管理職はただ自分の仕事をこなすだけでなく、部下のマネジメントもしなければならない、負荷も責任も非常に大きい役割です。そのため、管理職の仕事がうまく遂行できず、「管理職にならなきゃ良かった」と後悔する人も多いでしょう。
本記事では、管理職になったこと後悔する人が多い原因や、後悔しないために日頃から心がけておくべきポイントを解説します。管理職の仕事に前向きに取り組み、部下のパフォーマンスやモチベーションを向上させたい方は、ぜひ参考にしてください。
「管理職にならなきゃ良かった」と後悔する人は多い

管理職の仕事が自分に合わず、「管理職にならなきゃ良かった」と後悔する人は少なくありません。
以下は、日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)が管理職を対象に実施した調査結果の一部で、「管理職になる前となった後の意識の変化」をまとめたものです。
▼管理職になる前となった後の意識の変化
【なった後】 管理職を続けたい | 【なった後】 管理職を続けたくない | |
---|---|---|
【なる前】 管理職になりたいと思っていた | 53.7% | 7.3% |
【なる前】 管理職になりたいと思っていなかった | 16.7% | 22.3% |
この結果を見ると、「管理職を辞めたい」と考えている人が29.6%もいることがわかります。さらに、7.3%の人は元々「管理職になりたい」と思っていたにも関わらず、現在は辞めたがっていることも見て取れます。
以上のことから、管理職は決して楽な仕事ではなく、管理職になったことを後悔する人もそれなりに多いといえます。
参考:
JMAM 日本能率協会マネジメントセンター「77%が「管理職になりたくない」【調査レポート】ポジティブな管理職を育てるために人事が押さえたいポイントとは?」
管理職になったことを後悔する理由

株式会社ビズヒッツが管理職経験者を対象に実施したアンケート調査の結果をもとに、「管理職にならなきゃ良かった」と後悔する人が多い原因を紹介します。
上層部と部下の板挟みになる
上司からは「もっと売上を上げろ」と言われ、一方で部下からは「もう少し業務量を減らしてほしい」と言われる。このように、上層部と部下の相反する要求で板挟みとなり、困った経験を持つ管理職も多いのではないでしょうか。
実際に株式会社ビズヒッツの調査においても、「管理職がつらいと感じる瞬間」として最も多く挙げられた意見は、「板挟みになるとき(約51%)」だったといいます。
管理職が上層部と部下の板挟みになる場合、その要因としては以下のようなことが考えられます。
- 現場で働く従業員が抱える苦労や問題を、上層部が十分に把握していない
- 上層部が求めるパフォーマンスの背景や目標を、部下が明確に理解していない
つまり、上層部と部下の双方の相互理解が欠けているために、相反する要求を持つことになるのです。
したがって、管理職は上層部と部下の双方とコミュニケーションをよく取り、お互いが理解を深めるよう働きかけることが重要です。
部下の育成がうまくいかない
管理職の重要な責務の一つとして、「会社の将来を担う優秀な人材を育成する」ことが挙げられます。しかし、実際には部下の指導や教育がうまくいかず、人材が育たないことで悩む管理職も多いようです。
厚生労働省が実施した「能力開発基本調査」によると、約80%の企業や組織が人材育成に関して何かしらの問題点を抱えているとされています。
以下は、その具体的な問題点として挙げられた主な意見です(括弧内は回答者の割合)。
- 指導する人材が不足している(57.1%)
- 人材を育成しても辞めてしまう(53.2%)
- 人材育成を行う時間がない(47.6%)
たしかに、人手や時間といったリソースが本当に不足しているために、部下の育成がうまくいかない場合もあるでしょう。
その一方で、リソースは十分に足りているにもかかわらず、行き当たりばったりの非効率な指導や教育を行っていることが原因で、人材育成がうまく進んでいない可能性も考えられます。
したがって、限られたリソースで効率的に人材を育成するためには、
- どのような人材になってほしいか
- そのためにはどのような知識やスキルが必要か
- そのためにはどのような学習や訓練をすればよいか
