挙げた人は49.5%いました。その中には、「覚えることが多すぎる」「業務を習得できない」という意見もあります。

新入社員は、業務の進め方だけでなく、仕事の目的やビジネスマナーについても理解が不十分なことがあります。質問しづらい職場環境では、モチベーションの低下や不安の増大といった悪影響を及ぼす可能性があります。

職場環境に慣れていない

シチズン時計が全国の新入社員400人を対象に実施した調査では、「職場に慣れるのに約3ヶ月かかった」と回答した人が一番多い結果でした。その次に多かったのは、入社後約半年経った時点でも「まだ慣れていない」という回答です。

新卒の新入社員は、学生から社会人へと大きく環境が変わります。入社直後は負担がかかりやすく、新入社員の活力が低下することも考えられます。中途の新入社員の場合は、社風や企業独自のルールにも困惑するでしょう。

人間関係に悩んでいる

株式会社情熱が新入社員を対象に行ったアンケートでは、仕事の悩みや不安について「人間関係やほかの従業員」が回答の一つとして挙げられています。

上司とのやり取りに慣れなかったり教育担当者と性格が合わなかったりと、いろいろな状況が考えられるでしょう。

キャリアに不安を感じている

株式会社Kakedasが20・30代の正社員を対象に調査を行った結果、今後のキャリアについて不安や悩みがあると答えた人は69%となりました。

新入社員も、入社後に得られるスキルの限界や評価体制の不備に気付き、不安を抱くことがあります。

仕事で失敗しないか不安を感じている

カケハシスカイソリューションズが研修受講者の新入社員を対象に実施した調査によると、仕事で失敗することに不安を感じる人は80.4%に上りました。

不安になる理由として、「失敗したら恥ずかしい」「信頼を失うかもしれない」などが挙げられています。

ミスへの不安から、強い緊張を感じながら仕事をする新入社員も少なくありません。

部下が休むようになった背景と従業員がプレッシャーを感じる場面については、以下の記事もご覧ください。

参考:
マイナビニュース「新卒社員が実感した「社会人の大変なこと」、1位は?」
CITIZEN「「社会人1年目の仕事と時間意識」調査」
@人事「新入社員の本音を大公開。アンケート結果から見えた早期離職の傾向と対策」
JAIC「【調査】20代・30代正社員の7割が「将来のキャリア」に不安」
カケハシスカイソリューションズ「[新入社員対象 意識調査] 失敗するのが怖い・恥ずかしい・背負いきれない 。約8割の新入社員が「仕事で失敗することに対して不安を感じる」と回答」

新入社員に元気がなくなると生じる問題

ここでは、ストレスの高い状態にある新入社員を想定し、その影響について解説します。

集中力や注意力が下がる

ヴィグナン大学のB・スリニヴァス・ラオ博士らの論文によると、高いストレスレベルによって、集中力や注意力、生産性が下がる場合があります。なお、ストレス要因が認知能力や意思決定などを損ない、生産性が下がったとの研究結果もありました。

ミスが増加する

同論文によると、ミスの増加に繋がる要因として挙げられるのが、ストレスによって引き起こされる疲労・感情的疲労です。

仕事のストレスが高ければ、パフォーマンスは低いという相関関係が分かっています。慢性的なストレスがある場合も、タスクパフォーマンスレベルは低いとされています。

仕事を休む

同論文によると、社員が慢性的にストレスを抱えている場合、仕事を休むこともあるでしょう。ストレスによって、休暇・病気休暇を取得しやすくなると考えられるからです。

ストレスが過剰かつ常態化している場合、社員の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。ストレスを軽減するためには、支援的な職場環境を整えるなどの方法が効果的です。

職務満足度が下がる

同論文によると、ストレスの影響で、職務満足度が下がることも考えられます。仕事に満足している社員は、自身の業務に積極的に取り組む傾向があります。一方で、「ストレスにより職務満足度が下がると、離職しようという考えが強くなる」という研究結果もあります。

ストレスを抱えていても、上司などから適切な支援を受けている場合、職務満足度が高い傾向にあるという分析結果も示されています。組織でできる対策に加え、社会的支援も意識して行うと良いでしょう。

参考:
AVR, M., & Rao, B. S. (2023). A study of work stress and its impact on employees’ performance and job satisfaction. International Journal of Education and Science Research Review, 10(4), 119.

