人手不足のなか応募が集まらないため、若者はどこへ行ったのかと悩んでいる管理職の方もいらっしゃるでしょう。若者の中には非正規雇用で働いている人もおり、また労働参加率の高い世代が減少している地域もあります。

人手不足が続くと業務の縮小や離職者の増加などに繋がる可能性があるため、早期の対応が必要です。この記事では、人手不足について、企業に生じる悪影響や対策などを解説します。

若者はどこへ?日本の人手不足の現状

企業にとって、人手不足は倒産に繋がりうる重要な問題です。帝国データバンクの情報によると、2024年12月時点で人手不足だと感じている企業は52.6%に及びます。また、人手不足による倒産は2023年の件数から約1.3倍となり、累計342件です。

このことから、人手不足に悩む企業は多く、倒産を防ぐため早期の対応が必要だと分かるでしょう。

ここからは、日本の若者の労働状況に焦点を当てながら、人手不足の現状について詳しく解説していきます。

労働参加率の高い年齢層が減っている地方がある

厚生労働省の「令和6年版 労働経済の分析 -人手不足への対応-」によると、1990~2015年にかけて、東京都、神奈川県、愛知県、滋賀県、沖縄県を除いた道府県では、労働参加率の高い25~54歳の人口が減っています。

特に人口の減少が著しいのは、東北・四国・中国・九州の各地域です。中でも秋田県では、人口増減率がマイナス30%を下回っており、深刻な状況となっています。なお、人口増減率とは、1990年の人口総数に対して、どれだけ人口が増減したかを示す割合です。

このことから、地域によってはそもそも働き手の人口が少なく、雇用に結びつかないパターンもあると推察できます。

若者の就業者が少ない職種もある

職種によっては若年層の就業者が少なく、若者の雇用が難しいケースもあるでしょう。

先述の厚生労働省の調査によると、バスとタクシーの運転手はほかの産業と比べて、20歳~40代前半の若年労働者が少ないという特徴があります。これらの職種には、長時間労働や給与が不安定だったり低かったりするイメージを持たれている場合があり、それが若年労働者が少ない原因の一つと考えられます。

運転手の確保のためには賃金や待遇改善などが課題だとされています。

非正規雇用労働者の若者も一定数いる

財務省の「地域企業における賃上げ等の動向について(特別調査)」によると、人手不足の構造的な原因として、回答企業のうち21.7%が「雇用形態が変わった・多様化している」と答えました。非正規雇用や時短勤務などさまざまな働き方があるものの、業務の都合上、短期的な条件で労働者を採用できないという企業の意見もあります。

実際に、e-Statの「労働力調査(詳細集計)」によると、2024年の非正規職員・従業員数は15~24歳で290万人、25~34歳で230万人、35~44歳で301万人です。このことから、非正規雇用労働者の若者が一定数いることが分かります。しかし、自社で非正規での採用を行っていない場合は、こういった層にリーチできないでしょう。

参考:
帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2024年)」
厚生労働省「令和6年版 労働経済の分析 -人手不足への対応-」
財務省「地域経済(管内経済情勢報告)」
e-Stat「労働力調査(詳細集計)」

人手不足は今後も続くのか

人手不足は今後も続くのでしょうか。以下では、高齢化と人口減少の観点から、人手不足の見通しについて解説します。

高齢化が続く見通し

今後も高齢化が進展する見通しのため、人手不足が進む可能性があります。

厚生労働省の「令和6年版 労働経済の分析 -人手不足への対応-」によると、2023~2040年の間に、65歳以上の高齢者数は約300万人増加すると想定されています。また、2040年には、65歳以上の高齢者数が人口の35%弱まで上昇する見通しです。

そのため、高齢者でも働けるような就業体制の整備や、人手不足でも生産性が保てるようテクノロジーの導入などが必要になると考えられます。

人口が減少する見通し

日本の人口は今後減少すると推計されているため、人手不足はさらに深まると考えられます。

厚生労働省の「第3回社会保障審議会年金部会」資料によると、2020年には1億2,615万人だった人口が、2070年には8,700万人にまで減少するとされています。また、15~64歳までの人口は7,509万人から4,535万人にまで減る見通しです。