などの情報を事前に整理した上で、育成の目標や計画を明確に設定することが大切です。
労力と給料が釣り合っていない
管理職はただ自分の仕事をこなすだけでなく、部下のマネジメントもしなければならない立場です。ときには部下が犯したミスやトラブルについて、責任を追求されることもあるでしょう。
そのため、管理職は一般社員と比べると多少給料は良いものの、管理職として課される労力に対して見合っていないと感じる人も多いようです。
たしかに、管理職の業務量が多いのは事実です。しかし、その負担があまりにも重いと感じる場合、管理職が仕事を自分一人で抱え込んでしまっている可能性も考えられます。
また、管理職が仕事を抱え込むことの問題点として、部下の成長を阻害する恐れがある点も挙げられます。部下はさまざまな仕事を経験することで、幅広い知識やスキルを身につけることができます。しかし、管理職が一手に担うとその機会を奪うことになりかねないからです。
以上のことから、部下に対して自分の仕事を積極的に割り振ることも、管理職の重要な責務だといえます。
プレイヤーの方が楽しい
管理職の仕事に楽しさを見出せず、プレイヤー(一般社員)に戻りたいと考える人も多いようです。
たとえば営業職の場合だと、管理職として部下をマネジメントするよりも、プレイヤーとして取引先との契約を勝ち取り、成果を上げるほうが楽しいという人も多いのではないでしょうか。
元々プレイヤーとして優秀な成績を収めていた管理職は、とくにこの傾向が強いかもしれません。
管理職の仕事に楽しさを見出せない原因の1つとして、「管理職=つまらない」と決めつけていることが考えられます。
「つまらない」と思いながら管理職を嫌々続けていても、ストレスがたまるばかりで、自分自身のキャリアにとってプラスとなるものは得られません。
この状態から脱却するためには、管理職とはどういう仕事なのかを再考し、自分なりのやりがいを見つけることが大切です。
参考:
株式会社ビズヒッツ「中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法|男女238人へのアンケート調査から徹底解説」
「管理職にならなきゃ良かった」と後悔しないためのポイント

管理職になったことを後悔しないために、日頃から心がけておくべきポイントを解説します。
コミュニケーションによって相互理解を深める
先ほども述べたように、管理職が上層部と部下の相反する要求の板挟みになる場合、双方の相互理解が欠けていることが原因と考えられます。
そのため、管理職は上層部と部下の両方とよくコミュニケーションを取り、相互理解を深めるように働きかけることが重要です。
ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、上層部と部下の相互理解を深めるためのポイントとして、以下の3点を提唱しています。
ポイント | 具体例 |
---|---|
【上層部に対して】 部下が直面している問題について、データを提示しながら説明する | (売上アップを求める上層部へ)部下の直近3ヶ月間の残業時間データを提示し、「これ以上業務量は増やせません。業績をアップさせるには、抜本的な改善策を会社として考える必要があります」と主張する |
【上層部に対して】現場で働く部下と対面し、直接コミュニケーションを取るよう促す | 「一度現場に来て、部下の悩みを直接聞いた上でアドバイスをいただけませんか?」とお願いする |
【部下に対して】会社としてどの程度のパフォーマンスを求めているのか、なぜ高いパフォーマンスが求められているのかを理解させる | 「今期は会社全体で売上10%アップを目指しており、我々のチームは8%アップがノルマとなっています。そのためには、一人ひとりが昨年よりも5~10%程度成績を向上させる必要があり、あなたにも同様の水準を期待しています」 |
部下に仕事を割り振る
先ほども述べたように、管理職自身の負担を軽減するため、そして部下の成長を促進させるためには、部下に仕事を積極的に割り振ることが大切です。
ただし、仕事の割り振り方次第では、部下は「仕事を押し付けられた」と感じてしまう恐れがあるため、注意が必要です。実際に、Job総研が社会人男女を対象に実施した調査でも、22.3%が「仕事を押し付けるサボり魔上司」を嫌いな上司の特徴として挙げています。
