今後のキャリアに悩み、管理職以外の選択肢について知りたい方もいらっしゃるでしょう。
業務への負担を感じている場合、ほかの企業への転職やフリーランスへの転向、専門職制度の利用などが選択肢として挙げられます。
本記事では、キャリアプランニングを行う方法や、管理職が自分のキャリア開発を行う際のポイントなどについても紹介します。
管理職を辞めたい人は一定数いる

管理職を辞めたいと考える人は一定数います。
マイナビ転職が管理職を対象にした調査では、昇格希望について尋ねたところ「管理職を辞めたい」と回答した割合は、本部長の役職が2.9%、部長が8%、次長が18.2%、課長が17.1%となりました。
特に役職が比較的低い層で割合が高いことから、管理職の業務に慣れていない人が役職を外れたいと考えているケースもあると推測されます。
同記事によると、管理職の悩みとしては「マネージャー業務の負荷が高い」「パワハラなど、ハラスメントと言われるのを避けたい」などが挙げられており、業務や精神的な負担などによる影響ではないかとしています。
管理職では部下の教育やサポート、進捗の管理など行うべきことが多くあります。また、部下からパワハラやモラハラなどと思われてしまうことを避けるため、自分の言動により一層神経を使っている管理職の方もいるでしょう。
中間管理職を辞めたいと感じている方は以下の記事もご覧ください。
参考:
マイナビ転職「「管理職になって良かった」と感じている人は約6割。一方で、管理職になって心身の健康が損なわれた人は約7割。」
管理職以外のキャリアの選択肢

管理職以外のキャリアの選択肢は主に以下の4点が挙げられます。
- 専門職制度を利用する
- フリーランスになる
- 社内で必要な役割を提案する
- 転職する
それぞれについて詳しく解説します。
専門職制度を利用する
管理職を続けたくないと感じる場合、専門職制度の利用を検討すると良いでしょう。専門職制度とは人事制度の一つで、専門知識や技術のある人を管理職と同程度の給与で処遇する仕組みのことです。複線型人事制度であり、管理職になる以外のキャリアパスを選べるというメリットがあります。
リクルートマネジメントソリューションズの調査によると、「専門職制度はあるが、運用が単線的に近い」という企業と、「専門職制度を複線型の人事制度として運用している」という企業を合わせると、全体の79.7%にのぼりました。
このうち、「複線型として運用している」と明確に回答した企業は58%であり、専門職制度を実際に機能させている企業が過半数に達していることが分かります。
興味のある管理職の方は、一度自社の人事制度を確認してみるほか、専門職制度のある企業への転職を検討するのも一つの方法です。
フリーランスになる
さまざまな業務に追われて管理職の方が手一杯の状態となっている場合、フリーランスになる選択肢もあります。
サウスフロリダ大学の記事では、フリーランスのプロジェクトマネージャーになるメリットとして、プロジェクトの種類を選べることや自分でスケジュール管理できる点などを挙げています。
上記はプロジェクトマネージャーについてですが、知識や経験をフリーランスとして活かす場合、基本的に自分で業務の種類と量を調整できるでしょう。管理職の仕事は、担当している自身の業務のほか、部下の教育やチームビルディング、就業環境の整備など多岐にわたります。自分がどこに注力したいのかを一度見直してみると良いでしょう。
社内で必要な役割を提案する
ハーバードビジネスレビューの記事によると、管理職を外れる場合、自分が貢献できることを踏まえたうえで、社内での役割を提案するのも一つの方法です。
たとえば、同記事によると、ある企業でクラウドに移行するのに伴い、自社での指揮と外部との調整を行う人が必要になりました。その際、自分の経験や社内での影響力をもとにDXの責任者に手を上げたことで、直属の部下を持たなくなっても同程度の報酬を保てたとしています。
このように、必要とされる役割があれば積極的に手を挙げるほか、新たなニーズが社内にないか探ることから始めるとよいでしょう。
転職する
管理職としての負担に悩んでいる場合、転職することも方法の一つです。また、自社でプレイングマネージャーとして働いている場合、業務も担当するため負荷が大きすぎると感じる場合もあるでしょう。
その場合は、マネジメントに集中できるポジションの募集がないか探してみるのも一つの方法です。
業務負担を軽減するコツについては、以下の記事もご覧ください。
参考:
リクルートマネジメントソリューションズ「昇進・昇格制度の現状:管理職志向の変化と対応策【前編】」
University of South Florida “How to Become a Freelance Project Manager”
Harvard Business Review「みずから管理職を降りて、プレーヤーとして成功する方法」
キャリアプランニングを行う方法