新入社員がメンタル不調になる前に行うべき対策

新入社員がメンタル不調になる前に、企業で行うべき対策を紹介します。

新入社員や管理職向けに研修を実施

American Psychological Associationの記事によると、管理職の方がメンタルヘルス啓発研修を受けることで、職場でのメンタルヘルス促進に意欲が高まることが分かっています。また、社員のストレスやメンタル不調に気づくために、従業員のウェルネスと心の健康についての研修を受けるのも有効です。サポート方法を学ぶことで、離職率や欠勤率の低下につながります。

厚生労働省の記事によると、若年労働者には、セルフケア研修を実施することが望ましいでしょう。ストレスの種類を具体例とともに提示し、各自のストレス対処法を考える機会を提供することが理想的です。

メンター制度の導入 

ジョージ・フォックス大学のデジタルコモンズで公開されているスーザン・L・ネルソン氏の論文によると、職場でメンタリングを行う効果は、業務への前向きな気持ちの高まりや、欠勤や退職が減ることなど。そのため、不安を抱える従業員の仕事への満足感を高めるのに有効です。

メンター制度を導入し、キャリア面および心理社会的な側面からのサポートを強化しましょう。

ストレスチェックを行う

厚生労働省の情報によると、ストレスチェック制度には、従業員が自らストレスに気づくほか、職場の改善によって従業員のメンタルヘルス不調を防止する目的があります。労働者が常時50人以上いる職場に義務付けられた制度です。

厚生労働省がストレスチェック制度の効果について調査した結果、アンケートに答えた職場のうち53.1%が「社員のメンタルセルフケアへの関心が高まった」と感じると回答しました。また、労働者の50.2%が「自分のストレスを意識し始めた」と答えています。

未然にメンタルヘルス不調を防ぐため、努力義務のある小規模事業場においても、ストレスチェック制度を導入することが望ましいでしょう。

ストレスチェック制度については、以下の記事もご覧ください。

コミュニケーションの機会を作る

マインド・シェア・パートナーズのCEOであるケリー・グリーンウッド氏らが公開している記事によると、企業で行うべきメンタルヘルス対策の一つは、社内に繋がりを作ることです。具体的には、「職場の人間関係を良好に保つ」「チームでの交流の機会を作る」といった方法が挙げられます。社員の調子を気に掛けて話しかけると同時に、サポートできる方法を尋ねる姿勢が管理職には必要です。

相談できる体制を整える

「労働者の心の健康の保持増進のための指針」によると、事業者は従業員が自分から相談できる環境を作ることとされています。

厚生労働省の情報によると、社内相談窓口で相談した人のなかには、気持ちが軽くなったり自信を持てるようになったりする人も。安心して就労できる環境を作るのに役立つでしょう。

なお、社外相談窓口を設置すれば従業員が相談できる選択肢が増え、抵抗感を減らす効果も考えられます。

参考:
American Psychological Association “5 ways to improve employee mental health”
厚生労働省「若年労働者へのメンタルヘルス対策 ~セルフケア・ラインケア・家族との連携など~」
Nelson, S. L. (2022). The impact of workplace mentoring on meaningful work for people with workplace anxiety in the insurance industry (Doctoral dissertation, George Fox University). Digital Commons @ George Fox University. 
厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」
Harvard Business Review「職場のメンタルヘルスという喫緊の課題にどう対処すべきか」
厚生労働省「メンタルヘルスに関する社内相談窓口設置のポイント」

新入社員のメンタルヘルスのため行ってはいけないこと

新入社員のメンタルヘルスのため、行ってはいけないことについて解説します。

破壊的リーダーシップ

エラスムス大学ロッテルダムの組織心理学の准教授であるキンバリー・ブリーヴァールト氏らの記事によると、管理職の方は、心理的虐待と捉えられる行為に注意する必要があります。心理的虐待と捉えられる行為には、嘲笑や無視などのほか、孤立させたり怒りを爆発させたりといった行動も該当します。

企業としての対策として、上司の理想的な行動や望ましくない対応について指針を策定することが重要です。不適切な対応を取った場合に、上司に下される処分についても明文化しましょう。

曖昧なタスク目標や役割の設定

WHOの記事によると、職場で起こりうるメンタルヘルスのリスクとして、曖昧な職務役割を挙げています。また、ウォルデン大学のスカラーワークスに公開されているクマール・G・スブラマニアン氏の論文によれば、ストレスを生じさせる要因の一つが不明確なタスク目標です。

新入社員に指示をする場合は、職務役割やタスク目標を明確にしましょう。

メンタルヘルス問題への差別

アイオワ大学のアリソン・リンチ医学博士の論文によると、否定的に判断したり差別したりする考えをスティグマといいます。スティグマ化を避けようと、精神状態に悩みを抱えている従業員が助けを求められず孤立する可能性も。メンタルヘルスの問題が未治療だと、職場の生産性に影響が出る場合もあるでしょう。

スティグマを解消するには、中立的で思いやりのある言葉を選ぶことが重要です。

参考:
California Management Review“Psychological Abuse & Destructive Leadership”
World Health Organization“Mental health at work”
Subramaniam, K. G. (2017). Strategies for reducing employee stress and increasing employee engagement (Doctoral dissertation, Walden University). Walden Dissertations and Doctoral Studies.
The University of Iowa“Stigma in the Workplace” 

まとめ

新入社員に元気がなくなる背景には「分からないことが多い」「職場環境に慣れていない」など、さまざまな理由が考えられます。

管理職にも研修を行ったりメンター制度を取り入れたりし、普段から社員のメンタルヘルスケア対策を行いましょう。