上司と部下の板挟みになり、対処法やストレス管理方法について知りたいと感じている中間管理職の方もいらっしゃるでしょう。
中間管理職の方は、後ほど説明するPTRという考え方を使って業務の進め方を再検討したり、セルフケアを優先的に行ったりすることが大切です。
この記事では、板挟みになった場合や職場のストレスへの対処法などについて解説します。
中間管理職が悩む板挟みの現状

上司と部下から板挟みになる管理職の方は少なくありません。
2021年に、中間管理職の経験者を対象に行った株式会社ビズヒッツの調査によると、中間管理職がつらいと感じる瞬間について「板挟みになるとき」と回答した人が最も多い結果となりました。
上司の指示と部下の不満の間で板挟みとなりストレスを感じるケースや、上司と部下の意見を聞いて調整することに大変さを感じる場合などがあります。
中間管理職に求められるスキルについては、以下の記事もご覧ください。
参考:
PR TIMES「【中間管理職がつらいと思う瞬間ランキング】238人アンケート調査」
板挟みになった場合の対処法

板挟みになった場合の対処法について、以下の5点を解説します。
- 経営幹部に従業員の状況を理解してもらう
- 従業員同士のつながりを作る
- プレッシャーをかける経営幹部の目的を部下に説明する
- 業務を削減する
- ITツールを利用する
経営幹部に従業員の状況を理解してもらう
ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、中間管理職の方は経営幹部に従業員の状況を理解してもらうことが大切です。そして、長期的な業績向上という観点から、部下に気遣いや支援が必要だと認識してもらうことが理想的です。
従業員は育児や介護などのストレス要因を抱えていても、その負担を軽減するための資金や時間、サポートなどがない可能性があります。中間管理職の方にとって、このような状況で従業員のモチベーションを保ち、離職を防ぐのは大変なことでしょう。
現場の状況を伝えるには、部下に意識調査を行い、エンゲージメントや懸念、ストレスレベルなどを把握します。そして、どれだけの従業員がどんな苦労をしているか、その解消のために何が必要かを幹部に提示しましょう。また、従業員が配慮を必要としている現状を直接見たり聞いたりしてもらうのもおすすめです。
従業員同士のつながりを作る
同記事によると、従業員同士でつながりを持てる環境を作ることが大切とされています。
つながりが持てれば、さまざまな情報が得られるため、従業員がストレス要因に対処しやすくなるでしょう。たとえば、家庭の問題や心身の健康に不安を抱える従業員に外部で利用できる支援や社内の福利厚生の存在を知らせたり、仕事の問題についてアドバイスしたりできます。その結果、中間管理職の方が解決すべきことが減り、負担が減ると考えられるでしょう。
従業員同士のつながりを作るには、メンターシップや社内イベント、飲食しながらコミュニケーションが取れる休憩室の導入などを行うのがおすすめです。
プレッシャーをかける経営幹部の目的を従業員に説明する
同記事によると、プレッシャーをかける経営幹部の目的を従業員に理解してもらうことが大切です。
従業員は要求されるパフォーマンスの内容は分かっていても、その理由については説明されず、理解できていない場合も少なくありません。そのため、経営幹部がプレッシャーをかける理由を従業員に説明すれば、納得感や仕事に対する目的意識の醸成に役立つと考えられます。
その結果、目的意識が従業員の仕事へのモチベーションにつながったり、自分の貢献が組織目標とどう関わるのか理解したりすることで、ストレスが軽減したりすることも期待できるでしょう。
業務を削減する
マネジメントに関する研修や情報を提供している米国の非営利組織、マネジメントセンターの記事によると、上司と従業員の板挟みを抜け出す方法の一つとして「業務を削減する」ことが挙げられます。
中間管理職には、企業の目標を変更する権限がなかったとしても、業務の進め方をコントロールできる場合があります。業務の進め方を再検討する際、PTRという考え方を活用し、優先順位をつけて業務を減らせる点を探すと良いでしょう。
PTRとは「好み(Preferences)」「伝統(Traditions)」「要件(Requirements)」を指します。まず、実際に求められている要件を明確にし、上司の「好み」や「伝統」に当てはまる業務などから改善できる点を探しましょう。
たとえば、丁寧に作成された書面での情報共有を毎週行っていた場合、必要な要件は「情報共有」、好みは「体裁の整った書面」、伝統は「毎週の定例」となるでしょう。情報共有の目的を達成するためには、書面ではなく口頭で短時間で済ませたり、情報をまとめた動画の更新をしたり、ほかの手段も考えられます。
「全部完璧にこなさなければ」と思うのではなく、目的を変えずに“やり方”を変えれるだけでも負担は軽減されるでしょう。
ITツールを利用する
SHRMの記事によると、管理業務に時間がかかりすぎている場合、ITツールを利用するのも一つの方法です。
中間管理職はほかの業務の影響で、リーダーシップを発揮する時間がない場合があります。しかし、日程調整や研修、業績評価などのタスクには、ITツールを利用することが可能です。
管理業務などへの負担が軽減すれば、削減した時間を部下の指導や育成などに割り当てられるようになるでしょう。
管理職に求められるリーダーシップについては、以下の記事もご覧ください。
参考:
Harvard Business Review「中間管理職は上司と部下で矛盾する要求にどう対処すべきか」
The Management Center “Managing Uncertainty: Strategies for Middle Managers”
The Management Center “Check Your Bias and Improve Results with PTR”
SHRM “The Miserable Middle Managers”
管理職を辞めたいと思う前に!ストレスに対処する方法

