「エンゲージメントサーベイを失敗したくない」
「エンゲージメントサーベイのデメリットを知っておきたい」
このような不安や疑問を持っている管理職の方もいるでしょう。Workleap社の2014年の調査によると、従業員の約70%が調査に回答せず、そのうちの約30%近くの従業員がエンゲージメントサーベイを無意味だと感じているとされています。
本記事では、エンゲージメントサーベイのデメリットやデメリットを補う方法について解説します。
エンゲージメントサーベイのデメリット

エンゲージメントサーベイのデメリットについて、SHRMが公開する労働関係協会の会長兼顧問弁護士であるフィリップ・B・ウィルソン 氏らによる記事を参考に解説します。
誤った解釈をしてしまう
エンゲージメントサーベイは、結果を誤って解釈してしまう可能性があります。とくに、大規模な組織では、調査から得られる情報量が膨大になるため、重要な情報を見落としたり、データの解釈に時間がかかり、迅速な対応が難しい場合があります。
特定の部署でエンゲージメントが低いといった結果が出た場合には、その原因が職場環境の問題なのか、マネジメントの問題なのかなどの原因の特定が重要です。しかし、調査データが多いと表面的な分析にとどまり、原因を見誤ってしまうこともあるでしょう。
そのため、エンゲージメントサーベイの結果を分析する際には、多角的な視点と慎重な分析が必要です。
従業員が不信感を抱く
エンゲージメントサーベイの実施後、結果に基づいた変化や改善が見られない場合、従業員は組織から軽視されていると感じ、不信感を抱く可能性があります。エンゲージメントサーベイを実施するだけでは、従業員のエンゲージメントを高めることはできません。
調査結果に基づいた具体的な行動や対応策を講じ、従業員に結果を報告することが大切です。従業員は、調査に回答することで、会社が自分たちの意見を聞き、職場環境の改善につなげてくれることを期待しています。
しかし、その期待が裏切られた場合、エンゲージメントサーベイが逆効果となり、「会社は自分たちのために動いてくれない」とエンゲージメントを低下させるという事態を招きかねないでしょう。
費用対効果が低い
エンゲージメントサーベイは、従業員のエンゲージメントの向上や職場環境の改善につながらなかった場合、費用対効果が低いといえます。エンゲージメントサーベイの実施には、サーベイツールの使用や外部コンサルタントの費用、サーベイ実施にかかる従業員の工数など、さまざまなコストを考慮する必要があります。
また、質問項目が適切でなかったり、回答率が低かったりするサーベイは、信頼性に欠けるデータしか得られません。さらに、結果に基づいた対策が場当たり的なものであったり、従業員のニーズに合致していなかったりする場合は、エンゲージメントの向上につながらず、費用を無駄にしてしまう恐れがあります。
エンゲージメントサーベイを実施する際には、事前に目的を明確化し、費用対効果をしっかりと見極める必要があります。
定性データの収集が難しい
エンゲージメントサーベイは、主に数値化された定量データの収集であるため、定性データの収集が難しいです。エンゲージメントサーベイは、主に、選択式の質問に回答するため、従業員の感情や行動の背景や理由を深く理解することは難しい場合があります。
たとえば、従業員満足度が低いという結果が出た場合、その原因が給与なのか、仕事内容なのか、あるいは人間関係なのか判断が困難となります。従業員のエンゲージメントを真に理解するためには、数値データだけでなく、従業員の生の声や具体的なエピソードといった定性データも重要です。
そのためには、自由記述欄を設けたり、インタビューやグループディスカッションの実施が効果的です。定性データを収集し、定量データだけでは見えてこない従業員の真の思いを理解することが重要です。
参考:
Vivian Rank.Phillip B Willson.Is It Time to Ditch the Annual Employee Survey?.SHRM.https://www.shrm.org/topics-tools/news/hr-magazine/time-to-ditch-annual-employee-survey
デメリットを補うためのポイント

