管理職として働くなかで、「誰にも相談できない」「本音を話せる相手がいない」と感じることはありませんか?役職が上がるにつれ、周囲との距離を感じやすくなり、孤独を感じる管理職は少なくありません。
職場での孤独は、仕事のパフォーマンスやメンタルヘルスにも影響を及ぼすといわれています。本記事では、管理職が孤独を感じる理由と、その孤独感を和らげる方法について紹介します。
孤独に感じている管理職は多い

マネジメントコーチングサービスを提供する株式会社mentoが行った調査(2023年)によると、管理職の約6割が「孤独を感じる」と答えています。特に中間管理職は、上司と部下の板挟みになりやすく、「管理職らしく振る舞わなければならない」「本音を話せる相手がいない」といった悩みを抱えがちです。
さらに、同じ調査では、約8割の中間管理職が月に1回以上、燃え尽き(バーンアウト)を感じていることも明らかになっています。
主な原因として、次のようなプレッシャーが挙げられます。
・上層部からの「少ないリソースで成果を出すように」という要求(39%)
・部下からの「もっと成長を支援してほしい」という期待の高まり(37%)
しかし、エンゲージメントサーベイを提供するPerceptyx社のレポート(2024年)によると、多くの中間管理職は意思決定の裁量が限られており、求められる役割と実際にできることの間にギャップを感じています。このような状況が続けば、負担が増し、精神的に追い詰められてしまう可能性もあります。
株式会社mentoの記事では、管理職が「管理職同士の交流」や「コーチングの機会」を求めていることが指摘されています。
中間管理職は会社の方針と現場をつなぐ重要な役割 を担っているため、適切なサポートを受けられる環境を整えることが、組織全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。
参考:
PR TIMES「管理職の6割が孤独を感じ、8割がバーンアウトの兆候」(2023年)
Perceptyx“1 in 4 managers are flat out miserable right now”(2024年)
管理職が孤独に感じている理由は?

管理職、特に中間管理職は、さまざまな理由から孤独を感じやすい立場にあります。社会や科学に関するニュースなどを毎月1000万人以上読者に配信するPhys.orgの記事(2006年)では、孤独感を引き起こす主な要因として、次の3つが挙げられています。
増える責任と減らないプレッシャー
管理職は、上層部からは成果を求められ、部下からはサポートを期待されるという板挟みの状況に置かれがちです。特に中間管理職は、経営層の意向を現場に落とし込む役割を担うため、組織の方針と現場の実情のギャップを埋める役割を求められます。
しかし、意思決定の裁量が限られていることも多く、自分の判断だけでは解決できない問題に直面することもしばしばあります。
また、求められる成果に対し、十分なリソースが与えられないケースも少なくありません。目標達成が難しい状況でプレッシャーを感じながらも、部下を支えなければならないという負担がのしかかります。
周囲からの期待が大きいほど、誰にも頼れず、一人で問題を抱え込んでしまうことが増えていくのです。
仕事優先で、人間関係が希薄に
Phys.orgの記事によると、管理職になると「友人関係を維持するのが難しくなった」と感じる人が多いとされています。
業務量が増えることでプライベートの時間が減り、これまで定期的に会っていた友人とも疎遠になりがちです。休日でさえ仕事のことを考える時間が増え、リフレッシュする機会が減ることで、さらに孤独感が募ることもあります。
また、職場の人間関係にも変化が生じます。かつて同僚だった人が部下になり、立場が変わることで距離を感じるようになることもあります。
管理職としての立場を考えると、以前のように気軽に悩みを打ち明けたり、フランクに接したりするのが難しくなるため、自然と職場での孤独感が増していきます。
弱音を吐けず、抱え込んでしまう
管理職には「責任を持って解決しなければならない」という意識が強く、「悩みを見せるべきではない」と感じてしまうことがあります。
上司に相談しても、「管理職なら自分で対処すべきだ」と突き放されることもあり、次第に頼れる相手がいなくなってしまいます。
さらに、仕事のストレスが家庭にも影響を及ぼすことがあります。忙しさのあまり家族との時間が減り、コミュニケーションが少なくなると、プライベートでも孤独を感じやすくなります。
仕事の悩みを抱えたまま帰宅し、気持ちに余裕が持てず、家庭内の会話が減ってしまうことも少なくありません。このように、職場だけでなくプライベートでも相談相手を失うことで、孤独感がさらに深まっていくのです。
参考:
Phys.org”Lonely at the top? Middle managers feel the strain, research reveals”(2006)
職場での孤独がもたらす影響
「職場での孤独」は、ただの気分の問題ではなく、健康や仕事のパフォーマンス、さらには組織全体にも影響を及ぼします。
ケンタッキー州立大学ウェスタン校の研究によると、孤独が続くと体調を崩しやすくなったり、仕事の効率が下がったりする可能性があると指摘されています。
以下では、具体的にどんな影響があるのかを解説していきます。
健康へのリスクが高まる
孤独を感じるとストレスが増え、免疫力が低下しやすくなるといわれており、その結果、風邪をひきやすくなったり、体調を崩しやすくなったりすることもあります。
さらに、孤独な状態が長く続くと血管への負担が増え、高血圧のリスクが高まることが指摘されています。
また、孤独を感じる管理職ほど、高カロリーな食事を選びやすく、運動不足や体重増加につながる傾向があります。ストレスが溜まると、ついファストフードや揚げ物など手軽な食事に頼りがちになり、栄養バランスが崩れがちです。
さらに、残業が続くとコンビニ弁当や夜遅い食事が習慣化し、健康に悪影響を及ぼすこともあります。こうした生活が続くと、気づかないうちに体調を崩し、仕事のパフォーマンスにも影響を与えてしまう可能性があります。
職場での人間関係がぎくしゃくしやすくなる
管理職が孤独を感じると、周囲との関係がうまくいかなくなり、さらに孤立してしまうことがあります。
ウェスタン・ケンタッキー大学の研究では、孤独を感じているリーダーは意思決定の精度が下がり、部下とのコミュニケーションが減少することで、チームの結束が弱まる可能性があると指摘されています。
また、管理職が周囲と積極的に関わらなくなると、部下が意見を言いづらくなり、チーム内の情報共有もうまくいかなくなることも考えられます。結果として、チーム全体の雰囲気が悪くなり、生産性にも影響を及ぼすかもしれません。
参考:
Western Kentucky University”The Impact of Leader Loneliness on Organizational Outcomes”
孤独感を軽減するための対策とは?

