チームワークを高めるために何をすれば良いか分からず、悩んでいる管理職の方もいらっしゃるでしょう。
チームワーク向上のためには、チームの目標を明確に設定したり成功を祝ったりすることが大切です。後ほど解説するチームビルディングゲームやランチ・アンド・ラーンの導入も検討すると良いでしょう。
この記事では、チームワークを高めるメリットや、管理職の方が意識すべき行動などを紹介します。
チームワークの醸成に悩む管理職の現状

チームワークの醸成が難しいと感じる管理職の方は少なくないでしょう。
リクルートマネジメントソリューションズが行った調査によると、管理職層にマネジメント業務で難しいことを聞いた結果、「職場のチームワークを高めること」と回答した人は38%にのぼりました。
管理職としてうまくいっている理由を質問したところ「協力し合う職場づくりができている」と回答した人は全体の26%いたものの、チームワークを向上させるのは難しい場合があると分かります。
参考:
リクルートマネジメントソリューションズ「『マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2024年』の結果を発表」
チームワークを高めるメリット

チームワークを高めると、どのような利点があるのでしょうか。ここでは、以下のメリットについて解説します。
- 職場環境が良くなる
- 個々の才能を組み合わせられる
- 学習機会が増える
- 生産性が向上する
職場環境が良くなる
カタルーニャ・オベルタ大学の記事によると、職場環境が良くなることがチームワークのメリットの一つです。
チームワークにはコミュニケーションや信頼、他者への尊重などが含まれます。チームワークは協力的で肯定的な職場環境の醸成を促進するため、従業員の満足度や会社への愛着、思い入れなどが高められ、ストレスの軽減や職場環境での調和の促進につながるのです。
個々の才能を組み合わせられる
ノートルダム・オブ・メリーランド大学の記事によると、チームワークが重要な理由として個々の才能を組み合わせられることが挙げられます。
人それぞれ強みやスキルが異なるため、団結したチーム内で個々の才能を組み合わせられれば、より強力なチームが作れるでしょう。たとえば、創造的思考が得意な人は新しいアイデアを出したり、計画力がある人は業務の優先順位を明確化したりすることなどが考えられます。
学習機会が増える
同記事によると、チームワークが重要な理由の一つに学習機会の増加があります。
チームを構成する社員の強みはそれぞれ異なるため、メンバーがほかの人の能力から学ぶことが可能です。また、チーム内で生じる争いの解決やコミュニケーションも学習機会となり、他人との協調性を高めるのに役立つでしょう。
生産性が向上する
カタルーニャ・オベルタ大学の記事によると、チームワークのメリットとして効率性と生産性の向上が挙げられています。
チームで業務タスクを分担したり社員それぞれの強みを活かしたりすれば、プロジェクトを効率的に遂行しやすく、生産性が向上するメリットがあります。
たとえば、問題に行き詰まっても、斬新な手法の提案やスケジュールの再調整が得意なメンバーがいれば、解決までの時間を短縮できると予測されます。
参考:
Universitat Oberta de Catalunya “Teamwork: Empowering creativity and innovation in the workplace”
Notre Dame of Maryland University Online “IMPORTANCE OF TEAMWORK IN THE WORKPLACE”
チームワークが失敗すると生じるデメリット

チームワークが失敗した場合、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。
- コミュニケーションが悪化する
- チームの共同責任が軽視される
- 創造的なアイデアから遠ざかる
以下では、それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
コミュニケーションが悪化する
ケント州立大学の記事によると、チームワークが失敗するとコミュニケーションが悪化します。
具体的には、派閥の勃発によりメンバー間で礼儀正しさやお互いに尊重し合う雰囲気が損なわれたり敵意が生まれたりする場合もあるでしょう。
礼儀や責任感がなくなった職場ではサポートや励ましが得られず、孤立して課題に向き合うことになります。メンバーからモチベーションを得られず、課題への対処能力も阻害されます。
チームの共同責任が軽視される
同記事によると、メンバーが「自分はチームの一部だ」という意識を持たなくなると、チーム全体で責任を果たすという意識が薄れてしまいます。
個人の責任を果たすことにしか関心が向かなくなるので、チームで果たすべき仕事が抜け落ちるケースもあるでしょう。たとえば、任された業務のみ行い、自分の責任範囲外の業務やチームの目的を達成するために必要な業務には目を向けない場合が考えられるでしょう。
創造的なアイデアから遠ざかる
同記事によると、チームワークがうまくいかない環境では、創造性が発揮されにくくなると指摘されています。
チームのストレスによって創造性が妨げられるほか、メンバーに敵対的な雰囲気があると創造的なアイデアの表現がしにくくなります。
サポートや励ましがないチーム環境では、リスクを避けるため表現を行う可能性は低くなり、代わりに安全に焦点が当てられるため、創造性から遠ざかるでしょう。
参考:
Kent State University “What Do You Lose When Teamwork Fails?”
チームワークを高めるために管理職が意識すべき行動