このことから、働き手の数も減少すると考えられるでしょう。労働できる人口が減れば採用も困難になると推測できるため、人手不足への対応が求められます。

参考:
厚生労働省「令和6年版 労働経済の分析 -人手不足への対応-」
厚生労働省「第3回社会保障審議会年金部会」

人手不足で企業に生じる悪影響

人手不足が生じると、企業にはどんな悪影響が起こるのでしょうか。

ここでは、以下の項目について解説します。

  • 採用コストが増える
  • 労働生産性が下がる
  • 業務の縮小に繋がる
  • サービスの質が低下する
  • 従業員の負担が増える
  • 従業員の離職に繋がる
  • 倒産に繋がる

採用コストが増える

人手不足になると、採用コストが増える場合もあります。

内閣府が公開する情報によると、人手不足の悪影響として「採用コストが増えた」と答えた企業は49.2%という結果になりました。

求職者の採用には人材募集から内定後のフォローに至るまで、人件費や求人広告掲載費、集団面接の開催費用などコストがかかります。応募者がなかなか集まらずに採用活動が長期化したり、従業員の離職により採用活動を繰り返したりすると、採用コストは増えてしまうと考えられます。

労働生産性が下がる

人手不足の場合、労働生産性が低くなる可能性があります。労働生産性とは、1時間当たりの成果がどれくらいか示す指標です。

内閣府の同情報によれば、人手不足感と労働生産性の関係を推計したところ、人手が「やや不足」「不足」とする企業では適正な企業と比べて労働生産性が低い結果となりました。

人手不足の職場では、業務を少ない人員で担当するため長時間労働に繋がり、疲労から生産性が下がってしまう場合もあるでしょう。

人がなかなか雇用できない場合は、ITに頼るのも方法の一つです。たとえば、カスタマーサービスであれば、チャットシステムの導入により通話数を減らすなどの対策を検討すると良いでしょう。

業務の縮小に繋がる

人手不足は業務の縮小に繋がる場合があります。

東京商工リサーチが行ったアンケート調査によると、「人手不足で悪影響がある」と回答したのは5,392社のうち2,821社でした。「どのような悪影響があるか」と尋ねたところ、業務の縮小を挙げた企業も少なくありませんでした。

具体的には、回答した2,714社のうち、969社が「受注や来店予約を断った」、272社が「営業時間を短縮した」、342社が「一部の製品やサービスの提供を中止した」と回答しています。

人手不足の状態では行える業務量に限りがあります。そのため、業務に対応できなくなり、新しい業務依頼や既存のサービスなどを断念するケースもあると推察できます。

サービスの質が低下する

人手不足の職場では、サービスの質が低下する場合があります。

同調査によると、人手不足から生じる悪影響として、「製品やサービスの質が低下した」と回答した企業は2,714社中354社です。

人手不足で業務に余裕がなくなると、細かい部分をケアすることができなくなり、ミスに繋がる場合もあります。また、担当者が入れ替わることで業務の質を維持できない場合もあるでしょう。これらが、人手不足がサービスの質の低下に繋がる原因の一つだと考えられます。

従業員の負担が増える

人手不足の職場では、従業員の負担が増えるケースがあります。

同調査によると、人手不足による悪影響として「既存従業員の作業負担が増えた」と回答した企業は2,714社中1,401社と一番多い結果でした。

業務を担当する人員が少なければ、一人に対しての作業負担は増えてしまうでしょう。その場合、長時間労働に繋がったり、休暇が取れなかったりすることも考えられます。外注などを利用することで自社の従業員の作業量を減らせるよう心掛けましょう。

従業員の離職に繋がる

人手不足は従業員の離職に繋がる場合があります。

四日市商工会議所の「雇用問題(人手不足)に関するアンケート調査報告書」によると、人手不足による職場環境への影響について、回答した企業のうち36.5%が「離職者が増えた」と答えました。今後影響を受ける懸念としては、43.5%が同様に回答しています。

人手不足によって業務負担が増加すると、労働時間が増えるケースもあります。労働時間などの条件が悪いことで従業員の離職に繋がる場合もあるため、企業は人手不足がさらに進行しないよう早期の対策が必要です。

部下が転職する原因については、以下の記事もご覧ください。

倒産に繋がる

冒頭でも触れたように、人手不足が倒産に繋がる場合もあります。なお、人手不足倒産の数は増加しています。

帝国データバンクの情報によると、2024年の人手不足倒産数は342件であり、これは2023年の260件から約1.3倍という結果です。2年連続して過去最多を記録しています。

