「テレワーク中に部下がサボるのを防ぎたい…」

このような悩みを持つ管理職も多いのではないでしょうか。

オフィスとは違い、自宅には監視の目が行き届きにくいため、テレワークにおける部下のサボりは大きな課題の一つといえます。

本記事では、テレワーク中に部下がサボってしまう原因や、その対策について解説します。テレワーク中の部下を適切に管理し、組織の生産性を向上させたい方は、ぜひ参考にしてください。

テレワーク中にサボったことがある部下は多い

テレワーク中の部下をマネジメントするにあたって、おそらく多くの上司が「部下が仕事をサボりがち」という問題を抱えているでしょう。

実際に、SAT探偵事務所が行った調査によれば、テレワークをしている人のうち、69.5%が「テレワーク中にサボったことがある」と回答しているほどです。

▼テレワーク中のサボりエピソード

  • 動画を見ながら仕事をしていた
  • ネットサーフィンをして時間をつぶしていた
  • 仕事をせずにゲームをしていた

周囲の監視がないテレワーク環境下において、部下がサボってしまうのはある程度仕方がないことかもしれません。

しかし、部下がサボっている間も給料は発生しているため、上司としては就業時間中はきちんと仕事をしてほしいと思うのは当然です。

かといって、監視ソフトなどを導入して部下の行動を常時監視するのは、サボりがちな部下に対しては有効かもしれませんが、真面目に働いている社員にも余計な圧力をかけ、不快感を抱かせてしまうことになりかねません。

したがって、上司は部下に不快感を与えることなく、かつサボりを防ぐための適切な管理方法を身につけることが重要です。

参考:

SAT探偵事務所「【テレワーク・リモートワーク実施者200名にアンケート】約69%が、サボった経験があると回答!」

部下がテレワーク中にサボってしまう原因

テレワーク中に部下がサボるのを防ぐためには、まず部下がサボってしまう原因を理解することが大切です。

気を散らすものが多い

部下がテレワーク中にサボりがちな原因として、自宅には「気を散らすもの」が多いことが考えられます。

株式会社ネクストレベルの調査によると、「テレワーク中にモチベーションが下がった・集中が切れたことはある?」との問いに、97.7%が「ある」と回答しています。

以下は、その理由として挙げられた主な意見です(括弧内は回答者の割合)。

  • ついスマートフォンやテレビを見てしまう(60.0%)
  • 家族やペットが気になる(26.7%)
  • ついお菓子などを食べてしまう(25.7%)
  • 家のことが気になってしまう(24.7%)

会社は仕事をするための場所であり、基本的には仕事に必要なものしか置いてありません。また、周囲の目もあるため、誰でも自然と仕事に集中せざるを得ない環境になっています。

一方で、自宅には仕事とは無関係のものも多くあり、ついこれらに気を取られてしまいます。しかも、周りに自分を監視する人もいないため、一度そうした誘惑に意識が向くと、簡単に流されてしまいがちです。

こうした状況を防ぐためには、監視ツールモニタリングシステムを導入したり、こまめに仕事の進捗を確認したりする対策が必要になるでしょう。

仕事量が少ない

部下に割り当てる仕事量が少ないことも、テレワーク中にサボる要因となり得ます。

仕事が一段落して手が空いたとき、オフィス勤務であれば周囲の目があるため、誰でも露骨にサボることはためらうはずです。おそらく、同僚の手伝いをしたり、上司に新たな業務を割り振ってもらったりする人が多いでしょう。

しかし、自宅という他者の監視がない環境下では、割り当てられた仕事を終えて他にやることがなくなれば、「仕事以外のことをやろう」と考えるのは自然な流れかもしれません。

