「一向に仕事を覚えない部下の扱いに困っている…」
「仕事の進め方がわからない部下を指導するときのコツは?」

このような悩みや疑問を持つ管理職も多いでしょう。仕事の進め方を覚えるのが遅い部下に対しては、その原因をしっかりと分析した上で、適切に対処することが重要です。

本記事では、部下が仕事の進め方を理解できない原因や、部下を指導・教育する際のコツを解説します。部下を効果的に指導・教育し、優秀な人材を育成したい方は、ぜひ参考にしてください。

仕事の進め方がわからず悩む部下は多い

人材派遣業を営む株式会社R&Gが社会人男女を対象に実施した調査によると、「なかなか仕事を覚えられないと感じることがあるか」との問いに対して、81.2%が「ある」と回答しています。

この結果から、「仕事の進め方がわからない」という悩みを抱えている部下は多いことが推測できます。

以下は、同調査で「仕事を覚えられない原因」として挙げられた主な意見です(括弧内は回答者の割合)。

  • 覚えることが多い(23.8%)
  • 仕事への興味が薄い(17.4%)
  • 仕事が難しい・複雑(14.2%)
  • 仕事に慣れていない(12.4%)
  • 説明・教育が不十分(4.6%)

これらの意見を見ると、部下が仕事の進め方をなかなか覚えられない場合、必ずしも部下の能力が低いことが原因とは限らないといえます。

したがって、仕事の進め方を理解してくれない部下に対しては、その原因をしっかりと分析した上で、上司が適切に対処することが重要です。

参考:

PR TIMES「【なかなか仕事が覚えられない?仕事を覚えるための工夫ランキング】男女500人アンケート調査」

部下が仕事の進め方を理解できない原因

先ほど紹介した株式会社R&Gの調査結果をもとに、部下が仕事の進め方を理解していない場合に考えられる原因を紹介します。

仕事に慣れていない

若手社員が仕事の進め方を理解していない場合、まだ経験が浅く仕事に慣れていないことが原因と考えられます。

シチズン時計株式会社が新入社員を対象に実施した調査によると、「職場に慣れてきたと感じたのは、勤め始めてどのくらい経ってからですか?」との問いに対して、62.9%の人が「3ヶ月以内」と回答しています。

その一方で、入社後半年以上経っても「まだ慣れない」と答えた人も20.0%おり、仕事に慣れるまでにかかる期間は個人差が大きいことがわかります。

もし、仕事に慣れておらず苦戦している部下に対して、むやみに叱責したりきつく指導したりすると相手が萎縮してしまい、かえって成長を妨げることになるかもしれません。

したがって、経験が浅い部下がうまく仕事を進められていない場合には、「まだ仕事に慣れていないのかもしれない」と多少大目に見つつ指導・教育することも大切です。

仕事の難易度が高い

業務の難易度が高い場合には、その進め方を理解するまでに時間がかかる可能性があります。

営業職を例に挙げると、新規契約を獲得するためには「自社商品に関する知識」や「市場のトレンド」など、幅広い知識が必要不可欠です。さらに、「プレゼン資料の作成方法」や「コミュニケーションの取り方」のような、何度も実践経験を積むことでようやく習得できるスキルも必要になります。

このような難易度の高い仕事に苦戦している部下に対して、必要以上に厳しく指導・教育してしまうと、彼らの自信やモチベーションを喪失させる恐れがあります。

したがって、難しい仕事に取り組んでいる部下には共感や思いやりを示しながら、適宜アドバイスやフィードバックを行うことが大切です。

記憶力が悪い

部下が他の社員と比べて、仕事の進め方を覚えるのが明らかに遅い場合は、記憶力が悪いことも原因と考えられます。

人の記憶力には個人差があり、大人になってから簡単に改善できるものではありません。そのため、記憶力が悪いという理由だけで部下を責めるのは避けるべきでしょう。

しかし、仮に記憶力が悪かったとしても、以下のような工夫を凝らすことで、仕事を問題なく進められる可能性は高まるはずです(記憶障害などのやむを得ないケースを除く)。

  • メモを取る習慣をつける
  • 自分専用のマニュアルを作成する
  • スケジュールを手帳にまとめる

したがって、仕事をなかなか覚えられないにもかかわらず、上記のような努力を怠っている部下に対しては、自分なりに工夫を凝らすように促す必要があります。

ミスマッチが起きている

部下の成長スピードがあまりに遅いと感じる場合は、仕事のミスマッチが起きているかもしれません。

多くの人には職業適性があり、それぞれに向いている仕事・向いていない仕事があるはずです。向いていない仕事を嫌々続けていてもモチベーションが下がるだけであり、仕事の進め方をなかなか覚えられないのも無理はありません。