多くの人出が必要な飲食店や美容室・ネイルサロン、派遣業、警備業などで人手不足倒産が増えています。また、建設業と物流業をあわせた件数は全体の42.4%です。

建設業やトラックドライバーなどに対して、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されました。規制の適用により業務に割ける時間が減れば、業務が遂行できなくなり事業の継続が困難になる場合もあると推察できます。

参考:
内閣府「第2章 人手不足による成長制約を乗り越えるための課題 第1節」
株式会社東京商工リサーチ「「人手不足」の影響広がる、企業の52.3%が実感 大企業は6割超、従業員へのしわ寄せや受注控えも」
四日市商工会議所「新着情報」
帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2024年)」

 企業が行うべき人手不足の対策

企業が行うべき人手不足の対策には何があるのでしょうか。

ここでは、以下の8つの対策について解説します。

  • 隠れた労働力に目を向ける
  • 採用広告の戦略を見直す
  • さまざまな採用方法を取り入れる
  • 賃金や労働条件を向上させる
  • 従業員のスキルを向上させる
  • 業務の無駄を見直す
  • 自動化を導入する
  • 業務をアウトソーシングする

隠れた労働力に目を向ける

ハーバード大学の公式ニュースサイトであるハーバード・ガゼットの記事によると、人手不足の対処法の一つは「隠れた労働力に目を向けること」です。隠れた労働力とは、採用慣行によって不採用にされてしまうような人たちを指します。たとえば、大学の学位を持っていない人や、履歴書に空白期間がある人、仕事や学校に行っていない、いわゆるニートと呼ばれる人などです。

こうした労働者と一緒に働いた経験がない企業の中には、「オンボーディングが難しい」「生産性が低い」「コストがかかる」といったネガティブなイメージを持つところもあります。

しかし、実際に隠れた労働力の採用に取り組んでいる企業は、彼らが職場に定着しやすく、生産性が高く、経済的にもプラスに働く存在であることに気づいています。

このことから、学位や空白期間などから応募者を門前払いしてしまう前に、普段不採用としてしまう人を雇用する体制を作れないか検討するのも一つの方法でしょう。

ターゲットにあわせて採用広告を工夫する

ハーバードビジネスレビューの記事によると、採用広告の戦略を工夫することで、ターゲットを絞って候補者を獲得することが可能です。

たとえば、若い世代からの応募者を増やしたい場合、大学構内で採用広告を貼るなどして職場の魅力や価値を伝える方法が考えられます。在学中の早い段階からキャリアの選択肢として認識してもらえるようにしましょう。 

さまざまな採用方法を取り入れる

SHRMの記事によると、人手不足を緩和するには、さまざまな採用方法を取り入れることが有効です。

組み合わせる採用戦略として、「リファラル採用の導入や改善」「人材派遣会社との契約」「面接回数の削減」などが挙げられています。

リファラル採用は、現役社員からの紹介を受けた人が対象になるため、紹介者が社風や業務内容について伝えている場合は、本人が入社後にギャップを感じにくいでしょう。そのため、ミスマッチによる退職は起きにくいと予想できます。求人掲載費用も必要ないため、採用コストの削減にも繋がるでしょう。

そのほか、人材派遣会社の利用や採用フローの簡略化などによって、迅速に労働力が獲得できる可能性もあります。

賃金や労働条件を向上させる

シンジカット欧州労働組合総連合の記事によると、ヨーロッパにおける人手不足は給与の低さや労働条件の悪さが原因です。

研究によると、類似している労働者と比べた場合、低賃金の仕事のほうが人手不足が増加していたり、人手不足が最も増加した部門では労働条件が劣悪な傾向があったりしました。これらから、人手不足の解消には賃金と労働条件の改善が必要だと分かります。

低賃金や劣悪な労働条件は応募者を十分に見つけられないだけでなく、従業員の離職にも繋がるでしょう。

厚生労働省の「-令和5年雇用動向調査結果の概況-」によると、転職した人が前職を辞めた理由について「収入が少なかった」と回答した男性は8.2%、女性は7.1%です。「労働時間や休日などの労働条件が悪かった」と回答した男性は8.1%、女性は11.1%でした。