実際に、先ほど紹介したSAT探偵事務所の調査でも、テレワーク中にサボる理由として、約2割が「ある程度業務に余裕があるため」と述べています。

もちろん、与えられた仕事を期日内にきちんと完了させているのであれば、多少のサボりには目をつぶるべきという考え方もあるでしょう。

しかし、就業時間内は何もしていない間も給料が発生している以上、時間を持て余しているのであれば他の仕事に取り組んでほしいと考えるのは、上司として当然の心理です。

このような状況を防ぐためには、上司が部下の仕事の進捗状況を正確に把握し、業務に余裕のある部下には、適宜新しい仕事を割り振っていくことが大切です。

管理体制に問題がある

テレワーク中に部下がサボってしまう要因として、そもそもの管理体制に問題がある可能性も考えられます。

たとえば、

  • 事前の申請なしで、自由にテレワークを選択できる
  • 仕事の進捗状況を一切確認しない
  • 日報や週報の提出を義務づけていない

などといったように、テレワーク中の部下を管理する最低限の仕組みすらない場合は、サボる部下の行動を改めるよりも、まずは管理体制を見直す方が先決かもしれません。

もちろん、モニタリングシステムを使って常時監視したり、頻繁に電話で進捗を確認したりするような、部下に過度なプレッシャーを与える管理方法は避けるべきでしょう。

しかし、人はどうしても楽をしたがる生き物であり、自分が誰からも監視されていないとわかれば、ついサボってしまうのは自然なことだといえます。

したがって、部下がサボる可能性を少しでも減らすためには、テレワーク中でも部下が適度な緊張感を持って仕事に取り組めるような管理体制を設けることが重要です。

参考:

PR TIMES「98%がテレワーク中の集中力低下を経験!アンケート対象の300人が実践し効果を感じた“集中力アップ”対策とは?」

部下のサボりを防ぐためにテレワークは廃止するべき?

コロナ禍が明けたことで、多くの企業ではテレワークの制度を廃止し、「オフィスに出社して仕事をする」スタイルに戻りつつあるといわれています。

実際に、株式会社MS-Japanが実施した調査でも、39.0%の企業が「(コロナ禍が明けたことで)テレワーク制度は廃止された」もしくは「出社日数が増えた」と回答しています。

しかし、テレワークは部下にとって多くのメリットがある働き方です。とくに、ワークライフバランスを充実させたい人にとっては、通勤することなく自宅で仕事ができるテレワーク制度はなくてはならないものでしょう。

そのため、テレワークを安易に廃止してしまうと、多くの部下の不満を招く原因になりかねません。

先ほどのMS-Japanの調査でも、「出社日数が増えたことについてどう感じていますか?」との問いには、59.3%が「不満」と述べています。

また、ファインディ株式会社がITエンジニアを対象に行った調査でも、コロナ禍後の出社回帰の影響で、27.6%が「転職したい気持ちになった」、17.2%が「実際に転職した」と答えているほどです。

このように、「部下のサボりを防ぎたい」という上司側の都合だけでテレワーク制度を廃止することは、部下の不満を招く可能性が高く、最悪の場合は退職者が増加する要因にもなり得ます。

テレワークによって生産性が低下するとは限らない

テレワークだと仕事の効率が下がりやすいため、オフィス出社に回帰するべきだと考える人は少なくありません。

しかし、実際にはテレワークが生産性向上に寄与する可能性を示唆する研究結果も存在します。

オンライン旅行代理店のトリップドットコム社が行った実験では、従業員を「週5日オフィス勤務」および「週3日オフィス勤務・週2日テレワーク」の2つのグループに分け、6ヶ月間勤務した後にそれぞれの業績を比較しました。

その結果、両グループの間で生産性やパフォーマンスのレベルにほとんど差は見られなかったといいます。

さらに注目すべきは、オフィス勤務とテレワークを組み合わせたグループでは、仕事の満足度が向上し、離職率が35%も減少したという点です。これは、オフィス勤務とテレワークそれぞれが持つ利点を組み合わせることで、相乗効果が生まれたためだと考えられます。

これらの結果から、テレワークを適切に運用すれば、部下の生産性を損なうことなく、モチベーションを向上させる効果が期待できます。

▼関連記事

テレワークは廃止すべき?適切に運用するポイントを解説

参考:

PR TIMES「MS-Japan「テレワーク実態調査」を発表!コロナ後の意に沿わない出社増で、「仕事へ不満」が1.6倍に」

ITmedia NEWS「ITエンジニアの4割超が「出社増えたら転職する」 オフィス回帰の企業は増加中」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「A/Bテストで判明した週2日在宅勤務のメリット」

