「部下から休職相談を受けて困っている…」

このような悩みを持つ管理職も多いでしょう。

部下の休職を防ぐためには、日頃から上司が部下の様子をよく観察し、問題が生じる前に対策を講じることが重要です。

本記事では、部下が休職に至る原因や、それを防ぐためのポイントについて解説します。また、部下から休職相談を受けた際の対処法も紹介します。部下にとって働きやすい職場を作りたい方は、ぜひ参考にしてください。

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部下が休職する原因

部下が休職に至る原因として、よくあるものを3つ紹介します。

人間関係が悪い

部下が休職に至る原因の中で、とくに多いのが「職場の人間関係」です。

株式会社メンタルヘルステクノロジーズが休職経験者を対象に行った調査でも、休職理由としてもっとも多く挙げられたのが「人間関係不和(56.4%)」でした。

会社にはさまざまなタイプの従業員がおり、中には自分と合わない人が一人や二人いることは珍しくありません。

しかし、仕事を進めるうえでは、ときには苦手な人とも協力しなければならない場面が出てきます。誰にとっても、苦手な人と仕事で多くの時間を過ごさなければならない状況はストレスが大きく、メンタルに不調をきたす人がいるのも無理はありません。

もちろん、部下一人ひとりの相性を考慮して仕事を割り振るのは現実的ではなく、上司にそこまでの義務はありません。

しかし、部下が休職に追い込まれそうなほど人間関係に悩んでいる場合は、配置転換など問題の元を絶つような対処が必要になるでしょう。

長時間労働が常態化している

「長時間労働が常態化している」職場では、部下が休職に至る可能性が高まります。 

先ほど紹介した株式会社メンタルヘルステクノロジーズの調査でも、休職理由として、47.3%が「長時間労働」を挙げているほどです。

人が健康的に働き続けるためには、十分な休息が不可欠です。だからこそ、法律では労働時間に規制が設けられているのです。

しかし、毎日のように残業が続けばその分休息時間も減り、やがて心身に不調をきたす人が現れるのも当然です。

部下の長時間労働を防ぐためには、上司がメンバー一人ひとりの労働時間を日頃から正確に把握しておくことが重要です。

そのうえで、もしメンバー間で仕事量に偏りがある場合には、業務の割り振りを見直すことで、特定の部下に負荷が集中しないよう対応する必要があります。

仕事内容が合わない

「仕事内容が合わない」ことも、部下が休職に至る原因になり得ます。 

実際に、株式会社メンタルヘルステクノロジーズの調査でも、33.6%が「業務内容の不適合」を休職理由として挙げているほどです。

人にはそれぞれ強みと弱みがあり、向いている仕事も異なります。

たとえば、外交的で誰とでもすぐに仲良くなれるタイプの部下には、営業職のような仕事が向いているはずです。

このような部下に、黙々と一人で作業する仕事ばかりを担当させても、自分の強みを発揮できず、大きなストレスを感じるでしょう。そして、そのストレスが積もり積もれば、やがて精神的な不調に至るのも無理はありません。

もちろん、部下に幅広い能力を身につけさせるためには、あえてその部下が苦手な仕事をさせることもときには必要でしょう。

しかし、部下が仕事に楽しみややりがいを見出すためには、上司が部下の適性を見極めた上で、その強みを活かせる仕事を担当させることが大切です。

参考:

PR TIMES「【メンタル不調で休職経験のある会社員110名に調査】休職をした理由は「人間関係不和」が56.4%で最多」

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部下の休職は増加傾向にある

部下の休職は、どこの職場でも起こりうる問題です。

以下は、厚生労働省が実施した「労働安全衛生調査」の結果の一部で、メンタルヘルスの不調により1ヶ月以上休職した労働者、および休職者がいた事業所の割合をまとめたものです。

令和2年と令和5年の結果を比較すると、休職者の割合は増加傾向にあることがわかります。

休職者の割合休職者がいた事業所の割合
令和2年0.4%7.8%
令和5年0.6%10.4%

近年休職者が増えている理由は定かではないものの、

  • 働き方の変化:コロナ禍でテレワークが普及したことで、従業員間のコミュニケーションが希薄になり、孤独感やストレスを感じる人が増えた
  • 業務負担の増加:労働人口の減少に伴い、従業員一人ひとりの業務負担が増加している