このことからも、従業員の離職とそれに伴う人手不足の悪化を防ぐためには、賃金や労働条件を向上させる必要があるでしょう。

従業員のスキルを向上させる

サンダーバードグローバル経営大学院の記事によると、従業員のスキル不足を埋めるために人員を確保したい場合、新しい人材の採用を検討するよりも既存の従業員のスキルを向上させたほうがコストを抑えられます。

推定によると、新しい正社員を雇用する場合は約4,425ドルかかるのに対し、既存の従業員のスキルを向上させるには約1,300ドルで済みます。

必要なスキルを特定したうえで、トレーニングプログラムを行い、継続的な学習を奨励しましょう。そのほか、資格や外部のセミナーを活用する場合は、費用をサポートすることも大切でしょう。

スキル向上により従業員が成果を出せるようになれば、社員のモチベーションの維持にも繋がると考えられるため、積極的に取り組みましょう。

業務効率を最大化する

The International Luxury Hotel Association(国際高級ホテル協会)の記事によると、業務効率を最大化することで、従業員の生産性を向上できる可能性があります。

生産性が向上すれば、少ない人員でも多くの作業に対応しやすくなるでしょう。

業務効率を最大化するためには、業務を観察し、プロセスを精密にまとめ、作業にかかる時間をデータとして収集しましょう。平均より時間がかかった場合、遅れが出ない方法を考えたり、無駄な手順を排除したりすることが大切です。

たとえば、社内問い合わせ対応業務において、平均より対応に時間がかかった場合の理由が、特定の担当者への確認が必要だったためとします。この場合、回答内容のマニュアル化やFAQの作成などによって、対応を自己完結させるといった方法があるでしょう。

業務効率を最大化すれば、生産性が向上する可能性があるため、人手不足の状態でも業務を回しやすくなると考えられます。

部下の仕事が遅い原因や生産性を向上させる方法については、以下の記事もご覧ください。

自動化を導入する

北米最大の自動化業界団体であるオートメーション振興協会の記事によると、自動化によって人手不足を補うことが可能です。

自動化技術と聞くと難しいと思われる方もいるでしょうが、現在では協働ロボットを30分から1時間の間にプログラムできる場合もあります。

自動化を導入することで少ない労力で多くのことを行えるため、人手不足の状態でも少ない人員で作業を行いやすくなるでしょう。

業務をアウトソーシングする

NACUSO(全国信用組合サービス機構)が公開する情報によると、ある金融機関が延滞債権を回収する業務をアウトソーシングするメリットとして、採用や研修に関する時間や業務の削減などが挙げられています。

専門的な業務で新規採用する場合、トレーニングに時間を割く必要があるほか、経験の浅い従業員によってミスが起きる可能性もあるでしょう。

しかし、アウトソーシングを行えば、自社でトレーニングをする必要がないため、ほかの業務に専念することが可能です。業務量を減らせることから、人手不足でも全体の業務に対応しやすくなると考えられます。また、信頼できる外注先と契約すれば、業務の質の高さも維持できるでしょう。

参考:
The Harvard Gazette “Answer to U.S. labor shortage? ‘Hidden’ workforce”
Harvard Business Review “Creative Strategies for Recruiting Talent During a Labor Shortage”
SHRM“Labor Shortages: The Disconnect and Possible Solutions”
Syndicat European Trade Union Confederation“Study: Low pay causing labour shortages”
厚生労働省「令和5年 雇用動向調査結果の概要」
Thunderbird School of Global Management “Why is There a Global Talent Shortage and What Can You Do?”
International Luxury Hotel Association “Reducing Labor Costs: An Analytical Approach to Staffing Optimization”
ASSOCIATION FOR ADVANCING AUTOMATION “Upskilling and Automation: Two Proven Solutions to the Labor Shortage”
NACUSO“Outsourcing as a solution for labor shortage amidst rising delinquencies”

まとめ

若者が少ない職種があるほか非正規雇用の若年労働者も一定数いるため、若者の採用に困難を感じている企業もいるでしょう。

人手不足は業務の縮小やサービスの質の低下、さらには倒産に繋がる可能性もあるため、早期の対応が求められます。

リファラル採用を取り入れたり、業務を効率化したりして、人手不足に対応していけるようにしましょう。