従業員との間に世代間ギャップを感じることがあり、どうコミュニケーションを取れば良いか悩んでいる管理職の方もいらっしゃるでしょう。

コミュニケーションのポイントは、相手を理解し妥協点を見つけることや、お互いにどんなコミュニケーションを好むか話し合っておくことです。

この記事では、管理職が世代間ギャップに向き合う際の注意点についても解説します。

仕事で生じる世代間ギャップとは

職場の若手に世代間ギャップを感じる人は多くいます。

株式会社ネクストレベルが実施したアンケート調査によると、30~50代の男女に「若手に世代間ギャップを感じたことがあるか」と質問したところ、「ある」と回答した人は74.2%に上りました。つまり、約4人に3人が世代間ギャップを感じたことがあると分かります。

仕事への姿勢やプライベートとの優先順位など、管理職の方は若手とのさまざまな価値観の違いを感じている場合もあるでしょう。

以下では、世代間ギャップを感じる3つの場面を紹介します。 

仕事への姿勢

世代間ギャップを感じる場面として、仕事への姿勢が挙げられます。

同調査によると、30~50代に「若手に価値観の違いを感じること」について質問したところ、「仕事中なのにスマホを触る」「電話や掃除など雑務をしない」といった回答が、4番目と5番目に多い結果となりました。

勤務時間にもかかわらず、やることがないからといってスマホを触る若手や、促してもあまり電話を取ってくれなかったり雑務をしてくれなかったりする若手もいるようです。

仕事とプライベートの優先順位

仕事とプライベートの優先順位も、若手との世代間ギャップを感じるポイントです。

同調査によると、若手に価値観の違いを感じることとして「仕事よりプライベートを優先する」という回答が25.5%と3番目に多い結果となりました。

プライベートを理由として、休日出勤を断ったり歓迎会を欠席したりする若手もいます。仕事を優先すべきだと考える方は、驚く場合もあるでしょう。

コミュニケーションの手段

若手のコミュニケーションの手段に、世代間ギャップを感じる方は多くいます。

同調査によると、若手に感じる価値観の違いとして「連絡手段が口頭ではなく、LINEやメールが多いこと」という回答が29%と最も多い結果となりました。

具体的には、体調不良の連絡をLINEでしたり、近くにいてもチャットを使って質問したりする若手がいるようです。チャットやメールなどの連絡ツールを使うメリットとして、「伝達ミスを防げる」「情報を残しておける」と考えている若手もいます。

若手社員の特徴については、以下の記事もご覧ください。

参考:
PR TIMES「男女564人に大調査!職場で「ジェネレーションギャップ」を感じた瞬間トップ10」

世代間ギャップを克服するメリット

世代間ギャップを克服するメリットは、主に以下の3点が挙げられます。

  • さまざまなスキルを活用できる
  • 幅広い顧客ニーズに応えられる
  • 知識を円滑に引き継げる

それぞれについて詳しく解説します。

さまざまなスキルを活用できる

イギリス政府と企業が共同で推進した、従業員エンゲージメントを高める取り組みENGAGE FOR SUCCESSが公開した情報によると、さまざまな年齢層の従業員が企業で働くことで、幅広いスキルがもたらされるメリットがあります。

年齢が高い人は経験の多さから、深い知識と洞察力を持っている場合があるでしょう。たとえば、製品の売り上げが伸び悩んでいるときに、知識と洞察力があれば、提携店舗を増やしたり宣伝したりするだけでなく、製品の改善など本質的なことを導き出せると考えられます。

また、生まれたときからインターネットが身近にあった若い世代は、社内で新しく導入したデジタルツールを早く習得し、使い方をメンバーに共有したりすることなどが考えられます。

デジタルネイティブ世代については、以下の記事もご覧ください。

幅広い顧客ニーズに応えられる

同記事によると、チームの年齢層が多様化すれば、幅広い顧客ニーズに応えられます。

顧客のニーズは世代によって異なる場合もあるでしょう。経済産業省の資料によると、世代によって、価値観だけでなく消費行動にも異なる点があるとの指摘があるようです。

たとえば、1960~1979年生まれのX世代はステータスを示すために消費を行い、1996〜2012年生まれのZ世代は個性を主張するために消費を行うとされています。

もちろん、個人によって性格もニーズも異なるため、一概には当てはまらない場合もあるでしょう。しかし、チームにさまざまな世代のメンバーがいれば、幅広い顧客のニーズに応えやすいと考えられます。

