「職場に働きすぎる部下がいるけど、放置しても問題ない?」

「部下が働きすぎるのを防ぐにはどうすればいい?」

このような疑問を持つ管理職は多いでしょう。

職場内に働きすぎている部下がいる場合、その部下自身だけでなく、職場全体にもさまざまな悪影響がおよぶ恐れがあります。

そのため、上司は部下が働きすぎることがないよう、日頃から適切な対策を講じることが重要です。

本記事では、部下が働きすぎることで生じる問題や、それを未然に防ぐためのポイントについて解説します。

部下の長時間労働を抑制し、職場全体のモチベーションや生産性の向上につなげたい方は、ぜひ参考にしてください。

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部下が「働きすぎ」かどうかの判断基準

部下が「働きすぎ」かどうかを判断するためには、まずは労働時間に関する法的な基準を理解することが重要です。

労働基準法では、従業員の労働時間について以下の通りに定めています。

  • 原則的な労働時間: 1日8時間、1週40時間まで
  • 時間外労働(残業)の上限: 月45時間、年360時間まで

部下の月の残業時間が45時間を超えている場合は、法的な上限を超えており、明らかに働きすぎであるといえます。

また、仮に残業時間が法的な上限を超えていなかったとしても、時期に関係なく毎日のように残業が発生している場合は働きすぎ、もしくは働きすぎの一歩手前の状態にあるといえるでしょう。

以下は、株式会社アスマークが20~50代の社会人男女を対象に実施した調査結果の一部で、月の平均残業時間の分布割合をまとめたものです。

月間平均残業時間割合
残業はない26.6%
10時間未満27.9%
10時間以上30時間未満26.9%
30時間以上45時間未満10.7%
45時間以上60時間未満4.9%
60時間以上80時間未満2.0%
80時間以上1.2%

この結果を見ると、全体の8.1%の労働者は月の残業時間45時間を超えており、「働きすぎ」のラインを超えていることがわかります。

上記は管理職も含んだデータではありますが、部下の中にも働きすぎな人が数多くいることが推測できます。

参考:

厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」

PR TIMES「残業では、40代男性の3人に1人は「ダラダラ働いている」?~残業に関するアンケート調査~」

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部下が働きすぎることで起こる問題

部下が働きすぎることで起こり得る問題について解説します。

パフォーマンスの低下や健康障害が発生する

人が高い生産性を保つためには十分な休息が必要です。しかし、働きすぎの状態が続くと十分な休息が取れなくなり、やがて疲労やストレスから、部下のパフォーマンスは低下する可能性があります。

仕事を多くこなすために長時間働いているにもかかわらず、結果的にミスが増えたり、効率が落ちたりしてしまっては本末転倒です。

さらに、部下の長時間労働が常態化すると、最終的には健康障害を引き起こす恐れもあります。

厚生労働省によると、時間外労働(休日労働を含む)が月45時間を超えたあたりから健康障害のリスクが徐々に高まり、月100時間を超える、または2~6ヶ月間の平均で月80時間を超えると、そのリスクが大幅に高まるとされています。

また、テキサス大学健康科学センターのコンウェイ博士らの研究では、週46時間以上の長時間労働を10年以上続けた人は、心血管疾患の発症リスクが高まることが示されています。

部下がどのようなキャリアを目指していたとしても、その実現のためには健康であることが必要不可欠です。

そのため、上司は部下の健康に重大な問題が生じる前に、長時間労働を防ぐための対策を講じることが大切です。

職場全体に長時間労働が蔓延する

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、職場内に過重労働状態の従業員がいると、周囲のメンバーも「自分も同じように働かなければならない」というプレッシャーを感じやすい傾向にあるといいます。

つまり、働きすぎな部下を放置してしまうと、やがては職場全体に「長時間労働を良しとする文化」が広がる恐れがあるのです。

実際に、株式会社スタジオテイルが社会人男女を対象に行った調査では、「現在の会社では『残業をしてでも、もっと働いてほしい』という空気がありますか?」という問いに対し、25%もの人が「ある」と回答しています。

長時間労働を良しとする雰囲気が周囲に蔓延してしまうと、最終的には職場全体の生産性やモチベーションの低下につながる可能性があります。

このような悪循環を防ぐためには、上司が部下一人ひとりの労働時間を厳しく管理することはもちろん、そもそも長時間労働を良しとしないという考え方をメンバーに示すことが重要です。

参考:

厚生労働省「過重労働による健康障害を防ぐために」

Conway, Sadie H., et al. “Dose-Response Relation between Work Hours and Cardiovascular Disease Risk: Findings from the Panel Study of Income Dynamics.”