以下では、管理職を辞めたいと感じてしまう前に、ストレスに対処する3つの方法を解説します。
- セルフケアを優先的に行う
- 否定的な思考を見直す
- 定期的に休憩する
セルフケアを優先的に行う
アメリカ心理学会の記事によると、管理職がプレッシャーの高い状況を乗り越えながらストレスを管理するには、セルフケアを優先的に行うことが大切です。
優れたパフォーマンスを発揮し続けるためにも、自分自身が活力を維持する必要があります。同記事では、回復のために以下の活動などを優先的に行うことが推奨されています。
- 運動
- 屋外でのレクリエーション
- 友人や家族との会話
- 瞑想
- 子どもの宿題を手伝うなど家事のサポート
- 適切な食生活
否定的な思考を見直す
ハーバード・メディカル・スクールの医師や教授陣の専門家によってレビューされたコンテンツを発信するハーバード・ヘルス・パブリッシングの記事によると、職場でのストレスへの対処法として「否定的な思考を見直す」ことが挙げられています。
ストレス要因に対する否定的な感情を減らすには、自分の否定的な解釈を事実だと思い込まないことが大切です。
慢性的にストレスや心配事があると、人は状況をネガティブに解釈しやすくなる可能性があります。たとえば、上司から冷たく扱われた際、証拠がほとんどないのに「私は仕事ができないと思われている」と感じたとします。その場合、自分の解釈を仮説として扱い、「忙しくて余裕がなかったのかもしれない」などと、ほかの可能性を検討することが大切です。
定期的に休憩する
メンタルヘルスケアに関するサービスを提供する認知行動研究所の記事によると、職場のストレスを管理するためには「定期的に休憩する」ことが大切です。
昼休みに取るまとまった休憩だけでなく、勤務時間中に短い休憩を定期的に取りましょう。まとまった長時間の休憩は、リラックスしエネルギーを回復するために必要です。それに対し、短い休憩は、集中力や生産性を向上させ、気持ちをすっきりさせてストレスを減らすのに役立ちます。
「辞めたい」と感じる状況を改善する方法については、以下の記事もご覧ください。
参考:
American Psychological Association “Stress management for leaders responding to a crisis”
Harvard Health Publishing “How to handle stress at work”
Cognitive Behavior Institute “How To Manage Stress In The Workplace”
まとめ
上司と部下の板挟みに悩む中間管理職の方は少なくありません。対策としては、プレッシャーをかける経営幹部の目的を部下に説明したり、幹部に従業員の状況を理解してもらったりすると良いでしょう。辞めたいと感じてしまう前に、セルフケアを行うなどして自分のストレスにも対処することが大切です。