キャリアプランニングを行う方法について、EDHECビジネススクールの記事をもとに以下の4点について紹介します。
- 自己分析を行う
- 興味のある選択肢について深く知る
- 長期的目標と短期的目標を設定する
- キャリア目標を実現させるために行動する
それぞれについて詳しく解説します。
自己分析を行う
キャリアを考えるうえで、まずは自分をよく知ることが大切です。
EDHECビジネススクールの記事では、キャリアプランニングの第一歩として「自己評価(自己分析)」を挙げており、性格や価値観、興味などを把握することが、目標設定の基礎になるとしています。
実際に転職活動では、自己分析を通じて自分に合った職種や職場を見極めたり、強みを明確にして自己PRにつなげたりすることができます。
たとえば、MBTIなどの性格診断ツールを活用するのも一つの方法です。キャリアに迷ったときこそ、まず立ち止まって、自分自身の特性や志向を整理することから始めてみましょう。
興味のある選択肢について深く知る
同記事によると、「さまざまな選択肢を探る」ことがキャリアプランニングの次のステップです。選択肢について深く知れば、理想的なキャリアを早く見つけられるとしています。具体的な行動としては、ボランティアやインターンシップなどが挙げられています。
実際に身をもって経験すればキャリアの選択肢について解像度が高くなるほか、働いてみて「自分に合わない」「想像していたものと違う」と分かれば、早めに選択肢に見切りをつけてミスマッチを防げると考えられます。
長期的目標と短期的目標を設定する
同記事では、3番目のステップとして「目標を設定する」ことが挙げられています。今後5年間の長期的な目標と、そこに至るまでの短期的な目標を持つことが重要だとしています。また、効果的な目標について「現実的」「達成可能」「期限が定められている」「目標に関連している」という4つの特徴が必要だとしています。
たとえば、5年後にフリーランスになることを目標とする場合、「自己分析を1ヶ月以内に終わらせる」「実際に働くイメージを持つために、2ヶ月以内にフリーランスの求人サイトから案件を受注してみる」などと目標を立てていけるでしょう。
キャリア目標を実現させるために行動する
同記事によると、最後のステップは「行動を起こす」です。具体的には、「履歴書の作成」「オンラインコース」「インターンシップ」「ネットワーキングイベント」などが挙げられています。
同記事によると、目標を実現させるための資格やスキルを得るのに役立つほか、セミナーやネットワーキングイベントなどでのつながりがキャリア目標を進めるうえで貴重なものになるとしています。
たとえば、業界のセミナーや異業種交流会に参加することで、オンラインでは公開されていない求人情報に触れたり、関係が深まればリファラル採用につながる可能性もあります。
参考:
EDHEC BUSINESS SCHOOL “What is Career Planning?”
管理職が自分のキャリア開発を行う際のポイント
管理職が自分のキャリア開発を行う際のポイントは主に以下の3点が挙げられます。
- 学習目標をチームメンバーに共有する
- ほかの企業と情報交換の場を作る
- マイクロラーニングを行う
それぞれについて詳しく解説します。
学習目標をチームメンバーに共有する
ハーバードビジネスレビューの記事によると、管理職が学習目標をチームメンバーに共有すればキャリア開発に協力してくれる人が周りに増えるほか、チームメンバーも同じように目標設定しようと考えるだろうとしています。
同記事では具体例として、管理職の目標を踏まえて、メンバーがフィードバックしてくれる可能性などを挙げています。
チームの状況を正確に把握し問題があれば対処できているか、業務の割り振りや管理職からのフィードバックが適切かなど、メンバーの視点から得られる気づきは多いでしょう。メンバーが正直に意見を言えなさそうだと感じる場合は、匿名でアンケートを行うのも一つの方法です。
ほかの企業と情報交換の場を作る
同記事によると、社内での能力開発だけでは学びが限定されることや好奇心が養えないという問題があります。ほかの企業のチームと互いに情報交換の場を作ることで、ほかの仕事に触れられるほか、人脈を得たりともに学んだりできるとしています。
具体的には、互いの専門的な知見や情報を交換するセッションを行い、その形態として実際に集まるほか、ランチタイムにオンラインで行うことなどが挙げられています。
従業員にとっても、違う環境で働く人と関わることで、励まし合える関係が構築できてモチベーション向上につながることも考えられるでしょう。従業員の士気が高まれば、生産性の向上や離職率の低下にもつながる可能性があります。
ほかの企業と関係を育むことでビジネスチャンスを得られることも考えられるため、管理職の方はぜひ検討してみましょう。
従業員の士気を高めるメリットについて、詳しくは以下の記事もご覧ください。
マイクロラーニングを行う
同記事によると、マイクロラーニングを効果的に行えば、短い時間で大きな効果が得られます。マイクロラーニングとは短時間の学習スタイルのことです。
具体例として、同記事では「強みを促進する」ことを挙げています。さらに伸ばしたいスキルについて、その強みを活かす頻度を上げるにはどうすれば良いか、ほかの場面でも活かせないか、ほかにも強みを活かす相手はいないか、などについてできる行動を探すことを推奨しています。
たとえば、部下の育成スキルを強化したいと考えている場合、決められたフィードバックのタイミングだけでなく、新たに肯定的なフィードバックを行う機会を作ることなどが考えられるでしょう。
同記事によると、マイクロラーニングは10分もかからないことが多いです。管理職の方は、手近にできることから始めていきましょう。
参考:
Harvard Business Review「忙しいマネジャーがキャリア開発の時間をつくる方法」
まとめ
管理職のなかには辞めたいと考える人も一定数います。専門職制度を利用したりフリーランスになったりと、管理職以外のキャリアの選択肢を検討するのも一つの方法でしょう。キャリアプランニングを行いながら、自身の目指すキャリアパスを実現していきましょう。