「エンゲージメントサーベイを、いまいち活用できていない気がする」
「エンゲージメントサーベイの効果的な分析方法が知りたい」
このような悩みをお持ちの管理職の方もいるでしょう。分析方法のポイントを押さえることで、課題の早期発見につながり、迅速に適切な改善策を講じることができます。
本記事では、エンゲージメントサーベイの効果的な分析方法について解説します。
エンゲージメントサーベイの分析方法

エンゲージメントサーベイの分析方法について、デジタル戦略とイノベーションをリードするヨレン・シャルン氏による論文を参考に解説します。
過去データと比較する
エンゲージメントサーベイの結果を過去のデータと比較することで、経年変化を把握し、施策の効果測定や課題の早期発見が可能になります。前年の調査結果と比較して、特定の項目のスコアが低下している場合、原因を探ることで、従業員のエンゲージメント低下の要因を特定し、適切な対策を講じることができます。
また、複数の部署やチーム間でスコアを比較することで、エンゲージメントの高い部署の取り組みを参考に、改善策を共有することもできるでしょう。過去のデータとの比較は、エンゲージメントの推移を把握し、原因の特定や効果の測定、改善を継続的に行う上で重要な分析手法です。
属性ごとの傾向を把握する
年齢や性別、役職、勤続年数などの属性ごとに分析することで、それぞれの属性における課題やニーズを把握し、より効果的な施策を実施することができます。たとえば、若手社員のエンゲージメントが低い場合、キャリア開発支援やメンター制度の導入を検討する必要があるかもしれません。
また、特定の部署でエンゲージメントが低い場合、その部署の労働環境やマネジメントスタイルに問題がある可能性があります。属性ごとの傾向を把握することで、より具体的な課題解決策を導き出すことができるでしょう。
相関分析を行う
エンゲージメントサーベイの各項目間の相関関係を分析することで、エンゲージメントに影響を与える要因を特定できます。たとえば「仕事へのやりがい」と「上司からの評価」の間に強い正の相関がある場合、従業員が仕事にやりがいを感じているのは、上司から適切な評価を受けていることが要因の一つであると推測できるでしょう。
このように、相関分析を行うことで、エンゲージメント向上につながる施策の優先順位を決定し、効果的にリソースを投入することができます。また、予期せぬ相関関係を発見することで、新たな課題や改善点を見つけることができる可能性もあります。
参考:
従来の分析方法の問題点

従来のエンゲージメントサーベイの分析方法、特に標準化された質問を用いた定量的な分析方法には、いくつかの問題点があるとされています。
従来の分析方法の問題点について、Inc. 5000(フォーブスが公開する米国急成長企業リスト)に選出されたコンサルティング会社のCEO、スーザン・ラモット氏の記事を基に解説します。
表面的な理解しか得られない
従来のエンゲージメントサーベイは、数値化されたスコアやパーセンテージに偏っており、従業員の感情や考えの表面的な理解に留まりがちです。スコアが低いか高いかという結果だけでは、具体的な背景や理由はわかりません。
エンゲージメントサーベイは会話の代替にはなり得ず、従業員の真意を理解するには、対話を通じた質的なデータ収集が不可欠です。数値はあくまで現状把握の第一歩であり、その背後にある動機を掘り下げることで初めて、意味のある改善策を導き出すことができます。
時代遅れのアプローチである
年1回程度のエンゲージメントサーベイは、変化の激しい現代のビジネス環境には適していません。従業員の感情は日々変化するものであり、年間を通しての平均値では、重要な変化を見逃してしまう可能性があります。
リアルタイムに従業員の心情を知るためのツールとして、パルスサーベイが代替案として挙げられています。パルスサーベイは、週1〜月1回程度の短期間で社員の満足度やエンゲージメント度合いを数問~数十問の質問によって調査します。
ただ、パルスサーベイを活用したとしても、従業員の深い心情までは深掘りできないでしょう。時代遅れのアプローチから脱却するには、定量的データと定性的データを組み合わせ、継続的に従業員の感情を把握する仕組みが必要です。
従業員が本音を回答できない
従業員は、調査の匿名性への懸念や、上司や同僚からのプレッシャーを感じ、本音を回答できない場合があります。特に、上司のパフォーマンス評価とエンゲージメントスコアが紐づいている場合、従業員は高評価を得るために本音で回答しない可能性があります。
信頼できるデータを得るには、従業員が安心して本音を語れる環境づくりと、回答への先入観を最小限に抑えるための調査設計が重要です。
効果的に分析するためのポイント

エンゲージメントサーベイを効果的に分析するためのポイントについて、同記事を参考に解説します。
定性調査と定量調査を併用する
エンゲージメントサーベイなどの定量調査だけでは、従業員の感情や行動の背後にある動機を理解することは難しく、表面的な分析に留まってしまいます。そこで、インタビューやフォーカスグループなどの定性調査を併用することで、数値データに深みと意味を与えることができます。
たとえば、アンケートで低いスコアの項目がある場合、インタビューでその理由を詳しく聞き取ることで、具体的な課題や改善策が見えてきます。定量調査で全体像を把握し、定性調査で詳細な情報を取得することで、より効果的な分析が可能になります。
リアルタイムなデータ収集を行う
従業員のエンゲージメントは、組織の変化や出来事に大きく影響を受け、時間とともに変化するものです。そのため、年1回程度の包括的な調査だけでは、従業員のタイムリーな状況把握や特定の効果の測定が難しくなります。
そこで、パルスサーベイのようなリアルタイムなデータ収集ツールを導入することで、従業員の感情の変化を迅速に把握し、適切な対策を講じることが可能になります。ただし、リアルタイムなデータは短期的な変動を捉える一方で、長期的な傾向分析には不向きです。
目的に応じて、エンゲージメントサーベイとパルスサーベイを使い分ける、または併用し、課題への改善策を講じることが大切です。
企業文化やビジネス環境を考慮する
エンゲージメントサーベイの結果は、企業文化や置かれているビジネス環境によって大きく左右されます。たとえば、成果主義の強い企業では、従業員がプレッシャーを感じて、本音を回答できない可能性があります。
また、急成長中の企業では、変化のスピードが速く、年次サーベイの結果がすぐに陳腐化してしまう可能性があります。自社の文化や状況を理解した上で、適切な分析を行うことが重要です。
必要に応じて、サーベイの質問項目や実施頻度を調整したり、外部の専門家の知見を活用するなど、柔軟な対応が必要です。
参考:
まとめ
エンゲージメントサーベイの分析方法について、解説しました。エンゲージメントサーベイを効果的に活用するためには、過去データとの比較や相関関係を分析するなどが有効です。ただし、エンゲージメントサーベイは、調査結果を数値化した定量的なデータのみとなるため、従業員の回答に対する動機について把握できない場合があります。
そのため、自社のビジネス環境を考慮しながら、パルスサーベイやインタビューやフォーカスグループなどの定性調査も併用すると良いでしょう。本記事を参考に、エンゲージメントサーベイを分析し、課題の早期発見に役立ててください。