デメリットを補うためのポイントについて、同記事を参考に解説します。
効率的かつ焦点を絞った分析を行う
エンゲージメントサーベイは、効率的かつ焦点を絞った分析が不可欠です。サーベイの質問は、数を絞り込み、必要な情報だけを収集しましょう。漠然とした質問や重複する質問は避け、具体的な行動や感情に焦点を当てた質問を作成することで、より精度の高いデータを得ることができます。
分析の際には、ツールを活用し、客観的なデータに基づいて解釈を行うことが重要です。Excelなどの表計算ソフトや専用の分析ツールを用いることで、データの傾向や相関関係を視覚的に把握しやすくなります。
さらに、サーベイ結果に基づいて、焦点を絞った追加調査やインタビューを実施することで、より深い洞察を得ることができるでしょう。たとえば、特定の部署でエンゲージメントが低いという結果が出た場合、その部署の従業員に焦点を当てたインタビューを実施することで、具体的な問題点や改善策を明らかにすることができます。
結果と対応策を共有する
エンゲージメントサーベイの結果と対応策を従業員に共有することで、従業員からの組織への信頼を保つことができます。調査の結果を伝えるだけでなく、具体的な対応策や改善計画を提示すると、従業員の意見を真摯に受け止めてくれたことを示せるでしょう。
エンゲージメントサーベイの結果や対応策を共有する際には、従業員の意見を尊重し、改善につなげる姿勢を示すことが重要です。従業員の意見を反映した対応策を提示することで、従業員の主体性を高め、エンゲージメントの向上につなげることができます。
また、一方的に伝えるのではなく、双方向のコミュニケーションを意識して、従業員の意見を積極的に取り入れることで効果的な対応策を講じることができます。
明確な目的を設定する
エンゲージメントサーベイを効果的に実施するためには、事前に明確な目的を設定しましょう。離職率の低下や生産性の向上といった具体的な目標を設定することで、サーベイの設計や分析を適切に行うことができます。
目的に応じて、適切な質問項目を設定することも重要です。たとえば、離職率を下げたい場合は、離職意向に関する質問を重点的に盛り込む必要があります。サーベイの実施によって得られた効果を測定し、次回のサーベイに活かすことで、より効果的なエンゲージメントサーベイを実施することができます。
定性調査を併用する
エンゲージメントサーベイは、主に定量データを収集できるため、定性調査を併用することでより深い洞察を得られます。先述したとおり、エンゲージメントサーベイによる数値データだけでは従業員の感情や行動の背景や理由を深く理解することは困難です。
そのため、定量データに加えて、フォーカスグループや面談などの定性調査を併用することで、従業員の本音を引き出すことが可能になります。従業員満足度が低いという結果が出た場合、定量データだけでは、原因の特定や背景が分かりづらいですが、定性調査を通じて原因や理由を明らかにすることができます。
得られた定性データと定量データを組み合わせることで、より効果的な改善策を立案し、従業員のエンゲージメント向上につなげることができます。
エンゲージメントサーベイから得られる効果とは

エンゲージメントサーベイの導入により得られるメリットについて、ハーバードビジネスレビューが公開するペンシルバニア大学 ウォートンスクールの教授であるピーター・キャペリ氏らによる記事を参考に解説します。
エンゲージメントサーベイから得られる効果は、主に以下になります。
- エンゲージメント度合いを把握できる
- 生産性を高められる
- 人材の確保につながる
エンゲージメントサーベイにより組織の課題を発見し、改善策を講じることで、職場環境が良好となり、従業員のモチベーションや生産性を高められるでしょう。エンゲージメントが高い従業員は、仕事へのやりがいや満足度が高く、離職率が低いとされています。
ただし、サーベイ結果は、自己申告に基づくものであり、客観的な事実とは異なる場合もあるため注意が必要です。また、エンゲージメントと生産性、離職率の因果関係は複雑で、サーベイ単独で劇的な改善は難しいです。
そのため、エンゲージメント以外の要因も考慮しながら、サーベイ結果を総合的に判断し、活用することが大切です。
参考:
まとめ
エンゲージメントサーベイのデメリットについて、解説しました。エンゲージメントサーベイには、定性データが収集しづらいことや誤解される可能性があるなど、いくつかのデメリットがあります。
しかし、事前に明確な目的を設定したり、定性調査との併用をするなど、デメリットを補う行動をすることで、正しく実施することができます。また、従業員へ結果や対応策を共有するなど、エンゲージメントサーベイにより、組織への不信感が高まらないように、信頼を保ちながら実施しましょう。