などが原因として考えられます。

部下が休職することで起こる問題

一人の部下が休職すると、その業務は必然的に他の従業員が引き継ぐことになります。

その結果、「メンバー一人ひとりの負担が増える」→「疲労やストレスが増す」→「職場全体の生産性やモチベーションが低下する」→「さらなる休職者を生み出す」という悪循環に陥る可能性が高まると考えられます。

実際に、株式会社パーソル総合研究所が実施した調査でも、部下のメンタル不調を経験したことがある管理職から、以下のような意見が多く挙げられているほどです(括弧内は回答者の割合)。

  • メンタルヘルス不調になった部下の業務のしわ寄せで、他の部下が疲弊していた(45.2%)
  • メンタルヘルス不調になった部下の業務のしわ寄せで、他の部下もメンタルヘルス不調になった(26.1%)

もちろん、休職者が出た分だけ新たな人材を採用できれば、上記の問題は防げるでしょう。

しかし、あらゆる業界で人手不足が叫ばれる昨今、人材の確保は容易ではありません。また、仮に人材を確保できたとしても、その採用や教育には大きなコストがかかります。

以上のことから、部下の休職は組織にとって大きな損失となり得るため、日頃から休職者を出さないための対策を講じることが重要です。

参考:

厚生労働省「令和2年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」

厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要」

PR TIMES「「若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査」を発表 若年層で増える深刻なメンタルヘルス不調」

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部下の休職を防ぐポイント

部下が休職するのを防ぐために、上司が心がけるべきポイントを解説します。

異変のサインを見逃さない

部下の休職を防ぐためには、心身の状態が悪化する前に、早めに対処することが不可欠です。そのためには、部下に異変が生じているサインを見逃さないことが重要です。

メドピア株式会社が産業医を対象に行った調査によれば、従業員がメンタル不調になっている兆候として、以下の点が挙げられています(括弧内は回答者の割合)。

  • 遅刻や欠勤が増える(50.4%)
  • 表情が暗くなる(50.0%)
  • ミスが増えたり、作業効率が落ちる(43.2%)
  • 睡眠不足、不眠になる(41.8%)
  • 口数が減る(22.8%)

もし、それまで元気に働いていた部下に上記のような兆候が見られるようになった場合は、注意深く様子を観察する必要があります。

そのうえで、必要に応じて部下とコミュニケーションを取り、どのような問題を抱えているのか探ることで、解決策が発見できるかもしれません。

チーム全体で時間管理能力を強化する

先ほども説明したとおり、長時間労働は部下が休職に至る大きな要因となり得ます。職場で長時間労働が常態化するのを防ぐためには、時間管理能力を高めることが重要です。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、時間管理能力は従業員個人ではなく、チーム全体で高める意識を持つことが効果的だとされています。

チームで取り組むことで、メンバー全員が協力して仕事のやり方を見直すようになり、生産性がより効果的に高まると期待できるからです。

同記事では、チームの時間管理能力を向上させるためのポイントとして、以下の3点が提唱されています。

ポイント具体例
【メリハリをつける】人は仕事に関与している時間が長いほど、大きなストレスを感じやすい。仕事とプライベートの境界線を明確にし、メリハリをつける就業時間外は「デバイスの電源を切る」「メールやチャットを開かない」などのルールを設ける
【休暇取得を推奨する】長時間労働が続くと、従業員のモチベーションが低下し、離職率が高まる傾向にある。ハードワークの見返りとして、適宜休暇を取ることを勧める毎週水曜日を「ノー残業デー」に設定し、上司も含む全従業員が原則として残業できない日とする
【集中力を途切らせない】会議やメール、予期せぬ声かけなど、職場には従業員の集中を削ぐ要因が多く存在する。集中力を途切らせないよう、仕事の内容や進め方を調整する毎週木曜日の午前中は「会議禁止デー」とし、オンラインを含むすべての会議の開催を禁止する。このタイミングで、資料作成や分析など、各自が集中して取り組みたい業務に専念できるようにする

