多くの人は悩みを抱えた際に、誰かに相談することで解消しようとするはずです。
しかし、管理職の中には周囲に相談できる相手がおらず、やむを得ず一人で悩みを抱え込んでいる人も少なくないでしょう。
本記事では、悩みを相談する相手がいない管理職がとるべき対処法について解説します。悩みをうまく解消し、ストレスなく健康的に働き続けたい管理職の方は、ぜひ参考にしてください。
多くの管理職は悩みを抱えている

管理職といえども一人の人間であり、仕事上で悩みを抱えることは当然あるはずです。むしろ、管理職は一般社員に比べて業務範囲が広い分、より多様な悩みを抱えやすい傾向にあります。
実際に、ALL DIFFERENT株式会社が管理職を対象に実施した調査では、97.3%が「仕事上で何らかの悩みがある」と回答したほどです。
以下は、その悩みとして挙げられた主な意見です(括弧内は回答割合)。
- 部下の育成(55.2%)
- 部下とのコミュニケーション(30.4%)
- 部下の評価・フィードバック(27.4%)
- 目標設定や業務計画の立案(23.7%)
- 部門・チームの方針や戦略の浸透・伝達(23.4%)
以上の結果からもわかるように、管理職が悩みを持つことは決して恥ずかしいことではありません。それどころか、多くの管理職が共通の課題に直面しているといえます。
したがって、管理職も悩みを一人で抱え込まず、気軽に誰かに相談することが大切です。
参考:
ALL DIFFERENT「【管理職意識調査(悩み・課題編)】管理職の悩み、ステージ別の違いが明らかに!」
管理職には悩みを相談する相手がいない?

株式会社ビズヒッツが管理職を対象に行った調査で、「仕事の悩みを相談する相手」について尋ねたところ、以下のような結果になったといいます。
- いない(35.3%)
- 家族(22.3%)
- 友人・恋人(20.2%)
- 上司・同僚(19.7%)
この結果から、管理職の約三人に一人は自身の悩みを誰にも相談できず、自分一人で抱え込んでいる現状が見てとれます。
管理職に相談相手がいない理由
管理職に悩みを相談する相手がいない原因として、同じような立場を経験したことがある人が、そもそも周囲に少ないことが考えられます。
一般社員の場合は、仕事上で困ったことがあれば、先輩社員や上司など、気軽に相談できる相手が周囲にたくさんいます。また、何かしらイライラや不満を感じた際には、同期や同僚に愚痴を吐くことで簡単にストレス発散できるでしょう。
一方で、管理職になると、周囲には自分よりも立場が下の人が必然的に多くなり、気軽に相談できる相手を見つけるのが難しくなります。
もちろん、悩み相談の相手は自分と同等以上の立場でなければならないという決まりはなく、管理職から部下へ相談するのも決して恥ずかしいことではありません。
しかし、「管理職は強い存在であるべきだ」という固定観念を持っていると、部下に弱みを見せることに抵抗を感じ、結果的に一人で悩みを抱え込むことにつながるのでしょう。
参考:
ビズヒッツ「中間管理職がつらい瞬間と疲れた場合の対処法|男女238人へのアンケート調査から徹底解説」
管理職に悩み相談の相手がいないとどうなる?

仮に、管理職が自身の悩みを誰にも相談せずとも、その悩みを自分で消化し解消できるのであれば問題ありません。
しかし、中には悩みをうまく消化できず、ストレスが蓄積してしまうタイプもいるでしょう。そして、そのストレスが許容レベルを超えると、やがては心身に不調をきたし、最悪の場合は長期間の休職を余儀なくされる恐れがあります。
実際に、マイナビ転職が管理職を対象に実施した調査でも、「管理職になって、人生はどう変わったか」との問いに、68.9%が「心身の健康が損なわれた」と回答しているほどです。
管理職として理想的なキャリアを歩むためには、何よりもまずは、長く健康的に働き続けることが大切なはずです。
そのため、現状、自身の不安や悩みを吐き出せずため込んでいる管理職は、まずは気軽に相談できる相手を探すことが重要です。
また、相談相手がすぐに見つからない場合でも、ネガティブな感情を自分の中でため込まず、うまく処理するコツを押さえることも必要になります。
参考:
マイナビ転職「「管理職になって良かった」と感じている人は約6割。一方で、管理職になって心身の健康が損なわれた人は約7割。」
悩み相談の相手がいない管理職がとるべき対処法