PR TIMES「「任された仕事が終わらずともサービス残業はしない」人は全体の62%。残業への意識調査アンケート」

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部下の働きすぎを防ぐポイント

部下が働きすぎるのを防ぐために、上司が意識すべきポイントについて解説します。

メンバー間の業務負担を均等にする

職場内に働きすぎている部下がいる場合、その部下の仕事量が多すぎることが原因として考えられます。

そのため、まずはチーム全体で業務負担が均等になっているかを確認し、もし偏りがある場合は、速やかに仕事を割り振り直す必要があります。

業務負担がチーム内で均等になれば、一部のメンバーだけが長時間労働を強いられる状況を避けることができるでしょう。

なお、従業員間で業務負担にばらつきがある状態は、大きな負担を強いられているメンバーの不満を招く恐れもあるため、注意が必要です。

ハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、同僚に比べて労働時間が20%長い従業員は、仕事への意欲が33%低く、上司に対して不満を抱く可能性が2倍になるという研究結果も出ています。

部下の働きすぎを防ぐだけでなく、モチベーションを高く保って働いてもらうためにも、部下の労働時間や業務量を正確に把握し、負担を均等にすることは重要です。

業務の合格ラインを示す

真面目な性格の部下の場合、一つひとつの仕事を完璧にこなさなければならないと思い込み、結果として長時間労働に陥っている可能性があります。

もちろん、すべての仕事を100点満点でこなせるのが理想ではありますが、時間や人手が限られている以上、すべてを完璧に処理するのは現実的ではありません。

そもそも、仕事はテストのように明確な答えがあるとは限らず、「何をもって完璧とするか」の判断も難しいため、突き詰めるとキリがありません。

そのため、上司は部下に仕事を割り当てる際に、各業務の「合格ライン」を明確に示すことが重要です。

各業務の合格ラインを設定するにあたって、ハーバード・ビジネス・レビューの記事では、以下のポイントについてチームで話し合うことを推奨しています。

ポイント具体例
【目的に応じた労力配分】各業務でどこまでやれば「合格点」なのか、どこは手を抜いてもよいのかを明確にする・社内関係者へのメールは、テンプレートに沿った簡潔な形式でよいものとする・会議に参加するにあたって、議題の解決に必須のデータと資料の作成だけを求める
【簡素化の検討】既存業務のプロセスを簡略化できないか検討する・業務報告書のフォーマットを統一して、入力項目を最小限にする
・確認プロセスが複数段階ある場合、信頼できる担当者に最終チェックを一任してプロセスを削減する
【AIの活用】AIを活用して業務を効率化し、必要な時間を短縮できないか探る・会議の録音・要約ツールを導入し、議事録作成にかかる時間を削減する
・チャットボットを導入し、簡単な顧客対応を自動化することで担当者の負担を軽減する

合格ラインが明らかになれば、部下は重要でない業務はそこそこのクオリティに留め、重要な業務にはしっかりと時間をかけるなど、メリハリをつけて仕事に取り組めるようになるでしょう。

上司自身が働きすぎない

部下が働きすぎるのを防ぐためには、まずは上司自身が働きすぎるのをやめる必要があります。

部下の立場からすると、目上の存在である上司が毎日長時間働いている姿を見れば、「自分ももっと働かなければ」というプレッシャーを感じてしまうのは無理もありません。

株式会社スタッフサービスが社会人男女を対象に行った調査では、47.5%が「(毎日定時で)帰れていない」と回答しており、その理由として、17.3%が「他の人が残っているから帰りにくい」と述べています。

この結果からも、上司が残業している姿を見れば、たとえ強制されていなくても、気を遣って「自分も残業しなければ」と考える部下が多いことが推測できます。

そのため、上司自身が長時間労働を避けることは、部下の長時間労働を抑制するのに有効だといえるでしょう。

なお、管理職にもなれば一般社員よりも業務量が多くなるため、何の工夫もなく仕事に取り組むと、つい長時間労働になりがちです。

したがって、上司は限られた時間の中で、より多くの仕事を効率よく処理するコツを身につけることが大切です。

▼関連記事

参考:

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「優れたマネジャーの日常に見る5つの行動パターン」

DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「膨大な仕事を抱えて部下にも任せられない時、どうすべきか」

スタッフサービス「52.5%の人が「わたし、定時に帰れません!」残業を減らすための仕事術とは」

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まとめ

部下が働きすぎることで生じる問題や、それを未然に防ぐためのポイントについて解説しました。

職場に働きすぎている部下がいると、その部下自身のパフォーマンスが低下したり、心身の健康が悪化したりするだけでなく、職場全体に長時間労働が蔓延し、さまざまな悪影響を及ぼす恐れがあります。

そのため、上司は部下が働きすぎることがないよう、日頃から適切な対策を講じることが重要です。

本記事で紹介した内容を実践することで、部下の長時間労働を抑制し、職場全体のモチベーションや生産性の向上につなげてください。