チームワークを高めるために管理職が意識すべき行動について、以下の6点を解説します。
- 目標を明確に設定する
- 透明性があり誠実なコミュニケーションを奨励する
- 個人の責任と役割を明確にする
- 異なる考え方を持つ従業員を一緒に配置する
- 従業員がお互いを知るための取り組みをする
- チームの成功を祝う
目標を明確に設定する
ノートルダム・オブ・メリーランド大学の記事によると、チームワークを向上させるにはチーム目標を明確に定義し、共有することが大切です。
中間目標の達成やメンバーの貢献がチーム目標にどんな影響を与えるのかなど、従業員が自分の仕事の重要性を認識できるようにしましょう。
「達成すべき目標と目標達成のための主な成果」を指すOKR設定のメリットや具体例については、以下の記事もご覧ください。
「OKRとは?MBOとKPIとの違いや、OKR設定の具体例をあわせて解説」
透明性があり誠実なコミュニケーションを奨励する
カタルーニャ・オベルタ大学の記事によると、チームワークを改善する方法として「透明性があり誠実なコミュニケーションを奨励する」ことが挙げられています。
具体的には、オープンなコミュニケーション手段を確立しましょう。メンバーの話に積極的に耳を傾けるほか、自分の考えを明確に敬意を持って表現することを推奨するのも大切です。建設的なフィードバックを受け入れてもらうため、管理職の方自身が自分のミスや欠点に向き合う姿勢を見せましょう。
適切な部下の叱り方や、部下の成長のために管理職が普段から行うべきことについては以下の記事もご覧ください。
「部下の成長を促す効果的な叱り方は?」
個人の責任と役割を明確にする
同記事によると、チームワークの改善には個人の責任と役割を明確化することが大切です。
責任と役割を具体的に割り当て、メンバーそれぞれへの期待を理解してもらいましょう。そうすれば、チーム目標へのコミットメントが促進されたり、効率性が高まったりする効果が考えられます。
役割と責任を明確にするには、メンバーのタスク分担や責任範囲を詳しく記載した計画表を共有すると良いでしょう。
異なる考え方を持つ従業員を一緒に配置する
防衛調達大学の記事によると、従業員が派閥に分かれてしまった場合、チームワークを達成するには「異なる考え方を持つ従業員を一緒に配置する」方法があります。
異なる派閥に従業員を異動させる場合、従業員に孤立感を感じさせず、チーム目標の達成に貢献していると伝えるのが大切です。そうすれば、目標達成や外部との競争に勝つことなど、従業員が本来共通して持つべき焦点を導き出すのにつながるでしょう。
従業員がお互いを知るための取り組みをする
同記事によると、従業員が派閥に分かれてしまった場合にチームワークを促進するには、お互いを知るための取組みをすることが大切です。
非公式にミーティングを開いて直接従業員が顔を合わせる機会を作るほか、業務前にいくつか質問をすることも方法の一つです。会を開くことが負担である場合でも、気軽に質問をすることでメンバーそれぞれが個人的なレベルでつながりを持てます。
チームの成功を祝う
ノートルダム・オブ・メリーランド大学の記事によると、チームワークを向上させるには、チームの成功を祝うことが重要です。それにより士気が高まり、メンバーのチーム意識を醸成できます。成功を祝う際は、チームの活動だけでなくメンバーそれぞれの成果も認めましょう。
具体的には、チームと個人の貢献を認めた定期的にレポートを従業員に提示したり、上司が参加する会議でメンバーの具体的な貢献を紹介して感謝を伝えたりすると良いでしょう。プロジェクトが終わったときにメンバー全員に手紙で感謝を伝えることも方法の一つです。
従業員の士気を高める方法については、以下の記事もご覧ください。
「チームの士気を高めるには?管理職が実施すべき8つの方法」
参考:
Notre Dame of Maryland University Online “IMPORTANCE OF TEAMWORK IN THE WORKPLACE”
Universitat Oberta de Catalunya “Teamwork: Empowering creativity and innovation in the workplace”
Defense Acquisition University “How to Encourage and Improve Teamwork in Your Organization”
チームワーク促進に活かせるSCARFモデルとは