自分の悩みを相談できる相手がいない場合に、管理職が心がけるべきポイントを解説します。
積極的に自分の弱さを見せる
管理職が一人で不安や悩みを抱え込まないためには、日頃から積極的に自身の「弱さ」を周囲に見せることが重要です。
「管理職は部下のお手本となる完璧な存在でなければならない」という固定観念を持っていると、「管理職が弱さを見せると、周囲からの評価が下がるのではないか?」と心配かもしれません。
しかし、ハーバード・ビジネス・レビューの記事によれば、管理職が自分の弱みを打ち明けたからといって、必ずしも仕事の能力や人間性に対する周囲の評価が下がることはないといいます。
むしろ、部下は管理職に対して「本当の自分を隠していない」という印象を受け、信頼関係が築きやすくなる可能性が高いです。
さらに、管理職が自身の不安や悩みを開示することで、チーム全体に「弱みを打ち明けてもよい」という文化が育まれ、結果的に職場のメンタルヘルスが向上することも期待できます。
ただし、管理職はどのような弱みでも打ち明ければよいというわけではありません。
同記事によれば、管理職の「人間らしさ」を感じられるような欠点や失敗談は、周囲の共感も得やすいため、積極的に開示した方がよいとされています(例:「大勢の前で話すのが苦手だ」「最新のテクノロジーについていくのが大変だ」)。
一方で、自身が抱える深刻な問題や悩みについては、その場の雰囲気が重くなるだけで共感も得られにくいため、むやみに開示することは避けた方がよいでしょう(例:「プレゼンの最中にパニック発作になった経験がある」)。
管理職同士のつながりを強化する
人はネガティブな状況に置かれると、物事を実際以上に深刻に捉えてしまいがちです。
ハーバード・ビジネス・レビューの記事によれば、管理職は自チームの業績へのプレッシャーを常に感じており、さらにそのプレッシャーを必要以上に重く受け止める傾向にあるといいます。
しかし、実際には自分だけでなく、他の管理職も同様の悩みを抱えていることがほとんどです。
同記事では、この問題の解決策として「横のつながりを強化する」、すなわち「管理職同士で悩みを共有する機会を設ける」ことを推奨しています。このようなアプローチにより、以下のような効果が期待できます。
- 自分だけが悩んでいるわけではないと気づき、不安が軽減される
- 他者に悩みを共有することで、自分自身の不安も受け入れやすくなる
- 他の管理職の視点を取り入れることで、自身の悩みを解消するヒントが得られる
- 他の管理職との関係性が深まり、いつでも気軽に相談できるようになる
業務上少しでも関わりのある部署の管理職とは、自分から積極的に交流を図るとよいでしょう。
また、社内だけにとどまらず、ときには社外の管理職向けセミナーやイベントに参加し、交流の輪を広げることも大切です。
休暇の過ごし方を見直す
もし、仕事の悩みを相談する相手がどうしても見つからない場合でも、休暇の過ごし方を見直すことで、ストレスや疲労の蓄積を防ぐことができるかもしれません。
普段、我々が無意識に行っている、テレビを見たりスマホをスクロールしたりするような「受動的な休息」では、心身は十分にリフレッシュできません。
ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、より充実した休暇を過ごすための方法として「レジャークラフティング」を提唱しています。
レジャークラフティングとは、休暇中に「何を」するかではなく「どのように」するかに焦点を当て、意図と成長志向を持って活動に取り組む能動的なアプローチです。
具体的には、以下の3つの要素を意識して休暇を計画的に活用します。
- 目標を設定する:その活動を通して何を達成したいのか、どんな自分になりたいのかを考える
- 社会的なつながりを促進する:他者と交流し関係性を深める機会を設ける
- 学びを得る:新しい知識やスキルを身につけることを意識する
たとえば、体を動かすことが好きな人であれば、地域のランニングサークルなどに参加し、体力の向上を目指すとともにサークルメンバーとの交流を図るとよいでしょう。
米国で行われた研究によると、レジャークラフティングを実践したことで以下の効果が得られることが明らかになっています。
- エネルギーレベルが高まり、気分が向上する
- 人生に意味を感じ、満足感や充実感を覚える「ウェルビーイング」が向上する
- 仕事のモチベーションやパフォーマンスが向上する
- バーンアウト(燃え尽き症候群)になりにくくなる
以上のことから、休暇中はただ時間を過ごすのではなく、目的意識を持って成長につながる活動をすることで、より深い満足感とリフレッシュ効果が得られると期待できます。
参考:
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「リーダーが弱点を見せるべき理由」
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「マネジャーが健全なハードワークを続けるための心得」
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「活力を取り戻せる「積極的な休暇」の過ごし方」
まとめ
管理職は業務範囲が広いため、仕事上でさまざまな悩みを抱えやすい立場にあります。それにもかかわらず、多くの管理職はこれらの悩みを誰にも相談できず、一人で抱え込んでいるといいます。
悩みを解消できずにストレスが蓄積すると、心身の不調につながる恐れがあるため、そうなる前に適切に対処することが重要です。
悩みをうまく解消し、健康的に働き続けたい管理職の方は、ぜひ本記事の内容を実践してみてください。