仕事の適性は採用プロセスの段階で見極めることが理想的ですが、書類選考や面接だけで完璧に見抜くのはどうしても難しいでしょう。

そこで、ミスマッチが起きている可能性があると思われる部下に対しては、異動や配置転換を検討する前に、まず「ジョブクラフティング」を促すのも一つの手です。

ジョブクラフティングとは、「自分の思考や働き方に工夫を加えて、仕事のやりがいや満足度を高める」手法を指します。

▼ジョブクラフティングの例

  • 仕事に優先順位をつけ、ひとまず重要度の高い仕事のみに注力する
  • 自分の仕事上の課題について、先輩社員にフィードバックを積極的に求める
  • 先輩社員をサポートする業務について、「自分の働きのおかげで先輩は最高のパフォーマンスを発揮できる」と捉える

部下がジョブクラフティングを行い、自らの仕事の価値を再確認できれば、モチベーションが向上し、結果的に成長スピードも促進されることが期待できます。

教え方や指示の出し方が悪い

部下の成長スピードが遅いからといって、必ずしも部下の能力に問題があるとは限りません。上司・先輩社員の教え方や指示の出し方に問題がある可能性も考えられるからです。

たとえば、入社して間もない新入社員に対し、「仕事のやり方はマニュアルに載っているから確認しておいて」と伝えただけで、あとは放ったらかしにしたらどうなるでしょうか。

まだ右も左もわからない新入社員にとって、文字だけで仕事をすべて理解するのは難しく、仕事の進め方を覚えるまでにかなりの時間を要するでしょう。

一般社団法人日本能率協会(JMA)が新入社員を対象に実施した調査によると、「あなたが理想的だと思うのはどのような上司や先輩ですか」との問いに、71.7%が「仕事について丁寧に指導する上司・先輩」と回答しています。

この結果は言い換えると、「仕事の教え方が雑な上司・先輩社員は部下の信頼を失いかねない」ことを意味しています。

以上のことから、部下の成長スピードに課題を感じた場合は、彼らにその責任を押し付けるのではなく、まずは自分の教え方や指示の出し方に問題がないか見直すことが大切です。

参考:

PR TIMES「【時間意識調査】「社会人1年目の仕事と時間意識」調査」

厚生労働省「「働きがい」をもって働ける環境の実現に向けた課題について」

PR TIMES「【日本能率協会・アンケート調査】「2022年度 新入社員意識調査」~新入社員の理想の上司・先輩は「丁寧に指導する人」が7割!」

仕事の進め方がわからない部下を指導・教育する際のポイント

仕事の進め方を理解できていない部下を指導・教育する際に、上司が心がけるべきポイントを解説します。

具体的でわかりやすい指示を出す

先ほども述べたように、部下が思うように仕事を進めてくれていないと感じた場合は、自分の指示の出し方に問題がないかを確認することが重要です。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、部下に具体的でわかりやすい指示を出すために意識すべきポイントとして、以下の5点を挙げています。

  • 「何を」求めているのか:わざわざ言う必要がないと思われる内容も含めて、すべての要素を伝える(例:「プレゼン資料を作成してください」だけではなく、「資料には市場の動向や先日実施したアンケート調査の結果、提案商品のスペック、見積もりなどの情報を載せてください」と指示する)
  • 「誰に」してほしいのか:「誰かがやってくれるだろう」と期待せず、名指しで指示を出す(例:「誰か電話に出てください」ではなく、「Aさん電話に出てください」と指示する)
  • 「期限」はいつまでか:何月何日の何時までなのか、具体的な期限を伝える(例:「できるだけ早くやってください」ではなく、「明日の12時までに提出してください」と指示する)
  • 「合格ライン」はどこか:自分が求める具体的なクリア水準を説明する(例:「明日の経営会議に出席してください」だけでなく、「明日の経営会議に出席し、あなたの意見を最低2個以上挙げてください」と指示する)
  • 「なぜ」お願いするのか:相手の納得感を高めるために、仕事を依頼する理由や背景を説明する(例:「プレゼン資料を今日中に作成してください」ではなく、「使用するプレゼン資料の納期を本日中にしているのは、明日宙に改善点がないかをこちらでチェックするためです」と伝える)