テレワークで部下を管理する際の注意点

テレワークで部下を管理するにあたって、上司が注意すべきポイントを解説します。

監視するためだけに目的でモニタリングシステムを利用しない

テレワーク中の部下のサボりを防ぐために、モニタリングシステムの導入を検討している人も多いでしょう。

しかし、多くの部下はデジタルで監視されることを快く思っておらず、ただ監視する目的でシステムを使うと、さまざまな問題が生じる恐れがあります。

実際に米国で実施された研究によると、上司が部下を監視する目的でモニタリングシステムを導入した場合、上司と部下の関係性が悪くなることが明らかになっています。

それだけでなく、上司から監視されているにもかかわらず、かえって部下に規則違反の行動(遅刻やネットサーフィンなど)が増え、仕事のパフォーマンスも低下する傾向が見られたのです。

一方で、部下の成長を促進させる目的でモニタリングシステムを活用した場合は、部下との関係が悪化することはなく、仕事のパフォーマンスも向上しやすいといいます。

この結果から、モニタリングシステムを利用する際は、監視が主たる目的ではないことを部下に理解させることが大切です。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、モニタリングシステムの導入に際して上司が意識すべきポイントとして、以下の2点を挙げています。

ポイント具体例
【事前に利用目的を説明する】モニタリングする目的や範囲を事前に説明するだけで、システム導入を受け入れる従業員が70%増加するという研究データもある「チーム内で非効率的なタスクがないかを分析するために、モニタリングシステムを使います。皆さんの行動を細かくチェックするわけではありませんので安心してください」
【得られたデータをもとにフィードバックを行う】部下の成長を目的としてモニタリングシステムを使っていることを、改めて理解してもらいやすい「Aさんは仕事で分からないことがあると、手を止めて考えることが多いようですね。考えすぎるのも時間の無駄になるので、不明な点があればいつでも私に相談してください」

コミュニケーション主体で管理する

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、テレワーク中の部下を管理する方法は、大きく以下の2つに分類できるとされています。

  • 観察型モニタリング: 電子的なデータを収集し、従業員の行動を観察する手法(例:PC画面のスクリーンショットを1分毎に自動で取得するシステムを利用する)
  • 交流型モニタリング: 従業員と直接コミュニケーションを取り、相手の状況を把握する手法(例:Web会議ツールを用いて、定期的に進捗報告会を開催する)

上記のうち、「観察型モニタリング」は有用なデータが多数得られるものの、部下は自分が細かく監視されていることに、大きなストレスを感じる可能性が高いといいます。

その結果、部下はやる気を失い、仕事のパフォーマンスも低下する傾向にあるとのことです。

一方、「交流型モニタリング」を用いた場合だと、部下は監視されているという感覚に陥りにくいです。

また、コミュニケーションを取る中で部下が仕事上で抱える問題も把握できるため、適宜フィードバックを行うことで、パフォーマンスの向上効果が期待できます。

もちろん、モニタリングシステムを導入してはいけないわけではなく、むしろ使い方によっては、部下の成長促進に役立つこともあるでしょう。

しかし、システムだけに頼って部下を管理するのではなく、まずは直接コミュニケーションを取ることが何よりも大切といえます。

ある程度のサボりは仕方がないと割り切る

テレワーク中に部下がサボるのは、ある程度は仕方がないと割り切ることも大切です。

もちろん、サボっている間も給料は発生しているため、部下には勤務時間中は常に仕事をしてほしいと考えるのは当然のことです。

しかし、上司の使える時間は有限であり、たとえモニタリングシステムを利用したとしても、部下の行動を常時監視し続けるのはほぼ不可能です。

また、これまでくり返し述べてきたように、部下に監視されていると感じさせすぎると、信頼関係が損なわれ、かえってサボりが増えたり、仕事のパフォーマンスが低下する恐れもあります。

したがって、部下のサボりにはそこまで神経質にはならず、「やるべきことをきちんとやっていれば、ひとまずはOK」くらいに考えておくのがよいかもしれません。

そのためにも、部下とはこまめにコミュニケーションを取り、仕事の状況や進捗を確認することが重要といえます。

参考:

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「信頼を損なわず、従業員の監視を実施する方法」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「リモート従業員のやる気を削ぐ監視、信頼を育む監視」

まとめ

テレワーク中の部下を管理する際のポイントについて解説しました。

テレワーク中は周囲の目がないため、部下がサボってしまうのはある程度仕方のないことです。

しかし、上司が管理方法を工夫することで、部下のサボりを極力減らすことは十分に可能です。

本記事の内容を実践し、テレワーク中の部下を適切に管理し、組織の生産性向上に役立ててください。