知識を円滑に引き継げる

同記事によると、企業のメンバーの年齢層が多様化すると、知識を円滑に引き継げるメリットがあります。企業内で知識を保持するには、上の世代が退職する前に、培った知識を共有してもらう必要があります。

世代の違いによりコミュニケーションに軋轢が生じている場合、協力関係が築きにくいと考えられるでしょう。世代を超えて効果的にコミュニケーションを取るため、次に説明する「世代間ギャップを埋めるコミュニケーションのポイント」を意識することから始めてみましょう。

参考:
ENGAGE FOR SUCCESS “Bridging Generational Divides in the Workforce: Success Strategies”
経済産業省「資料3 新しい市場ニーズへの対応」

世代間ギャップを埋めるコミュニケーションのポイント

世代間ギャップを埋めるコミュニケーションのポイントは、主に以下の3点が挙げられます。

  • 相手を積極的に理解する
  • 相手に歩み寄る
  • コミュニケーションに求める条件を決める

それぞれについて詳しく解説します。

相手を積極的に理解する

カリフォルニア大学バークレー校の記事によると、異なる世代間で効果的にコミュニケーションを取る方法として「相手を積極的に理解する」ことが挙げられています。

同僚とは積極的に話し、どんなコミュニケーション方法を好むか理解しましょう。たとえば、口頭での連絡よりも、文章でのやり取りを希望しているといった情報を把握すると良いでしょう。そうすることで、相手に合わせたコミュニケーション方法を構築しやすくなると考えられます。

世代ごとに一般的なコミュニケーションの好みを理解するだけでなく、相手個人の希望を理解することが大切です。

相手に歩み寄る

同記事によると、異なる世代間で効果的にコミュニケーションを取るために「相手に妥協し、適応する」ことも大切です。

たとえば、報告を行う際は体裁の整ったフォーマルな報告書を作成するのが企業の伝統だったとします。自分より若い世代が簡潔な報告を望んでいる場合、妥協点を見つけると良いでしょう。具体的には、報告書の作成を減らして簡潔なプレゼンテーションを増やしたり、報告書を一目で理解できるよう、図や箇条書きを入れたりすることが考えられます。

上の世代の考え方を押しつけることなく、新しい方法を試していきましょう。

コミュニケーションに求める条件を決める

同記事によると、世代を超えて効果的にコミュニケーションを行うには、どんなコミュニケーションを好むか話し合い、求める条件を決めることが大切です。

異なる世代のメンバーで業務を行う場合は、ビデオ通話やメール、口頭などのコミュニケーション手段のほか、返事までの時間などについて早い段階で話し合いましょう。

お互いが求める条件を定めておけば、チームの全員がコミュニケーション方法について認識を合わせやすくなるでしょう。

参考:
BerkeleyExecEd “Enhancing Intergenerational Communication”

管理職が世代間ギャップに向き合う際の注意点

管理職が世代間ギャップに向き合う際の注意点は、主に以下の2点が挙げられます。

  • 一つの考えにとらわれない
  • 共通点を重視する

それぞれについて詳しく解説します。

一つの考えにとらわれない

ハーバードビジネスレビューの記事によると、世代間で関係が悪化したときに人間関係を改善させるには、相手の行動に対して一つの考えにとらわれず、ほかの可能性を幅広く考えることが大切です。

たとえば、相手の仕事が遅い場合、「仕事に対して熱意が足りない世代だからだ」と決めつけてしまっていないか考えましょう。もしかしたら、自分がその問題に影響を与えている可能性や、ほかの原因が隠れている場合もあるかもしれません。任せる仕事量が多すぎることに、管理職の方が気づいていないことも考えられます。

相手の行動にはどんな理由があるのか、自分の解釈が誤っていないか自問しましょう。

共通点を重視する

同記事によると、世代間で関係が悪化したときに人間関係を改善させるには、異なる点ではなく共通点を重視しましょう。共通点がある人には共感しやすいため、相手と似ているところを伝えるのが大切です。

たとえば、若い世代には、この業界に足を踏み入れたときの気持ちや挑戦したいことなどについて尋ね、相手の話に耳を傾けます。そして、自分の過去の経験とあわせて話をすると良いでしょう。

年上の部下と仕事をする際の注意点については、以下の記事もご覧ください。

参考:
Harvard Business Review「職場の世代間対立をどうすれば解消できるか」

まとめ

若手に世代間ギャップを感じたことがある人は多くいます。

世代間ギャップを埋めるには、相手を積極的に理解し、歩み寄ることが大切です。また、どんなコミュニケーションを好むか、話し合っておきましょう。