ペンシルバニア大学ウォートン・スクールの同窓生グループであるウォートン・ヘルスケア・マネジメント同窓会の記事では、組織開発コンサルタントのジャネット・ラッド氏がデビッド・ロック博士が開発したSCARFモデルをチームワークの促進に活用できると述べています。
SCARFモデルは、職場で働く人の社会行動の重要な要因を理解するための枠組みです。この要因を管理職の方が理解すれば、職場の脅威を減らし報酬を増やせるよう人間関係を設計できるでしょう。
以下では、ジャネット・ラッド氏の経験から生じた「ポジティブな経験や健康的・生産的な職場環境を促進する」アイデアを、SCARFモデルの枠組みのなかで解説します。
Status(地位)
同記事によると、地位は個人の自尊心に関わる人間の行動要因の一つですが、職場に大きな階層や役割に格差がある場合、損なわれることも考えられます。
地位に対して従業員が感じる脅威を最小限に抑えるためには、共通の目標に焦点を当て、成果にはチームワークが重要だと伝えることが大切です。
すべての役割に価値があり、チーム全体で協力しなければ成功にはつながらないと頻繁に伝えることで、チームの忠誠心や責任感を高めましょう。
Certainty(確実性)
同記事によると、人の脳はこれから起こることを予測したりパターン認識したりする特徴があり、人間は確実性を求めます。
職場が安全ではなく慣れない環境であれば、従業員は心身ともに消耗するため、協働や効果的な意思決定を行いにくくなります。
新しいシステムの導入などを行う場合は、十分なトレーニングの確保やシステム利用のメリットの説明などを行い、従業員が学習し新しさを受け入れられる環境を作りましょう。
Autonomy(自律性)
同記事によると、自分で選択やコントロールを行う感覚は、脳の報酬経路を活性化させます。管理職の方は個人の独立した行動への期待を明確にし、従業員の意思決定をサポートしましょう。
自律型人材を育てるには、挑戦しやすい環境を整えるために、若手社員でも重要なプロジェクトにアサインしたり、成果に至るまでの行動や思考プロセスを評価に加える制度を設けたりするのも一つの方法です。
自立型人材について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
「自律型人材とは?組織にいるメリットや育成方法を解説」
Relatedness(関連性)
同記事によると、人間は生存のために他者を必要とする社会的な存在であり、帰属意識はチームの原動力となることが多くあります。従業員同士が個人でつながる機会を持つことで、親密さだけでなく責任感や信頼の強化も可能です。
管理職の方はバディシステムや小グループでの作業機会を作り、帰属意識を促進しましょう。
Fairness(公平性)
同記事によると、人の脳は不公平さを感じると防御的になり、そう感じた相手に対して報復のため破壊的な行動を取る場合もあります。実際に、同僚と比べて給与と福利厚生に不満を持った従業員が、チームワークやサポートの欠如につながったケースもあります。
公平性に関して肯定的な感情を促進するには、オープンで透明性のあるコミュニケーションを行うことが大切です。職場の意思決定を理解し、関与できるよう、従業員にも議論への参加を促しましょう。
参考:
Wharton Health Care Management Alumni Association “Leveraging Positive Emotions to Enhance Teamwork”
チームワークを高めるのに活かせる活動

以下では、チームワークを高めるのに活かせる「チームビルディングゲーム」と「ランチ学習プログラム」について解説します。
チームビルディングゲーム
サウスフロリダ大学の記事によると、チームビルディング研修はチームの士気を高め信頼関係を築くのに役立ちます。
たとえば、「2つの真実と1つの嘘」は、自分について2つの正しいことと1つの嘘を紹介し、ほかのメンバーが嘘を判断するゲームです。お互いを知って快適なコミュニケーションにつなげられるほか、新しいメンバーを紹介するのにも役立つでしょう。
また、従業員同士のつながりを築き、関係を強化するには共通点を見つける活動が有効でしょう。「ペットを飼っているか」「ホラー映画が好きか」といった質問に当てはまる場合は、部屋のなかで指定されたエリアに移動します。リモートワークでも手を挙げるだけでゲームを行えるため、手軽に始めやすい取り組みといえます。
ランチ・アンド・ラーン
人材育成コンサルティング組織であるアメリカンマネジメントアソシエーションの記事によると、ランチ・アンド・ラーンにはチームワークスキルを構築し維持するメリットがあります。
ランチ・アンド・ラーンとは、企業が従業員向けにトレーニングやプレゼンテーションを行う、昼休み(ランチタイム)中の学びの場を指します。
プログラムは30分~45分ほどで行いましょう。なお、インセンティブとして会社が昼食を用意するのが一般的です。
ランチ学習を実施することで、コミュニケーションの活性化と従業員の育成、モチベーション向上に役立てることができるため、管理職は自社での実施可否を検討するとよいでしょう。
参考:
University of South Florida “13 Team-Building Exercises Your Staff Will Actually Enjoy”
American Management Association “12 Benefits of A Learn at Lunch Program”
まとめ
職場のチームワークを高めることを難しいと感じる管理職の方は少なくありません。しかし、チームワークを高められれば、職場環境が改善されたり、従業員の学習機会が増えたりするメリットがあります。
チームワークを高めるため、管理職の方はチーム目標を明確にしたり、透明性があり誠実なコミュニケーションを推奨したりしましょう。