仕事の優先順位をつけさせる

経験が浅い部下の場合、やらなければならないタスクが多すぎて、何から手をつけていいのかわからずパンクしてしまっているケースも多々あります。

この状態を解消するためには、まずは今抱えている仕事をリストアップし、優先順位をつけさせることが重要です。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、仕事に優先順位をつけるコツとして、「重要度」と「緊急度」の2軸に分類する方法を提唱しています。

具体的には、今抱えている仕事を以下のような2×2のマトリックスにまとめて、「重要度・緊急度ともに高い」仕事から取り掛からせるのがよいでしょう。

緊急度が高い緊急度が低い
重要度が高いすぐに取り掛かる
(例:プレゼン資料の納期が2日後のため、優先的に取り掛かる)
具体的な期限を設定する
(例:6/10実施の資格試験の勉強を、5月末までに完了させる)
重要度が低い余裕のある社員に手伝ってもらう、もしくは任せる
(例:午後の会議資料の印刷ができていないため、同僚に助けを求める)
後回しにする、もしくはリストから外す
(例:任意参加となっていた研修について、とくに必要性がないため参加を取りやめる)

会話によってレジリエンスを高める

レジリエンスとは、「困難や逆境に対して適応し、回復する能力」を指す言葉です。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、経験が浅い従業員は仕事上でネガティブな体験をした際に、必要以上に自分を責める傾向にあるといいます。

もちろん、自責思考を持つこと自体は大切です。しかし、自己批判が強すぎると自信やモチベーションが喪失し、結果的に成長スピードに悪影響を与える恐れもあります。

このような状態になるのを防ぐためには、上司が会話によって部下の「レジリエンス」を高めることが重要だとされています。

同記事では、部下のレジリエンスを高めるポイントとして、以下の3点を挙げています。

  • 話をよく聞き、相手の言葉を繰り返す
  • 現実に起きたことを熟考できる質問をする
  • 主観を述べない(否定も肯定もしない)

たとえば、取引先(A社)との商談がうまくいかず、契約が打ち切られることを恐れている部下がいたとします。

このような部下に対しては、「プレゼン内容に少し不備があっただけで、A社はこれまで5年間続けてきた取引を本当に打ち切るでしょうか?」といった質問を投げかけましょう。実際に起きたことを口に出してみると、「そこまで大した問題でもなかった」と部下は気づくはずです。

このように、励ましたり助言したりするわけでもなく、会話の中で部下が自分自身で困難を乗り越えられるように促すことで、レジリエンスが自然と向上することが期待できます。

優秀な社員を隣に座らせる

職場の座席配置を決める際には、仕事の進め方をわかっていない部下の隣に優秀な社員を配置すると効果的かもしれません。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、仕事のパフォーマンスの約10%は「隣席に誰が座るか」によって影響を受けるとされています。

たとえば、「生産性が平均的な従業員」を「生産性が2倍の従業員」に置き換えると、その隣席の従業員の生産性は約10%も向上するというのです。優秀な社員の仕事ぶりを間近で見ることで、自分自身の仕事の進め方にもプラスの変化が生じるのでしょう。

余計な時間やコストをかけることなく部下の能力を向上させたい場合に、上記は打ってつけの方法だといえます。

なお、同記事では座席を配置する際に、異なるタイプの者同士を隣り合わせにすることを推奨しています。隣同士でそれぞれ異なる強みと弱みを持っていれば、自分の弱点を改善するための術を相手から学ぶことができるからです。

例として、「ミスが少ないが仕事が遅い社員」の横には、「仕事は早いが正確性に欠ける社員」を配置するとよいでしょう。実際にこのような配置を行った結果、仕事の生産性が13%、正確性が17%向上したという研究結果もあります。

参考:

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「リーダーは人を動かすために「リクエストの手法」を習得せよ」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「やることリストをやり遂げるためのシンプルな解決策」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「若手社員のコーチングは4つの会話から始めよう」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「生産性を高めたければ座席の配置を見直しなさい」

まとめ

部下が思うように仕事を進めてくれないからといって、必ずしも彼らの能力が低いとは限りません。むしろ、上司・先輩社員の教え方や指示の出し方に問題があるせいで、部下がうまく実力を発揮できていない可能性も考えられます。

したがって、仕事の進め方を理解できない部下に対しては、その原因をしっかりと分析した上で、上司が適切に対処することが重要です。

本記事の内容をふまえて、部下を効果的に指導・教育し、優れた人材の育成を目指してください。