以下は、ハーバード・ビジネス・レビューの記事で提唱されている、部下に効果的に仕事を割り振るためのフローです。
- 自分が抱えている仕事をリストアップする
- 自分にしかできない重要な仕事をリストから除外する(例:部下の業績評価)
- 各メンバーのキャリアプランや適性を考慮し、リスト上の仕事を誰に割り振るかを決める(例:次期管理職候補の部下に会議の進行を任せる)
- 任せる仕事の内容や目的、スケジュールなどを各メンバーに共有する
- こまめに進捗を確認し、フィードバックを行う
- 仕事が完了したら、一緒に振り返りを行う
上記のように、ただ仕事を割り振るだけでなく、きちんとフォローする姿勢を見せることができれば、部下が不満を抱えるリスクも軽減できるでしょう。
ジョブクラフティングを行う
管理職としての仕事に面白味が感じられない場合は、「ジョブクラフティング」を行うと効果的かもしれません。
ジョブクラフティングとは、「仕事のやりがいや満足度を高めるために、自らの働き方に工夫を施す手法」を指す言葉です。ここでいう「工夫」は、主に以下の3つに分類できます(厚生労働省より)。
工夫 | 概要 | 具体例 |
---|---|---|
作業クラフティング | 仕事の量や範囲を調整し、仕事の中身を充実させる | 現在抱えている仕事を部下へ積極的に割り振り、管理職である自分にしかできない重要な仕事に専念する |
人間関係クラフティング | 仕事上で関係する人たちとの関わり方を調整し、仕事への満足度を高める | 部下との1on1ミーティングを定期的に実施し、管理職としての自らの能力や行動に対するフィードバックをもらう |
認知クラフティング | 仕事の目的や意味を再考し、仕事に対してやりがいを感じ、前向きに取り組めるようにする | 管理職は「部下を管理する仕事」ではなく、「部下を一人前の人材に育て上げることで、会社の業績アップに貢献できる仕事」と捉え直す |
上記のような工夫を凝らすことで、管理職の仕事に対して前向きに取り組めるようになれば、結果的に部下のパフォーマンスやモチベーションの向上にもつながるでしょう。
参考:
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「中間管理職は上司と部下で矛盾する要求にどう対処すべきか」
JobQ Town「嫌いな上司の特徴とは?アンケートを元にランキング形式でご紹介!」
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「仕事を任せられないリーダーは、ステップアップできない」
厚生労働省「「働きがい」をもって働ける環境の実現に向けた課題について」
管理職を続けるのが辛い場合は降りるという選択肢もある

人にはそれぞれ適性があり、向いていない仕事を続けることは誰にとっても大きなストレスとなり得ます。その状態を放置すると、やがてメンタルに不調をきたすかもしれません。
株式会社MS-Japanが実施した調査でも、社会人になってからのメンタル不調経験の有無について、62%が「メンタル不調を感じたことがある」と回答しています。
おそらく、多くの人は健康に長く働き続けることを第一に望んでいるはずです。もし、管理職の役割が精神的に非常に辛いと感じる場合、いっそ管理職を降りることも一つの選択肢です。
社会人としてキャリアを歩む上で、「出世=成功」「降格=失敗」とは限りません。プレイヤーとして会社やチームに貢献することにやりがいを感じるのであれば、その道を極めることもまたキャリアの成功といえます。
参考:
MS-Japan「社会人になって62%が「メンタル不調」経験。一方社内サポート利用率は16%にとどまる【メンタル不調経験実態調査】発表」
まとめ
管理職は一般社員と比べて、負荷も責任も大きい仕事です。管理職の仕事が合わず、「管理職にならなきゃ良かった」と後悔する人は少なくありません。
管理職になったことを後悔しないためには、管理職という仕事に対する考え方や部下との関わり方において、適切な対策を講じることが大切です。
本記事で紹介したポイントを実践し、管理職の仕事に前向きに取り組むことで、部下のパフォーマンスやモチベーションの向上を目指してください。