仕事の意義を理解させる

部下の休職を防ぐためには、仕事に対するモチベーションを高く維持させることが大切です。そのためには、仕事の適性を見極めることはもちろん、仕事にやりがいを感じさせることも必要です。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によれば、人が仕事に対してやりがいを感じるためには、以下のように、自分の仕事が「誰かの役に立っている」という実感を持つことが重要だとされています。

▼【具体例】仕事に対するやりがい(同記事より)

  • 客室係の女性: 彼女は、ホテルの部屋を清掃する仕事に、宿泊者や同僚と「心の交流」ができるという喜びを見出していた。故郷を離れて頑張るお客さんが快適に過ごせるよう手助けすることが、自分自身の経験とも重なり、大きな意味になっていた
  • 採血担当の女性: 彼女は、採血によって多くの病気が発見され、多くの人命を救うことに喜びを感じていた。単調な作業に見えても、その先に「誰かの役に立つ」という意義を見出していた

部下自身が仕事にやりがいを感じられれば理想的ですが、部下の性格や仕事内容によっては難しい場合もあります。

したがって、上司は部下に「誰かの役に立つ」仕事を割り振ったうえで、その仕事が具体的に「誰に」「どのように」役立つのかを詳しく説明し、理解させることが重要です。

参考:

PR TIMES「産業医500人に聞いた「従業員のメンタル不調の原因」、1位は長時間労働ではなく「上司との人間関係」」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「時間管理はチームでこそ効果が上がる」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「どんな仕事にも「やりがい」を見出すことは、可能なのか」

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部下から休職の申し出を受けた際の流れ

部下から休職の申し出があった際は、まずは話をよく聞き、休職をせずに仕事を続けられる解決策がないか、一緒に検討することが大切です。

そのうえで、休職することが部下にとって最善だと判断した場合は、厚生労働省が定める「労働者の職場復帰支援の手引き」を参考に、部下がスムーズに職場復帰できるよう支援を進めます。

▼「職場復帰支援」の5ステップ

ステップ概要
1. 休業開始と休業中のケア・診断書を提出することで休職を開始する・休業中の社員が安心して治療に専念できるよう、経済的な保障(傷病手当金など)や相談先などに関する情報を提供する
2. 主治医による職場復帰可否の判断・社員が「復帰したい」意思を示したら、主治医の診断書を求める・主治医の判断は日常生活レベルの場合が多いので、会社の産業医が「仕事ができるレベルか」を詳しく確認する
3. 復帰の可否判断と支援プラン作成・安全な復帰のために、情報(社員の意思、病状、職場環境など)を収集・評価し、復帰できるかを判断する・復帰可能なら、具体的な復帰計画(復帰日、仕事内容の調整、人事上の対応、復帰後のフォローアップなど)を作成する
4. 最終的な職場復帰の決定・作成した復帰計画に基づき、会社が最終的に復帰の可否を決定し、社員に伝える・この際、病気の再発がないか最終確認し、産業医が「職場復帰に関する意見書」などを作成する
5. 職場復帰後のフォローアップ・復帰後は、上司や産業保健スタッフが継続的に見守り、支援する・病気の再発がないか、仕事は順調かなどを確認し、必要に応じて復帰計画を見直し、より働きやすい職場環境を目指して改善を進める

なお、上記はあくまで一般的な対応例です。部下の状況に応じて、柔軟に対応方法を調整する必要があります。

参考:

厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

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まとめ

部下が休職に至る原因や、それを防ぐためのポイントについて解説しました。

あらゆる業界で人手不足が叫ばれる昨今、部下の休職は組織にとって大きな痛手となります。

部下の休職を防ぐためには、日頃から上司が部下の様子をよく観察し、問題が生じる前に対策を講じることが重要です。

本記事で紹介した内容を実践し、部下にとって働きやすい職場環境を作ることで、生産性や定着率の向上を目指してください。