孤独を感じることは避けられない場面もありますが、適切な対策を取ることで、負担を軽減することは可能です。
ウェスタン・ケンタッキー大学の研究では、次の3つの方法が孤独を和らげる効果的な手段として紹介されています。
他のリーダーとつながる
同じ立場の人と話すことで、悩みを共有し、孤独感を和らげることができます。管理職になると、部下に本音を打ち明けづらくなるため、同じ立場の人と交流することが重要です。
社内の勉強会や交流会に参加したり、異業種交流会に顔を出すことで、悩みを相談しやすい関係を築けます。SNSやオンラインコミュニティを活用すれば、より気軽につながることも可能です。
「自分だけが孤独なのではない」と実感することで、精神的な負担を軽減できます。悩みを共有することで、新たな視点や解決策を得られることもあります。
信頼できる人とオープンに話す
仕事の悩みをすべて一人で抱え込まず、信頼できる身近な人と気持ちを共有することも大切です。管理職になると、「弱みを見せてはいけない」と感じがちですが、孤独感が続くと意思決定の精度にも影響を及ぼします。
研究によると、多くのリーダーにとって、配偶者やパートナーが自然な相談相手であり、オープンな対話が精神的な支えになるとされています。家族との何気ない会話が、気持ちを整理するきっかけになることもあります。
また、家族以外にも、信頼できる友人や元同僚と話すことで、新しい視点を得られる場合もあります。話すことで気持ちが軽くなり、冷静な判断がしやすくなることが期待できます。
悩みを書き出して整理する
考えがまとまらず、不安を感じるときは、悩みや課題を文字にすることで、気持ちが落ち着きやすくなります。頭の中で悩みを抱え込むと、不安が大きくなりがちですが、書き出すことで客観的に整理できます。
例えば、「上司との意見の違い」や「部下のモチベーション低下」などを書き出し、それぞれの原因や解決策を考えてみるのも一つの方法です。
付箋やメモ帳に書いて目に見える形にすることで、漠然とした不安が明確になり、冷静に対策を練りやすくなります。問題を「すぐ解決できること」と「しばらく様子を見るべきこと」に分けると、必要以上に不安を抱えずに済むでしょう。
参考:
Western Kentucky University”The Impact of Leader Loneliness on Organizational Outcomes”(2023)
まとめ
管理職としての孤独は避けられない場面もありますが、適切な対策を取ることで軽減することは可能です。孤独感を放置すると、ストレスや健康に悪影響を及ぼすこともあるため、意識的に対処することが大切です。
誰かとつながる、気持ちを共有する、悩みを整理するなど、小さな工夫を積み重ねることで、精神的な負担を減らせます。自分に合った方法を見つけ、孤独と上手に向き合いながら、より充実した働き方を目指していきましょう。